平成20年度新採用職員辞令交付式あいさつ

最終更新日 2010年2月4日ページID 005105

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 このページは、平成20年4月1日(火)に県庁で行われた平成20年度新採用職員辞令交付式でのあいさつをまとめたものです。

200401あいさつ写真1 それでは、皆さんに歓迎のごあいさつを申し上げます。

 今日は、ここに、83名の新採用の皆さんをお迎えすることになりました。まずもって心から歓迎とお祝いを申し上げます。

 皆さんは、厳しい難関を突破されまして県職員になられたわけです。今日は、4月1日、特別なお気持ちを持っておられるのかなと思います。

 これから県職員として働く意欲、期待、また不安もお持ちかと思いますが、緊張の中にさまざまな思いで胸がいっぱいではないかと思います。

 知事として、また一人の先輩として、今日は皆さんにお伝えしたいことを申し上げたいと思います。

 今日は、4月1日ですから、あまりお話ししても十分記憶しておられないかという感じもいたしますが、「これだな」ということがございましたら、頭にまず入れてこれからの仕事に励んでいただきたいと思います。

 さて、今日は、大きく言いますと、2つ申し上げます。本当はもっとたくさん申し上げたいのですが、今言いましたように、3つ以上言いますと、私の経験からも普通の状況でもあまり覚えておりませんので、2つにしたいと思います。1つではちょっと足らないかなと思い、2つにしました。

 私自身は、皆さんと同じような年齢の新採用の立場にあったのは、だいぶ昔なんですが、ちょうど40年前です。おそらくこういう場に臨んだのだと思いますが、残念ながら、どんな話だったか内容は全く覚えておりません。しかし、先輩が戦争の話をしたような感じを、かすかに覚えております。よくよく考えますと、その当時は、第2次大戦が終わってちょうど20年ちょっと経った時期で、戦後そんなに間がなかったんだなと。もう60年余り経っておりますが、随分世の中が変わったという感じです。おそらく、皆さんもこれから何十年か後になりますと、今日のお話をどの程度覚えておられるかということもありますし、世の中もきっと変わっていると思いますが、これから1つ1つ、着実に公務員としての道を歩んで欲しいと思います。

 さて、皆さんは、今日から県職員として仕事をするわけですので、何が求められているかというと、まず、県民の皆さんの期待に応えること、これが基本です。より直接的には、皆さんの力で行政のサービスを向上させることです。どのようなサービスを提供すべきか、その判断の基準となるのは、県民の皆さんの声ですので、これから諸君は、できるだけ内向きにならないで、外向きになって仕事をして欲しいと思います。

 これまでの経験は、だいたい一人でやっても何でも解決する世界だったと思います。学校であれ、受験であれ、学生生活であれ、今回の公務員の試験も同じでしょう。だいたい一人で問題が解決しましたが、これからはそうはいきません。一人では何も解決できないと思いますから、内向きにならずに、外を向いて仕事をして欲しいと思います。

 これから2点申し上げますのでお聞きください。

 1つは、常に具体的なことを念頭に置いて仕事をして欲しいということです。皆さんは、大学や高校などで、先生の授業をお受けになられたと思いますが、教科書どおり授業をされるような先生がもしいたとしたら、それは、きっとつまらない授業だったと思います。いろいろ例が出たり、他の関係する話がないと、授業というのはつまらないものです。同様に、これから行政を行う場合にも、絶えず日常的に、具体的に、誰が、どこで、何をするため、どういうことを応援する仕事であるか、そういうことを念頭に置いて、仕事をしなければならない。常に具体的なことを思い浮かべてやって欲しいと思います。

 我々、県庁で仕事をしておりますと、なかなか現場的な話は少ないのです。まず県庁の中の話になってしまう。それから、机上の話になりがちです。さらには、何か金額の話になったり、統計の話になったり、さらにそれが金目でなく、割合や伸び率の話になったり、話がだんだん抽象化します。それは物事を整理したり、まとめる場合には大事なことです。しかし、その奥にある具体的なことを、いつも思い浮かべて欲しいのです。今日は、自動車の暫定税率が切れてしまうという問題があります。ガソリンなどが引き下がるということで、それぞれの現場では様々な問題があると思います。そういう具体的なことを思い浮かべないで、県庁の机上で何パーセント上がったとか、いくらがどうだとか、そういうことをしておりますと、県民の気持ちや実態に合わないわけです。絶えず、あらゆる分野で、研究をして具体的なことを想定して、仕事をして欲しいと思います。

 これから、宣誓をされる式順があると思います。憲法の精神に則って、全体の奉仕者と、こういうことを言われると思いますが、それは一体どういう意味でしょう。言葉が抽象的です。だからこそ、そういうことを絶えず具体的に考えて、仕事をして欲しいのです。

 例えば、この会場の蛍光灯が、ここで1本点滅し始めたら、どうされますか。皆さんが担当でなかったとしたら、知らん顔をしておられるかもしれない。あるいは、先程代表して辞令を受けた方は、財産活用課でありました。担当です。課長に「点滅してますよ」と言われるかもしれないですね。いろいろなことがあると思いますが、他の大勢の皆さんは、何も言わないかもしれない。

 しかし、皆さんのお宅で電灯が点滅したら、自分の担当でなくても、これは両親の仕事だとかということは考えないで、おそらく替えると思います。1本だけ替えるでしょうか。皆さんの家で5本のうち1本点滅したら、同じ時期に替えたんだから、残りも同じようにいくばくもしないうちに、点滅をし始めるだろう。5本一緒に替えたほうが、そして電気店に行って安く買って替えたほうがいいだろうと考える。

 県庁の中で仕事をされるときに、おそらくそのようなことを思う人は少ないと思います。公の県庁の仕事を抽象的に考えているからだと思います。「全体に奉仕する」ということですが、これを具体化する場合には、絶えず自分の家のことのように思って、仕事を進めるぐらいにしないと、いい仕事はきっとできないでしょう。つまり、法律とか規則とか様々な約束事がありますが、そういうものを当たり前にやっていると県民の期待に応えることにはならない。そして効率的な仕事はきっとできないと思いますから、絶えず具体的なことを念頭に置いて仕事をして欲しいと思います。

 それから、もう1点申し上げます。それは、皆さん自身、目標を持って、これから生涯30年、あるいは40年と勉強をしなければならないということです。仕事の目標をしっかり持ちながら、モチベーションを上げることが重要です。県庁の中で、1年間はだいたい先輩ばかりということになります。そうしますと、上司の助言というものは、尊重すべきですけれども、皆さん方も、仕事について日々感じたことを、先輩や上司の人に、率直に遠慮しないで言って欲しいと思います。「点滅してる」とか「あそこがおかしいんじゃないですか」とか、「自分はこう思うんだ」というようなことを、放っておかないで、1回は考えて、よくお話をしてください。上司からも適切な助言を受け、皆さんはまだ助言はできないと思いますが、いろいろ意見とか、感じたこと、通勤中のこと、様々なことを先輩方によくお話をして欲しいと思います。そういうことによって、皆さんの勉強も深まると思います。これから30年余り仕事をされるわけですから、今日から、目標、モチベーションを高くして、積極的な生活態度、そういうことをお願いしたいのです。

 私は、こういう政治の仕事をしておりますが、戦後間もなく、短い期間ではありましたが、総理大臣を務められた石橋湛山という政治家がおられます。もちろん、日本史を勉強されると名前の出る人物です。この湛山は、昔の中学校ですから今の高校になりますが、2回落第をしている。大学では哲学を勉強されました。政治ではありません。そして、社会人になってからは、気持ちを入れ替え、経済学を、今で言いますと生涯学習の方法で、自己学習を深めた人です。何十年間か勉強を続け、一流の経済学者と言いますか、政治経済学者になった人です。

 通勤中も、電車の中で、経済学の本を読むということで勉強をされたのですが、ここで皆さんに心掛けて欲しい一生涯の勉強のお話について申し上げたいと思います。大事なことは、こっそり勉強をしないということです。一年間、経済学を隠れて勉強して、一年後にあっと言わせてやろうとか、そういうことは、決して考えないで欲しいのです。毎日毎日、皆の中でいろんなことを話したり、あるいは注意を受けながら勉強をして欲しいのです。そうしなければ、マスターはできないと思います。

 つい2日前まで、「ちりとてちん」という福井を題材にした番組がありました。皆さんもご覧になっていただいた方も多いと思いますが、ここに出てくるヒロイン、貫地谷さんですけれども、「B子さん」です。「A子さん」ではなかったわけです。いつも失敗をしたり、へまをし、そうしながら落語家になるお話です。

 この主人公が入門する一門は、「徒然亭」という名前です。何故「徒然亭」というのか、ドラマには出てきませんが、おそらく、徒然草に由来するんじゃないかと、私はひそかに思っています。

なぜかと言いますと、徒然草には、いろんな芸事とか、技術とか、あるいは知識、こういうものを本当にうまくなろうという人は、こっそり勉強をしない人である、ということが書いてあります。初めは、「へたくそだ」とか、「何だあの人は」と言われても、あまり恥じることなく、我慢しながら、毎日毎日を生活して、やがて一流の人になるということが、徒然草の百五十段というところに書いてあります。一度読んで欲しいのです。「能をつかんとする人」という段落です。皆さん方も、勉強をされ仕事をする場合に、いろいろな失敗については、恥をおそれず、あまりめげず、へこたれず、頑張ってください。

 日常的なことを心掛ける、日々の仕事の中でオープンに勉強をする、この2つを、ぜひ今日は記憶していただき、これからの仕事に臨んで欲しいと思います。

 さて、「ちりとてちん」は、福井を舞台にしたわけです。第77回目にして初めて福井県が舞台になったドラマです。福井県はなかなか頑張ってはいますが、そんなに大きい県ではありませんし、全国的にもそう知れ渡ってはおりません。これから皆さんの力で、福井県の行政が良くなって、全国的に知れ渡るように願いたいものです。

 橋本左内という方を郷土の偉人として輩出していることは、皆さんもご存じだと思います。左内は15歳のときに「啓発録」を既に著しております。大阪の適塾という昔の建物を残した博物館があります。いらっしゃった方もあると思います。適塾は幕末から明治維新にかけて約600名余りの、今で言うと偉人と言いますか、そういう卒業生を輩出した塾です。その筆頭にいつも挙げられ、説明がなされているのは橋本左内であることが、見に行かれますと分かると思います。このようにすばらしい人物が出ております。松平春嶽公もそうです。由利公正もそうでしょう。それから近松門左衛門も福井の出身です。我々は、多くの先達を持っているわけですので、大きな夢と志を持ちながら、少しずつ着実に前進をして、県民の皆さんの期待にぜひ応えていただきたいと思います。

 以上2点、少し長くなりましたが、将来がある方であり、最も話して値打ちのある方だと思いますから、少し長めにお話を申し上げました。これからの皆さんのご活躍、健康に気を付けていただいて頑張っていただくことをご期待申し上げまして、歓迎のごあいさつにいたします。

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