平成23年仕事始め式知事あいさつ

最終更新日 2011年1月4日ページID 013692

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 このページは、平成23年1月4日(火)に県庁で行われた、仕事始め式に当たっての知事のあいさつをまとめたものです。

 皆さん、新年明けましておめでとうございます。

 今年は年末から降り続く雪を心配しながらお正月を迎えました。鳥取県では雪による被害が大きかったようであります。年末年始は暦どおり6日間の休みで、あまりゆっくりできなかったかもしれませんが、平常の仕事を休み、新年に向けて気持ちを整理してお正月を迎えられたのではないかと思います。
 私の場合、お正月はむしろさまざまな行事や会合があり、あまり年末年始という感じではありませんでした。それでも1日半ぐらいは休みがとれましたので、テレビを見たり本を読んだりして過ごしました。

 私が読んだ本を紹介します。
 一つは尾崎紅葉、樋口一葉、幸田露伴、正宗白鳥、佐藤春夫、谷崎純一郎といった明治時代の人の短編。名前は聞いたことがあるが、あまり読んだことのないような作家の短編です。これはポプラ社の「百年小説」という分厚い本に入っています。
 その中で一番心に残ったのは、樋口一葉の「わかれ道」という、東京の下町の様子を描いた小説。個人的な受止めとしては、樋口一葉が最も才能があるように感じました。
 しかし、どの小説を読んでも、今の我々とはずいぶん考え方が違う、これが同じ日本人かという気がいたしました。その頃の登場人物とは100年くらい経っていますが、この100年の中で日本人の気持ち、つまり私自身も含め今の人達の気持ちと登場人物の気持ちが全然違うということがよく分かりました。
 また、もうひとつ感じたことは、しかしながら話がよく分かるということです。これはなぜかというと、私自身が映画で見た江戸時代の時代劇に出てくる登場人物とよく似た発想をする、行動をするという感じを受けたからです。これはどういうことかというと、明治時代には明治維新がありましたが、変わっているにもかかわらず生きている人は江戸時代の考え方、生活もかなり江戸時代的であったということです。
 このことから、私は、時代は年々変わってゆきますが、古いものを少しずつ残しながら変わっていくものだと感じました。
 昭和20年から30年にかけて戦後が終わったという話をよく聞きますが、これは経済的な状況が終わったということであり、戦後思想あるいは生活様式というものはごく最近まで、今でも少しずつ残っているのではないかと思います。
 しかし、新しい2011年を迎えて、人の心の中にも世の中のシステムの中にも戦後的なものがほとんどなくなってきているのは確かであり、樋口一葉の「わかれ道」という非常に短い昔の小説を読んで感じました。

 もう一つは、羽仁もと子先生という、東京に自由学園という学校を創立した女性の書いた本です。自由学園は、その当時の文部科学省のカリキュラムにとらわれない独自の教育方法で自由に子供たちを教えていこうという体験型の学校です。今でも通用するような新しいしかも普遍的な考え方を明治大正の昔に実行した女性です。羽仁さんは青森県八戸市の出身です。この人の文章に「田舎者は勝つ」という言葉があります。都会の人ではなく田舎者が勝つと言っています。これは田舎者を励ましているだけではなく、都会にいる人に注意を与えているのです。大都市に住んでいれば、いろんな条件に恵まれ情報も多い、そうすると逆に刺激も刺激でなくなる、反応も悪い。当たり前と思っていると田舎者に負けてしまうという意味です。より実践的に言うと、自分自身にさえ負けていくだろうということかもしれません。日々新しい気持ちになって物事に取り組む、これは田舎者の都会に出たときの生活の方法だろうと書いています。日本をつくったのはいつも田舎の人。明治維新や戦後においても、田舎から出てきた人が大都市でさまざまな活動を展開しました。今は、地方が日本を支え、あるいは変えていく。わざわざ東京まで出ていかなくてもいいのかもしれません。現状を肯定しないで絶えず新しく変えていこうという、そういう発想です。

 また、元旦の産経新聞には歌人・与謝野晶子の歌が出ていました。「かの人も此人(このひと)も皆(みな)あらたまれ。春の初めに祝(ほ)ぐことは是(こ)れ」。この歌は、「人の心」が新しくならなければ、年ばかり改まっても何にもならないという意味です。今年も新しい年を迎えましたが、県庁職員の仕事に立ち向かう気持ちが新しくならないと、仕事もまた世の中を変えていくにも変えられないだろうということです。そして、その続きとして、昨日の新聞には「新しく生きる者に、日は常に元日、時は常に初春。百の禍も何ぞ、千の戦で勝たう。」という言葉が出ていました。この文章は、大正時代後半のもので、毎年年は改まるが人の心を変えないと世の中は良くならないだろう、また非常な困難が日本の国にもわれわれの地域にもあるが、災いが100あったらこの1桁違う1,000の戦いで勝っていこうという勇気あふれる決意表明と言えます。

 この3人はいずれも日本の代表的な女性でありますが、絶えず現状に甘んずることなく、厳しい条件の中で物事を勇ましく挑戦しながら変革をしようという、こういう発想を持っています。このような人たちが世の中の考えを変えていったと思うべきでしょう。

 次に福井県の具体的な話を申し上げます。
 年末に「福井県民の将来ビジョン」を県議会の議決をいただいて策定しました。これから具体的に物事を進めていきますが、ビジョンの基本理念として「『希望ふくい』の創造」を掲げました。「希望」という言葉は馴染みはありますが、これをどのように具体化したらよいのかは非常に難しいものです。
 お正月のテレビ番組を見ていたら、世界的な科学者や評論家などが日本はどうあるべきかということを論じ合っていました。その大きなテーマは「いかに世界に開かれた国にするか」。この「開かれた」とは、完全に自由化をして何でも出入りすればいいという考え方ではありません。逆にいろんなシステムや国民の考え方を開いていく、アジアならアジアから何か恩恵だけを受けようというのではなくて、いかに日本がそのような国に必要な貢献をするかということです。要するに、アジアや世界によりオープンな形の国民精神といいましょうか、国づくりをするというのが一つのテーマかと思いました。
 もう一つはGDP。経済成長が目的なのか、それ以外のものなのかというような論点が2つ目にありました。GDPはもちろん大事ですが、これからの時代は単にGDP向上を目指すのではなく、他の何かが必要であろうということです。このようなことを考えると、「希望」あるいは人々の心を一つにした福井県の行動というのが重要になってくるのではないかと思います。
 これからさまざまな政策をともに進めていかなければなりませんが、心を一つにして福井県の次の土台づくりをする必要があります。幸い福井県は経済的に豊かでありますし、住み良さも日本に誇れる地域であります。県民の真面目さ、努力、気質あるいは行動力も、子どもたちの学力・体力などに見られるように全国トップクラスであります。優れた歴史や文化があり、これをベースにさまざまな仕事を進めていくことが極めて重要です。その中で「希望」というものをキーワードに一緒に行動するということを考えていきたい。

 昨年、仕事において、また会合などで会話をしている中で一番多く聞いた四字熟語とといってもヒラガナですが、「なかなか」という言葉であったと思います。「そうは言っても、なかなか難しい」、「なかなか大変だ」とかですね。今年は違う四字熟語を皆さんで発明し、「なかなか」という言葉から脱皮していただきたい。現状を何となく肯定しながら難しいという発想の言葉では進歩がありません。皆さんが違う四字熟語を心に描き、次の段階に進んでほしいと思います。

 さて、北陸新幹線の県内延伸について、昨年は残念ながらその方針が出ませんでした。福井県に対して努力をするという約束をいただいていたにもかかわらず、それが実行されませんでした。しかし、北陸新幹線は福井県にとって基本となるプロジェクトであり公共交通機関でありますので、さまざまな手段・方法を講じて、引き続き力を合わせて粘り強くその成果を上げるように努力する必要があります。
 同時に、これから4年後には、高速交通体系に大きな2つの変化が起きます。一つは北陸新幹線が金沢まで開業するであろうということ、もう一つは舞鶴若狭自動車道が敦賀まで全線開通し、北陸自動車道と結ばれるということ、この二つです。北陸新幹線の問題は主として嶺北地方に大きな影響が出ます。一方、舞鶴若狭自動車道は嶺南地方の立地条件を変え、そしてもっと大事なことは、福井県全体が一体化するということであります。
 単に便利になるとか、あるいは逆に北陸の中で格差ができるのではないか、というような懸念を心配したり論じたり考えたりするのではなく、きちっとしたシミュレーションを行い、それぞれの地域や各方面の方々と検討をし、方向性を具体化し共有して、その中でできるものから早急に対応していくということが重要です。そして、例えば高速道路であればインターチェンジ、また鉄道であれば飛行機や在来線のダイヤなど、関連する事業も注視しなければなりません。

 もう一つは、先ほど申し上げたように、福井県には全国に誇れる優れたものがありますので、これを正しく認識し、多くの人に福井へ来てもらえるようにしなければなりません。今年はいよいよ大河ドラマ「江~姫たちの戦国」が始まります。福井県全体に関わるドラマですので、まず4年後に備え、これでいろんな売込みの勉強もしなければなりません。

 また、陽子線がん治療センターがこの春にオープンします。もうすでにさまざま準備が進められていますが、できるだけ多くの人にこの施設を利用してもらえるようPRに努め、また利用しやすいシステムづくりを目指したいと思っています。

 その他、福井県には多くの日本一のものがありますが、その日本一を減らさないようにしなければなりません。さらには、農林水産業、環境、そして文化などの分野でも、こうした日本一をもっと増やしていく努力が必要です。そして、地域同士が連携しネットワークをつくって、地方からさまざまな動きを進めていかなければなりません。

 なお、今年は福井県が誕生してちょうど130年目のアニバーサリーであります。また、藤野厳九郎先生と師弟関係にあった中国の文豪・魯迅の生誕130年の節目の年でもあります。そんなことなども心に描きながらアジア全体のことも考えていただきたい。

 今年の最初の3か月は、マニフェスト「福井新元気宣言」の最終的な時期になります。この4年間の成果がきちんと出るよう、再度仕事のチェックを行い、残された課題を整理していただきたい。

 皆さんにとってもこの新しい1年が自身の変革の年になることを祈念し、年頭のごあいさつとします。

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