このページは、平成２３年３月１日（火）に羽水高等学校で行われた、羽水高校卒業証書授与式での知事あいさつをまとめたものです。

　皆さんおはようございます。
　本日ここに、晴れの日を迎えられました羽水高校の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

　そして、３年間ご指導をいただきました羽水高校の先生方には、心からお礼を申し上げます。今日はご家族の皆様も大勢いらっしゃっています。皆様にもお祝いをさせていただきます。本当におめでとうございます。

　今年は、夏は猛暑、冬は大雪と、天候不順に見舞われた１年でした。今日、羽水高校の前庭や中庭の様子を眺めますと、少しだけ雪が残っておりますが、だいたい解けており、植木やモニュメントが春の到来を告げるとともに、皆さんの卒業をお祝いしているように感じました。

　さて、皆さんが高校生活を過ごしたこの３年間でありますが、本県出身の南部陽一郎博士がノーベル物理学賞を受賞されたことや、文部科学省の学力・体力の調査で本県の小中学生が全国トップクラスの成績を収めるなど、福井県にとって喜ばしいことが続きました。

　また、一昨年の全国植樹祭、昨年のＡＰＥＣエネルギー大臣会合など、全国から注目を集める行事や国際会議を福井県で開くことができました。

　卒業生の皆さんの中には、全国植樹祭の式典会場で、吹奏楽の演奏をしてくれた生徒さんがいらっしゃいます。前日のリハーサルでは雨が降り、皆さん楽器が濡れないよう大変な苦労をされたと伺っております。しかし、当日は天候も回復し、全国の参加者の前で、見事な演奏をしていただきました。

　ところで、福井県では、本県が提唱した「ふるさと納税」でいただいた寄付金を活用し、昨年、羽水高校の吹奏楽部に楽器を贈りました。ふるさとへの想いが込められた楽器を、末永く大切に使っていただくことを願っています。

　また、羽水高校は、大学進学を目指した学習と部活動の両立を目標に頑張って来られました。その中でも、ボクシング部の全国高校総体での３位入賞をはじめとして、女子ソフトテニス部、陸上部、それから放送部や邦楽部の生徒の皆さんの活躍は、福井県民に大きな勇気と喜びを与えてくれました。

　一方、国内に目を転じますと、この３年間は厳しい不況の影響により、大学生や高校生の就職環境が大変厳しくなるなど、若者が未来に対して明るい希望を持ちにくい状況でもありました。

　そのような中、我々に自信と希望を与え、失敗を恐れずに挑戦することの大切さを改めて実感させてくれた出来事がありました。

　昨年６月、小惑星「イトカワ」の微粒子を採取したカプセルとともに、６０億キロの宇宙の旅を終え、７年ぶりにふるさと地球に帰還した「小惑星探査機はやぶさ」であります。

　今年の１月に、県国際交流会館において、「はやぶさ」の帰還カプセル等の展示を行いましたが、皆さんの中には展示をご覧になった方もいらっしゃると思います。

　「はやぶさ」は、エンジンや姿勢制御装置の故障を幾度となく体験したのでありますが、その中には地球との通信が１か月以上途絶えたこともあったようです。

　しかし、プロジェクトメンバーの決して諦めない強い気持ち、様々な準備と高い技術力、柔軟なアイディアと強いチームワークで、人類初めての小惑星のサンプル採取をはじめ、幾つもの世界最初の試みを成功させました。

　「はやぶさ」については、思うことがもう一つあります。
　それは、「はやぶさ」が地球からの指令に基づいて動くだけではないのです。いろんなセンサーなどを頼りにして、自分の力も使って宇宙を旅したということです。

　「はやぶさ」がイトカワにタッチダウンする時を例にとりますと、地球との通信には往復で４０分かかります。つまり「はやぶさ」が傾くと、元へ戻れという指示を出しても４０分かかるわけですので、その間に倒れてしまいます。それでは目的を達しません。ですから「はやぶさ」は自分でその自分の様子を判断して体勢を立て直す、そういう仕組みがその中に入っているのです。

　皆さんは、大学や実社会に進んでいかれるわけですが、これからは人から言われることをよく聞くと同時に、必要に応じて自分で判断して、自分に合ったより良い行動がとれる大人になってほしいと思います。

　これまで一生懸命高校で勉学やスポーツなどに励んできたと思います。しかし、高校で勉強したからそれで足りるというわけでもありません。さらに、高校の教育の意味も人によって違うのです。

　今年の芥川賞では、中卒でフリーターという経歴の西村賢太さんという方が３度目の挑戦で芥川賞を受賞しました。この人を例にとりますと、高等学校の教育はこの人にとって必要であったかもしれませんが、それが全てではないということです。

　いろいろお話を申し上げましたが、皆さんの将来にとって、その開く鍵は皆さんの手の中にあると思います。みずからの夢を持ちながら、目標に向かって何事もあきらめず最後まで努力する逞しい心をもって、人生を切り開いていってください。

　卒業される諸君の中には、福井を離れる人もいらっしゃるかもしれません。県外に行っても、福井で教育を受け、福井で青春時代を過ごしたことを決して忘れることなく、大きく飛躍してほしいと思います。

　最後になりましたが、卒業生の皆さん、どうか夢や希望の実現に向けて頑張ってください。

　皆さんの晴れの門出を心からお祝いをし、ご家族の皆様、教職員ならびに関係者の皆様のご多幸をお祈り申し上げまして、お祝いの言葉といたします。本日はおめでとうございました。