立命館大学知事リレー講義 「ふるさと」のために何ができるか~ふるさと貢献のシステムづくり~
このページは、平成20年4月24日(木)、全国の知事が地方行政の現状や課題を語る「知事リレー講義」の一環として、「ふるさと」のために何ができるか~ふるさと貢献のシステムづくり~という演題により立命館大学で行われた知事の講義概要をまとめたものです。 |
みなさんこんにちは。 4月になり、福井県庁にも今年83人の新採用職員をお迎えしました。そのうち立命館大学出身の方は2名いらっしゃいます。事務系の方が1名と技術系の方が1名だと記憶しています。福井県庁には立命館大学出身の方が50名おります。その中でトップの人は、安全や防災を担当する部長で、ずい分と助けられています。 立命館大学出身者といえば、白川静先生がいらっしゃいます。日本の漢字研究の第一人者で、立命館大学名誉教授でもいらっしゃいました。 この白川先生は漢字の成り立ちについて解説をされた方です。例えば、「告」という文字があります。これを中国の漢字学者は「『牛』という文字に『口』を合わせた会意文字である」といいました。日本でも最近まで「牛の角に縛りつけた棒が危険を告知すという意味から」などと語られています。 |
ところで、福井県とはどんな県だと思われますか。 先週、福井県内でもプロ野球独立リーグが開幕しました。新潟、富山、石川、群馬、長野そして福井の6県のチームが参加しています。福井県のチームの名前はミラクルエレファンツといいます。 先日、高校生や大学生を対象に、県の位置を選ばせる調査を行ったところ、宮崎県と愛媛県の正答率が低かったということで話題になっていました。 何年か前に、帝国書院が小学生を対象にして、白地図に都道府県名を記入させる調査をいたしました。その結果、正答率が1位だったのは北海道で、2位は沖縄県でした。 でも、福井県はがんばっている県です。 前々回の統一地方選挙からマニフェストが導入されています。ローカルマニフェストといいますが、マニフェストは今や政治家にとって必要不可欠な公約となっております。 私自身も1期目の「福井元気宣言」、2期目の「福井新元気宣言」というマニフェストを掲げて選挙に臨みました。 私の頃は、「元気」という言葉は、政治の世界になじみのある言葉ではありませんでしたが、人にわかりやすい、そしてまさに必要な言葉だということで「元気」を使いました。 2日ほど前に、第2回目の全国学力調査が実施され、秋ごろその結果が発表されるようです。昨年の調査結果では、福井県は秋田県と並んでよい結果でした。知識を詰め込むだけではダメで、地域や家庭などいろいろな条件がそろわないと、子どもの学力は伸びないと思っています。 しかし、その時にあわせて実施した子どもの学習状況調査の結果によると、「将来の夢や目標を持っている」と答えた子どもの割合が全国平均を下回っていました。これは、何とかしなければならない問題だと思っています。 |
本日は、ふるさとへの貢献について話をいたしますが、その前に大都市圏と地方の現状について話をいたします。これが「格差社会」などの議論にかかわるからです。 最近、大都市から地方に対して、地方の自覚を促すような論調が多く出されていますが、果たしてそうなのでしょうか。 また、人材はどうなのでしょうか。 10日ほど前に、国が発表した都道府県の推計人口によりますと、東京都の人口が1979年以来28年ぶりに総人口の1割を超えたそうです。 みなさんは、ルソーのエミールを読んだことがありますか。その中にこのような話があります。 この頃のフランスは、最も中央集権的な国でした。パリで話をつけないと、何も進まない、埒があかない状況でした。今でもそうでしょう。これも、一つには何でも国に任せればよいという国民性があります。このような話からも、日本はバランスのとれた国にしなければならないと思います。 |
私はこれまでに計算したところ17回引越しをしました。それぞれ思い入れがありますが、それでも「ふるさとは?」と聞かれたら福井県と答えます。 ところで、みなさんは税金を納めていますか。消費税や、車を運転する人はガソリン税、このほか酒税、タバコ税などを納めていますが、これらはみな間接税というものです。 直接税は、みなさんが働くようになってから、個人住民税を納めることになります。 人が生涯に受ける行政サービスと税負担について考えますと、たいていの場合は、生まれてから高校や大学を卒業して就職するまでの間は、税を負担せずに行政サービスを受けます。 先ほど机の席のところでお話をした人は岡山県出身とお聞きしましたが、彼女が東京で勤めた場合にどうなるかということで、「ふるさと納税」をご説明します。東京で働いて個人住民税を10万円納めるなら、そのうち1万円を岡山県に寄付していただきたい。そうすると、東京で個人住民税を納めるときに納税額から差し引いてくれる制度が、ふるさと納税制度であります。 ふるさと納税は、納税者が自ら納付先を決める、いわゆる「納税者主権」を実現するものです。 ふるさと納税が始まると、地方自治体の間の競争が起こります。それぞれの地域がやっていることを、納税者が比較をすることになるからです。そして、税の使い途に関心を持つようになります。こういうことが可能になるということが、ふるさと納税の画期的なところです。 ただ、ふるさとに対して1割しか納められない。私は、検討会で3割くらいと主張いたしましたが、1割になりました。また、手続の面でも改善の余地があると思っています。いわば、まだ発展途上の制度でありますが、まずは成立して、日の目を見ることが大事だと思っています。 ふるさと納税には、寄付の観点も盛り込みました。 アメリカのマイクロソフト社会長のビル・ゲイツ夫妻が創設した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の資産総額は日本円で3兆円、年間助成額が1,000億円を超えるそうです。一方、日本では、一番大きな財団でも年間助成額が10億円ですから、2桁もの違いがあります。 公と民の間にあるところの、公益といいますか新しい分野が寄付によって開かれます。 ふるさと納税制度の意義は、納税者主義を実現すること、住民による税金の使い途の監視がなされること、日本に寄付文化を醸成することにあると思っています。 |
(問)ふるさと納税が実現した場合に、寄付したい「ふるさと」が2か所あった場合、両方に寄付することは可能でしょうか。 (問)納税者が自分の意思を反映させることができる「ふるさと納税」は画期的な制度だと思います。このほかにもそのような例があるのでしょうか。。 (問)ふるさと納税が導入された場合に、どの県が多く集められるかということについて、それは北海道と沖縄県だろうという結論になりました。両県とも観光地として有名だからです。知事は、よい施策をしているところが応援を受けるべきだというお考えでしたが、これについてはどう思いますか。 (問)地域を二分するような選挙が行われた場合に、選挙に負けた方が、ふるさと納税を濫用し自分の市に個人住民税を納めないということが起こらないとも限らないが、これについてはどうでしょうか。 (問)ふるさと納税は納税者に選択権を与えるものなので、一方の地方自治体はふるさと意識を醸成させることが必要だと思いますが、そのための施策としてどのようなことを考えていますか。 |
お問い合わせ先
(地図・アクセス)
受付時間 月曜日から金曜日 8時30分から17時15分(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)