ハンブルク大学における知事講話

最終更新日 2010年2月4日ページID 009836

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 このページは、平成21年10月12日(月)にドイツのハンブルク大学で行われた知事講話をまとめたものです。

211012講演写真1 みなさんこんにちは。私は福井県知事の西川一誠といいます。
 本当は「いっせい」という名前ではないのです。「一(いち)」に「誠(まこと)」で「かずみ」という名前ですが、選挙のときに選挙用の名前として音読みで「いっせい」という読み方の名前のほうが通っていて、選挙には分かりやすいのではないか、ということで「いっせい」になったわけです。

 日本の地方自治制度では、知事は直接の選挙制度であり、4年間県民の直接の審判・選挙を受けます。私は現在2期目の途中でありまして、知事をやりましてから6年目半になります。

 今日は、先ほどフィッシャー副総長、またクヴェンツァー教授といろんなお話をいたしました。俳句など日本の文化について話をしてはどうかということでしたので、俳句の資料を皆さんのお手元に配らせていただきました。

 皆さんと福井県との関係は、皆さん方をご指導しておられる宮崎先生のお母さんが福井県の出身であること、それからサクラコさんが9月まで福井大学で勉強され、帰国する前に、福井県を宣伝してもらう「福井県友好大使」になっていただいたことがあります。みなさんが日本にお見えになる時には、ぜひ福井県にお越しください。

 リクルート調査によると、福井県は、日本でも最も食べ物の美味しい県とランク付けています。魚・カニ・ウニ・エビなど、地元でとれる新鮮な海の幸が美味しいです。特に11月からのカニがうまいです。一番高いですけれども、そこにもかいてあると思いますがカニがうまいです。

 それから日本の美味しいお米の代表であるコシヒカリという名前のお米がありますが、これは福井県で発明されたお米です。コシヒカリの「こし」というのは越前の「越(えつ)」という字をとり、「越前のひかり」というものです。

 また、日本では小学生あるいは中学生、年齢で言うと6歳から15歳までの子ども達の学力がどの程度であるかを確認するために、学力テストをやっています。全生徒にやります。小学生は6年生、中学生は3年生に年一回やります。この調査で福井県は全国で特に中学生がナンバー1、小学生がナンバー2、平均するとナンバー1かなと思います。

 それから文部科学省では体力テストというのをやっています。かけっことかボール投げ、幅跳び、けんすい。これは全生徒を対象にやるのですが、福井県の子どもは日本一記録がよかったわけで、学力体力とも優れた県であるということになります。皆さんもだいぶ大人ですけれども、ぜひ福井県に勉強に来てほしいと思います。

 文化的にもすばらしい福井の施設といいましょうか。永平寺の禅とか、俳句、スキーもできますし、海水浴もできます。それから恐竜の骨格ですね、今、日本一たくさんとれる県です。世界3大恐竜博物館が福井県にあります。

 皆さんがどの程度ご存知か知りませんが、日本では本を出版するときにハードカバーの大きい方のサイズがあります。それから文庫、レクラムとか。そういうものとその中間くらいの大きさで新書というのがあります。私は最近「岩波」という書店から新書を出しました。それは「ふるさとの発想」といいます。「ハイマートをみんなで盛り上げていこう」という本です。これは気持ちだけではなくて地方自治制度、さまざまな運動、あるいは日本の国土計画、こういうものを見直して、東京や大阪から「あそこはちょっとおかしいから直そう」という発想ではなく、どこも同じだと思いますが、ハンザ同盟のハンブルクから、ここから大学を良くしていこう、あるいは街を良くしていこう、東京からではない、あるいはベルリンではないという、そういう発想です。そういうことを書いた本を出しました。今日は全員分を持って来れなかったのですが、先生にお渡ししたので、ぜひ読んでいただければありがたいと思います。

 出版社からはわかりやすい、外国人でも読める日本語で書けといわれましたのでそのように書いてありますから、勉強のために翻訳していただくと有難いと思います。いい日本語の勉強になるのではないかとそんなふうに思います。

 今日は俳句の話をしたいと思いますが、それは私がホームページで出しているものでありまして、俳句というのは環境とかみ合うというような事がここに書いてあります。知事になり忙しいので俳句はあまり作りませんが、みなさんぜひ俳句を作ってください。俳句は名詞の単語中心の文芸ですから、これはいい日本語の勉強になると思います。

 ふるさとの話をしましたが、日本ではふるさとを盛り上げるにはどうしたらいいか、みんなで活動する、団体をつくる、イベントなどで頑張るということがありますけれども、最も文化的に重要なのは自分達の住んでいる地域をそれぞれの人たちが、ハンブルグの市民はハンブルグ、そしてドレスデンの市民はドレスデンを褒めることです。俳句は自分達の住んでいる町や地域の自然、生活、そういうものを詩によって褒めるものです。そして自然を褒めるわけですから、当然環境が良くならなければなりませんし、環境に注意しなければなりません。ですから環境派だということが、こちらのペーパーに書いてあります。

 いろいろ詩が書いてありますが、これは私がつくった俳句です。これは自分で言うのはなんですが、新聞に投稿して入選した句ですから、一定のチェックが入っています。日本語としてはあまりおかしくない俳句だと思います。

 俳句を使うということがなぜいいかというと、俳句はあまり動詞を使いません。名詞が中心です。ものの名前をどんどん並べて、イメージで、シンボルで詠う詩でありますから、できるだけ動詞を使って説明をしようとしない。初めて日本語を勉強するときにあまり動詞でああだこうだという説明は難しいですね。ですからまず名詞を使って勉強するのがいいと思います。

 折角なのでひとつだけ私の句の例を挙げます。右から二つ目の句ですね。とんぼはLibelle、「リベレ」。赤いとんぼですから「ローテリベレ」ですかね。「赤とんぼは黄色い田のその上にばかり飛んでいる」という詩です。「黄色い田んぼの上にばかり」いる。景色を見ると赤とんぼがたくさん飛んでいる。そのとんぼは、コシヒカリが実っているこの黄色い田んぼの上だけ飛んでいると、いう詩です。

 なぜ黄色い田んぼの上ばかりを飛んでいるか。なぜでしょうか。科学の目で見ると、そこの田の上には虫がいてエサがあるからです。しかし俳句はエサがあるから黄色い田んぼの上に飛んでいるという説明をするものではなくて、目で眺めた印象として、赤とんぼは黄色い田んぼの上にいる、という詩なんです。

 そして詩の価値として重要なのは、赤と黄色のとらえ方ですね。赤と黄色のそのコントラストといいますか、これによって短い言葉ではありますが、印象をはっきり、景色をはっきりこの言葉で話すということです。

 ドイツ語の母国語でありますと、言葉の数を日本語の言葉の数とみなさんの母国語のシラブル、「拍」というんでしょうか、それが違いますので、作りにくいかもしれませんが、ぜひ日本語の勉強をしてもらいたいと思います。211012講演写真2

 それから、ゲーテの野ばらの「アウフ・デル・ハイデン」という言い方をすると、日本語では「ア・ウ・フ・デ・ル・ハ・イ・デ・ン」という音の数の多い言い方になってしまいますが、そういう違いを気にして詩を作っていただくといい詩ができると思います。特にシンボルですね。シンボル化。ドイツのシンボルの学者、カッシーラー先生はそのことを唱えました。(カッシーラー先生はハンブルク大学の学長をしたという学生の声あり)

 ちょうど偶然にシンボルで私の話と皆さんの大学の共通点が発見されました。俳句も含めて詩歌はシンボルを使って詩を詠うものであります。言葉のシンボルです。ですからシンボルを使って日本語を勉強していただければありがたいと思います。

 これで私のお話を終わります。どうもありがとうございました。

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