第63回福井県小学校長学校運営研究大会での講話

最終更新日 2011年5月11日ページID 014617

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 このページは、平成23年5月11日(水)にあわら温泉「清風荘」で行なわれた、第63回福井県小学校長学校運営研究大会での知事講話をまとめたものです。

 今日は小学校の校長先生の研修会の場にお招きいただき、ありがとうございます。230511画像1

 連休前の4月30日、5月1日に被災地に行って参りました。4月30日には、陸前高田市に入り、市長にお会いしました。市役所はなく、事務所横の空き地にユニット型のプレハブが建てられ、その中に土木部とか教育委員会、住民課があるという厳しい状況下でした。次の日は福島県に行き、知事とお会いしました。福島はまだ福島第一原発の事故も収束しておらず、避難中の人がおられますし、様々な風評もあり、対策本部で話している間でも余震が起きる、そういう大変な状況でした。

 子どもたちの死亡・行方不明の数は、岩手・宮城・福島の3県で約540名であり、被災地からは、小中学生が88名、高校生を合わせると約100名の子どもたちが福井に来て勉強をしています。

 そこで感じたのは、つながりが極めて大事だということです。「つながりの力」、「ふるさと」あるいは「希望」というのが基本的なキーワードです。これは、マニフェストにも、私の「『ふるさと』の発想」の本の中にも書いてあります。

 今回の大津波では、早く逃げた子どもたちが助かっています。だれかに頼っているわけにはいきませんので、早く逃げないといけないのです。そのため、子どもたちの意識付けが必要になります。

 例えば、皆さんの学校の校庭あるいは校門のところでもいいのですが、海抜何メートルあるのかを意識してみてほしいです。また、海岸からどれくらいの遠さか。日頃数字としてはわかっていない。例えば、校庭の高さってどうやって測るのでしょうか。子どもたちといっしょに考えてみるのもおもしろいと思います。

 校長が子どもたちを守らなければなりません。我々もこれから市や町と協働して防災計画を策定します。皆さん自身も学校としてお考えください。他にいいアイディアがあるかもしれない、そんなことを思いました。

 話を学校に戻しますが、「子どもの学校は福井で」というのが今回のマニフェスト「福井新々元気宣言」のスローガンです。福井県の小中学生の学力は4年連続、体力は3年連続で全国トップレベルです。これは皆さんの長年の努力のおかげだと思います。

 今年は茨城県からお二人の先生が1年間の研修に福井に来ていただいています。1年間勉強ということですが、福井が全国の教育のモデルになる、日本の学校となることを目指したいと思うのです。全国からたくさんの先生が来るのは大変ですし、先生の負担にもなるかもしれませんが、やり方はあります。いろいろな方法を講じて、日本のリーダー役になるよう、それぞれの学校あるいは教育委員会として進めるというのが大事だと思います。皆様も何年か校長をおやりになるわけですから、あのときやっておけばよかったのに、と退職するときに思うことがないようにお願いします。

 本県の小中学生は、現状として学力・体力は高いですが、課題がないわけではありません。一つは不登校の出現率が全国平均ぐらいだということです。小学校は全国平均より出現率が高いので、ここをうまくクリアしなければなりません。厳密にやっているせいかもしれませんが、不登校対策は大事かと思います。

 また、いろいろな質問の仕方、答え方で案があるかもしれませんが、「希望を持っている」と聞かれて「持っている」と答える子どもたちの割合も全国平均ぐらいであり、高い水準にある学力・体力と合わないのです。希望を持つ子どもの割合はもう少し高くてもいいかと思います。子どもたちの心構えの問題ですね。心と学力と体力がうまく合わないといけないというのが2つめの課題です。

 そこで、今回、幼児教育を充実していきます。幼稚園の先生、保育士のトレーニング、ご父兄の教育、それから教育・保育内容の見直しなどを考えています。それから三つ子の魂、心の教育です。そのため幼児教育センターを福井県にと考えております。そして、心の教育を十分に行いながら、あるいは小さいころから必要なことを教えながら、小学校につなげていくことを考えています。この幼児教育センターについては、具体的な中身はこれからでありますが、今の教育センターや福井大学の大学院とも十分な連携が必要だと思っています。

 ところで、これは冒頭申し上げなければいけませんでしたが、小学校の校長というのは、中学、高校に比べて、子どもたちと最も年の離れた大人だということなのです。校長はよほどこの点を気をつけないと、子どもたちから離れます。そのギャップをうまく埋めて学校運営をしないといけません。むしろ、子どもに直接より、先生を指導することが大事です。

 それから、もう一つの福井県の課題として読書があります。学習状況調査では、本を読む時間が福井県の子どもは短いという統計も出ています。あまり小学生から本を読んでいいのかというのはありますが、本を読んで気持ちを考えたり、行動したりすることは大事だと思います。それをいかにうまく現場でやっていくかですね。そのためには、福井県も市や町も、図書館などが充実していますから、そういう公共的なものを使いながら学習することが大事だと思っています。

 マニフェストにも書きましたが、体験学習やふるさと教育は重要だと考えています。自分たちの住んでいる場所が、どういう歴史や意味があるのか、あるいはあったか、どういう場所だったのかということですね。それから体験が重要だと思うのです。

 小学生の子どもたちは、歴史ってどういうものかほとんど分からないと思います。事柄がずっと出てきているだけのものでは歴史という概念が非常にわかりにくいのでうまくやってほしいと思います。そのためには、学校の教材の工夫が大切だと思います。

 学校にはいろいろな教材がありますが、教科書、副読本、あるいはそれを教える教え方について、コンピュータを使ったホームページ的なもので、先生方の様々なアイディアを出し合って、ある単元的な電池とか、かけ算とか、また、小学校英語教育なら、こんな工夫をして、こんな教え方がいいというようなフォーラムのようなものを福井県で作ってみようと教育委員会と検討をしています。先生方が工夫して行った教材を共有化するのです。

 たとえば、先ほどの災害など原子力の問題がありますが、エネルギー教育は重要です。これは何年生で教えるのか分かりませんが、教え方は難しいと思います。また、子どもが興味を持つようにどのように教えるかなどを、フォーラムを使って具体化をする。そしていろいろな教材を活用して、先生方が子どもたちに対しておもしろい授業ができるようにしたいのです。

 私は気象通報を聞くのが好きです。だいたい夜の10時の定時のものは夕方6時現在の気象情報が入ります。石垣島から始まります。「石垣島では風力3・・・」から、日本を北上して、ロシアへ行って、中国へ行って、最後どこに行くと思います?最後は富士山なのです。あれを聞いていると容易に気持ちよくなるのですが、子どもたちに、例えば、地理とか天気とかそういうものを教えるときに、地図はどういう苦労をして作られたのか、気象通報を聞かせて天気図をつくるとか、はどうでしょうか。

 あの雲は何の雲とか聞くのもいいです。雲は10種類くらいあるのですが、みんなに名前が付いているのです。普通は入道雲とうろこ雲ぐらいしか名前が分からないと思いますが、みんなそれぞれに身近な名前があります。

 本当の意味やみなもとを教える教育をもっともっと福井県の子どもたちにしていただくと、小学校の教育が中学校に生かされ、あるいは高校の進学や職業教育に生きてくると思います。

 残念ですが、小中学校の学力・体力が、高校を卒業した時に100パーセント生かされていません。これは高校の校長の責任だと言うのは易しいが、やはりそれは小学校での教え方、学力は高いが、深い教え方がもっとあるとよいのかもしれないのです。そこを是非、小学校で先生方にやってもらいたいのです。校長として、皆さんの学校の担任の先生を叱咤激励して活力を上げてほしいのです。

 小学校教育はわりと初級ですから、やさしいと思いますが、易しいから簡単ではないと思います。中学校、高校、あるいは大人に通じるような何かを教えていってほしいのです。

 しかし、皆さんの学校の子どもの半分ぐらいは自分の家に田んぼがあるはずなのです。でも子どもたちがそこでお父さんお母さんたちといっしょに田植えをしているかというと、していないと思います。

 そうではなく、自分の田んぼで田植えをするので、せっかくだから田んぼのない友達も一緒にやろうとか、そういう身近なことなのです。そういう身近なところからいろんな物事を進めていくことが大切なのです。こういうことは福井ではできます。
 
 これまでの話をまとめますと、1つは、小学校の役割として、これから幼児教育といかに結びつけていくか、連携をしてほしい。そのため、我々は幼児教育センターを設置しますが、皆さんも小学校の立場で幼児教育に接近をしてほしい。

 2つ目は、中学校や高校の教育のためには、小学校において、子どもたちの意欲とか探求心とか、そういう力をもっともっとつけてほしい。表面上の学力・体力だけでなく、高校や社会人や大学生になってもっと伸びるように、小学校からの根っこを培う教育をしてもらいたい。

 3つ目は校長です。子どもたちとかけ離れている立場であることを注視していただいて、まず、先生に対し、それぞれ役割があると思いますので、一生懸命おもしろい教育ができるように、我々もそのための場を提供するので、いろんな情報をどんどん出して実践してほしいのです。

 もっと体系的な話は、私のホームページを見てください。皆さんで役立てそうなところは10カ所ぐらいあると思いますので、それをお使いいただいて、限られた校長の期間ですから、是非とも生かしてください。逡巡すると、あるいは迷うと、あっという間に3学期になってしまいます。これだと思ったら、失敗をおそれず思い切りやってほしいものです。
 

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