内外情勢調査会知事講演~ふるさとに夢と希望そしてもっと活力を~

最終更新日 2011年7月29日ページID 016040

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 このページは、平成23年7月29日(金)にユアーズホテルフクイで行なわれた、内外情勢調査会の「ふるさとに夢と希望そしてもっと活力を」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

 今日は、内外情勢調査会の講演ということであります。1時間ばかりお話を申し上げる機会を得ましてありがとうございます。講演

 今日は、大きく分けまして2つのテーマで話をします。1つは、東日本大震災に関連した考え方です。ここでは、2つの点についてお話します。1点目は、大震災や福島の事故を受けた対応とエネルギー政策について、2点目は、大震災の教訓を踏まえた日本の国土政策についてです。この2つが大きな震災のテーマです。

 大きなもう1つは、今回のマニフェスト、「福井新々元気宣言」の中身について、主だったところをいくつか申し上げます。


1 東日本大震災と福島第一原発事故を受けて
 最初に、東日本大震災とこれに関連する問題、エネルギー政策あるいは国土政策について申し上げます。
 これについては、既にいろんな機会に申し上げていますので、皆様方には、断片的にお話をお聞きいただいているかと思いますが、今回まとめてお話しすることによって、ご理解が深まればと考えています。

 (福島県からの被災者の受入れ)
 まず、先ほど、福島県から17家族42名の方が、バスで県庁にお見えになりました。県では、被災地からのコミュニティ単位での受入れを支援しており、福井市西部の殿下地区で、9日間のショートステイを行うため、福井にお越しいただいたものです。
 福島から来られたお母さん方にお話をお聞きしたところ、原子力発電所や放射能のことを考えなくて済む福井で、気分を晴れやかにして過ごせるのは何よりもいいですということでした。また、子どもたちはほとんど室内で生活をさせており、外へ出すのも1時間ぐらいで、プールは使っていない、運動もあまりできないということでありました。ぜひ、福井で気分転換といいますか、リラックスしていただきたいと思います。
 今回の災害についてはさまざまな課題がございます。普通の庶民の生活、例えば子どもを育てる、あるいは、おいしいものを食べるといった、基本的なことに支障が生ずるような政治をしてはいけません。我が福井県ではそういうことを絶対起こさせないように進めてまいりたいと思います。

(1)原子力事故への対応と今後のエネルギー政策
 (今回の事故に関する問題点)
 さて、今回の原子力の事故に関する問題について申し上げます。
 まず、今回の原発に対する国の対応の一貫性のなさが、基本的な問題であると思います。
 1つ目は、浜岡原子力発電所について、突然停止要請をした点です。浜岡原発のみを停止し、全国の他の原発が安全だとしている、この点のしっかりした判断や説明がありません。国は、東海・東南海地震の危険性、すなわち30年以内にマグニチュード8程度の地震が起きる確率が87%という数字をもとにしたとのことであります。確かに地震が起きる可能性は高いのかもしれませんが、福島県の原発についての可能性はほとんどゼロ%という数字が出ていましたから、そもそもそういうデータに信憑性があるのかは問題だと思います。
 2点目は、佐賀県の町長あるいは知事が国や電力事業者といろんな議論している中、突如、ストレステストというようなことを持ち出して、再開を棚上げにしたことです。これには、国の中で統一のとれない見解を突然出してきたという問題があると思います。
 それから、3つ目は、菅総理大臣(当時)が、将来は原発のない社会を実現するという、いわゆる脱原発的な発言をし、後日、これは個人の見解であると述べられた点です。政府の考えでないようなものをわざわざ公にすることによる社会的な影響、これを考える必要があります。原子力立地県あるいは国民への説得ということを考えますと、もっとしっかりした考え方と立場が必要です。

 (本県の一貫した対応)
 3月11日の原子力発電所の事故以来、国の対応に対し福井県では、一貫した主張をしてきております。県内の各報道機関をはじめ、日本記者クラブや「ウォールストリートジャーナル」等に配信しているダウ・ジョーンズ社、「ビジネスウィーク」誌を発行しているブルームバーグ社など、県外、国外のメディアにも我々の考えを発信してまいりました。
 そして、国にも再三再四、福島の事故の知見を反映した安全基準の設定などについて要請をしておりますが、まだ具体的な回答がなされていないという非常に残念な状況にあります。こうしたことがさまざまな問題を起こしていると、私は思っています。

 (安全基準の設定と方針の明確化)
 福井県の考え方は、おおむね、次のとおりです。
 1つは、まず、福島第一原子力発電所の事故について、これまでに分かっている原因をもとに、停止している原子力発電所を再開するかどうかの判断をするための基準をつくる際の参考にすべきということです。もう5カ月近くたっておりますが、依然として何かよく分かりません。早急にはっきりさせなければならないと思います。
 そしてその上で、これから半年間あるいは1年間、それぞれ状況が動いていくと思いますから、必要なものを加えていくことが重要です。原子力発電所は13か月運転しますと、定期検査に入るのですが、再稼働の見込みのないまま、どんどん定期検査のため運転を停止するという状態になっています。
 また、中期的あるいは短期的な方針を明瞭にすべきです。
 特に中期的な方針としましては、原子力発電所で申し上げますと、例えば発電装置です。外部電源という表現がよく言われましたが、その強化をいつから始めて、いつ完了するというようなことを明示すべきです。
 長期的には、例えば、三陸沖の大地震がありましたが、日本海側あるいは若狭湾では、そうした津波の発生確率は本当に今のままでよいのか、もう一度チェックをして、それを、例えば2年なら2年、3年なら3年の中で明らかにするということを示すべきです。
 すなわち、当面の方針、中期の方針、長期の方針をセットで明らかにすべきだと思います。
 その中で、特に福井県には40年を超える原子力発電所があります。いわゆる高経年化の問題でありまして、これらの年数を経過した発電所に対する影響を、今回の事故を踏まえて整理をすべきだと申し上げております。これをできるだけ早く明らかにすることが原子力発電所の再起動、そしてより安全な原子力発電所をつくる第一歩になるはずです。

 (地域防災計画の見直し)
 もう1つは、地域防災計画を作り直さなければならないと思います。
 地域防災計画というのは、災害対策基本法という法律があり、国、県、市町がそれぞれのレベルで計画を作る必要があります。また、企業の皆さんも企業の行動計画を作るようなシステムになっております。
 計画の見直しに当たっては、先ほどの原子力の問題や、津波、地震などに対する対応が必要です。
 もちろん、国も防災計画を見直すために、今、調査が始まっていますが、我が福井県としてはそれを待つわけにはいきません。国はどれぐらい時間がかかるのか分かりませんので、福井県では国に先行して見直しの作業をスタートさせました。
 そして、市町も並行してやっていただくことになると思います。県の計画を参考にしていただくようになると思います。
 この地域防災計画は、昭和30年代の伊勢湾台風のときに基本法ができ、阪神大震災の際の改正もあり、現在の仕組みができ上がったのです。中身は随分変わっていますが、今でも基本的な枠組みは続いております。
 福井県としては、5月12日に原子力防災計画見直し、さらには7月21日に地域防災計画見直しの検討委員会を設置しまして、避難方法や避難訓練の計画の見直しを始めています。
 この際、特に重要なのは、EPZといいまして、原子力の防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲の設定をどうするかということです。真っ先にそれを決めるわけにはいきませんが、いろんな考え方を入れながら、最終的にはその設定をしなければなりません。基本的にはこれまでよりその範囲が大きくなるのではないかと思います。ただ単純に20キロだとか30キロではなく、対策の内容によって区分しなければならないと思います。例えば、情報をどこまで提供するのかというのが、一番広い範囲になると思いますし、モニタリングポストなどの施設をどこまで置くかというと、少し狭くなるかもしれません。
 具体的に避難をどうするかについては、もう少し狭いエリアで考えることになるかもしれませんが、これらは、一つのイメージであって、単純にはいかないわけです。
 また、風向きとか天候によってさまざま変わりますので、SPEEDI(スピーディ)という情報システムを応用して、どのような対応を情報として出していくかを決めていく必要があります。
 これには、福井県、福井県内の原発立地市町、あるいは福井県周辺の県などとの関係がいろいろ複雑に出ますので、細心の注意を持ってその対応をしなければなりません。
 それから、津波の問題です。これは先ほど長期的な課題になるかもしれないということを申し上げました。いま現状の計画で、2.5メートルの津波が来たときに逃げる段取りが必ずしもできていないので、まずそのときの対応を決めなければなりません。どこへどうやって避難するのかを、実際にやってみなければならないと思います。このようなことを計画の中で進めているところであり、市町では具体的にこの検討をほぼ終えつつあったり、あるいは訓練に生かそうとしています。
 もう1つは、避難する場合の道路です。福井県の場合には、若狭湾の半島地域に多いので、その避難をどうするかという議論であります。今回の福島の事故でよく分かりましたが、避難のための道を整備するというときに、原子力のプラントの万が一の制御、拡大制圧のためのいろんな機材とか車両を運ぶ道路がまず必要です。もちろん避難にも使われるかもしれません。先程は安全の話をしましたが、防災・制圧道を整備することが、原子力発電所を動かす場合のハード面でのもう1つの条件です。
 そして、道を整備すると同時に、さらに、万が一のときには、海上自衛隊、海上保安庁などの海と一部空からの救助システムを用意しておかなければならないと思います。どういうことが起こるかわかりませんし、原発事故以外にもいろんなことが考えられます。特に若狭湾地域は、集落ごとに土砂崩れなどが起きますと、孤立をしてしまうことが多いのです。海からの救助というのが課題です。
 そのほか、食べ物、健康調査など、あらゆる問題が出てきていますから、機器の整備、システム、検査体制、広報体制、企業との連携などについても具体的に進めていかなければなりません。そして、安全の確保に加え、風評とか、企業への影響がないようにシステムを工夫して作っていくということが大事だと思っております。

 (脱原発等の議論に対する考え方)
 脱原発、縮原発、卒原発など、いろんな言葉が最近はやっています。言葉だけではいけないのでありまして、いろいろ注意をしなければなりません。
 関西電力管内の例を申し上げますと、平常時には約2,000万人の消費する電力の55%を嶺南地域の原子力発電所が供給してきましたが、今回の事故によりましてその割合が半分以下に落ちております。今まで止まっていた火力発電所を動かすなどして対応しており、原発は、4基、5基が動いている状況でありまして、こんなことを長く続けられるわけではありません。CO₂の問題もあります。
 電気は、家庭用が大体35%、それから産業用が38%、業務用が23%、あとは小口の利用者という状況です。それぞれ節電をしましても、特に企業などについてはそう簡単にはいかないと思います。
 脱原発などという考えに対して大事なことは、原子力発電所だけを議論していてはいけないのです。電力あるいはエネルギー供給は、さまざま制約があるわけですから、それを全体として、国民にも納得をしていただくと同時に、科学的にも概ね理解できる方向でなければなりません。脱原発だけの議論でスケジュールを立てるのはナンセンスな発想でありますが、今、そういう傾向があるように思われてなりません。
 エネルギーにはコストがかかるわけです。天然ガスや石油は、全部、外国から買っているのですから、そのお金は、外国に払うことになりますし、かつ電気料金にも跳ね返ります。
 そして、エネルギーを外国に依存する割合がますます高くなる。こうしたことをどのように考えていくのか、大事なファクターだと思います。

 (エネルギーの多角化)
 今回の教訓を生かしながら原子力の安全を強化し、これを今後の原子力エネルギーの教訓として生かさなければなりません。同時に、新しいエネルギーの開発を積極的に行うということを申し述べているところです。エネルギーの多元化、原子力への過度の依存を変えていくことを今、地元とも協力しながら進めたいと思います。
 特に、電力会社など、福井県に関連します原子力の企業の皆様とも十分に議論し、新しい電気・エネルギーの供給についても相談していく必要があると思います。
 原子力事業者にも、国の政治に翻弄されないよう、企業の立場で主張すべきところはしっかり主張していただいて、日本のエネルギー供給をどうやっていくのかということを、我々と一緒にお考えいただきたいと思います。

 (クールライフプロジェクトの実施と被災地応援)
 福井県は電力を供給している県ですが、自由勝手気ままに使っていいわけでは決してありません。やはり無駄なことはしてはいけないと思います。
 福井県では7月1日から9月30日まで、「クールライフプロジェクト」を実施しています。熱中症にかかってはいけませんので我慢するのではなく、楽しみながら節電しようというものです。これには、「昼涼みプロジェクト」、「オフィス・シエスタプロジェクト」、「地域・縁側プロジェクト」があります。
 「昼涼みプロジェクト」は、個々のご家庭ではエアコンなどの消費電力量が半分以上を占めますので、ピークの時間帯にはみんなで家の電源を切り、ショッピングセンターで買い物をしていただく、あるいは公共施設、図書館などで涼んでもらう。一方お店では、冷たい飲み物をサービスいただくなど、いろんな工夫をするものです。
 二つ目の「オフィス・シエスタプロジェクト」は、お昼に電灯やコピー機などを切る、エアコンなどの運転開始時間を遅らせる、また、暑いときには一つの部屋に集まって会議をして、未使用の部屋の電気を切るというものです。アイデア次第でいろんな工夫ができると思います。
 三つ目の「地域・縁側プロジェクト」は、それぞれのご家庭やご近所などで打ち水や夕涼みなど工夫をしながら、節電いただくものです。
 このような新しい方法を県内各地で実行しており、県内外のマスコミの注目を集めているところです。福井県のように楽しみながら節電をする活動を関西の県でも始めたところもいくつかあるようです。
 なお、この問題から関連いたしまして、福井県は、大都市あるいは東北地方の都道府県を除いて、被災地に最も多くのボランティアを派遣しているほか、県職員や技術者も派遣しているなど、一生懸命被災地を応援しています。

(2)震災を踏まえた日本の国土政策
 今回の災害で大事なことは、太平洋側沿岸に人口、産業が過度に集中していることの問題点を検討し、改善することだと思います。
 これから東海地方の大地震、あるいは東京直下型地震が起きる可能性が高いと思われます。人や経済・行政機能等が過度に集中している東京で災害が発生した際の影響は、今回の東北地方の比ではありません。もっともっと厳しい環境に置かれると思います。日本全体の方向性が危うくなるというようなことも考えられますので、地方、特に日本海側にも国土軸を整備することが政治に課せられた大事な教訓であると考えており、政府に対して主張をしているところであります。
 大阪に副都心を置こうという主張がありますが、二大都市だけの問題ではなく、また大阪は太平洋側でありますから、問題の解決にはなりません。
 特に、東海地方のプレート型の大地震、津波などが起こりますと、そこには東海道新幹線や道路が海岸近くを通っているわけですから、何が起こるかというのは想像にかたくありません。
 日本海側の優れた潜在能力を生かすことがぜひとも必要ではないかと思います。北陸新幹線などはますます重要な鉄道ですし、高速道路にしましても、近畿自動車道敦賀線は3年後には敦賀まで完成します。中部縦貫自動車道なども整備を急ぐ必要があると思います。
 敦賀港については、7月中に日本海側拠点港としてエントリーをしたいと思います。昨年就航した国際RORO船によりコンテナ取扱量が大幅に増加するなど、敦賀港は頑張っていまして、中京あるいは阪神とも近い場所でありますから、アジアの時代において、大いに盛り上げていくことをねらっております。

 以上、今回の大震災を踏まえての防災対策と国土政策の2点について申し上げました。福井県は両方に極めて密接に、かつシビアにかかわる地域です。厳しい課題ですが、皆さんからご意見を頂きながら努力していきます。

2 3期目の施策の考え方
次に、マニフェストに従いまして、いくつかお話したいと思います。

(1)活力ある産業の育成
 まず、今回のマニフェスト「福井新々元気宣言」では「元気な産業」を冒頭に掲げ、県民生活の基本となる経済・産業、雇用に関する政策を重点に考えています。
 昨年12月におおむね10年後の姿として「福井県民の将来ビジョン」をまとめました。この中で経済成長を続けるアジアとの関係を深め、産業や観光などの分野で共に発展する姿を描きました。
 福井新々元気宣言でも、グローバリゼーションへの対応、特に中国との経済関係を重視しています。

 (アジア市場への進出の支援)
 産業分野では、アジア市場への進出に対する支援について、幾つか取り上げてまいります。
 1つは、中国などを中心に、ビジネスをサポートするための組織を強化します。
 今、県上海事務所では、スタッフ2人でアテンドや相談などを行っています。今回、福井銀行などの強力な応援をいただきながら、4名に強化します。また、現地の金融機関に派遣されている県職員とも連携をとります。そして、上海や香港だけでなく、福井商工会議所に、貿易促進プラザという県内での応援組織を設置します。中国のみならず、ベトナム、タイなどについても市場調査やセミナーなどを行い、県内企業の海外展開を支援してまいりたいと思っております。(注:福井商工会議所内の「ふくい貿易促進プラザ」は9月5日に、県上海事務所内のサポートセンターは11月1日に開設)

 同時に、県立大学の地域経済研究所にアジア経済部門を設けたいと思います。商売には調査とか研究が必要でありまして、無手勝流でやるわけにはいきませんので、県産品のニーズなどに関する調査・分析を行いながら、アジアへの企業進出、貿易の促進につながるよう努力をしてまいりたいと思います。
 それから、中小企業についてもグローバリゼーションの影響があります。こうした中小企業に対しても応援をするため、金融機関のご協力を得ながら、100億円のファンドを設けます。これは、金融機関から10年間にわたって、無利子で80億円の資金提供をいただき、これに福井県が20億円を継ぎ足して、100億円のファンドを作るものです。年間1億円前後の運用益を使って、経営の多角化や事業転換の応援をしたり、理系大学院生に就学資金を貸与して、県内企業に就職した場合に免除するなど、企業と人材の両方から応援したいと思っております。

 (アジア観光プロモーション)
 観光につきましては、特にアジアが重要ですが、残念ながら、福井県は石川県や富山県より遅れをとっております。アジアからのお客様は、石川県が16万人、富山が8万人に対し、福井県は2万人しかいないんです。これを4年後には10万人ぐらいにしたいと思います。台湾などからの誘客、アジアを中心とした修学旅行の誘致、あるいは、藤野厳九郎先生は魯迅の恩師として中国のいろんな教科書に載っていますので、芦原温泉の丘の上にある藤野記念館を温泉街に再築するなど、さまざまな方法をとってまいりたいと思います。
 また、台湾では、大型高級スーパーマーケットにおいて、福井県の物産展を開催し、県産農林水産物の販売を促進するとともに、観光情報などを発信しています。
 今は、営業の時代であります。3年前に観光営業部をつくりましたので、企業の皆さんと行政等が手を携えてPRしていきたいと考えております。

 (ダントツ日本一ブランドの「恐竜王国」)
 恐竜は、非常に大きなブランドになりつつありますので、大いに生かしてまいりたいと思います。
 ちょうど夏休みの期間ですが、恐竜博物館では、モンタナ州のロッキー博物館と連携しまして、特別展「新説 恐竜の成長」を開催しています。肉食恐竜ティラノサウルスの世界最大の頭の骨の実物などを展示しております。

 恐竜は、研究成果と本物の骨がどれだけあるかが基本になります。研究を深めて成果を紹介することで入館者を増加させ、入場料をためて、本物の骨格を取り寄せていくことが大事だと理解しています。今後、アジアの恐竜学会を恐竜博物館が中心になってつくっていこうと思います。
 子どものうちは男の子に恐竜ファンが多いようですが、大人になると意外と女性に恐竜の好きな人が多いんですね。有名タレントや小説家に恐竜とか竜が大好きな方がおられます。そういう恐竜ファンの女性と男の子、両にらみでファンをたくさんつくっていくのもおもしろいんじゃないかと思っております。

 (もてなしの向上)
 観光全体につきましては、もてなしが大事であり、よいもてなしを受けると満足度が上がります。
 今年のリクルートの調査では、旅行先の満足度における福井県の順位は、昨年の29位から18位に上がりました。まだ大したことはないという感じもありますが、うまいものが多かったという部門では、昨年の10位から5位に上がっております。5年前は1位だったのですけれども。いずれにしても、食べ物をはじめとしたもてなしが大事かなと思います。

 (福井米の品質向上とポストコシヒカリ)
 次に、農業ですが、米については、遅植えを進めております。福井県は兼業農家が多いところですので、5月の連休に苗を植えて、8月末には刈り取りをしてしまうことにより、手数がかからないようにしておりました。真夏の高温期に稲穂を成熟させるこれまでの方法では、おいしいお米はできにくいのです。そこで、コシヒカリについては、一昨年来、5月の連休の後に田植えを行い、9月の半ばぐらいに刈り取るという遅植えを奨励しております。おかげで、お米の食味の向上、大粒化が達成できました。昨年度は一等米の比率が約85%で、一等米の率が上がり、食味も6年ぶりにA評価を得ました。A評価の定着とさらに特Aを目指そうと、カントリーエレベータの中においしいお米とそうでないものを一緒にしないで、区別するようなシステムを導入していきたいと思います。
 次に、ポストコシヒカリといいまして、あと7年で次の新しいコシヒカリを開発したいと思います。農業試験場で、今年から着手しました。有望な品種を親に交配をして、いいものを取り出すのですが、最近では遺伝子分析技術も進んでおりますので、以前のように、10年とか15年はかからなくて済むようです。ぜひすばらしいコシヒカリの次を担う品種をつくり出していきたいと思います。
 これには、農業試験場の育種の専門家を研究開発期間中は異動させないで、新しいコシヒカリを作るプロジェクトに専念してもらう予定です。
 20万種の苗を植えて、この中から1万2千種をまず今年は選抜して、7年で完了し、成果を挙げることを考えております。
 今、福井県の農業の産出額は全体で450億円ですが、お米は、その大体3分の2の300億円ぐらいです。今後は、お米の品質の向上や、エコ農業を全般的に推進しながら、特に果物や野菜について、現在の120億円ぐらいから150億円ぐらいに伸ばそうと、さまざまな作物を工夫して育ててまいります。このほか、野菜、畜産など、できるだけ地産地消、そして6次産業化を図ってまいりたいと思います。

(2)時代をリードする人材の育成
 次に、教育、人材育成の話をします。
 経済が成長しているときには、人材はおそらく自然に育っていたのではないかと推測します。皆さんの企業も、調子の良い時は、特別な人材育成策を行わなくても、会社が成長する中で鍛えられたと思います。しかし、成長がとまり厳しい経営環境になると、意図的に人材を育成しなければ、よい社員は育たないのではないかと思うのです。
 そこで、子どもの学力・体力が日本一の福井県ですが、知事に就任以降、いろんな施策を進めてまいりました。おかげで数年前までは、水泳でいいますと、教育は頭1つリードしていたと思います。最近は、他の都道府県が頑張ってきており、ワンストローク差といいますか、油断大敵でありますので、さらにさまざまな工夫をしなければなりません。

 (日本の教育センター福井)
 工夫すべきことの1つは、先生が自らを鍛える努力をしなければ、子どもたちは決して伸びていかないということです。先生のトレーニング、研修に力を入れ、福井県を「先生の学校」にしたいと思っております。今年4月から1年間、茨城県の先生2名が福井県内の小・中学校で勉強をしています。茨城県は東日本大震災で被災され、大変な状況だったと思いますが、それにも増して人材養成は大事と判断され、福井に派遣されたようです。
 それから、先般、全国知事会議に行きましたら、三重県の知事から、「半年間、先生を福井へ研修に行かせたい」という話がありました。「よい話だから、ぜひ来てください」と申し上げました。最近では、大阪の小・中学校の体育の先生が、「学力・体力日本一」の「体力」の方を学ぼうと、数日間お越しいただいています。このように福井県が「先生の学校」になるようにしたいと思います。
 そのためには、福井県の先生自身が、どういった努力を行ってきた結果、学力・体力が日本一になったのかしっかり自覚し、その評価と成果を理解する、そして次に備えるということが大事ではないでしょうか。

 (「福井型18年教育」の推進)
 福井の教育を、次のステージに発展させる方法として、「福井型18年教育」をマニフェストに書きました。
 1つには、ゼロ歳から6歳までの幼児教育をもっと充実しなければなりません。保育士、幼稚園の先生の研修や、親たちへの啓発により、まず小学校に入るまでにしっかりとした、自分でできるだけできるような子どもを育てることを、幼児教育センターを設けて進めていきたいと思っています。そして、小中学校につなげていくことが重要です。
 「学力・体力日本一」というのは、あくまで小中学校の学力・体力です。高校は残念ながら日本一ではありません。センター試験の結果は6位ぐらいか7位ぐらいです。高校教育の水準引上げのてこ入れを行っていきたいと思います。
 大都市の中高一貫の進学校を考えますと、授業時間が十分とれますし、カリキュラムもある程度自由にできますので、個別に競い合うと負けそうです、実際もそうでしょう。私立のようなそういう工夫が福井県でも必要かもしれませんし、さらに大都市の子どもたちに引けをとらないためにも、教員の指導力の向上を図りたいと思います。
 特に、教材を共有するとか、ICT(情報通信技術)あるいはNHKの教育番組などを活用しながら指導力を強化したいと思います。

 (英語コミュニケーション能力の向上)
 もう1つは、英語のコミュニケーション能力を向上したいと思います。これは、普通系と職業系に共通の課題です。
 私は、1期目のマニフェストで、高校を卒業したら普通に日常会話はできるようにしたいと約束したのですが、まだそんな状況にはなっていないようです。受験英語は割合得意でセンター試験でのリスニングは日本一だとも言われていますが、意外としゃべれないということです。入試英語は聞こえても、易しい英語が聞こえない、しゃべれないということです。先程アジアの話をしましたが、会社に入っても、すぐに使えないと困ります。英語教育を徹底的に強化してまいりたいと思います。
 子どもの数に対して日本一多い外国語指導助手(ALT)には、もっと活躍いただくことが必要です。泊まり込みで英語漬けの生活を送る英語キャンプに加え、土曜スクールや語学研修のために高校生を外国に派遣することなどを行っていきます。
 また、TOEICを子どもだけでなく、先生にも受けてもらうとよいと思います。あるいは、英語教諭の採用試験の際の条件にするなど、いろんな方法が考えられると思います。

 (サイエンス教育の充実)
 本県出身の南部陽一郎先生を記念するサイエンス賞を設けたり、中・高校生が理科や数学の応用力や実験力を競う「ふくい理数グランプリ」を行うなど、サイエンス教育にも力を入れています。また、今年若狭高校がスーパーサイエンススクールに指定され、高志、武生、藤島に次いで、県内で4校目となりました。福井県としては、さらに理科教育、数学教育の充実を図ってまいりたいと思います。
 ちょっと脱線をしますが、高校の数学の授業を思い出してください。問題集の答えを皆さんは予めもらっていましたか。私は、先生が宿題を出すときに、詳しい答えを全部用意して渡したら良いと思っていますが、賛否両論があるようです。要するに数学教育の授業内容の革新をするということが大事です。答えを予め用意しておけば、もっと違うことを授業で教えられるのではないかと思っています。

 (文化・芸術体験の充実)
 さらに音楽につきましては、福井県はブラスバンド、管楽器が得意でありますし、クラブ活動も盛んです。ただ、管楽器だけでは音楽は十分完成しませんので、弦楽器奏者の育成を強化したいと思います。教え方や指導者に加え、楽器も高価であるといった難しい課題がありますが、学校でうまく教える方法を考えたいと思います。
 また、小学5年生全員に必ず1回は県立音楽堂でプロのオーケストラの演奏を体験してもらっています。このような本物の芸術・文化に触れる機会をさらに増やしていきたいと考えています。

 (若者のチャレンジを応援)
 若者に対する応援にも力を入れていきます。
 20代の若者は、平成12年には10万3,000人いましたが、平成20年には7万6,000人に減りまして、人口構成で1割を切ってしまいました。若者をこれまで政策の対象としてこなかったのではないかと思います。今後は、意図的に若者への応援をプロジェクトとして進めたいと思います。具体的には、イベントなどの企画の提案を募集したり、海外でのボランティア活動を応援したりすることを考えてまいります。

(3)県民のくらしの質の向上
 (がん対策の推進)
 医療・福祉の分野では、陽子線がん治療を今年から本格化しています。
 今年の3月からこれまでに、50人を超えるがん患者の治療が決定し、23人は既に治療を終えています。
 例えば、肺がんの手術を受けられた富山県の方は、10回の治療の際、毎回、富山からJRで午前中通院し、午後は地元に帰って仕事をしておられたということで、入院せずに治療できてよかったという話でした。ただ、他の治療法に比べてお金がかかりまして、20回の治療で240万円ほどかかります。まだ陽子線治療そのものは保険診療の対象になっているわけではありません。6月から、その前段階としての投薬、注射、入院料などについては厚労省から保険の対象として認められました。治療自体も保険対象になるように要望していきたいと考えております。
 そして、がんの検診の受診率を引き上げたいと思います。平成18年が21%、5年後の22年が、29%でありまして、まだまだ引き上げが必要だと思います。早い段階で見つかれば、陽子線がん治療の回数も少なくて済みますし、ほかの有効な治療法もあります。
 このため、今年から、電話によるがん検診受診勧奨を行います。健診の対象者に「がん検診を受けてください」という電話がかかります。選挙で言いますと、電話で「投票してください」と呼びかけることと似ています。こういう新しい方法を今回導入し、受診率のアップを目指します。

(4)「希望ふくい」のふるさとづくり
 (ふるさと希望指数)
 最後に、希望という話を申し上げたいと思います。
 私が主に提案をしまして、全国の田舎の11県の知事、青森、山形、石川、福井、山梨、長野、奈良、鳥取、島根、高知、熊本、こうした田舎といいましょうか、地方の知事同士でネットワークを作り、さまざまなプロジェクトを展開しています。その中で、新しい政策づくりを目指して、各県が連携した共同研究も行っています。各県1つのテーマをリーダーとして取りまとめるのですが、福井県は「ふるさと希望指数」というものを作り出すプロジェクトのリーダーを務めています。
 これまでの国民生活指標、いわゆる豊かさ指標では、福井県は日本一豊かだと言われておりますが、公園の面積、あるいは住宅の面積、図書館の蔵書数などの数字で、豊かさの程度を判断していたのです。福井県としてはそれだけでは満足ができませんので、現在の豊かさや満足度ではなく、よりよい将来を実現するための人々の行動に着目した新たな指標を作り出し、この夏に中間的な報告を出したいと思います。
 そのためにまず、約4000人を対象にアンケートを実施し、希望があると答えた人が重視する共通点を分析しました。その結果、希望を高める行動につながるものとして、仕事、家庭、健康、教育、地域交流の5分野からそれぞれ4つの項目、全体で20の要素を取り出しました。こういうものを参考にしながら、県では希望を高めるための施策を進め、また、皆さんのボランティア活動などの行動を起こす力にしたいと思っております。
 例えば、健康の維持に努めているとか、結婚して新しい家族を持っているとかいったものが希望と深くかかわるということが分かっております。この指標をもとに、将来の幸福度といいますか、希望を、各都道府県で高くしていくということです。
 単に自分のことだけではなくて、自分の子どもたちの将来についての見通しがいいとか、自分の家族だけではなくて、我がふるさとがよくなっていくには自分たちはどういった行動をとるべきかを判断するための指標を新たに作るとご理解ください。
 ふるさと知事ネットワークでは、今後希望を高める政策を持ち寄り、「希望の政策バンク」として取りまとめ、効果的に実施できるようにしたいと思っています。
 また、この希望につながる要素と、希望を高める政策を国や全国の自治体に示し、広げることで、国民一人ひとりが希望を持てる豊かな社会づくりに向け、行動を起こす力にしたいと考えています。
 

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