第64回福井県小学校長学校運営研究大会での講話

最終更新日 2012年5月16日ページID 017522

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 このページは、平成24年5月9日(水)にフェニックス・プラザで行なわれた、第64回福井県小学校長学校運営研究大会での知事講話をまとめたものです。

  例年ですと何か精神論的なことを言うことが多いのですが、今日は少し具体的なお話を申し上げたいと思います。写真1

 まず、学力向上あるいは体力向上のお話をしたいと思います。今年の全国の学力テストは、4月17日に行われました。8月中には結果が出て、それ以降に分析するということですが、全国学力テストの問題を先生が解いてみるということが大事だと思います。教育委員会に聞きますと、そういうことを夏頃におやりになるとのようですが、もう終わったのですから、本当はもっと早いほうがいいと思います。できるだけ早く学力テストを先生が直接解かれて、学習指導面の参考にされるとよいと思います。2年生の担任の先生もいれば、6年生の先生もおられたり、先生によって得意の学科が異なるなど、それぞれ事情も違うと思いますが、先生が直接問題を解かれて、そこから課題を発見するのは極めて重要だと考えます。

 校長先生は、先生の先生ですので、教員同士の授業参観や研究会を盛んに行い、校長先生も学校のいろいろな担任の先生の授業の様子をご覧になることは極めて重要だと思います。最近は授業名人でありますとかコア・ティーチャーの養成に取り組んでいるところでありますが、どの学校にも授業名人がいるというのではないようですね。授業名人が何人かいないと参考にならないかもしれません。できるだけ授業名人、準名人などいろいろあると思いますけれど、そういう人を増やしていくことが重要だと思います。各教科1人か2人、自分の学校の授業名人でもいいと思います。

 教育研究所の教材研究支援システムが今、アップされておられるようですね。できるだけそれらを参考にされまして、授業をよくするというのが極めて重要かなと思います。教育情報の材料の件数はだんだん増えているようですから、うまく活用してほしいと思います。

 ちょっと脱線をしますけれど、1/2(二分の一)を少数に直すといくつですか。0.5ですね。では1/3は?ずっと割っていくと0.3ではないですね。割り切れないものは5年生で教えるのでしょうか。では、1/2に2をかけるといくらですか?1ですね。0.5に2をかけるとやっぱり1ですね。1/3に3をかけると1ですよね。0.33・・・に3をかけるといくらですか?0.99・・・ですね。これは1にはならず、1/3に3をかけるのと一致しませんね。こういう数の原理の根本というものをうまく教えてもらったらありがたいですね。「なぜだろう?」と興味を持たせる一例です。この例では、1と、0.9999・・・と無限につづくものが同じものなのだという考え方を、どうやって子どもの頭の中に入れさせるのかということが大事になります。
 例えば、面白くさせる例として1つ申し上げます。これは大道芸人の「がまの油」の口上と逆であり、1(+)1/2(+)1/4(+)1/8(+)1/16(+)・・・・ と無限にいきますと、これはいくらになるでしょうか。まさか 「∞ (無限)」ではないですね。図1
 これはまず1があって、1/2は1の半分ですから、ここへきます。1/4は1/2の半分でここへきます。1/4の半分の1/8はここへきます。1/8の半分の1/16はここへきます。このようにしていくと、結局この合計は2ではないだろうかということになります。このような究極の話を教室ですることが指導要領で禁じられてはいないはずです。

 少し脱線しましたが話を元へ戻します。校長先生は先生の授業の様子をできるだけ見ていただきたいと思います。あまりうるさくすると先生が萎縮するかもしれませんし、またやってきたと思われるのでは良くないです。しかし、できるだけ先生の授業を見ていただくことが、皆さんの学校をよくしていく一つの大きなバックグラウンドになります。授業がおもしろくならないと学校はよくなりませんし、学力も向上しないと思います。もちろん学力のみならず、体力を育てる授業もあります。また、芸術といいますか、文化の授業もありますが、先生方には是非とも、おもしろい授業を工夫していただきたく思います。

 校長先生はどうしても生徒とつながろうとしますね。それは大事なことですが、校長先生が子どもたちに関心をもって接しても効果は薄いようです。子どもに接するのは先生方ですし、それは担任の先生に任せた方がよいと思います。以前、小学校の校長先生の体験記を何冊か読んだのですが、どの校長先生も校長室に子どもたちを呼んだり、一緒に手をつないだりするような楽しみを書いています。それは悪くはないけれども、全体のパワーアップにはあまりつながらないかもしれないです。それよりも、校長先生は、先生方を指導されることが大事ではないかと思っています。

 今、算数のお話をいたしましたが、10月ぐらいから算数Webが活用できるようになることで、単元テストの結果をみて、単元ごとにどこの問題、どの部分が校長先生の学校では弱いのかがわかるようになります。また、他の学校に比べてどの問題がよいというような比較ができますから、うまく使って指導していただくとよいと思います。

 昨年から、英語の授業が小学5年生から始まっていますが、悩みの種ではないでしょうか。調べましたところ、小学校の先生2,302名のうち、英語の免許を持っている小学校の先生は143人で、全体の6%しかいないようです。もちろん免許を持っているから授業がうまいとか下手だというわけではありませんが、小学校での英語教育はこれから非常に大事になると思います。
 私はマニフェストで、中学あるいは高校の課題についていろいろ言っていますが、小学校での課題はあまり申し上げたことがありません。でも、英語は、小学校のレベルでうまくやっていただくことが大事だと思います。小学校が最初の入り口ですから、英語を下手に教えることは問題があります。
 唯一、入口と出口に試験がないのが小学校です。福井県の場合は中学校になりますと高校入試がありますから、やはり受験の問題が気になりますが、小学校の場合は、幼稚園、保育園から入ってこられて、中学校へ送り出すわけですので、自由度が高いと思います。いろんなやり方を思い切ってやられると、あとの学力や体力につながる基礎というか、可能性が身につくと思います。特に英語についてうまく教えていただけると、ありがたいと思います。
 また、あまり易しいことはしないほうがいい、先生は教えるのには楽ですが、子どもにはつまらなく面白くない、と直感的に感じます。私たちの頃は、英語をほとんど知りませんでした。中学1年生で初めて英語を習ったときに「花のことをフラワーというのか」と思ったものです。今はそんなことはないですね。子どもたちみんなが知っています。小学生は、カナカナ英語としては、極端に言うと1,000くらいの英語を知っているのではないでしょうか。そんな状況でcat だとかdog だとか易しい事を教えているのではナンセンスです。もっと教え方に工夫が必要だと私は思います。

 校長先生はNHKの英語番組をお聞きになっていますか?うん、数人しか手が挙がりませんね。子ども用のものもありますし、大人用のもので子ども的なものもありますし、是非とも1日10分、15分くらい聞いてみたらどうでしょうか。
 朝の8時半から8時40分まで毎日易しい英語番組をやっています。これは、初歩の英会話のためのもので「英会話タイムトライアル」という番組です。カラオケですから答えが無いのですが、講師が話した時に、われわれがそれに対して即座に答えるという訓練をするものです。講師がIt is old.というと、否定形、疑問形、それからなぜ古いのだということを、聞き手に次々としゃべらせるのです。やってみるとわかりますが、意外とすぐには言葉に出てこない。それを一年間やるのです。手始めに聞いてみてください。あるいは中学1年の基礎英語でも聞いていただければ、みなさんの学校の英語がよくなるはずです。
 昨日はちょうどit is~.をやっていました。私は福井に行ったことがない。I have never been to Fukui. Tell me about it. と相手が質問するのです。すると福井の事を言わなければならなくなります。みなさんはどのように答えますか?金沢のことも言っていました。どう言うでしょうか。It is a beautiful city. It has famous castle.と、Itを用いて二つの事を伝えなくてはいけない会話です。琵琶湖のことも言っていました。琵琶湖はどう言っていたかと言うと、It is the biggest lake in Japan. It is near Kyoto. の2つですね。そのような訓練を一年間やるのです。是非やってみてほしいです。あるいは基礎英語でもいいです。子どもたちの英語がどうだという前に、先生がやることです。そのことを校長先生も意識してほしいです。

 今、18年教育というのをやっております。小学校に入学する際に、ある程度幼稚園・保育園の子どもたちが、生活習慣、生活学習をつくように幼稚園・保育園の先生方・保育士にお願いしますので、学校は相互に連携しながら、仕事をしていただき、中学校にうまく子どもたちを送り出してほしいと思います。

 不登校については、皆さんの努力のおかげで随分減少しているようですが、なお、小学校の段階で未然防止のためにうまく教育していただきますようお願いします。また、最近は「夢カルテ」だとかいろんなやり方によって子どもたちの夢あるいは希望を育てるオリエンテーションのようなこともやっているようですので、評価をしていただきたいと思います。
 今年は、全国学力調査に理科が入ってきました。教育委員会の話を聞いておりましたら、小学校で理科を教えるのが「苦手」だと自分から言い出す先生がいるというお話でしたが、理科を教えるのが苦手では困ります。福井県は理科が弱いようです。高校でも同じであり、理科教育での工夫改善が必要かと思います。
 小学校段階では実験とか観察が多いと思いますが、できるだけ子どもに興味がもてるように教育してほしいと思います。小学校理科の教科書を見ますと、各学年とも断片的に書かれており、理科の苦手な先生は教えにくいのではないかと思います。
 小学校の場合には、観察や実験が、普通の座学と重なっていますから、あまり気にならないかもしれませんが、中学・高校では、実験的なものをある程度まとめてやり、教育の効率をあげるようなことが重要ですね。授業の密度が低いと子どもたちは関心を持てないので、工夫が必要です。

 レンズの例でいいます。そうですか、今小学校では習わないのですね。レンズの焦点は昔と同じで中学校で習うようですが、これは少し問題ですね。
 今度、私は目黒区で講演しなければならないことになりました。皆さんが頑張っておられるので、目黒区で福井県の教育の様子を教育委員会に代わってお話することになったのです。
 目黒区は人口30万人くらいですが、目黒区の小学生の半分は中学受験をするのです。3年生頃から受験勉強をやります。すると、どんな授業になるでしょうか。中学を受験する子どもたちは先生の話をどれくらい聴いているものでしょうか。先生、適当に教えておいて下さい、私は忙しいのだから、と言われると困ります。そのような教えにくい状況が出ていると思います。これはよくないことです。それに比べ福井県は、みんなが同じように頑張っていけるわけですから、幸せだと思います。
 レンズというのは中学受験の必須科目です。小学4年くらいで習うのでしょうか。つまり福井県では中学校で習っていることを、東京の私学の中学合格者は、小学校ですでに学習し終えていることになるのです。このことは高校教育にも影響を及ぼしています。福井とは全然局面が違うということになりますので、学力体力が日本一という議論の中で、果たしてどのようなことになるのだろうと思います。

 そろそろ時間が来たようです。お話が中途半端になっておりますが、必要なことは申し上げたつもりです。心構えなどについては、昨年なども本日とは違う話もしておりますので、HPで一回ご覧いただきたいと思います。

 最後に、先生にもう少しテレビとか、忙しいとは思いますが、本を読むようお願いできないでしょうか。校長先生方も同じです。朝礼は今ありますか。一週間に一回ぐらいでしょうか。昨日TVを見ておりましたら、校長先生の朝礼の挨拶が一番いやだったというラップをやっていました。いろいろ考えさせられるところです。直接子どもたちに校長先生の肉声で、ご自身の思う事を伝えたい、情熱を伝えたいという気持ちはわかるのですが、これが極めて難しいです。ご自身が伝えるためにどのような工夫をするのかを話に出していただくと、聞いてもらえる話題にはなると思います。
 それよりもむしろ先生のご指導をよろしくお願いします。このようなことをお願い申し上げて、少し雑談的になりましたがお話を終わりたいと思います。

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