福井県高等学校長協会 平成24年度5月定例校長会での講話

最終更新日 2012年6月4日ページID 017722

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 このページは、平成24年5月28日(月)にユアーズホテルで行なわれた、県高等学校長協会 平成24年度5月定例校長会 での知事講話をまとめたものです。

 従来はどちらかというと心構えとか精神論のお話しをしてきたわけですが、今日はより具体的な、技術的なお話を申し上げます。

 最初に、大学入試センターの状況を見ますと、国語や英語、英語のリスニングなどは素晴らしいです。しかし、大学受験の一つの問題としては、福井県は国公立志向が高いですが、必ずしもこれからはそれだけでは進学の教育としては不足するかもしれません。東京あるいは大阪の私立大学、受験科目としてはそんなに多く必要ではありませんね。そういう情報をもう少し得て加えていくことは公立私立問わず重要です。これは教育委員会としても対応する必要があります。そういうウエイトを高めていく一方で、これまで続けてきた国公立大学、5教科対応が良いのかなと思います。また、最近医学部志向が強くなっているようですが、これは良いことなのか良くないことなのか、進路指導としては重要だと思います。
 入学試験の問題で申し上げますと、まずセンター試験があり、その後2次試験がありますね。その2次試験の日のうちに先生が問題を解いて欲しいというのが私の希望です。その日のうちに問題を解いてしまう。これはなかなか大変だと思いますが、そういうことを一度考えてみて欲しいと思います。問題を解くことによって授業が上手くなると思います。問題を解くのは大変だと思いますが、そういうことをしていただきますと、教え方に中身が出てくるのかなと思います。

 次に英語教育ですが、今年から県下で100人の子ども達がアメリカに留学といいますか、2、3週間行ってもらっています。そういう事業を予算上講じておりますが、なおなお言語教育というのが十分ではありません。NHKとタイアップした英語教育を教材として導入したり、TOEICを勉強するとか、英語の先生が能力アップするシステムを導入したいと思っています。授業を英語でしゃべっているからといって英語の授業ができるわけではありませんので、英語の教育というのを相当てこ入れして欲しいなと思います。
 そのためには、校長先生が、これは全科目にわたりますが、先生の授業をよく見ていただく必要があると思います。校長先生は先生の先生ですので、先生をアドバイス、叱咤激励、助言をする立場にありますので、そこはいろんな技術を要するとは思いますが、授業を見て改善するということが校長の一番の努めだと思います。
 それから英語ではALTです。福井県は、生徒あたりのALT数が日本一多い県です。だからこそ、センター試験のリスニングが日本一になっているのかとは思いますが、もっともっとALTを使わなければもったいないと思います。そのための準備をするには大変ですが、それはある程度システム的にやる必要があります。同時にそれぞれの学校で、そういうことをやらなければ英語の教育はできないと思います。
 校長先生に英語の関心がないのでは、福井県の英語の教育はレベルアップができません。1日10分でも15分間でもいいので、車中、あるいは食事中、NHKでは昼12時から13時までは易しい英語が流れているはずですから、聴いて欲しいのです。そして自分たちの学校で、校長として何がやれるのかということを考え、我々よりも専門ですから、必ず何かを思い浮かべるはずですから実行して欲しいのです。そうすれば、必ず福井県の子どもはしゃべれるはずです。

 更に理数教育でありますが、ここはなんとか工夫がいると思います。ここ数年トップレベルの人たちは、世界レベルの大会に福井県の子どもたちが先生と一緒にがんばってくれています。従来は、1年間に数人しか参加していなかったけれど、今はもう40人とか50人とか、科目によっては100人ぐらいがエントリーして、いろいろ経験を積んでくれていますのでありがたいことです。写真
 一般の生徒には、全般的に気になることがあります。毎日授業と実験をいつも組み合わせていると大変ですし、先生の労力も厳しいです。準備、後始末に、それから細かい知識も時間が限られていますから頭に十分入らないことがあるかもしれません。例えばある程度は、必要最小限度のことは授業中に行い、定期試験が終わったころ、あるいは中間試験が終わったころにまとめて実験をやってみる、といったいろんな工夫をして、労力があまり出ないように、無駄な時間が出ないようなやり方が必要かなと思います。

 数学については、生徒のOBに聞いたところ、数学の学習には解答があった方がいいというのが大体の意見です。生徒に解答を渡してありますと、数学の授業のやり方を変えなければいけないことになります。より違う方法を少しずつ取り入れなければなりません。
 高等学校では、何か研究をしたり発見をするわけではなくて問題を解くというのが常です。重要なことは、その問題について解答を読んでも分からないことが多いと思いますから、それを、授業中に数学の先生が先生の言葉でしゃべると違うんです。先生がしゃべると生徒は意外と理解できると思います。また、数学の先生たちが、先生の工夫でいろいろ、ここがつまずくよといったポイントを赤字で入れることかなと私は考えます。それによって授業の水準が良くなる可能性があると思っています。

 それから、社会科です。歴史や地理というのは、いかに授業中に負担なく終わらせるかということで、受験勉強を授業以外でさせるということは負担増ですから、授業で物事を終わらせるという技術が極めて重要だと思います。いかに社会科などについては、先生がおもしろいというか、話をするかということにかかりますので、かなり雑学も必要でありますし、いろいろ本を読んでいただかなければなりません。教育委員会にやってもらいたいと思うのは、歴史なら歴史、地理なら地理のいろんな教え方を、工夫次第ではすごくおもしろくなると思いますので、研究の余地、あるいは可能性が極めて高いと思います。この辺の底上げをしていただければと思っています。

 その他、教員グループによる授業研究、教科研究は、福井県の小中学校では非常に盛んであります。高校になりますと個々の先生の努力というのでしょうか、独自性というのでしょうか、お一人お一人の世界に留まっているものが非常に多いということが課題だと思います。これをぜひとも、公立高校だけの世界でもそうですし、公私連携しておこなうことも必要でありますが、拡大をすることが重要だと思います。

 高校の教育で大事なことですが、総じて、いろんな科目で、全体に何を教えるのかが子どもたちによく伝わっていないということですね。例えば数学でありますと、一学期にまず因数分解とかあるでしょ。何の解説もなく始めると、因数分解とは何のことだとなる。特に数学は皆そうなんです。級数が出て、幾何学が出てきて、今度極限であるとか、微分だとか、ベクトルだとか極座標であるとか、三角関数であるとか、殆ど脈絡がない。3年間で何を習うのか、そういうことを絶えず全体に戻っては、これはこの程度の話であるとか、そういうのがあらゆる科目に必要だと思います。絶えず鳥瞰、全体に戻る教育をこれから福井県の学校でやっていただくのが大事だと思います。

 次に職業系などの問題です。職業系の高校については推薦入学も多いので、学校の授業などが極めて重要でありますので、これはしっかりやっていただきたいと思います。具体的な専門科については、教科書を見ましても、子どもたちが分かるものに殆どなっていないような感じがします。したがって先生方、それぞれ工夫はされていると思いますが補助教材の開発が重要であります。かつ、農業にしても工業にしても、商業にしても産業界との関係が重要であります。今年から、生徒達が実践的な長期企業研修、これまで数日間でしたが、10日間くらい企業で勉強できるように予算を計上しましたので、職業系の学校については、是非ご活用を願いたいと思います。先生も、企業での実技研修が5日間ぐらいできるようになっております。予算としては9千万円位の予算を今年は組んでおりますので、カリキュラムの改善、それと生徒でも先生でも同じですが、県内のいろいろな技術現場との実践的な連携をお願いしたいと思います。

 世の中いろいろなコンテストが多いですが、積極的に参加できるような応援をしたいと思っています。頑張った生徒には表彰なども行いたいと思っています。スポーツについては皆さん頑張っています。よく県庁に公私の学校を問わず優勝報告などに来てもらっていますが、これから勉学についても進めてもらえればと思っています。

 これから中高一貫というのは極めて重要な課題だと思っています。全国では35県くらいは本格的な中高一貫を始めています。こういう問題について取り組む必要があると思いますので、努力をしていきたいと思います。

 県立高校の再編でありますが、奥越地区については、奥越明成高校が23年4月に開校いたしました。若狭地区では、今年まず文理探究科を新設すると同時に、25年からは総合産業高校、それから若狭高校になります。坂井地区については26年4月になる予定であります。

 さらに、子どもの基本的な教育の一貫性の問題があります。高等学校でありますので、ぜひ中学校等との連携を、校長先生はそれぞれ中学校何校か、福井市ではそうでもありませんが、郡部であれば中学校との連携も十分あると思いますので、そういう観点でものを見てもらいたいと思います。

 さらに、今日のメインテーマではありませんが、不登校、さまざまな問題となる現象がありますし、それと関わらず特別支援学校など個別課題がありますが、そういった問題にも個別の問題として、改善をする必要がありますから、現場の声をはっきりおっしゃっていただき、この問題に取り組んでいくことが重要かと思います。

 更に、学力向上センターです。ひとつひとつの問題を解決するためには、現場の実行が大事でありますので、今月1日に福井県学力向上センターを教育委員会の中に作ったわけです。学力向上センターとしては3つの機能を持っています。1つは小中高を通した福井県のオリジナルの学力向上対策の実践です。独自の情報データベース、オリジナル教材、学力の分析・研究、少人数学級の推進などの工夫です。2つ目は、福井県独自の小中高一貫教育システムの開発です。それから3つ目ですが、先ほどの心の問題もありますが、夢カルテを作ったり、先輩の姿を子どもたちに伝えたり、大人の実際の姿を見せるとか、いろいろなチャレンジ・希望教育というんでしょうか、こういう3つの機能を持っているので、そうした点を念頭においていただければと思います。

 先日、目黒区の教育委員会、PTAの方に呼ばれまして、これは小学校が中心ですが、約300人の方に話をいたしました。福井県と何が違うのかということを思ったのですが、小学校の3年ないし4年の生徒の半分は中学校受験の準備をするんです。生徒の半分は、授業は聞いているが塾に行ってしまうわけです。先生が授業をしていると、生徒の半分は塾に価値があると、保護者も同じで塾に価値があると、そういう世界が生まれてきてしまう。福井県とはかなり様相が違います。福井県はそういうのはあまりないからいいですねと言う話があったんですが、それでも塾に行くといういろいろな問題があると思っています。そういう塾との関係、子どもたちは学校に何を期待しているのか、塾に行っているから高校の授業はこんなもんだと思われるようなことがないようにしなければいけません。
 そうなりますと、生徒の関心をしっかり捉えられる授業というのがあらゆる科目に重要だと思います。ともかく子どもたちを鍛えなければなりませんが、余計な負担をかけさせないということが大事です。子どもたちに不安感、子どもたちは非常に不安感を持つ年齢です。というのは、先生は3年間全部が見えますが、子どもたちは目先しか見えません。さっきの因数分解ではありませんが、因数分解を始めると因数分解しか見えません。それを学ぶ意味さえ解らないままに進むのです。後のベクトルも見えませんし、微分積分も見えません。そこしか見えないです。子どもを困らせない、不安にさせずに鍛え上げるというのが福井県の教育であると思いますから、そういう方向で、校長先生も学校で自ら先生の授業を良くみていただきましてご指導をお願いしたいと思います。

 時間が来ましたので、これまでの8回か9回のお話しは大雑把な話でしたが、今日は具体的に、私見ですが、お話しました。私の見解を皆さんで咀嚼をしていただいて、実行をしていただきたい、それが私の期待です。以上で終わります。
 

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