内外情勢調査会知事講演~転換期を飛躍の好機に~

最終更新日 2012年8月3日ページID 024019

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 このページは、平成24年7月31日(火)にユアーズホテルフクイで行なわれた、内外情勢調査会の「転換期を飛躍の好機に」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

 今日は、内外情勢調査会の講演の機会をいただきましてありがとうございます。1時間余りということでありますので、原子力の問題、新幹線をはじめとした高速交通体系の整備にどのように対応するか、また、産業政策、観光、それから人づくりなどについて申し上げたいと思います。
 ちょうど今日、越前町でインターハイのホッケー競技大会の開会式がありました。全国から男子が28チーム、女子が20チーム、合わせて48チームが5日間、越前町で民宿などに泊まって、競技を行います。福井国体が平成30年に開かれますので、スポーツも大いに盛り上がってほしいと思います。【写真】知事講演
 オリンピックの開会式を見ましたが、毎回、新しい国が出てきて頑張っています。日本は世界の諸国の中でもともと古い国の一つですが、新興国がどんどん増えてさらに古いほうの国になっている感じも抱きました。また、イギリスの開会式は、いろいろ工夫をして、リラックスした感じでやっているなと思いました。
 平成30年の国体では、できるだけおもしろくて上手な方法でやらなければならないと思いながら、オリンピックを見ていました。


1 原子力発電所の再稼働等に関する考え方
(原発再稼働に対する国民理解)
 まず、原子力の再稼働に当たってのいきさつや考え方を改めて申し上げたいと思います。
 大飯3号機は7月9日に、4号機は先般7月25日にフル稼働に至りました。原発は、動き始めてもすぐ100%にはなりません。送電をしながら徐々に出力を上げていき、ようやく100%の状況になったわけであります。
 3号機は118万キロワットという大きさです。4号機も同じ118万キロワットですね。さらに揚水発電といって、大飯3・4号機で発電をした電力を活用して、水を汲み上げて水力発電ができますので、その増加分を合わせますと446万キロワットに届きます。
 関西地域の節電目標が当初15%以上ということでしたが、稼働したことにより10%あるいはそれ以下に緩和されました。中部、北陸、中国それぞれの節電の数値目標も緩和されました。
 大飯原発の再稼働に関しましては、昨年来、実に様々なことがありましたが、この4月以降も関係閣僚の見解など統一のとれない、ばらばらのような状態が続いておりました。そうした中で、関西など電力消費地のこれも極めていろんな動きもありました。しかし関西が再稼働を本来容認するとかしないとかいう立場では決してないわけですし、長年の歴史あるいは仕事の進め方から見まして福井県が責任をもって考えることであります。
 そういう意味で、政府はみずからの言動によって国民にも誤解を与えましたし、県民にも不信の念を起こさせた、というのが今回の状況でした。ここはしっかりとした、基本に立ち返った議論と方向づけが必要だろうと思いました。夏だけ動かすとか、大飯原発だけ動かすとか、そういうことではありません。これは甚だご都合主義の議論であります。責任のある指導の立場の人たちが、覚悟を持ってはっきり決意を述べるということが極めて重要です。私としてはかねがねそう考えていましたので、総理大臣が、直接国民に向かって原発の安全性や重要性、あるいは再稼働の必要性を訴える必要があると申し上げました。
 そうした経緯の中で、6月8日に野田総理大臣が記者会見を行いました。重要な考え方をはっきりおっしゃいました。要点は、これまで全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては日本の社会は立ち行かないこと、エネルギーの安全保障ということ、これは国家的な観点グローバルな観点ということもありますが、原子力発電は重要な電源であると述べられ、再稼働の方向に導いたわけであります。
 しかし、今回の再稼働を契機として、国は、これからも政府広報などを通じて原子力発電の意義をさらに国民にしっかり説明しなければなりません。そういうことを知事として申し上げたのですが、最近の動きを見ますと、十分な対応ができているとは感じられず、極めて不足している印象です。
 国民の皆さんに原子力発電や安全の考え、エネルギー問題などについて正しい情報を提供し、誤解をなくさなければなりません。原発が日々の生活と現実的にどのような関係があるのかを考えないといけません。家庭の女性から見ると生活は消費として見がちでありますし、勤めておられる方から見ると生産やサービスそのものです。生活だけではなく、電気が現場でどのように作られ、実際に働く場で使われているのかということも意識しなければなりません。その上で、原子力発電が安全というのはどういう意味なのか、原子力のリスクと確率をどう正しく考えるべきものなのかということを、もっと国民全体が分かろうとしなければ、単に恐れたり慌てたりするだけではこの問題の本当の理解と解決にはつながらないと思います。政府においてなお努力されるように、さらに我々からも国に向かって申し上げる必要があるだろうと思っています。
 なお最近の経済状況を見ますと、今年の上半期の貿易収支は、LNG等の輸入増によって過去最大の3兆円の赤字になっております。毎年、こういうものが重なってまいっては、まさに国富の一方的流出であります。増税より訳が悪い。また、ドイツなどの例を見ますと、再生可能エネルギーの買い取り制度によって電気料金が高騰する、スペインでは電力会社が大赤字になり制度を一時凍結する、といった世界各地の状況もありますので、こういうものについての十分な理解と国民的な共通の認識が必要であります。
 我々も原発を動かしたくて動かしているわけでは決してありません。必要なことだから、地元やひいては国民の安全を大前提に稼働させるということでありまして、この基本を忘れてはいけないわけであります。日本の社会や経済の安定と発展のために必要だから、安全を確保して動かすということが根本にあるべきだと思います。
 今年は特に猛暑であります。関西を中心に消費地そして国民全体もそうですが、今一度こうした問題を生産や企業活動を含めて、文字どおり実感をするということが今回の夏は重要です。またその中で、40年にわたり立地地域が果たしてきた厳しい安全努力と消費地への貢献についても理解されることが大切だと思います。

(原子力発電の比率)
 次に、原子力の将来ですが、現在、国は2030年における原子力発電の比率について、「20%から25%」、「15%」、「ゼロ」という選択肢を示しています。経済産業局がある都市と福島県の全国11か所で意見聴取会が開かれ、またパブリックコメントにより意見募集をしています。
 2030年というとそんなに遠くない将来であります。太陽光などの再生可能エネルギーが、基幹的な電源になり得るのかなり得ないのか、明確な展望はありません。どの選択肢がよいのか、国民への聞き方について、今回のやり方が必ずしも良い方法なのかどうかが問題になると思います。
 エネルギー問題は、国防、食料問題と同じく、国家の安全保障にかかわる事項です。3つの選択肢が物事のすべてではないと思いますし、こういうものを単純に提示しても、3つの商品から1つを選ぶといったこととは全然意味が違うのであります。まず国としてのみずからの問題に対する心構えや姿勢がある程度理解されて、それを国民によく説明をした上で、この案とはどう違うだろうということが物事の筋ではないかなと思います。資源が乏しい我が日本において、情緒的な議論あるいは抽象的な議論を行って、選択をさせるような話では決してないと思います。現実的な議論をしっかりと積み重ね、かつ合理的な判断を行うということが大事です。それをしないと結局正しい判断ができなくて、先延ばしをしたり、決めたのか決めないのか分からないという状態になってしまいます。こういうことはあってはならないことであります。

(原発の安全対策)
 次に原発の安全性の問題について申し上げたいと思います。
 3.11の福島事故は、昨年、ちょうど統一地方選挙の真っただ中で議論になりました。私は当時から「福島県のような事故は絶対に我が福井県では起こさせない」という強い決意を持って、国に先駆けて、県内の電力事業者に電源確保あるいは原発に対する冷却機能の強化などの安全対策を申し上げました。
 また、国に対しては、昨年の4月19日に、当時の海江田経済産業大臣に要請して以降、福井県は一貫して「事故の知見を活かした暫定的な安全基準に基づき、プラントの安全性を厳正に確認すべき」と求めてきました。
 最近、「暫定」という言葉もいろんなところで使われていますが、私の考えてきた暫定の本当の意味は次のとおりです。福島の事故を100%検証することは、現在ではすぐにはできません。現場に安全に立ち入ることもできませんし、このままでは不可能であります。相当な時間を要しますので、今のところで分かることをすべて究明した上で、分かる範囲でまず対策を講ずるというのが、この問題の解決方法だと考えました。そして、新しいことが順次わかった場合には、その都度、安全対策に素早く反映をさせる。これが暫定という意味だと私は理解して、ずっと申し上げてきました。
 ところが、これに対し、菅内閣は昨年5月に、突然に浜岡原発を停止しました。それからさらにストレステストを7月に実施し始めました。全体に思想と脈略がなく、国民の不信の念が強まったと思います。
 こうした中でも、福井県では、いざというときの初動人員体制や情報通信網の強化などを、関西電力などに要請して着実に実施をし、また耐震の総点検などを県独自で行ったところであります。
 その後、国は本県の求めに応じ、技術的観点から福島の事故を検証するため、昨年秋に4つの意見聴取会を設けたのです。この専門的な意見聴取会において真剣に議論をされて、本年4月に再稼働の判断基準を策定し、大飯3号・4号機の安全性を確認したのであります。
 結局、福井県が要請したとおりの手順を国は大体踏んだと私は理解をしています。そのほとんどが、本県が既に電力会社にこの1年間に指示したものや要請したもの、国に対して福井県が対策を提言したものが、システムあるいは方法になったと私は思っております。
 また、国の姿勢が間違っている点については、国にその都度申し上げたところであります。
 具体的には、ストレステストは机上のシミュレーションに過ぎないから、これだけでは安全対策には絶対ならない、ということを申し上げました。そして、先ほどお話しした意見聴取会ができたわけであります。
 その後、原発の運転を原則40年とする運転制限制度ということ、これも政府が突然言い出されたのですが、40年で止める科学的根拠あるいは延長を例外的に認める基準、を明確に示すべきだということも申し上げました。
 それから、原子力の防災範囲を10キロから30キロに拡大するという方針も、残念ながら30キロ圏の言いっ放しになっております。10キロと30キロは何が違うんだろうという問題があり、このように中身を決めないでそのまま放置という状態のものが幾つもあるわけです。
 大飯原発3・4号機の安全性を確認するに当たりましては、原子力安全・保安院や原子力安全委員会の対応のまずさなどにより、国は信頼を失っていました。そこで県としては、地元の皆さんと相談しながら県独自の原子力安全専門委員会で、立地の立場から独自のチェックをしました。最近、他の県でもこのようなものを作ろうとしたり、一部作り始めたところもあるかもしれませんが、これまでこういう方法を取っている県はありませんでした。
 さらに、再稼働前あるいは再稼働してからも、プラントの安全管理と事故の初動制圧に万全を期すため、現場で安全を監視して、県民あるいは国民の信頼に応えなければなりません。電力事業者も、自分たちだけではなくプラントメーカーあるいは電機メーカーなどを含め、総合的に判断し行動できる体制が必要です。かつ国の責任者も現場に来ていただきたいということで、牧野経済産業副大臣がお見えになっていました。これは国と電力事業者の仕事ですから、本当は、県は参画する立場にはありません、また参加は避けたほうがよいのかもしれませんが、今回は特別だと判断して、「特別な監視体制」に県も参加協力をいたしたのであります。県の専門職員がローテーションを組んで24時間体制で現場に詰めております。
 「特別な監視体制」が設置されてから、ちょうど1カ月半を経過しました。いろんな事態が生じ、警報が鳴ったりしますが、それがどんな事象かということは、現場で長年やっていないとわからないわけであります。そういうことが関係者、特に副大臣にはよくお分かりになられたと思います。
 「特別な監視体制」は、情報を共有しながら、また東京と連絡をしながら、国民に監視状況を知っていただく有効なシステムです。国の原子力規制委員会ができたときに、この「特別な監視体制」というのは有効に意味が発揮できると思います。こういうやり方を新しい体制で組むべきだと思います。
 東京にいて抽象的、観念的に問題を論じても、福島の事例が示すようにいざというときに役に立たないと思います。現場で物事を見て判断していかなければなりません。そういうことでありますので、引き続き現場重視の安全監視体制を強化したいと思います。
 それから、この問題に関連しまして、今月5日には「国会事故調査委員会」の報告が、今月23日には畑村委員長の「政府事故調査委員会」の最終報告が出ました。この政府事故調については中間報告も既に出ており、それとそれほど中身的に変わっているわけではありません。これについては、既にさきの意見聴取会と安全基準の中に反映されているということですが、最終的なものが出ました。
 これらの調査報告書にも記載があるとおり、原発に影響を与えた津波とか地震があったわけですが、問題のポイントは、国や東京電力がさまざまなことを先延ばしし、不注意や油断があったということです。また、十分な初動制圧も行われなかったというのが問題でした。報告では、ある意味で人災的という言葉も使われていました。
 したがって関西電力等においてもぜひとも、このレポートに書いてあることについて、きちんと実行しているか、何か足らざるところがあるか付け加えるべきところがあるか、検証をしなければならない問題なのです。
 今月27日に関西電力の八木社長に来ていただき、来月中にこのレビューといいますか、チェックをすると申し上げました。
 話題がやや変わりますが、三陸沖の津波の記録作品として、福井県出身の作家津村節子さんのご主人でいらした吉村昭さんの『三陸海岸大津波』という本があります。大変有用な書物であり記録文学だと思います。この地方を襲った歴史的な過去3回の大津波のことが書いてありますが、これを読みますと、まさに我々が3月11日にテレビで見た画面と同じことが、起こっていたことが分かります。
 また科学的に正しいかどうかは分かりませんが、津波の二、三週間前から井戸水が濁ったり水位が低下したり、水がなくなるというのは、どの津波のときにも起こっていたようです。それから、ワカメやアワビなどが陸に押し寄せるという、珍しい現象があったと書いてあります。もっとも、津波が起こったときだけ起こったのかどうかは分かりませんが、そのようなことが書いてあります。また、若い女性が自分の名前を忘れてしまったと書いてありました。「何という名前?」と言っても、「名前は忘れやんした」と答えるばかり。強烈なショックを受けた方がたくさんいたという当時のことが書いてありまして、読み物としてはすばらしいものだと思います。余談になりましたがぜひお読みになっていただきたいと思います。
 話をもとに戻します。すぐに急がなければなりませんのは免震棟です。既に今も既存施設について類似の役割が果たせる拠点ができていますけれども、本格的なものをつくる必要があると思います。
 それから、フィルター付きベントです。これは、理論的には福井県の原発は敦賀1号機以外は、全部加圧水型の原子炉であって、熱伝導体系が二重の方法をとっておりますので、このベントというのは必ずしも必要ないという学問もありますが、なお念のためということです。
 それから、防波堤・防潮堤などは、完成まで少し時間がかかりますが、できるだけ早くすることが必要です。
 なおご記憶願いたいのですが、日本の原発は54基ありましたが、本州にある原発は、福井県にあるものを除いてすべて沸騰水型であり福島と同じ型です。それから北海道、九州、四国は福井県と同じ加圧水型です。すなわち福井県だけが本州にあって加圧水型なのです。ただ、福井県には敦賀1号機1基だけ、福島と同じ型のものがあります。こういうことを知っていただくと、新聞などを読んだときに区別ができます。基本的には、加圧水型のほうが新しいタイプと言えるかと思います。大体こんなふうにして頭の中に入れていただき、また理解もしていただきたいと思います。
 それからもう1つの問題は、使用済み燃料です。これまで40年間の使用済み燃料がそれぞれの発電所内にあります。使用済み燃料の中間貯蔵の問題については、国が前面に立って対応すべきであり、40年間使ってきた消費地において中間貯蔵などをすべきだと思っております。消費地もそのような気持ちだと表明していますので、政府や電力事業者にも申し上げているというのが実態です。
 特に原発に対してはいわゆる安全神話があるのではないかとか、地元が必要だから動かしているのではないか、という議論がよくなされますが、決して福井県はそんなことはないわけであります。このことはきちんと申し上げたいと思います。

(原子力防災対策)
 原子力の安全対策を議論する場合に、大きく3つの問題を念頭に置いていただければと思います。
 1つは、今申し上げました原子力のプラントそのものの安全です。地震に大丈夫だとか津波に耐えうるかだとか、ヒューマンエラーが生じないか、そういう点のプラント自体の安全が基本にあります。もう1つは、大きい事故小さい事故、ささいな事象などいろいろありますが、それに対する初動時の事故制圧がきちんとできるかどうか、これが2つ目です。それからが3つ目の住民避難といいますか、例えば水害などで堤防の水がいっぱいになったら避難しなければならない、そういうレベルと同じような話です。
 このように3つの層になった問題があるのですが、そのうち、世の中では、逆に初めから3番目の避難のことだけを切り離して論じようとしていること、無意識なのでしょうが非常に多いのです。20キロ、30キロとか、避難をどうするんだ、あるいはヨウ素剤をどう服用するのかということが論じられますが、順番はまず最初にプラントの安全、それから制圧、そして避難という、そういう順番の事柄であります。そこを間違ってはいけないわけです。どうしても報道などでは、普通の皆さんの感覚で一番住民に近い側の話が先に出るのです。そのことをないがしろにしてはなりませんが、考え方の順はそうでは決してありません。それぞれについてしっかり行えば、つまり1番をしっかりすれば、2番が起こりにくくなります。2番がしっかりすれば、3番はさらに起こらないわけであります。例えば福島の事故でも、初期の冷却とか電源確保の2番目の制圧をしっかり行えば、今、避難されているような実態はなかったという話になるわけです。
 特に、2番目の制圧の問題については、福井県では、敦賀半島あるいは大飯、高浜で特別な制圧道路を急いで整備することにしております。これには数百億の投資を国あるいは電力事業者にお願いしています。
 それから、3番目の問題は避難の問題です。特に滋賀県や京都府はいろんなことをおっしゃっています。これも合理的な議論が必要だと私は思っております。原発の事故というのは、すぐに数時間で拡大するものではありません。一定の時間がかかる、そして次にどうするか、そういう議論をしていくということであろうかと思います。当面は、福井県としては、福井県内の最もプラントに近い範囲でまず必要な対応をするということです。今、大体は決めておりますが、今後それをどうするかという議論になるかと思います。

(原子力防災レスキュー部隊の整備)
 この初動の問題に関連しまして、原子力防災レスキュー部隊を福井県内に設けることにいたしました。福島の事故を見ましても、放射線量の高い現場において、必要とする機械を動かしたりあるいは作業ができなかったりということがありますので、資機材の管理・改良、レスキュー部隊の訓練などについて、電気事業者の連合会でも議論いただいて、年内に敦賀市に整備をし、27年度から支援組織を設置したいと思っています。数十名の専任スタッフが現地に常駐し、福井県のみならず他県のプラントにも応援をするということです。もちろん、そうした事故対応のみならず、通常時の各種の作業も必要であり、世界最高水準の活動機関にしなければならないと思います。


2 北陸新幹線

(1)北陸新幹線の県内着工決定を受けて

 続いて、北陸新幹線等の状況について申し上げます。
 北陸新幹線につきましては、6月29日に敦賀まで認可をいただきました。整備計画決定から38年余、皆様には一丸となった推進運動を続けていただき、改めて深くお礼申し上げます。
 なお、8月19日にJR福井駅東口で起工式を行い、引き続き生活学習館(ユー・アイふくい)において記念の建設促進県民大会を開きます。ぜひともお越しください。

(敦賀認可を受けての課題と対策)
 今後の問題ですが、1つは、開業は10年余り後になりますので事業の前倒しの努力が必要です。みんなの力を結集して、財源の確保あるいは貸付料の前倒しなど、できるだけお金をたくさんまた早く確保することが大事です。もう認可を受けたわけですから、補正予算でもいいわけであり、お金があれば新幹線に投入するということです。また、用地買収などの協力も必要であります。一日も早い開業を目指します。
 それから、敦賀以西のルートの問題もあります。これは極めて重要であります。敦賀にまで連結したというのは最終目標ではありません。富山、金沢、福井まで来るというのは3県の競争力にとって極めて重要です。一方で敦賀まで来るということは、それとはまた別の意味がありまして、関西あるいは名古屋につなげるという、次のステップにおいて意味があると理解すべきだ、と私は思っております。敦賀以西のルートについて議論を皆さんとともにしたい。こういう議論は、認可が受けられたから出来るわけですし、福井県の恵まれた立地状況にあるからこそ、各方向への議論ができるわけであります。
 また、新幹線が敦賀まで来た時期の数年後には、おそらくリニアも品川から名古屋まで来ます。そういう状況にあるということを腹の中に入れながら、議論をするということが重要です。フリーゲージの議論は、これはうまく使えるのであれば使ったほうがいいと思いますが、しかしこれは一時的といいますか仮のものかと思います。あくまでフル規格で整備するわけであります。

(金沢開業時と、敦賀開業時の課題)
 新幹線については、2年後の金沢開業の問題と、10年余り後の敦賀までの開業といった、2つの節目があり、当面は金沢開業をどうするかということと、敦賀までをできるだけ早くという二本立て、二刀流でこれから10年余りの間は物事を進めていく必要があると思います。
 特に、金沢に終着駅効果があるのではないかという懸念があります。かつ、福井県としては、東京に対しては東海道新幹線が使えますので、富山、石川県と比べると、金沢から新幹線に乗ってもそんなに時間が短縮されるわけではありません。一方でまた、新幹線が金沢まで来たからといって観光の例をとりましても、金沢だけで満足するような関東のお客さんはどうもいないように私は思います。ここは、2年後の金沢開業を福井県にうまく利用する必要があるでしょう。
 このためには、特に福井市から北部のあわら温泉、東尋坊、永平寺、あるいは大野、勝山、坂井市など、越前北部の観光や産業について、あらゆる手段を尽くし工夫をするという作戦が極めて重要です。なお、金沢に対しても宣伝や情報発信を打って出る、元気よくやっていくことが重要だと思います。
 それから金沢開業の状態においても注目すべきは、北関東や長野に対しては時間が大きく短縮されることを念頭におくべきです。計算によりますと長野とは2時間22分、大宮とは1時間7分短縮されます。お互い大変便利になると思いますからうまく使うことが重要です。
 一方の嶺南については、舞鶴若狭自動車道も同じく2年後の平成26年に開通しますので、これをいかにうまく使っていくかという戦略が必要だと思っています。嶺南にはすばらしいものもありますし、関西から嶺南敦賀さらに嶺北(北インターからさらに永平寺まで直結)が結ばれますので、嶺南の皆さんとも十分相談をしながら、その努力をしていきます。
 それから、並行在来線です。敦賀まで開業したときにはこの問題が起こります。今の北陸線をどうするかということです。これについては石川、富山が2年後を目指して並行在来線をどう運用するか、運賃をどう抑制するのか、あるいは運行便数がうまく確保できるかを考えています。並行在来線には「しらさぎ」や「サンダーバード」が走るわけではありませんから、通勤・通学にいかに使うかということです。これはこれから10年間、後発の利益といっては妙ですが、先行県での課題や状況がよく見えますし、様々教訓も得られると思いますから、それを見極めて問題のないようにしたいと思います。
 料金が何割も上がるのではないかとか、便数が減るのではないかと言われることがありますが、便数については先行例の長野県を見ますと、意外と自分たちで決定できるから、かえって便数が増えるようなこともあるようです。料金につきましては、公共的な部分をいかに投入するか、また国の応援がこれから10年間、どれぐらい進むかということを考えながら進めていく必要があるだろうと思います。

(県都デザイン戦略とまちづくり)
 もう1つ大事なことは、県庁所在地であります福井市、その中心部の県都のデザイン戦略をいかにまとめていくかであります。ちょうど戦災・震災期から60年余りが経過しましたので、その当時の建物が古くなっています。県庁や市役所などは、あと十数年ぐらいたつと建てかえを考える必要があるのではないかという論議もその代表例です。これは周りの民間の建物についても同じです。
 そこで、県と福井市が共同して県都デザイン戦略に着手しました。30年ぐらいのスパンで、これからどんな図柄を描いていくかを提示しなければなりません。これには大いに市民、県民の皆さんの意見と協力が必要です。
 もう1つは、すぐにやれることも並行して進めなければなりません。30年先のことについていつも議論だけしていてはいけないわけであります。このため、東大副学長の西村先生を座長に、年度内に一定の方向をまとめてまいりたいと思います。
 まず福井城址、中央公園の一体的整備がポイントです。それから、福井駅の交通結節機能ですね。田原町の連結、西武デパートの前まで来ている鉄道駅へどうやって直結するかという話。えちぜん鉄道、福井鉄道、並行在来線、地域バスがどんなふうに交通ネットワークを結んでいくのかということであります。
 そして、福井のまちを我々がどんな街にするのかということです。金沢の駅を降りたときの感じ、あるいは富山の駅を降りたときの雰囲気はどうか、そして、今福井に降りたときの雰囲気がこれでいいのかという議論です。都市の大きさも違いますし、歴史も違いますので、そこは知恵の出しどころです。
 先日、四国の高松市で開かれた全国知事会に行ってまいりました。私は高松で六年近く、勤めたことがあります。二十数年ぶりに訪れて、町がどんなふうになっているだろうと思いました。最初ぱっと見ると立派に変わったなという感じがしまして、これに比べて、福井県はあまり発展していないのではないかという心配を抱いたのです。しかし、よく見ると変わっていないところもあるという気持ちにも又なりまして、ちょっと複雑な状況でした。
 高松駅は昔は宇高連絡線の港町の駅として、そこから鉄道に乗って松山、高知や徳島に行くのですが、今回は随分様子が変わっていました。再開発がありまして、高いビルやホテルが港頭にできたりしていました。
 高松駅前には高松城址があり、玉藻公園となっています。お堀には珍しいことですが海の水を引いています。水戸光圀公の兄が讃岐高松の松平家の初代藩主になり、また光圀公の子が2代目の藩主となっており、よく水戸黄門の映画に出てくるところです。公園は、きれいになっていましたが、朝早く見学したこともあり、あまり来園者はいませんでしたが、かつてよりは立派に整備されており、また整備中でもあります。
 翻ってわが福井ですが、この福井の中心部をどうデザインしていくかというのはやりがいのある仕事だと思います。ぜひとも皆さんにご意見をいただきたいし、若い方のご意見もお聞きしたいと思っております。
 ちょうど昨日、県民会館の取り壊しを進めている中で、外側に石垣が出てきて、これは何かに使えると思っております。このように、ひとつずつ歴史を再現していってはどうかなと思います。

(2)国土構造の転換

(北陸新幹線の全線開通による日本海国土軸の早期形成)
 新幹線などとの関連ですが、国土構造の転換という問題があります。
 先日、高松でありました知事会議でも「日本再生デザイン」の中間報告を取りまとめました。岡山県知事が座長で私が副座長の役割を果たしていたのですが、このテーマとして、国土軸の防災強化、新たな国土構造の構築などが入っています。日本海沿岸道路の早期整備、あるいは高速道路のミッシングリンクの整備、北海道、四国、九州までの全国新幹線網の早期整備など何十年もかかる話であります。しかし、これからますます日本海側が重要になるだろうと考えるべきかと思います。今年はウラジオストクでのAPECの会合がありますし、資源の面でもLNGプラントの日本海側でのプロジェクトもありうるので、我々としては、日本海側という視点を入れ、国土軸の構想を念頭におきながら、この問題に取り組まなければならないです。

(新たな国づくりのための税制)
 私は数年前から、全国の地方の有志知事に働きかけまして、「ふるさと知事ネットワーク」をつくっております。青森から熊本まで、12の県の知事がメンバーです。この中で税制調査会をつくっておりましたので、先日は関係省庁に、この1年間の勉強の成果を報告しながら要望をしました。
 いま日本で一番問題なのは、大都市への過度の集中です。企業の立地について言えば、例えば地方に企業が立地したときにいろんな優遇が行われれば、大都市に行ったり、あるいは中国に出て行く必要はないわけであります。法人税は25%の税率ですが、地方で立地した場合には18%に減らしてはどうかと12県では考えています。これによって、地方への投資を促進すべきであるというような要請を出しているところです。
 「ふるさと納税」を創設しましたが、これまで60~70億円のふるさと納税制度の利用であったものが、今回の東日本大震災で、一挙に県・市町村分だけでも1,800億円を超えてふくれ上がっております。ふるさとやある地方を寄付で応援しようとしますと、税金はその分引かれてご本人の税負担は増えませんので、そういう動きがどんどん広がっております。現行のふるさと納税制度では、例えば退職金が対象になっていませんので、そういうものを対象にしてはどうかという要請もしたところであります。
 ただ、大都市に沢山なものが集積しておりますし、大都市に人材は多いわけでありますし、大都市に消費者が多いわけであります。新聞や週刊誌を発行するサイドにしても、大都市の人たちにどう読んでもらうか、支持を受けたいということが絶えず念頭に置かれてしまいます。地方の声はどうしても弱いですから、これをいかに強めていくかということが重要だと思います。いい話を提案しても、あるいは正しいことを言っても、多勢に無勢で耳を傾けてもらえないのでは、現実の地方の力にはなりません。したがって、地方の声を強める努力を今後とも続けなければならない、と考えています。
 なお、12県で構成している「ふるさと知事ネットワーク」ですが、今度、宮崎県もメンバーに入りたいとおっしゃって13県になります。地方の知事で地理的に様々で離れてもいますが、新しいスタイルのネットワークを組んで仕事をしていこうと思っています。


3 産業施策と観光振興

(1)“アジアに、未来に”産業の推進

(最近の経済動向)
 次に、産業や観光の政策についてお話します。
 今日、日本銀行の金沢支店長さんから話を聞きました。やや受け売りの話になってしまって恐縮ですが、北陸を含め、福井県の様子は、日本全体もそうですが、大体において、今のところでは状況は良くなっているという判断を日本銀行はされているということです。主に、大企業のデータが入っていますから多少バイアスがかかっていると思いますが、日本の各ブロックについても、景気に対するマインドなどは、この7月の日銀支店長会議から全部右肩上がりになっているという状況です。特に北陸については、全体として持ち直しの動きが続いているという表現になっています。
 なお、北陸の設備投資の状況ですが、震災以降、前年並みに一度落ちたのですが、今年の3月ぐらいから右肩上がりに伸びているという報告を受けています。ただ、北陸については、それぞれの会社のキャッシュフローの反映した中でしか、まだ投資をされる気がないということのようです。全国はそうでもないみたいですけど、内部留保を投入するというまでには至っていないという表現をしておられました。
 それからもう1つは、北陸は百貨店、スーパー等の伸びが弱いということです。なぜかよく分からないというのが日本銀行の判断でしたが、我々も分析をしてまいりたいと思います。
 アジア全体についても、実質GDPの今年の伸び率は、中国が8%台、インドが6%台、ASEAN5が5%台、アジアNIEsが2%台ということで、そんなに悪くはないという現状での判断ですので、参考に申し上げたいと思います。

(ふくい貿易促進機構の商社機能の強化)
 さて、過去10年間で県内企業の海外進出は111拠点から281拠点に増えております。特に東アジアが80拠点から220拠点へと大幅に増加いたしました。
 こうした動きを具体的に応援するため、昨年9月に、経済界に協力いただき、「ふくい貿易促進機構」を設立しました。県の商社機能とでも言いますか、これを強化しております。福井商工会議所内にワンストップの相談窓口を設けまして、これまですでに200件以上の貿易実務の相談に応じており、上海に開設したビジネスサポートセンターでは、省や市政府との調整など、こちらは約300件の現地での相談案件に対応しています。まだそれほど大きなものはありませんが、福井の食材や伝統工芸品の成約につながった例も出てきているようです。
 さらに、この6月からは新たに、「福井産品応援者バンク」というものを設けました。上海や香港の35社40名の仕入責任者に登録いただいたので、こうした皆さんとのパイプを太くして、生きた情報をやり取りしていきたいと思っています。

(アジア貿易を支える敦賀港)
 産業を支えるインフラの整備に関連して敦賀港ですが、昨年11月には「国際フェリー・国際RORO船」の日本海側拠点港に選ばれました。また、国際貨物のコンテナ取り扱いが4年連続増加中であります。今年上半期で前年比21%の増加ということです。
 今後、もっと取扱貨物を増やす努力をして、韓国航路の増便や、中国航路の開設などを目指すと同時に、県内の企業の利用が意外と少ないので、県内企業が敦賀港を利用する際の助成制度なども活用して、もっと利用を増やすように努力したいと思います。

(アジアビジネスを支える人づくり)
 県立大学地域経済研究所には、今年4月、新たにアジア経済部門を設置しました。アジア地域の専門スタッフを配置し、これまですでにフィリピン、タイ、ミャンマー、ベトナムの現地調査を実施しております。今後スタッフも強化しまして、本当に地元に役に立つ形で、具体的に調査結果を還元していきたいと思います。

(新たな成長産業の創出)
 成長産業の創出という面では、炭素繊維や太陽光発電織物に数年間で重点的に投資し、実効を上げる予定です。
 炭素繊維については、県の工業技術センターが独自の開繊技術の特許を持っておりまして、福井の企業や大手メーカーとも共同で、現在使われているものより3割ほど軽い航空機用エンジン部品の開発を進めています。
 昨日、材料関係が専門の東大の先生方がお見えになりましたが、福井県は研究人材的には最先端のレベルにいまあるので、これをものにしてほしいし、我々も期待しているということを言われました。ご期待に沿えるよう努力をしたいものです。
 また、太陽光発電織物については、全国で初めてとなる織物の中に球状の太陽電池を織り込んでいく技術の開発を進めています。例えばテントの生地に使用すれば、太陽光で発電するテントができますので、災害のときにも役に立つはずです。


(2)人を呼び込む観光戦略の推進

 観光については、北陸新幹線がしばらく金沢止まりとなりますので、その10年あまりをどうやっていくかが当面の大きな課題です。
 今年3月には市町や経済界の皆さんとも議論して「福井県新高速交通ネットワーク活用・対策プラン」をまとめました。これは舞鶴若狭自動車道の全線開通への対策も合わせてつくったものですが、どちらにしても、具体的にどう進めて、実効を上げていくのかが重要であります。
 観光客の内訳を見ますと、これは石川県も同じでありますが、日帰り客は増えているものの、宿泊客は減っておりますので、観光消費という面からはより長く滞在してもらうということが重要だろうと思っております。

(福井の観光魅力のレベルアップ)
 そのためには、県内には観光地は大小さまざまありますが、これらがもっとレベルアップすることが必要です。市町が主体的にやることではありますが、県としてもハード面、ソフト面の両面から重点的な投資を行いたいと思っております。
 主な観光地の中で、具体的に進めているところを少し紹介します。一乗谷朝倉氏遺跡と恐竜博物館です。
 一乗谷朝倉氏遺跡では、福井市と共同で4月から、遺跡内をめぐる周遊バスや遺跡ガイドを始めました。遺跡全体を見渡せる「物見台」も完成し、7月28日からご覧いただけるようになりました。今後音声ガイドの導入や、県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館の展示の充実なども進めてまいります。
 恐竜博物館については、昨年度の入館者が51万5千人に達し、平成12年の開館以来、初年度は恐竜エキスポがありましたので除きますが、過去最高となりました。現在、特別展を開催中ですが、今年度も昨年を上回っております。これは展示内容を継続して充実させてきたことが大きいと思いますが、さらに来年春には、全長15mほどもあるカマラサウルスの全身骨格を展示する予定で、このクリーニング作業を進めているところです。
 また、勝山市北谷に化石発掘現場があり、ここを子どもたちにも見てもらえるように、言わば「野外博物館」として整備したいと考えております。26年度のオープンを目指して実施設計に着手しました。

(観光魅力の発信)
 観光PRは、それこそ全ての都道府県が力を入れております。他県のやり方も見習いながら、そして負けないように元気よくやっていく必要があります。
 今年から11月に「ふくい 味の週間」を設け、「ふくいそば祭り」や「全国高校生食育王選手権」など食に関するイベントを集中して開催します。これもやり方を工夫して、年々グレードアップしていくことが大事です。県の観光のホームページも、観光客の皆さんが何を知りたいのかをよく考えて、全面的に見直します。
 東京では、県のアンテナショップに「ふくい南青山291」がありますが、20日には併設している飲食店がリニューアルオープンしました。料理のメニューも内装も、福井にこだわったものとなっております。これは南青山にありますが、銀座・有楽町の辺りには各県のアンテナショップが集まっておりますので、この周辺にサテライトと申しますか、もう1店舗の出店をしたいと考えており、現在、場所を調査中です。
 それから、先ほどもお話しましたが、金沢開業においても北関東や長野との間の移動時間は大幅に短くなります。観光について言えば、新しい誘客エリアの来客の可能性が大きいわけです。このため、今年はまず、秋になりますが、大宮、高崎など沿線となる主な駅などで、越前がにや恐竜など本県のブランドを打ち出せる大きな広告中吊りフラッグを出したいと計画しております。
 また、石川、富山との連携も大事でありますので、25日に合同でJRの「デスティネーション・キャンペーン」の準備会を発足させました。JR6社による合同の観光キャンペーンですので、三県で協力して誘致し、金沢開業後の27年の秋を目指しておりますが、うまく活用してまいります。

(交通アクセスの改善)
 新幹線で来る皆さんには、バスなどの二次交通も大事であります。
 具体的には、金沢から直接、県内の観光地へ連れてくるバスなどもいると思いますが、今年はまず、あわら温泉と恐竜博物館、永平寺を結ぶ路線を設けて、バスを走らせております。今月7日から来月15日まで、毎日走らせまして、利用の具合とか、時間配分とか、コースがどうかといったことをチェックしております。この秋には小浜の秘仏などをめぐるバスも計画しております。


4 「時代をリードする」人づくり

(1)「福井型18年教育」の推進

(「福井型18年教育」とは)
 教育については、福井は小中学校の学力・体力は日本一ですが、0歳から6歳までの幼児教育や、中学から高校へのつなぎなど、まだまだ課題があります。このため、0歳から18歳まで、つまり家庭・保育所・幼稚園・小学校・中学校・高校まで、一貫性を持って接続性も高める教育を「福井型18年教育」として、対策を強化しています。

(幼児教育の推進)
 まず、幼児教育については、実態からみて幼稚園・保育園、私立・公立と多様です。したがって保育士・幼稚園教諭を中心にした研修の充実、親の教育などをしっかり行いまして、三つ子の魂ということではありませんが、小さいときから、心あるいは精神の教育などを行い、小学校につなげていく、こういうことをスタートさせております。
 今年6月には「幼児教育力向上会議」を設けました。幼稚園、保育園、公立・私立の関係者はこれまで共通の議論の場を持っていませんでしたので、一堂に集まっていただいて、当面の課題を協議することとしました。
 また、越前市出身の絵本作家の加古(かこ)里子(さとし)さんに、ご自身の作品の中から子どもたちに読んでほしい絵本を90冊選んでいただいたり、今の子どもたちは童謡や唱歌を習う機会も減っておりますので、歌手の由紀さおりさんを招いて、「童謡で伝える会」を開いたりしております。
 また、この秋を目途に「幼児教育支援プログラム」の策定を進めております。11月ごろまでには福井市内に「幼児教育支援センター」を設けまして具体的に保育園や幼稚園の先生の教育を充実していきたいと思っています。

(職業系高校の授業・カリキュラム改革)
 それから、小・中学校との関係で、高等学校のレベル向上に必ずしもうまくつながっていないんですね。そこで、普通科系高校の学力・体力のさらなる改善と、職業系の学校についての応援をしなければならないと思います。
 特に職業系については、福井県の産業やあるいは基本的な生活を支えてくれるのは東京に出た人ではなく、地元に残った若者が大人になりそして結婚し家庭を持って、やってくれるわけであります。この人たちにしっかりした教育投資をし、また頑張ってもらわなければなりません。そういう意味で、職業系の教育について、古いまま残っているところがありますから、これを改革してまいります。昨年度、県内の産業界にも参加いただいて、「次世代人材育成会議」で議論し、産業界と教育界の連携と言いますか、具体的にどうやれば職業系の教育をもっとよくしていけるのか、提言をいただきました。
 具体的にはもう今年から始めておりまして、企業等での現場研修をこれまでは3日程度でしたが、10日間ぐらい行ったり、先生も企業や試験研究機関などで勉強する。この夏休みには、県内に8つある工業・農業系高校から2年生64人が18の生産現場などで実習を行っています。
 あとは、企業の社長さんたちにもアドバイザーとして職業系の学校に来てもらい、授業なんかもされる、こうしたことを既に手をつけているわけです。

(高校生の学力向上)
 それから、普通校についてはほとんどが進学するわけです。これも日本の国のためには必要です。進学教育についても、まだ課題がいろいろありますので、強化をしてまいります。
 今年5月には、「福井県学力向上センター」を設置しました。ここでは小学校から高校まで12年間の学力向上策を研究して、強化しています。
 高校での課題は普段の授業の改善が第一だと思っています。従前は教員の数や学級編成などシステムの議論が中心でした。しかしこれからは授業内容に問題を移していく時代であります。
 今年度は全ての高校で「授業満足度調査」も行っておりますので、教育委員会にはできるだけ早く結果を分析して、2学期以降の授業改善に反映していくように期待しています。
 受験対策ということでは、例えば大学入試センター試験の結果を見ますと、全体的には全国平均より高いわけですが、数学や生物、地理などいくつかの教科はやや平均点が低くなっています。最終的ないわゆる難関大学の合格率も伸び悩んでいるのが実情です。
 このため、教育委員会では、センター試験や各大学の入試問題を分析しまして、良問と言いますか質のよい問題を集めた学習の手引を作成しておりますので、授業や自宅での学習に役立ててもらいたいと思っています。難関大学を目指す生徒向けには、「土曜チャレンジセミナー」と言いまして、大手の予備校の講師に来ていただいて、受験のコツとか傾向や対策とか、そうしたテクニカルなことも勉強させています。

(英語・中国語教育の推進)
 英語については、受験対策もありますが、グローバル化がどんどん進んでいますので、普段の生活や将来仕事に就いたときにメールを打ったり外国人とコミュニケーションできることが大事だと思っています。
 英語力は、進学する生徒だけでなく地元で就職する子どもたちにも身に付けてもらわないといけません。このため、英語は高校でいえば普通科系も職業系も同じように力を入れています。
 英語の指導助手、ALTと言いますが、この生徒あたりの配置割合は福井県が全国一です。すべての公立中学校、県立高校に配置しています。
 また、高校では昨年から、「イングリッシュ・シャワー」という取組みを始めました。これも全ての県立高校が対象です。ALTとお昼ごはんを食べたり、校内放送で外国の映画を見たり、生の英語をシャワーのように浴びる時間を設けています。
 この3月には、高校生100人にアメリカのニュージャージー州に勉強に行き、本場の英語を学んできました。するとTOEICの点数が、平均で407点から455点に50点近く上がるという良い結果が出ました。特にリスニングが伸びておりまして、留学中も勉強したのでしょうがモチベーションが上がったのだと思います。
 中国語についても、今年初めて高校生を派遣します。中国の浙江省へ高校生5人が、ちょうど今日から8月13日まで、中国語を勉強しに行っています。

(国体に向けた子どもたちの競技力向上)
 福井の小中学生は体力、運動能力も日本一です。6年後の平成30年には福井国体も開催されますので、将来活躍が期待される子どもたちを、計画的にといいますか、強化をしていかないといけません。指導者の養成も必要です。
 具体的には、国体に向けた強化選手として、中学生や高校生を今年は634人指定しまして、全国トップクラスの選手から直接指導を受けられるようにしたり、強化合宿を支援したりしています。スポーツ医もいますので、そうした専門家にメディカルチェックをしてもらったり、サポート体制ももっと充実させていきたいと思っています。


(2)大学生、社会人を含めた人材の育成

(若手技能者のスキルアップ)
 先ほど、職業系高校の話をしましたが、技術というものはきちんと受け継いでいかないと失われていってしまいますので、ベテランから若い技能者に技能を継承して、さらにスキルアップもしていってもらうことが大事です。小さな事業所ほど、そうしたベテラン技術者と若い人を一緒に雇うことが難しいと思いますので、今年度から支援制度を設けております。
 また、11月には、若手職人の「技能競技大会」を新たに開催しますので、同世代の職人と日ごろ磨いた技を競い合ってもらいたいと思っています。

(若者のチャレンジを応援)
 昨年から進めている「若者チャレンジ応援プロジェクト」ですが、全国的にも注目され、今年の内閣府の「子ども・若者白書」に紹介されました。
 「ふくい若者チャレンジクラブ」には現在240人ほどの若者が在籍し、交流会や講演会を開いたり、フェイスブックを使ったりして活発に交流しているようです。
 来月の4日、5日には、このクラブから20人ほどが山形県を訪問して若者同士で交流します。山形県とは「ふるさと知事ネットワーク」でも交流しています。若者同士で感化し合うことを期待しています。
 また、今年から、海外や県外に打って出てチャレンジしようという若い人を支援する制度も作りましたので、活用してもらいたいと思っています。

 仕事、産業の面でも、結婚、子育ての面でも、若い人が元気よく、地域で頑張ってもらわないと、福井県全体の活力になりませんので、意欲のある若い人たちを応援していきたいと思っています。
 

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