内外情勢調査会知事講演~住むひと・来るひとの人生を楽しく豊かに~

最終更新日 2015年7月31日ページID 031392

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 このページは、平成27年7月31日(金)にユアーズホテルフクイで行なわれた、内外情勢調査会の「住むひと・来るひとの人生を楽しく豊かに」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

 今日のテーマは、初めに人口問題について述べます。ちょうど先ほど第2回目の「ふくい創生・人口減少対策推進会議」(川田達男・座長)が開かれ、2時間近く議論をしてまいりました。あと数回かけて方向を出し、秋には国に対して様々な要請をする予定です。
 次のテーマは、人口問題に深く関係すると考えられる教育・人材育成について申し上げ、そのあと、産業政策・観光、そして原子力・エネルギー政策、高速交通体系の整備など重要な課題についてお話をします。  

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1 人口減少対策・地方創生

 まず、人口減少問題への対策から申し上げます。
 昨今、人口減少問題が大きくクローズアップされるようになりましたが、福井県ではもう10年ぐらい前から、こうした議論を「福井県民の将来ビジョン」やレポートの中で申し上げており、私としてはそれほど急に起こったような事柄とは思っていないのであります。しかし、人口についての話題が国全体を挙げて出てきたこと、かつ具体的な国の政策も動き出していることから、この問題について改めてお話をしたいと思います。
 人口減少対策については、その意味合い、また国の役割と自治体としての県の対策はどうあるべきか、また、具体的な政策の中で人材育成や産業・雇用の問題についてどう考えるか、順番に申し上げます。 

(1)人口減少の状況と自然減・社会減の対策

(日本の人口動態)
 まず、最近の人口の動態です。日本全体の人口は2008年(平成20年)、いまから6、7年前になりますが、1億2,800万人をピークに減少に転じており、「人口減少社会」にたち至っています。また、昨年の全国の出生数は100万人余り、過去最少です。合計特殊出生率も1.42と9年ぶりに低下しています。都道府県の人口移動について見ると、人口が増えたのは首都圏の東京・埼玉・神奈川・千葉、そして、愛知・沖縄の6都県のみです。東京への転入超過は11万人であり、日本全体のパイが減っている中で東京への集中が続いています。
 福井県の人口ですが、これは2008年ではなくてもっと早く2000年に82万9,000人をピークに減少に転じており、全国より先行して減少に転じています。国の推計をそのまま当てはめますと、25年後の2040年には本県人口は63万人、さらに45年後の2060年には49万人、50万人を切るような数字上の計算が出されています。
 今から25年後に63万の人口というのは、昭和初期の昭和5年ないし昭和10年頃の人口です。仮定ですが50万人を切るような人口状態となりますと、これは19世紀天明・天保の時代の人口になるという計算です。

(自然減と社会減)
 人口の増減は、出生率と死亡率に関係するいわゆる自然増減という観点と、福井から県外に県外から福井に人口がどう出入りするかという社会増減という観点があります。ここ1、2年の状況を見ますと、両方ともマイナス約2,000人という状況です。自然増減については2003年から初めて減少に転じていますが、すでに社会増減の方は、バブル崩壊直後の数年を除いてずっと大体マイナスでした。すなわち社会減はほとんどずっと続いていたが、人口の自然増があったためあまり目立たなかった、しかしそれが、いよいよ21世紀になってはっきりしてきた状況にあると思ってください。最近では若い人たち、とくに女性の社会減が強まっている傾向にあります。
 これから我々は、この自然減、社会減の2つの対策をどのように考え、どの局面に政策のエネルギーを投入していくか、そのために国全体として日本の人口について何をなすべきか、一方の地方はどうか、そして地方同士の競合の問題も起こってくるという状況なのであります。
 この場合の自然減とか社会減という言葉のことですが、以前から自然増減と言っているのは、人口は自然にそのようにあるという自然的とみられる政策の加わらない事実をとらえて、出生率や死亡率が自然にそうなるという考えです。しかしここで立ち止まって、いかに自然でないように人口を社会化できるか、政策になりうるのか、果たしてできるのかということです。
 また社会増減というのはこちらの方は、逆に社会的にそうなるのかという話ですが、でもちょっと違うんじゃないか。逆に人口を社会傾向にまかせずに、自然化というか地域化しなければならない、この辺の言葉と意味の関連をいかに追及していくか、という感じを持っています。
 特にこの地方の社会減については、もっと真剣に地方分散に国が取り組まなければいけません、なお不十分な状況にあると思います。
 そして国が地方分散をしなければならないという点は当然ですが、少なくとも積極的な集中策を放任しないことが大事なんです。しかし現状では、建物が高層化されてますます摩天楼の東京ができてくる、また東京湾がたえず埋め立てられ、投資が拡大している結果となっています。そしてこのような現状を世の中が無意識に積極的に捉えている。さっきの言葉でいうと社会的に捉えてしまっている、そういう感がある。このようなばく然とした東京への集中傾向はやめるべきであり、少々の地方分散策では到底間に合わないということになります。
 さらに、社会増減の問題を考えることについては、首都圏における厳しい災害を真剣に想像することが重要です。首都圏の直下型地震というのは幕末と大正時代にもありました。一定の時間・確率で起こるというのが過去の実例であり、単なる杞憂ではない訳です。太平洋側のプレートによる大地震も可能性があります。防災一般の問題として話題にはされていますが、首都の再開発や投資などにおいて本当にまじめに考えられているのかです。無意識の東京集中というのは戒めるべきで、分散策をどうしていくかの前にもっと考える必要がありますが、それが判然としていないというのが現状です。
 数日前ですが、岡山で全国知事会がありました。そこでいろんな議論がありましたが、例えば、東京についての議論を引用しますと、東京だけを悪者にしてほしくないと論じたり、神奈川県などからは23区だけが東京であって、他は地方だというような意見が出るなど、実に便宜的で様々なのです。 

(参議院の合区問題)
 一方で参議院の合区の問題が、遅きに失していますが議論されました。今回の法案で例えば鳥取県と島根県は2県で1つのような議論になってしまっています。高知県、徳島県もそういう状況です。福井県、石川県は今回そうはなりませんでしたが、他山のことなのです。
 私はかねて政治の問題として、参議院や衆議院の定数、いわゆる「一票の格差」問題について、これは人口問題として考えてもきわめて政治上の根源的な課題であり、ぜひ解決策をさぐるべきと考えてきました。去年の『中央公論』にあえて論文を書きました。今回いよいよ参議院の合区が話題になり現実化したので、全ての参議院議員にこの論文を送り本当に真剣に考えるべきとお伝えしました。
 幸いといいますか福井県は対象になりませんでしたが、そんなレベルでこの問題を済ませてはいけないのです。そもそも人口だけを基準に単純に考えて選挙区の区割りをしたり、また「一票の格差」といった従来型の平等、正義論でものごとを決定することは望ましくない、時勢に合わないというのが私の考えです。こうした愚をくり返していては、政治の無限の悪循環を起こすことになります。戦後70年、大数的には国会議員数は地方エリアの議員が毎年1人ずつ減って、そのかわり大都市の国会議員が同数以上に増えたというのが実態なのです。その増減の差は100人を超え、都市と地方の議員数の天びんのバランスが大きく崩れてしまっている。そのため、どうしても大都市中心の議論に終始しがちですし、更にそのこと自体が意識されることも十分なされていない。地方のことにかいもく目が届きにくいのが実際と思います。こういう我が国の政治の現実は何としても直すべきです。
 憲法を直して考え方を改めるということが根本的かもしれませんが、そうした思考も制度見直しを遅らせ、政治の展望のない停滞をまねいています。憲法を直さなくても公職選挙法の改正等で解決できないか、知事会として真剣に考えるべきだという話になりました。これは私のかねての考えにも沿っており、その方向でこれから議論を進めていくことになりました。
 各県が少なくとも3年ごとの選挙で1人以上の国会議員を出せるように、地域代表というようにしなければならないでしょう。あるいは他の解決策としては、参議院には全国区制がありますが、その全国区から当選される国会議員のかなりは、東京などに本拠のある方であり、これを東京の地方選挙区に回せば、少なくとも「一票の格差」のバランスは是正されるわけです。あるいは、本籍地で投票するとかいろんな方法がありますので、そういう解決をぜひ考えるべきと思っています。
 先週、公表された参議院選挙制度改革に関する世論調査でも、国民の約5割は、一票の格差是正よりも各都道府県から必ず参議院議員を出すことを優先すべきと回答していますから、裁判所や国会の論戦と合っていないことにも注視する必要があります。 

(国の地方創生・地方分散策の不十分さ)
 国の地方創生、地方分散策の議論があまり十分でないと申し上げましたが、知事会に出席された石破大臣は、人口問題などに言及されて、このままでは日本国が存続しなくなるのではないかという危機感を示しています。ではその危機感を払拭するために具体的にどれぐらいの予算を投入するのか。地方創生型の交付金は、今年度の1,700億円規模の予算でしたが、残念なことに来年度は1,000億円程度になるということです。当然これに対しては各県の知事から不満の意が示されました。昭和63年の竹下内閣のとき、「ふるさと創生1億円」プロジェクトがありました。当時は市町村の数どおり3,300億円投入しており、それに比べても少ないですね。またあの時は国の方からはこまかい指示は言わなかったですね。頑張る自治体しか応援しないとかいう話もありませんでした。昔もいろんな課題はあったかもしれませんが、やはり地方自治をもっと大事にしていたようです。今は、自治体を選抜したり、そういうタイプの話が増えており、どうしても自治体であらぬ競争が生まれるような政策になっています。
 さらに国の説明の背景の中に、東京圏を強めることにより地方がその恩恵を受け、地方も活性化するという考え方がみられます。東京がよくなれば地方もよくなるという考えがベースにあるようです。ですから、地方も応援するけれども、どうしても地方を直接バックアップするという考え方は弱くなる。このような考えそのままでは地方創生と言いながら、大した成果は出せないということになります。これから地方としてさまざま声を国に主張しなければならないと思います。
 現在、国が示しているあるいは一部実行に移している地方分散策、このことを幾つか申し上げます。
 福井県が提案した企業の地方移転税制、これは地方拠点強化税制と言っていますが、例えば、東京23区から地方に本社機能を移転した場合には特別償却を従来より割り増しするとか、社員を東京から地方へ移した場合には、1人につき税金で最大140万円バックアップすることになりましたが、その趣旨が具体化したことはよいとしても、内容はなお不十分であります。
 また、政府機関の地方移転ですが、幾つかリストアップされており、私も理化学研究所などの移転を要望しましたが、十分な反応がないですね。移転に向けた雰囲気が全然できていませんから、国のお題目だけでは到底実現も困難なわけで、移転に対する消極的な印象を受けました。
 ちなみに、平成元年に政府機関移転の検討がされました。そのとき71の機関が移転していますが、そのうち69機関は東京圏の中で動いただけです。
 高齢者の地方移住の提案も出されていますが、一方的に議論されても実行不能であり、我々、地方としても負担だけ引き受けるというわけにはいかないと思います。全国知事会において、東京都知事も乱暴な議論だといっておられますから、問題が多いわけです。一方で、地方に対しては、病院のベッド数が多過ぎるから削減しろという話があり、高齢者の皆さんを引き受けて欲しいということと、ベッド数を減らせということは政策的にも矛盾があります。
 このように今回の人口問題の課題を解決するため、国の政策的な役割は過去のどの時代よりも大きいはずの状況でありながら、先が見えておりません。それなら我々は一体何ができるのか、市や町と協力してどうするか、そういう議論になろうかと考えております。
 そこで以下、福井県における人口減少対策について申し上げたいと思います。 

(福井県における人口減少対策)
 まず、結婚・子育て応援については、これまで福井県は先進的にプロジェクトを行ってきました。十年近く前は行政が結婚問題にタッチするのはいささかタブー的なものがあり、個人の自由という段階でした。しかしあえてその頃から「迷惑ありがた縁結び活動」を始めました。ありがた迷惑の逆の表現です。余計なお世話だ、いらぬお節介だ、勝手にさせてくれ、つまり余計なことまでして欲しくないのでは、という風潮があることを心配していたと思います。しかし若い人たちの意見をきくと、決してそうではないことを信じて、迷惑と一応言うかもしれないが後で本当にありがたい政策であれば、それでいいのではないかと進めました。今ではこれは全国的にも広まっています。10年たちましたので、新しい段階にこれを展開していくこととしており、「迷惑ありがた縁結び活動」を、地域レベルの活動から企業(職域)レベルでの応援に広げることとし、さらには、役立っていただける方にはあらゆる人たちに手伝ってもらうことにし、最近は寺のお坊さんにお願いして、結婚を応援しています。4月には真宗大谷派福井別院の「お東さん」のお寺が婚活を始めておられます。9月には「お西さん」の浄土真宗本願寺派福井別院のお寺で行います。ちなみにお寺と神社の数が人口当たり日本一多い県が、わが福井県なのです。2番目は島根県だそうです。3番目は高知県です。
 またいま申しましたように、今年から社員の結婚を応援する企業を増やしていきます。企業の中に社員の出会い応援をする「職場の縁結びさん」を置いてもらい、その企業を「ふくい結婚応援企業」として県が登録し、ホームページ等で広くPRします。
 さらに企業に出向いて、会社による縁結び活動を促す伝道師を委嘱することとしました。「職場の縁結び普及員」として、メディアや経営者協会の方など5名の方に伝道師になっていただきました。社員のためにぜひ縁結びの社長になりませんか、総務部長さんいかがですか、というように呼びかけていただき、「ふくい結婚応援企業」をどんどん増やしてまいります。
 そして何といっても若者自身が、結婚を前向きに考えることが大切です。県全体に機運を盛り上げることが求められています。自治体として積極的に結婚を応援する「ポジティブキャンペーン」をメディアの協力を得てやろうということであります。結婚や子育ての良さ・大切さを伝える映像の作成に着手し、県民から心温まるエピソードを募集します。福井県は結婚を積極的に応援する、好ましい例がテレビに映り、親になる喜びを感じてもらう、そういうことを考えています。
 また子育て支援の面では、3人っ子を応援しようという政策、ゼロ歳児の育児休業取得の企業への支援など、さまざまな事業を進めております。
 3人目以降の子どもたちにかかる経済的負担を軽減する「ふくい3人っ子応援プロジェクト」は、9年前から先駆けて実施してきていますが、3人以上の子どもを持つ県内の若い世代は、1.5倍に増加しております。福井県は共働き率が全国一高いわけですが、その中にあって福井県の合計特殊出生率は全国上位を維持しており成果をあげております。
 子どもが3人以上いる世帯の割合が高い場合は、その地域の合計特殊出生率も高い関係にありますので、今年度、政策をさらに徹底することとしました。3人目の子どもの保育料等の無料化は3歳まででしたが、今回小学校の就学前まで拡大しました。世帯所得も要件としていません。こうした全国トップの支援策により、3人目に躊躇する若い夫婦の背中を後押しし、少子化対策を引き続きリードしていきたいと思います。
 さてゼロ歳児の子育ての問題ですが、ゼロ歳児のうちは自宅で親が子育てしたほうが、親も幼児にとってもよろしい、また保育園にとっても、保育士の確保が大変ですから、ゼロ歳児を引き受けなくてすむことを望んでいる。そこで、全国で初めてゼロ歳児の子育ての考え方を転換した形の支援を始めました。この制度は国において新たに制度化されることになりました。
 また、本県が全国に先駆けて実施している「企業子宝率」の調査も、政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針」に先進的な取組みとして取り上げられました。企業子宝率とは、企業に勤めている女性社員の出生率に加えて、男性社員の家庭についても出生率を合計して推計するものであり、従業員一人あたりの子どもの数を表しています。そういう会社の統計をとりまして、数値が高く子育て支援の取組みが評価できる企業を応援し、子育てモデル企業に認定しております。
 それから、UIターン、社会減対策については、「ふるさと福井移住定住促進機構」(通称:福井Uターンセンター)の本部を駅前東口のアオッサの中に設け、東京、大阪、名古屋にはサブ部局を設けて、移住希望者のニーズに合った職場探しから、住まい・子育てなど生活全般にわたる相談まで細やかに対応する体制をつくりました。
 さらに「人生トータル設計書」を秋ごろまでにつくりたいと思います。これは、福井に住んで、子育てをし、人生(生涯)を送った場合、トータルの収入・支出を見込むものであり、東京などの大都市の生活よりも、福井だったらこんなにバランスシートがよくなる点を見えるようにしようということです。
 また、学生の県内定着を図るためには、県内大学の広い意味での魅力が高まらなければなりません。県内の5つの大学はどちらかというと中心部ではなく郊外にありますので、福井駅近くのアオッサに大学連携センターを開設し、教養を学んだり語学の勉強をするなど、県都中心部に学生が集い交流できる拠点づくりを進めていきます。
 これらの問題は多方面にわたりますが、冒頭申し上げました「ふくい創生・人口減少対策推進会議」において具体策を設けながら実行することになります。

(2)福井から人材育成

 次に人口と言っても、単に人間の数だけの議論だけでは困るわけであり、福井県を支えさらには広く日本で活躍する人材教育が極めて重要であります。今日の2点目は教育の話です。
 まず、福井の全般的な教育関係のポジションをお話しします。
 福井県の小中学生の学力・体力は、全国トップレベル、ナンバーワンではないかと思います。昨年2,000人を超える教育関係者が福井県に視察に来られており、また、県外から8人の先生たちが県内の学校で1年間研修をされています。ここ数年そういう状況です。また、和歌山県に対しては特に知事から要望があり、福井県から特別に先生のOBを派遣して、同県の教育について特別のアドバイスを行っております。
 最近全国で事件などもあり教育委員会制度の全般的な見直しが行われました。従来、教育委員会の委員長は教育委員会において互選で選んでいましたが、今回の国の教育改革の中では、首長が教育長という形で選任をして、教育長が教育委員会を代表することと決まりました。ただ、福井県では以前から2か月に1回ほどの割合で教育委員会とテーマごとに意見交換をし、実践してきておりますから、制度改正の必要はあまり感じておりませんし実態的に変わるようなことはありません。教育長および教育委員との「総合教育会議」は6月から開いており、秋ごろには教育の大綱を示してまいりたいと思います。
 そこで、これから福井県としての教育施策のポイントを申し上げます。 

(外国語教育) 

 1つ目は、外国語教育です。私は1期目のマニフェストの中で、約12年前になりますけれども、高校を卒業したら普通の日常的な英語の会話はできるようにと約束しましたが、実行できていません。大抵のマニフェストは成功しましたが、これだけがまだできておりません。非常に難しい課題だということです。
 しかしながら、これからの時代、特に英語や中国語など外国語教育の重要性はますます高まると私は思っておりますし、企業家の皆さんもそのように思っておられるのではないでしょうか。
 福井県の外国語教育の指導上のパワーについて申し上げますと、最近の文科省の調査結果では、中学校および高校の先生のうち英検準1級以上の資格を持っている先生の割合は福井県が日本一高い率になっています。
 それからALTすなわち外国人による指導助手ですが、彼らの生徒当たりの配置数も全国ナンバーワンですので、教える平均力は高いかもしれません。それでも英語を話す課題は到達が難しいということです。 
 国の動きとして5年後の平成32年度からは、小学校の高学年から英語が教科になります。小学3、4年生には外国語の活動が導入されます。俗に言う早期教育から始まるということですね。小学校では担任の先生が英語を勉強しなければなりませんので、先生のバックアップも必要です。そこで、英語教員のOBの皆さん100人ぐらいを人材バンクとして登録し、従事していただき英語教育をサポートしてもらおうと思っています。ALTはいま、82人ですが、今後3年間で35人増やして117人とし、教える内容もシステムとして明瞭にし充実していきたいと思います。
 さて、小学校の担任の先生にどうやって英語をトレーニングしてもらったらいいか、さきほどの英語検定の資格を持っている先生も少なからずいますが、突然準1級というわけにいきません。教育委員会と相談して特別の研修も行います。しかし基本的には、NHKのラジオ番組を継続して聞いていただければ、他の問題はおのずと解決できるのではないかと思っているのです。皆さんがNHKのラジオ番組などをお聞きになっておられるかどうか知りませんが、1日に3回ぐらい、同じ番組が繰り返しあります。基礎英語1・2・3、そしてラジオ英会話、入門ビジネス英語、実践ビジネス英語、その他いくつもの番組が充実しています。各番組は15分程度ですから、せめて30分ほど聞いていただければ、英語はだんだん大丈夫となります。きっと英語が聞こえるようになると確信を持っております。
 先日、アメリカの総領事が福井にお見えになりましたので、福井市内の中学生と福井商業高校の生徒に福井を英語で紹介してもらいました。子どもたちにはよい経験になったと思いますし、まだ少し型にはまったようなスタイルになっていますので、もっと自由に英語を話したらいいのかなと思いました。 
 英語だけの話をしましたが、ほかの外国語も県立大学や高校で進めてほしい。中国語は足羽高校を中心に頑張ってくれています。全国のコンテストでもいい成績を上げていますので、中国語教育も今後充実させていきます。
 英語の話をしましたが、これ以上に国語、日本語の学習の充実はおろそかにできません。国語の先生については、白川文字学の漢字学もよろしいかなと思います。中国語を勉強するのもいいと思います。
 それから、先生だけではありませんが、日本語を県内にいるあるいは来られたアジアの人や欧米の人に教える位のことをやらなければならないと思うのです。これまで外国語を習う、あるいは話せるようになるということばかり考えて来ましたが、日本語を外国人に習ってもらう、つまり従来の逆方向ですね。会話学校に金を払って学ぶということだけではなく、お金をとって教えるほどのこと、そして自分たちも外国語が得意になる。そういうやり方が経済学的にも必要じゃないかと思います。例えば、ALTの皆さんに対しては、福井県に来られている間に日本語をしっかり学んでもらう、日本語をもっと巧くしゃべられるようになって国に帰っていただく。これくらいのことをしないと値打ちがないと思います。 

(ふるさと教育)

 教育の2点目は、ふるさと教育です。先ほどの人口問題に関わりますが、福井県のことを知らない、福井県のことがあまり好きでないとか、福井のことを普通に説明できないなどそもそも記憶していることが不十分なのではふるさと教育も人口問題もないのではないでしょうか。
 18歳選挙権も来年から始まりますが、そうなりますと故郷のことをしっかり子供たちが理解できなければ、強制だけされて、地方自治や国の政治に対するきちんとした関心による投票が不可能です。単に義務的に投票するのではなく、ふるさとのことを理解して投票できなければ十分とは言えません。18歳選挙権をきっかけに、人口減少などの地域の課題について考えるなど、ふるさとについての理解を深めるような教育を進めていきます。
 それからまた、道徳教育が話題になってきています。道徳教育はよく言われるように命が大切だとか、他人を尊重するといったことがありますが、要はどのようにして、どこで誰が教えることができるかです。家族の役割を忘れてはなりませんし、学校でも言葉とかけ声だけでは困難でしょう。教育には子供たちに関心の深い実例が必要ですし、正義の心に響くものでなければなりません。ふるさとの歴史や人物、自分たちの父祖のことを理解できることは、道徳を学ぶための近道の一つかと考えるのです。福井県の偉人や先輩たちがどういう成功と失敗をしたか、どんな努力をしたか、困ったときどう振るまったか助け合ったかなど、ふるさと教育と関連させることは重要だと思います。
 中学校では、東京大学の応援もいただき数年来つづけている「希望学」の一環として、地域の産業や歴史について学んでいます。福井大学には教職大学院があり、先生の研修をしているので、地元の大学でもふるさと教育のできる先生を育てやすいのではないでしょうか。また、高校では最近、本県ゆかりの企業経営者などを中心に「ふるさと先生」としてお招きし、生徒の励みになるような有益な話をしていただいています。 

(高校教育改革 )

 もう1つは、高等学校の教育改革です。小・中学校の学力・体力日本一の福井県ですが、高校になると学力でもやや伸び悩み、職業的な教育実践も改善の余地が多いと思っています。解決方向として、高校での教え方を見直すべきなのか、あるいは小中学校で型にはめて教えすぎていたのか、原因は1つではないと思いますが、子ども達の能力を十分に伸ばしきるには、高等学校の教育を改革するための押さえ所を見つける必要があります。
 知事会がありましたので、せっかくですので岡山朝日高校の夏休みの補習の様子を見ました。同校は、福井県では藤島か高志高校に当たると思います。学校の大きさは同規模ですが、世の中にいう難関大学合格者数の成績は、福井県全ての高等学校の合格者数と大体同じくらいを、一校でまかなっている学校のようです。では同県の小・中学校の学力テストはどうかというと中以下の成績らしいのです。そのあたりがしっくり関連づけられないのですが、福井県としてどのように進めていくかです。
 次に職業教育ですが、地元で就職される子ども達ですから非常に大事です。職業系学科では学ぶ内容と就職先がまずマッチしていないという基本的な問題があり、基本とする知識・技術を時代に合わせて直すため、生徒の資格取得や実習等の達成度を明瞭化するような制度として「福井フューチャーマイスター制度」をつくりたいと考えています。
 なお、高校の再編は奥越、坂井、若狭地区は終わりましたが、丹南地区それから二州地区で残っております。これから進めることになります。単に生徒定数を減らすのではなくて、生徒数減少による「枠」を使って、他県からの生徒を募集あるいは誘致することも考えなければならない時代です。 

(3)雇用を生み出す産業の活性化

(観光・ブランド戦略)

 次に、産業政策、観光について申し上げます。
 まず観光についてですが、おかげをもちまして去年(平成26年)は過去最高の観光客数を記録しました。1,132万人であり、記録の残る限り過去最高の来客数です。これは、「若狭さとうみハイウェイ」の昨年7月の開通、野外恐竜博物館の開館、若狭歴史博物館のリニューアル、関連するイベントの開催などによるものと考えております。今年3月には北陸新幹線の金沢開業を迎えましたが、県内の主要観光地では、ゴールデンウィーク期間中の入込数が前年同期比で3割増えています。『じゃらん』という旅行関連の調査機関がありますが、福井県の宿泊者数の伸び率が日本一だということです。ここ数年、県内それぞれの地域で、全体で100億円近い投資をしました、市や町と協力してやっておりますのでそうした効果が現れ始めているのでしょう。それに、本県はもともと良い宝を持っておりますから、条件がそろえさえすれば観光客数は増加していくと考えております。
 特に観光あるいはブランドの関係では、魅力ある観光地づくり、なかでも発信力の強化が大事だと考えています。
 魅力ある観光地づくりについては、主だった観光地について「100万人観光地」を目指します。東尋坊は100万人を超えていますが、他の観光地ではかつては100万人以上あったけれども、今は永平寺のような40万人台という場所もあるわけです。
 大本山永平寺については、門前商店の整備も終わりましたが、今回フランスの旅行ガイドの「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」において2つ星の評価もいただきました。すでにご本山、永平寺町、県の3者で新しい参道や宿泊所など再整備を進めていきます。具体的には、永平寺が精進料理などを体験できる宿泊施設を整備し、県は、永平寺川の川岸を石積みにするなどの景観づくりを行います。町は参道を石畳にしたり電柱をなくしたりするなど、周辺一体を整備することにより、行きの道筋は情緒ある旧参道から非日常的空間へといざない、帰りは門前商店街の現参道で買い物を楽しんでもらえるよう周遊性を持たせたい計画です。
 一方、ことし開館15周年を迎えた恐竜博物館については、野外の恐竜博物館のオープン(昨年7月)などもあり、入館者数は2年続けて70万人を突破しました。今年はさらに好調であり、7月19日に過去最速ペースで20万人に達しました。
 博物館として展示をさらに充実するため、今回「アロサウルス」の実物全身骨格など32体の化石を中心に模型をふくめまとめて購入します。アジアの恐竜研究拠点、そして恐竜学のトップランナーとしての地位を揺るぎのないものにしたいのです。現在、ゴールデンウィークや夏休みは館内がほぼ満員に近い状況ですから、エンタテイメント性も高め第2恐竜博物館といったものができないか、検討を進めていきたいと思います。
 また、福井駅前の恐竜モニュメントについてはJR駅舎の大きなラッピング壁画と合わせ、設置後4か月で2万人余り、1日あたり400人以上が訪れ、海外のメディアにも取り上げられるなど、好評を得ています。 
 日本最大の戦国城下遺跡の一乗谷朝倉氏遺跡についても、100万人観光地を目指していきます。これまで、景色を楽しめる眺望ポイントを整備したり、案内ガイドを充実してきました。しかし、遺跡の全体像や価値を伝える場所が十分ではありませんでしたので、展示やガイダンス機能を備えた「博物館」の整備に向け、基本計画の策定に着手します。
 また、歴史空間としての魅力をさらに向上させるため4つの特別名勝庭園を再生し、県里山里海湖研究所長の進士()五十八()東京農大名誉教授の監修のもと、観光客の方に遺跡内を巡っていただけるよう整備をしていきます。
 福井市については、まだ市内で半日あるいは1日ぐらい満足して観光ができるような状況には十分なっていません。福井市中心部では県都デザイン戦略を進めておりますが、その中では、「福井城址」を重要なポイントに位置付けており、隣の中央公園と一体的に再整備し、魅力を高めることとしています。現在、福井城の山里口御門の復元に向け、石垣の解体と埋蔵文化財の調査を行っており、来年度の完成を目指して、御門の建築工事に着手しています。中央公園については、福井市がこの夏から造成工事を本格化させており、平成30年の福井国体までに公園全体を完成させる予定となっています。 
 次に、発信力の強化です。
 これをご覧ください(表紙参照)。これは由利公正の手になる五箇条の御誓文の草稿、これを越前和紙にプリントしたものです。本物と並べても分からないぐらい精巧なものです。「士民心を一にし盛に経綸を行ふを要す。万機公論に決し私に論するなかれ」。有名な五箇条の御誓文の最初の草稿(議事之体()大意())であり、最終的な五箇条の御誓文になるまでには3回手が入っていますが、基本的な精神がここに生き生きと書かれているということです。
 ちょうど3年後が明治維新から150年です。多くの福井の偉人が活躍しました。松平春嶽公、橋本左内、梅田雲浜、また横井小楠を熊本から招いています。幕末、明治維新に人材を輩出した福井の歴史的な役割、各人物の業績、エピソードなどを、もっと全国の皆さんに知っていただく必要があります。今回、由利公正を中心とした福井の偉人たちの群像を、「大河ドラマ」にできないかと期待しています。大河ドラマは全国で30あまり候補があるようです。
 由利公正は、五箇条の御誓文の起草、太政官札の発行、廃藩置県後の最初の東京府知事、東京銀座をつくった人で、銀座には「経綸()」という石碑があります。由利公正の大河ドラマは、立憲制度、経済改革、東京と地方との関係など他方面の意義があると思っています。
 ご存じの方も多いと思いますが、この由利公正は、西郷隆盛、あるいは坂本龍馬、木戸孝允等、いろんな人物たちとの付き合いがあります。
 司馬遼太郎の有名な『竜馬がゆく』というのは小説の表題ですが、小説の中で「竜馬が行く」の言葉は1か所しかありません。文庫本(文春文庫)では最後の第8巻354ページにようやく出てきます。「街道は晴れていた。竜馬がゆく。」と1回だけあります。そして1行後に「越前福井は松平家32万石の城下である。足羽()川を北へ渡ると城が眼前にそびえ、人家が密集し、繁華街は大坂を思わせる」と書いてあります。竜馬は越前に行った、ということがこの大河小説の大きなテーマではないかと思われます。これは『経綸のとき』を書かれた尾崎護さん、この方は大蔵次官などをされ小説も書かれる方ですが、この話しをお聞きした訳です。
 ところで、最近は「天皇の料理番」の秋山()徳蔵()氏、あるいは天皇の写真師といいますか丸木()利()陽()氏(この方はJTB田川博己会長のひいおじいさんです)、みな福井の人たちです。それから最近は「恐竜」が異例のことですがNHKテレビ番組の「歴史秘話ヒストリア」にも「出演」しております。いろんな意味で福井県が注目されるようになりました。どんどん福井のよさを売り出していこうと考えています。
 また、三方五湖の一つである水月()湖()の「年()縞()」も全国に発信すべき福井の宝です。地質学の年代測定の世界標準となっていますが、学術的価値をさらに高め、学校教育や学術観光に生かすことが重要です。
 このため、拠点となる施設を三方五湖畔に整備したいと思います。今年度、基本設計に着手し、国体が開催される平成30年度の開館に向け、整備を進めていきます。実物の年縞は45mほどの長さ(高さ)になりますので、このスケール感が実感できるシンボリックなものにする計画です。
 また今年4月には、「日本遺産」の第一弾認定の対象として、本県の「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 ~御食国若狭と鯖街道~」が選ばれました。この認定を機に、県民にその価値を改めて知っていただき、観光誘客に活かすことが重要です。また、鯖街道でつながる滋賀県や京都府との連携も強めたいものです。地元の若狭町、小浜市とともに「日本遺産活用推進協議会」を設立し、事業を進めてゆきます。来月からは県立若狭歴史博物館で認定記念の特別展を開きます。若狭町にある道の駅「若狭熊川宿」資料館や、小浜市の「三丁町」の町並み再整備なども進めてまいります。 
 さらに、海外における情報発信の一つとして、オランダの画家レンブラントが、当時の越前和紙を使用してエッチング版画を創作していたのではないかということから、現地の美術館などと共同調査を行っており、6月からアムステルダムのレンブラントハウス美術館で越前和紙の企画展を開催しています。オランダの人たちも、古来変わらぬ日本の伝統工芸の技術の高さに紙すき体験などもして感心していました。越前和紙については、保存団体の設立を支援するなど「ユネスコ世界無形文化遺産」への登録に向けて活動を強めております。永平寺の国宝『普勧坐禅儀』(道元禅師の直筆)の「ユネスコ記憶遺産」への登録とあわせ、国に要請しているところです。

(企業誘致、中小企業の成長応援)

 次に、産業政策について申し上げます。まず、中小企業の成長応援については、企業誘致と地元企業応援に大きく分かれ、特に企業誘致については4年間で116社の新規立地増設を行いました。3期12年間のトータルでは300社、設備投資4,400億円、雇用創出は予定も含めて6,500名です。有効求人倍率が東京に次いで高いのは、この結果だと思います。むしろ現状は人手不足の傾向になっています。
 そのほか、100億円の「ふるさと企業育成ファンド」を県内金融機関と協力して創設し、約1億円の運用益を活用した補助制度により中小企業を支援しております。
 また、川田県経団連会長に委員長になっていただき、今年の3月に「福井経済新戦略」をつくりました。戦略の中では、本社機能や研究機関の誘致等、人材と合わせた企業誘致、それから従来の商品・サービス開発の域を超えたイノベーション創出、そして地域に根差した小さな企業支援、という3本柱で進めています。
 人口問題に関連しますが、本社機能の移転については、設備投資に対する補助に加え、福井県独自に移転経費についても支援することとしており、全国トップクラスの補助制度を創設しました。イノベーションの促進については工業技術センターなどを中心に行っていますが、さらに、「ふくいオープンイノベーション推進機構」を開設し、研究者や大学の関係者など500名を超える専門家の協力を得ながら、資金協力をねがう金融機関も含めて総合的できめ細やかな支援体制を整えました。  
 とくに一点突破の政策としては、「小型人工衛星」を福井県民の人工衛星として、福井のもつすべての技術を使って打ち上げられないか、これを利用面でも情報システムの開発などに使えないか、数年かけて進めたいと思います。
 炭素繊維に関しては、10数年来研究をしていますが、いよいよ航空機にも使えるようになり、さらに自動車産業の部品材への展開、橋梁の補強・補修にも使えるよう計画しています。 
 地域に根ざした小さな企業への応援については、創業30年以上を経過した老舗企業に対するバックアップや、新しいことを考え実行している中小企業への顕彰、そして、伝統工芸に対する人材育成などを行っていきたいと思います。
 なお、福井県内の企業で100年以上の歴史を持っている企業が481社あります。これは、全国第6位です(1位は京都)。 

(農・林・漁業を総合産業へ) 

 農林漁業については、総合産業化を進めます。現在では、第1次産業が県内総生産に占める割合は1%になっています。約400億円程度の総生産額であっても、福井県全体のGDPは3兆円を超えてますから、そのような比率でしかないのです。しかし農林漁業はこれから極めて大事であり、地方創生に深く関わると思います。われわれの健康そして食、テレビを見ても食の話ばかりです。私も家庭菜園をしていますが、土地と水がないところでは農業はできません。しかし問題は農林水産を経済的にどう産業にしていくかです。福井県内で農産物は、その作られている生産物の約2割は経済統計には現れません。つまり、近所の人たちが互いに交換したり、あるいはおばあちゃんが子や孫の家に持って行く、こうしたものは統計には出ません。よい意味でのインフォーマルな経済です、一つのパワーです。健康的で有機の新鮮でおいしいものが食べられるのです。福井のものを食べますと、他の場所ではひいき目かもしれませんが、そんなにうまいという感じがしません。お刺身などはとくにそうです。福井のコシヒカリは、のりで包んで箸ですっとはさんで食せますが、これが当たり前ではないことがあります。
 今後の農業における観点は、大きく3つあります。
 企業をふくめ実際に産業を発展できる人たちを育成し、農地を集約化すること、ブランド化、多角化等により高収益構造へと転換すること、それから、中山間地のような条件不利地域での新しいビジネスを振興することです。
 どの場合も、人材の育成が重要であり、「ふくい園芸カレッジ」を昨年開校しました。これまでに53人の希望者が入校し、栽培技術や販売ノウハウを勉強しています。うち県外からが31人、家族を含めると52人が県外から福井に来てくれています。これは人口問題にも関連することであり、福井の農業を新しい眼で担ってくれると思います。
 水産業についても、先月、「ふくい水産カレッジ」を開設し、全国で初めて、漁船漁業・海女・養殖の専門3コースを設定しました。
 今回、坂井市三国町の30代の主婦が海女コースに入校しましたが、おばあさんが海女さんだったそうであり、地元漁協の期待も大きいようです。研修期間中には年150万円の給付金を支給するほか、卒業後3年間については、月3~5万円の資金をお貸しするなど、生活面のフォローも行ってまいります。
 次にブランド化についてです。3年後の福井国体のときには、新しいお米である「ポストこしひかり」を出したいと思います。7、8年かけて開発を進めてきており、今年度は県内5地区で一般水田での実証栽培を開始し、10種の候補品種からさらに4種まで絞りこみます。また「特別栽培米」については高い値段で売れるようにします。  
 水産業については、これまで漁船漁業への依存度が高かったので、養殖業にシフトしたいと思います。
 トラウトサーモンの養殖試験を今年から始めましたが、大体見通しがつきましたので若狭湾などを中心に行っていきます。平成31年度には400トンを生産し、日本一の生産量を見込んでいます。ちなみにカニ(蟹)も400トンです。また、マハタという魚は、フグより高値で取引されますので、マハタの養殖も行います。  


2 原子力・エネルギー問題

 原子力については福島第一原子力発電所の事故以降、いろいろ課題がありましたが、エネルギーミックスの方向が出され、将来の原子力の占めるべき割合が20%から22%という数字になっています。この比率を達成するためには、30基以上の原子力発電所の稼働が必要です。しかし、それをどうするかというような具体的なものがないので、今後はっきりしていく必要があります。
 国に対して申し上げているのは、1.原発の重要性に対する国民理解の促進、2.中間貯蔵施設の県外設置にかかる積極的な関与、3.エネルギーミックスの明確化、これについては先ほど申し上げましたが、政府が正式決定しました。4.福島事故を教訓とした事故制圧体制の充実強化、これについては関西電力などと協議をしています。5.地元雇用、地域経済への影響への対応、これはなお課題がありますが、今この5つを議論しており、県内では高浜発電所の再稼働が最初ですが、国に求めていきたいと思います。
 高浜3・4号機については、原子力規制委員会が2月に原子炉設置変更許可を行っており、これは設計に当たる部分です。あと2つ手続があり、工事計画認可、それから保安規定変更認可の審査を行っており、間もなく結論が出ると思います。
 先行している鹿児島の川内発電所については、最初の設置変更許可の段階で鹿児島県が同意しましたが、その間半年以上動いていませんから、やや課題があります。我々としては、この3つを全部チェックしながら市や町と連携して、大丈夫かという見方で最終的な方針を出したいと思っています。あとなお少し日時がかかるだろうというように思います。
 特にこの中で、原子力発電の重要性あるいは必要性に対し、国民理解を強く政府に求めたいと考えていますが、まだ十分な答えはなされておりません。この点はきわめて重要なポイントですので主張を続けたいと思います。
 また、40年以上の原子力発電所の運転延長、老朽化した原子力発電所の廃炉、そして中間貯蔵の対策といういくつかの重要な問題の手続については、福井県が先行して方向を出さなくてはならないという言わば使命のような地元の立場にあります。再稼働だけは川内が先に行きましたが、ほかのあらゆる問題は福井県が解決しなければなりません。これに対するしっかりした回答と政府の協力、あるいは国民へのアピールをいただかないといけません。
 なお、原子力規制委員会は制度上の課題があり、ちょうど3年経過し、制度の見直しの時期です。従来から、委員会を監視・勧告できる「監視・評価機関」や活断層の評価を所管する新たな政府機関の設置を求めていますが、そのようにできるかどうかは、なお疑問であります。
 いずれにしても原子力の人材の確保が大事であり、残念ながら研究者や技術者は、韓国へ行って勉強しているような状況であり、これでは困るのです。原子力人材の育成などIAEAなどとも協力しながら取り組む必要があると考えています。  


3 高速交通体系の整備進展

 北陸新幹線については、福井県が独自に提案をし強く求めた3年前倒しでの敦賀までの開業が、この1月に決定しました。敦賀以西の見通しについては、この夏に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会が発足し検討が始まると思います。われわれは若狭ルートと言ってますが、別の意見もあるわけです。新聞などでもご覧いただいていると思います。正式ルートは若狭ルートであり、国土強靭化、時間短縮効果などを考えても小浜付近を通る若狭ルートであるべきです。議論も必要ですが、県民益にかなうような方針を出していきたいと思います。
 なお、福井先行開業についても、この夏に結論を得る必要があり、あと1か月ぐらいかと思います。先行開業の検討委員会は10回以上開催されておりますが、その方針のもとで対応をしたいと考えております。
 なお、金沢から敦賀間における福井県内の用地買収などについては、現在、職員を52名に増員して、この問題に当たっています。 
 高速道路については、「中部縦貫自動車道」が2年後には大野まで開通し、さらに大野から岐阜県境までの整備は、少なくとも8年以内には北陸新幹線が敦賀まで開業しますので、開業効果を高めるためには、中部縦貫道についてもその頃の時期での全線開通が必要と考えています。
 また、3年後の福井国体や5年後には東京オリンピックが開催されますので、そうした時間軸を念頭に鉄道、道路などインフラの整備と活用について具体的にどう対応するかという「アクションプラン」をつくりたいと思います。仕事の分担をどうするか、県と市町の行政と民間との役割などを決めて実行できる計画にしていきます。プランについてはできるだけ図解ができるようなものにしなければなりません。嶺南・嶺北、あるいは観光地近くの交通もクリアにしなければならないと思います。そして、多くの人たちが福井にぜひ行ってみたいというような計画ですね。まち、あるいは周辺の地域、見る場所、食べ物、お土産、こういうものがクリアにわかるような計画にしなければなりません。 


4 福井国体の開催と会期の正式決定

 最後に、福井国体について申し上げます。先週(7月22日)、平成30年福井国体の開催と会期が正式に決定し、日本体育協会の張富士夫会長から開催決定書を受け取りました。また合わせて、「全国障害者スポーツ大会」の福井県での開催も正式に決定しました。
 この春には、敦賀気比高校が日本海側の都市では初めて選抜野球大会において悲願の優勝を果たしました。
 福井国体では総合優勝を目指していますが、3年前となる今年がまず重要です。本県選手団は、全40競技に例年の2倍となる約900名が出場する見込みであり、このため、現在約1,200名の強化選手を指定し、冬季も遠征に出向くなど年間を通じた強化を進め、段階的に選抜も行っていきます。
 少年(競技により異なるが、中学3年生~高校3年生が一般的)については、3年後には今の中学3年生が主力となりますので、指定選手の約300名が来年春に重点強化高校に多数進学できるようにしていかなければなりません。中学および高校が協力してサポートしてまいります。
 また、成年(4月1日現在で18歳以上)については、スポーツ選手の県内企業への就職を支援する「スポジョブふくい」を昨年開設いたしました。これにより有力選手を200名程度獲得する予定で、この春は48名が就職しましたが、来年春には60名を獲得する予定です。雇用については、県内企業の皆様方のご協力をいただいているところであり、感謝申し上げます。
 また、来月から、大会への募金・協賛の募集を開始することとしており、企業および団体の皆様のさらなるご理解とご協力をお願いしたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

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