福井県中学校長研修会での講話

最終更新日 2010年2月4日ページID 000524

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 このページは、平成19年11月8日(木)、福井厚生年金会館で行われた福井県中学校長研修会での講話をまとめたものです。

191108講演写真1 10月から、NHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」が放送されています。放送時間は、朝の通勤や昼食の時間帯です。衛星第2では夜の7時30分から、土曜日には1週間分まとめて放送されています。地元で初めての朝ドラであるので、是非見てほしいと思います。校長は地元の会合も多いでしょうから、そのようなときにも話題にされたらいかがでしょうか。
 朝の連続テレビ小説は、昭和30年代から始まっていますが、77回の中で初めて福井が舞台になりました。福井の方言はこのような話し方をしているのかな、などと色んなことが教えられますので、このドラマの人間像は学校でも使えると思います。
 また、主人公の和田喜代美さんは、A子さんに対してB子さんというヒロインなのですが、大事なときに失敗もします。しかし、悩みながら目標を達成しようとする新しいタイプの女性です。今までの朝ドラにはなかったストーリーだと思います。このキャラクターは、学校の教育には重要ではないでしょうか。クラスのみんながスーパースターではありません。得意、不得意はあるでしょうが、頑張って持ち味を活かせば、ひとかどのものになります。そのような意味で重要です。子ども時代は悩みが多く、努力もし、周りから認めてもらいたいと思っていますが、それがなかなかうまくいかない。悩んだり学校へ行かなかったりするお子さんもいらっしゃるでしょう。その意味で参考となるドラマと思いまして、ご紹介させていただきました。

 さて、校長は小学校、中学校、高等学校とそれぞれですが、私の独断かもしれませんが、校長で一番難しいのは中学校だと思います。以前に教育の話をしなくてはならないときがあり、図書館で教育の本を探しました。校長の体験コーナーにある本に、小学校の校長は、本当に校長は楽しいと書いてあるのです。子どもたちは日々成長し、自分が授業をしたり校長室に子どもを呼んだりして、こんなに生き甲斐のある仕事はないと書いてありました。
 ところが、中学校になった途端暗くなるのです。20年ほど前の、学校が荒れた頃の大都市の先生の話でした。学校をどうするのだ、子どもをどうするのだということで、親も大変でした。大都市では中学校受験がありますが、先生はほとんど関わりません。中学校の校長になると、部活動もあり、プレッシャーがかかってきます。学校間での競争もあります。子ども自身が変わり目で、精神的にも肉体的にも変わります。学習内容も異なります。算数から数学になり、英語も教えます。それだけ中学校は悩みが多いと思うのです。
 さて、県内の中学校を中心にいろんな成果が出ておりますのは、皆さん方の一教師の時代、そして今の校長としてのお立場での努力もあると思います。お礼を申し上げます。熱意を持って明るく実行すれば、今より学校は改善するはずです。逆になれば進歩しません。とにかく自分がこの学校にいる間は問題を起こすなでは、西部劇に出てくる保安官の台詞みたいになります。そのようなことでは学校は良くなりません。みんなで立ち向って、子どもを育てていこうという気概と努力が必要です。
 今回初めての学力テストの学習成果が出たことで、私としても誇りに持っていますし、ありがたく思います。小・中学校とも1、2、3位で、特に中学校が良く、応用で良く、難しいところが好成績となっています。
 これから分析をされるようですが、先生方が熱意を持ち、家に教材を持ち帰るほどの努力があるからだと思います。真面目に取り組んでいる。先生の熱意が学力に反映する。これが一番の原因だと思います。
 「教育・文化ふくい創造会議」でも、福井の先生のレベルを委員の皆さんから評価をいただきました。しかし、新任の先生になった頃が一番すばらしく、次第に下がっていくことが問題だと言うのです。日々、努力していただかなければなりません。子どもたちは毎年入学し卒業してゆきます。毎年同じ生徒を相手にしているわけではないので、先生が向上しなくても済んでしまう、ということがあってはなりません。先生の教育力を上げていくことが重要です。

 私は、以前東京に住んだことがありますが、通知表は親が取りに行かず子どもに渡します。保護者会はこれとは別に親が行っていました。どちらがよいか分かりませんが、福井では親が関心を持っていて、学校に来やすいことの一例でありましょう。子どもに直接渡すのも一案です。親とは別の時にゆっくり話をすればよいのではないでしょうか。意見が分かれるところではありますが、子どもには時々現実的な思いをさせた方がよいかもしれません。親から言われるよりも効果があるのではないでしょうか。
 福井では、家庭が関心をもっていただいております。教育委員会や我々も少人数学級など、「元気福井っ子笑顔プラン」などをしていることが実例として挙げられるでしょう。さらに、昭和26年から学力のテストを、たゆみなく行っています。これは、全国にない大事なことです。それによって、教材や到達度のチェックができています。普通、テストというのは成績主義だと言いますが、私はそうは思いません。いかに良いテストの問題を作れるか、それがその県の先生の力であり、学力の源であると思います。最も適切な問題を設定し、子どもに解いてもらう、これが極めて重要ではないかと思います。最近、大学でも予備校にテストを作ってもらっています。合理的な考え方ではありますが、自分の大学で入試問題を作れなくなると、それは大学としてどうなのか疑問に思います。作れないから作ってもらうというのは良くありません。ですから、福井がずっと学力テストの問題をつくり、チェックしてきたことは成果があったと思います。テストは目的ではなく手段ですので、そこに意味があると思います。
 時には、親に子どものテストを解いてもらえないかと思います。どんなテストでどのような問題が出題されているのかを知ってもらいたいと思います。さすがに、中学校レベルになりますと大変でしょうが、教科書を見て、どんなことをしているかを知っていただく体験もいいかと思います。親に子どもの学習状況や部活動に関心をもってもらいたいと思います。全国学力テストの問題は新聞に載っていましたので、親がやってみると、どういう内容でどういうレベルなのかを知ってもらえると思います。  また、学力のみならず、学習の調査も行っています。今回の国の調査は、福井県が昭和26年から続けてきた調査も参考にされたとも聞いています。これから分析が必要と思いますが、学習面ではどうもテレビを見る時間が長いといったことがあるようです。その分析を学校ごとに行い、改善していただきたいと思います。
 これから、少人数学級が課題になるでしょうし、小学校と中学校との連携も重要だと思います。すでに中高一貫は特定の学校で行っています。とくに小学校と中学校では、教える内容につながりがあり、中教審では、小学校は4年まで、5、6年は中学校だという発想も出ているようです。そこまではどうかと思いますが、連携の方法を論議する必要があるでしょう。今回の「教育・文化ふくい創造会議」でも提言をしています。
 先生には教え方を研究していただいていますが、福井大学、教育研究所等と協力し、効果的な教え方の研修を広めて欲しいと思います。特に、今回の提言では理科と数学の強化をあげており、中学校で数学が日本一ですが、高校に入ると、例えばセンター試験などであまり成績が良くないので、何かいい方法で子どもの能力を伸ばせないかと思っています。

191108講演写真2 1週間ほど前、物理学者のアメリカ人のハインマン博士の本を読みました。朝永振一郎さんらと3人でノーベル物理学賞を受けた人です。その自伝には、物事の定理とか規則とかの名前を教えることが理科教育の眼目ではなくて、なぜこれがこうなったかを教えるべきで、名前を教える理科教育は良くないと書かれていました。例えば、コハクチョウという名前ですよと言うのではなく、この鳥はなぜこのような行動をとるのだろう、昼は何をしているだろう、夜はどうしているだろう。鴨とはどこが違うのだろうといったことを教えることが理科教育の基本だと書いてありました。ハインマンは、お父さんにそうしたことを習って物理に興味を持って勉強したようです。観察や実験はしなければなりませんが、ワンパターンでやってはいけません。発想を磨かなければならないと思いました。
 また、最近読んだ本に、英語の「文法の原理」という本があります。その本は上・中・下とありまして、著者はデンマークの学者で、イエスペルセンという人です。読んでいてなるほどと思いました。あの時習った英文法は、もう少しこんな習い方があったかなと思いました。全く一例ですが、名詞には、固有名詞や普通名詞があります。固有名詞でも複数形になるのですね。何故かということですが、例えば、ローマというのは固有名詞ですが、ローマはイタリアにあるだけではなく、アメリカにもローマという町が四つあるそうです。固有名詞、普通名詞は学校では原則と例外をこうだと一律に教えますが、実際にはあまり区別がないことが分かりました。先生方に、もう一つ上の知識を是非身につけてもらい、子どもたちに良い教育をしてほしいと思います。このことは、あらゆる学問に共通で、高いレベルの知識を持っていただきたいと思います。
 また、社会科こそ、最も先生方の知識や教養、熱意が如実に現れる学問だと思います。数学が面白い面白くないという差は、社会科ほどではありません。社会科の先生こそ、何でも知っていなければならないと思います。

 白川文字学について、先日、先生が生まれられた佐佳枝神社の西口の所に「遊」という古代文字の記念碑を作りました。白川文字学を広げて欲しいと思います。小学校で教える漢字の数は1006文字です。中学校は何文字あるでしょうか。配当表を見て確認してほしいと思います。先日、教育委員会が文科省と相談をしました。1006文字は学年ごとに配当表があります。福井の「井」は小学校で教えない、そうなると小学校で「福井県」の漢字が教えられないことになります。また、あなたの名前を漢字で書いてくださいという試験を小学校でやってはいけないのか。学年の配当の弾力化、1006文字を超える漢字、それを試験に出すこと。これらを文科省に特区申請をしましたが、しかし、しなくても弾力的にできることが分かりました。先日、大阪大学名誉教授で漢文(中国文学)がご専門の加地伸行先生にお会いした際に、先生は、我々が何十年と頼んできたことが、やっとできたと喜んでいただけました。こういったことで、白川文字学を教えやすくなりました。白川文字学では、文字を考古学的に、歴史的に、系統的に由縁を説明しています。子どもたちには非常にわかりやすいですし、国語教育の漢字に荷が重くなく、合理的な流れで教えられます。福井県が白川文字学のメッカになることを願っております。校長にも、白川先生の本を読んでいただきたいと思います。

 今回、学力学習調査でいい成績が出ましたが、教育委員会によると「一喜一憂するな」という心構えのようです。現状をしっかりととらえながら、皆さんのご活躍を祈念いたします。 



 

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