ふくい河川防災フォーラム2008での講演

最終更新日 2010年2月4日ページID 006959

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 このページは、平成20年10月5日(日)に行われたふくい河川防災フォーラムでの知事の講演をまとめたものです。

201005講演写真1 ご紹介をいただきました西川でございます。今日はあいさつ方式をやめ、平成16年の福井豪雨による水害からの復興の様子などを講演という形でお話したいと思います。
 なお、今日は東京大学の田中先生にご講演をいただきます。先ほど先生とお話をしていましたら、お父様が小浜市の出身ということで、福井県にご縁のある方です。これからも福井のこと、災害のことについて継続的にご指導いただければありがたく思います。
 また、福井大学の福原先生にはアーカイブスということでご講演をいただきます。先生にはこれまでも河川の委員会などでご指導いただきました。
 さらに、最後にパネルディスカッションが行われますが、パネラーの皆様にも福井を舞台にして様々な問題を論じていただきます。
 どうぞよろしくお願いします。

 さて、福井豪雨による水害から4年が経過しました。今日は足羽川の河原で収穫祭が行われていますが、足羽川など福井豪雨で被害を受けた河川では、激特事業などにより5年間という期間で復旧作業を行っており、今年度はいよいよ最終年度であります。節目の年であります。

 しかし、福井豪雨以降も局地的な短時間での集中豪雨、そしてそれに伴う気象警報が頻発しています。ひと月に何回か夜中に電話がかかってきまして「警報だ」という事で起こされることが多いのです。職員に対して「警報が出たら必ず連絡するように」と私が言っているものですから、自分で起きざるを得ないのですが、幸い、それで大事に至っていないということですので、それでいいかな、と私は思っています。いろんな意味で今日はそういう状況をお話したいと思います。
 昨日、NHKの気象予報士の半井小絵(なからいさえ)さんが講演のため福井に来られ、短時間お話を聞く機会がありました。毎日2分程気象の報告をされるようですが、その準備に半日かかるようなことをおっしゃっていました。いろんな情報をとりながらですね。ですから、防災というのはもちろん本体も大変ですが、予報についても同様でありまして、多く準備して短時間の勝負だということを痛感したところであります。

 さて、福井豪雨による水害からの復旧であります。まず、ハード・ソフト両面のお話を申し上げなければならないでしょう。
 まずハード面の対策ですが、一つは洪水が発生した場合も水が溢れないように早急に河口に流れ出るようにということで、足羽川激特事業、それから足羽川災害復旧助成事業の2つを今進めているところです。
河川激甚災害対策特別緊急事業、つまり激特というのは、5年後の今もし同じような災害が発生した時でも、それを防げるという水準とスケールの工事でありますし、災害復旧助成事業というのは、原形復旧だけではつまらないということで、より安全にですね、プラスαを加えるというタイプの事業です。
 河川能力の向上につきましては、現在激特事業で進めておりまして、蛇行している箇所あるいは堤防にぶつかって流れにくいようなところを、曲線を変えるなど様々な方法で行っています。
 それから、橋には「橋脚」というものがございまして、昔のものは橋脚がたくさんあります。橋脚は構造上やむを得ないが流れの阻害要因となりますので、橋梁の架け替え、橋脚の減少というのをこの激特事業で行っています。
 幸橋、泉橋、木田橋、この三つの橋について架け替え工事を行っていますが、こんな限られたところで大きな工事を行っているのは日本では他にないかと、そんなふうに感じています。泉橋については来年の2月、泉橋については今年の12月の完成をめざしています。幸橋についてはすでに完成していますが橋両側について公園部の最終工事をしているところです。
 それから、福井市内のみならず鯖江そして上流の旧今立町(越前市)についても災害復旧助成事業を進めています。

201005講演写真2  次に、ソフト面の事業についていくつか申し上げます。
 まず情報収集の強化ということで、県では雨量や水位情報の観測所を増設するとともに、リアルタイムで監視できる監視カメラも設置しています。今ちょうどその様子が見えていますが、これまで意外と川の様子がどうだということを分からないまま、防災、応急対策等を不安な気持ちのままにやっていることが多かったわけで、そのようなことがなくなると思います。
 それから情報提供の充実については、県では「福井県河川・砂防総合情報」を新たに開発し、県内全72箇所の水位情報、85箇所の雨量情報、それから11箇所の河川監視カメラによる情報を収集し、リアルタイムでインターネットや携帯電話で情報把握が可能となっています。もちろんこれを把握したからといって直ちに災害に備えるわけではなくて、情報の一部だということをいつも念頭において、我々は仕事をしなければならないと思っています。
 携帯電話が普及している時代ですから、情報提供についても充実強化を図っていきたいと考えています。これによってぼんやり時間を過ごすということがなくなると思います。何かが分かっていれば、次のことが出来るというのが防災上重要です。全て分からなくてもいいわけで、少しでも一部分かっていることが緊急の時には重要だと私は思っています。

 それから、次に気象台との連携であります。福井県では全国に先駆け、あらゆる災害において気象台の方に参画いただき、最新の情報をペーパーではなく口頭で、実感をおっしゃっていただくようなシステムを平成16年以降とっています。我々も勉強になりますし、現実的な対応が出来るだろうと思っています。
 また、毎年数回行われます県の防災会議ですね。これは防災計画を見直したりする会議でありますが、そういうところにも気象台長に委員として参加をいただき、専門の立場から意見をいただくようなシステムをとっています。
 それから、洪水予報につきましては、県内の主要な五つの河川について、気象台と共同して洪水予報を実施しており、迅速なる避難が可能かと思います。

 さらにハザードマップ、これはひと昔前ですとこんなものがあると自分の場所が危ないんじゃないか、問題ではないかと、これは河川のみならず地震でも火山でも同じようなことを住民の方が言うことがあったのですが、最近はそのようなことはなくなりました。
 そういう意識の改革と同時に、自分の住んでいる地域がどんな状態かということが分かることが一層重要かと思います。そこで、県では20の主要河川においてどの地点でどのくらいの水位になるか、浸水想定区域図ですね、これを作成しまして、現在13の市や町でハザードマップの作成が完了しております。まだ4つの市や町で出来ていませんので、急いで作成していただきたいと思っています。
 同時に、災害時の要援護者の避難支援プランというのが重要です。どうしても遅れがちになる、このようなことが起こりうるわけであります。この避難支援プランの作業を全市町において進めています。全体の計画は10の市町ですでに作成済みであり、残りの市町でも現在作成中です。

 次に、水害と同時に、小規模にも大規模にも土砂災害というのが起きているというのが日本の現実です。そして、生命の危険に最も関係のあるのがこの災害です。土砂災害については、災害のおそれのある危険箇所について、危険であるということを、まず地域の人が知っている必要がありますので、その指定を行っています。現在約7,000箇所ある危険箇所のうち、5,900箇所余りについて指定を終えており、今後も更に指定作業を進めてまいります。
 もちろん砂防ダムとか擁壁などもございますが、いち早く避難するというのが何よりも重要ですので、そのような考えで臨んでください。

 それから実際災害が起こった時の復旧の話を申し上げたいと思います。
 住宅再建費用の助成であります。これは平成16年の福井豪雨による水害の時に我々が先行的に実行したのですが、国はなかなかこういう制度を充実していただけないのが現実であります。国土交通省は熱心なのですが、予算の関係で様々な折衝をしていると、どうしても話が小さく、要件が難しくなってしまうようです。日本全国で一斉にこういう災害が起きるわけではありませんから、その地域で応援をしてあげるというのが日本の国として必要なことだと思います。
 これまで全部家が壊れるとようやく応援してくれるとかですね、ちょっとではダメだというのが多いのです。細かいお話は省略しますが、福井県としては全部壊れなくても半壊とか一部損壊でも応援するという制度を設けておりますし、全部壊れた場合でも、国より手厚い支援内容となっています。

 もちろんこれが全てではありません。ご自身でやっていただかなくてはならないこともあります。しかし、いざ困った時に、公のシステムが見捨てずに応援するんだ、というメッセージを先ず強く出すことが何よりも重要でありまして、これからも充実していかなければならないと思っています。
 福井の県民の方は、そういう制度は世話になるのは申し訳ないから自分でやりますと、そんなことをおっしゃる方が意外に多いのが現実であります。それはそれとして、ちゃんと準備はしておくよということが重要かと思います。

 それから次に人的な問題、災害ボランティア活動の支援であります。何と言ってもお金の面あるいは公共事業の面はともかく、いざ復旧の際に多くの人手あるいは気持ちというのが重要であります。福井県は福井方式ということで、公とボランティア、あまり厳密な線引きをしません。互いに協力して「協設協営」と言いますか、そのような方法をとっています。
 県では災害ボランティア活動推進条例を制定し、ボランティアの方々が県外の被災地に行って活動する際にも、ボランティアセンターのスタンバイや活動に要する経費など、必要な経費についての支援が可能となっております。
 また、リーダーの養成なども、この福井県が先進的に実行しているというのが現状です。

201005講演写真3 それから、最後に応急・復旧そして数年間の復興事業というのがあります。
 さらに復興から次の長期的な環境保全などの最後の分野でありますが、桜堤の問題であります。
 足羽川堤防の桜堤は「全国桜の名所100選」に選ばれています。本来ですと、桜堤をそのまま保存したい気持ちは山々ありましたが、防災上の問題からそれはかなわぬということでありますので、出来るだけ現状を維持しながら長期的にこの桜堤を地域のみなさんに愛されるような形で整備をする必要があり、東京農業大学の進士先生などのご意見をいただきながら、環境整備の検討会をつくりまして方針を出したところであります。
 これが、桜堤における整備後の予想されるコンピューターグラフィックです(パワーポイントで紹介)。10年後にはこんな風になると、特に堤内といいますか外側の方ですね、それについてはいろんなタイプの桜を植えて、春の嵐が来たらすぐ全部散ってしまうということがないように、かなりの期間桜が楽しめるような樹種を複合して整備をすることを考えています。

 その他、河川敷の利用につきましては今様々な議論がございます。工事用の道路を残して散歩に使えるとか、左岸と右岸、橋ではなくて河原を上手く渡って行くにはどうしたらいいかとか、あるいは浸水空間としての堰の問題もありましたが、これは皆さんのご意見をいろいろお聞きしながらこれから考えていきたいと思います。水は円滑に流れるものの、何となく親しみのない川というのでは困ります。皆さんが親しめる足羽川にしたいと考えております。

 以上、簡単に応急・復旧、復興、環境保全の順でお話をしたところであります。今年の災害の状況を見ましても、これから非常に新しい形で災害が我々を襲ってくるわけでありますが、そういうものに絶えずプロ・アクティブといいましょうか、前もって幅広く防災をすると同時に、我々としてもこういう課題に市や町の皆さん、そして防災関係者の皆さんと手を携えて進めていきたいと考えます。

 今日のこのふくい河川防災フォーラム、こうした機会を通じてですね、県民の皆さんにも是非お話を広めていただいて、幅広く防災に対応していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 どうかこれからも皆様の一層のご活躍を心からご祈念申し上げ、私の講演といたします。ありがとうございました。



 

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