次に、子どもたちの「夢」や「希望」に関すること、が大事だと考えています。全国学力テストと併せて子どもたちに学習状況調査も行っていることは、皆さんご承知のことと思います。そして学校に対しても同問の調査が行われています。
中学校の生徒に「将来の夢や目標を持っていますか」との問いに、「持っている」と答えた福井県の中学生の割合は40%です。全国で39位です。学力は高いが希望を持っている割合は高くありません。満足しているからということもあると思います。いろいろな要因があると思いますが、一方、中学校の先生に向けて「夢や希望に向けての指導をしていますか」という質問に対して「している」と答えた学校の割合は62%あります。これは全国1位です。先生はしているというつもりでも子どもたちは希望を抱いていない、ここにギャップがあります。これはなぜかということを日常の中で検証してほしいと思います。
「希望」ということを大切にするために、県では東京大学と連携して「希望学」という研究を進めています。どのようにすれば子どもでもお年寄りでも希望を抱けるかということであります。希望学を研究している先生方は、希望を次のように定義しています。 “Hope is a wish for something to come true by action.” 「ある願いが行動によって実現するという期待である」ということです。定義はともかく、行動しなければならない、様々な人々とのつながりが重要ということです。様々なフィールド調査やヒアリング調査なども大学と共同で行っています。大学側からは「今年は福井の子どもたちと一緒に研究をやりたい、授業もやりたい」と申出がありますので、校長のご協力をお願いします。
数日前に読んだ本に、内村鑑三の「後世への最大遺物」があります。明治27年に発刊された講演録であり、20ページほどの薄い本なので、30分ほどで読めます。内村鑑三という人は、世の中をどうやって正しく渡っていくかということに関心を向けた、いわば宗教家でありまして、この本の中で、「我々は互いに希望を遂げようではないか、死ぬまでにこの世を少しでも良くして死のうではないか」と言っています。また、彼は「希望」を英語で ”Hope” ではなく “Ambition” と書いています。ということは、有名なクラーク博士の言葉 “Boys be ambitious.”「少年よ、大志を抱け」は必ずしもピッタリした訳ではなかったのでないかということになります。つまり「少年よ、希望をもって行動せよ」というのがクラーク博士の本当の訳かなと思います。明治調のために「大志」とか「野心」になったのかと勝手に思っています。英語の先生に是非この本を読んでいただいて、子どもたちの希望というのはどういう意味なのか究明をしていただければありがたく思います。