新規採用職員研修での知事講話

最終更新日 2018年4月9日ページID 038517

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 このページは、平成30年4月9日(月)に自治研修所で行われた、新規採用職員研修での知事講話をまとめたものです。

  皆さん、おはようございます。

 辞令交付式において話をしましたが、今日はそれについての意味なりを補足して話したいと思います。皆さんに、今その時の挨拶のコピーを配りましたので見てください。

 

 まず繰り返しますが、採用のこの年は3つのことがあったことを記憶してほしいということです。

 1つは大雪があったこと、それから今年は50年ぶりの「国体・障スポの年」であるということ、そして幕末明治150年のことです。

 なぜそんなことを言うかということですが、皆さんが公務員をこれからずっと三、四十年勤務されますと、大体2050年ぐらいのころあるいは定年が70に延びて2060年ぐらいになるかもしれません。そうすると、明治200年に近くなるであろう、それくらいの歴史的な時間の中で皆さんが生活し、公務員としての仕事をされるという意味なのであり、だからそのスタートの今年の出来事を記憶してほしいということです。

 とくに37年ぶりの大雪でしたが、皆さんはもちろん経験したことがない、それからさらに前の55年前の38豪雪です。これを18で割ると55年前、37年前、その間に18年前がとびまして、今回という大きな災害のサイクルになりました。

 もちろんナホトカ号の重油流出事故や福井の水害もありました。災害の波といいますか、大雪などはある程度サイクルで来ると思いますし、地震などは突然来るかもしれません。そういう意味で皆さんの一生涯における大きな出来事、またこれからも類似の災害があることを想像して記憶していただきたい。



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 先日は大きなピクチャーを描いてほしいということを言いました。30年や50年という大スケールの中でピクチャーを描いてほしいということ。単に絵とは違います、大きなデッサンというか、英語の本来の意味のデザイン、ピクチャーを描いてほしい。そして皆さん方を含め私達の目標としては県民の究極の願いである幸福度を追求する。現在福井は幸福度日本一であり、今年2年ぶりに4回目の調査がありますが、引き続き幸福度日本一を目指しています。しかし、これが続くかどうか簡単ではありません。

 幸福度の第2位は東京都です。普通は東京が1位で福井が2位のはずが、福井が1位というのは1つの大きなアンチテーゼであるわけです。小さい県だけれどもパワーを持っている、ここを大事にしなければなりません。これを究極の目標にしてください。

 幸福度に関連して、「幸」いう字についてです。「辛」に一本足すと「幸せ」になります。今苦しくてもちょっと我慢すると、あと一本の違いで幸せになれる、というようなことがコラムとして新聞に載っていました。しかし、漢字の成り立ちとしては、実は違うそうです。

 白川静博士の白川文字学では、象形文字の「辛」は刑罰で尖ったもので入れ墨される様子を示しているそうです。「幸」もおどろいたことに刑罰の手ぐさりの様子らしいのです。古代的なすごみがありますね。でも「幸」は「辛」ほど苦しみにも合わないし、手をくくられている位だからましだという意味だそうです。一本の違いで苦しいときから幸せになれるから我慢しようという、そういう使い方をこの漢字で説明する方もいらっしゃる。そういう物の考え方もおかしくないけれども、本当の字の起源は全く別の意味のものであるということです。物事をいろいろなレベルで本当に究極的に把握した上で、さて今は現実的な可能なことを考えることが極めて重要だという例になると思います。
 

 大きなピクチャーを描いて欲しいと言った上で、皆さんに注意してほしいことを幾つか申し上げました。

 1つは学生のころは全部個人責任ですが、これからは組織の一人であると言いました。学生時代は試験でも一人でしてきたと思います。他力ではなく一人でしかだめだった訳です。でも逆にこれからは組織であり、自分の仕事が下がるとみんなが下がります。全く180度、責任の発想が違う、考える角度が違うと思ってください。

 さらに法律やエチケットいろいろなことをちゃんと守らないと組織として困るというのが注意点だったと思います。
 

 2つ目は全体の奉仕者です。全体というのは非常に遠い、漠然とした観念でして身の回り全部です。だからむしろできるだけ身近なところに全体を引き込んでというか、接近して考えてください。その例はすでに先日申し上げました。抽象的な考えに具体例を合わせながら全体の奉仕をすることがいつも必要ですので工夫がいります。 
 

 3つ目は力とその不足という話です。学生のときによく言われた判断力、理解力、計算力、総合力いろいろな「力」がありますが、力に関連してベクトルの話をしました。

 皆さんには小さいけれどもベクトルがあるということです。ここにいる136人の諸君のベクトルが10センチあるとすると、それを合成すればそれなりの15mほどの長さになります。点は幾ら足してもゼロだけどベクトルはゼロではない。

 組織の中ではみんなが一緒なことをするわけではありません。知事のベクトルがあり、課長のベクトルがあり、皆さんのベクトルがある。組織を動かしている1つだと思ってください。誰かがやっているわけではなくて、皆さんのベクトルがあり、組織の中で合成されているから必ずそれを動かしてください。
 

 これから時代がどんどん変わって、芸能界でもスポーツでも行政でも若い人たちのセンスやパワーが必要になっています。あらゆる分野で若い人のパワーが必要であり、福井県を売り込んでいくときなどは皆さんのパワーはすぐ発揮できますので、ベクトルをしっかり出してください。

 まだ余り実力がない、力不足だなという気持があるかと思いますが、その気持は180度転換して前向きでやってください。

 そして、できるだけベクトルを長くしてください。平面のベクトルがあるけど、できるだけ力をY軸に入れて立ててください。少しでも若い力で頑張ってほしいと思います。

 
 これから公の仕事をするわけですが、いろいろとノウハウや技術が必要です。皆さんがこれまで経験してきた事柄や学んできた事柄を磨いてください。それを磨いて、実践を通して体験をし、その成果を自分が感じるということが大事です。それが皆さんにとって「楽しい」という仕事の意味になります。

 もちろん、これから結婚も考えておられる人も多いでしょう。趣味や楽しみもないと困りますが、一番本当の意味で大事なことはそれだと思います。「自分を磨いて実践し、体験すること」これを繰り返すことが単調に見えますが、逆に創造であると考えてください。

 
 私が最初に勤めたのは広島県庁です。広島県庁の近くに広島市民球場がありました。当時は今とは違い、残業の間に広島・巨人戦などのナイターに誘われました。一塁側に座ると王さんが一塁手にいた時代です。イニングが変わるごとに間がある。王さんがサード、セカンド、ショートとぽーん、ぽーんとボールを投げて受ける、それを2回繰り返して、コーチにボールを送る。一試合9回とも全く同じ動作を同じように繰り返している。そういう単調なものがあるわけです。大選手でも毎日単調なことを繰り返している。おそらくバッティングも単調なことが繰り返されたと思います。プロ野球もTVで視るとは違って、コマーシャルの間に退屈なことがなされているんだなとつくづく感じました。一見単調であるが、しかしそこからいろんなものが生まれてくる。私たちの知らないところにも単調な努力がきっとたくさんあったはず。

 記憶に間違いがなければ、王さんの引退はこのことに関係しています。あるとき突然サードから戻ってくるボールが無意識なまま捕れなくなったそうです。サードにボールを転がすとサードから返球がなされますね。それを意識的に捕球しなければならないような状態になったということです。つまり視力とか運動神経が自然に変化したのではないかということです。単調じゃなくなったと。
 

 県庁の仕事が単調なのだと申し上げたいわけではありません。しかし一見単調なこと退屈のように見えることがあるはずです。その時、今の話を思い出して欲しいのです。仕事というのは創造的であるけれども、割合に単調なところも根っこにはあり、絶えず基本に継続的なことを置きながら新しいことに挑戦をするという考えで臨んでください。

 先日もグッドジョブ賞やグッドウィル賞等ありました。別にこれを受けるのが目標ではありませんが、いろんな新しい仕事に挑戦をしてほしいと思います。
 

 皆さんは力が不足していると感じるかもしれませんが、皆さんの前には皆さんができないようなことは決して起こりません。王さんには王さんのできることしか起こらなかった。ピッチャーがボールを投げる、打つ、ゴロを返す、そういう動作しか行わない。現に違うことは起こらないということです。もし、皆さんのできないことが起こるとしたら、それは皆さんの能力を超えており目にも見えないと思います。やれることが目の前に起こってくると感じたら、できることがやって来たという意味になります。私も同じで、知事は知事ができる仕事しか目の前に起こりません。できない仕事は気がつかない、残念ながら通り過ぎてしまう。
 

 そうなると、一番困ったときにどんな気持ちでいることが大事でしょうか。

 心構えとしては、大げさな言葉ですが私の経験から一寸の「勇気」を持ってです。できないことはほとんどない、しかも難しいことは長く続かない、一瞬で試練はすぐ過ぎてしまう。それで残念ながら終わってしまうのです。気持ちを後退せずに一瞬のガッツを持ってやること。ひるんで後退したらいろいろ問題が起きます。
 

 では、あとは一般的な話をいろいろします。

 ラジオを聞く習慣のある人はいますか。特に第2放送が知識の宝庫だと思いますから、ぜひ聞いてください。「仕事学のすすめ」や「30歳になったときにどうする」など、いろいろおもしろい話もありますし、外国語の番組なども非常に程度は高いと思いますから、使ってはどうでしょうか。
 

 皆さんは日記をつける習慣ありますか。

 毎日の経験とか、今日はこんな話でこう思ったとか記帳してもらうといいです。

 あいつはつまらないとか気に入らんとか、そういうレベルの話ではなく、公というか、客観的に見てこうだろうというようなことを自分で整理して欲しい。そうしなければ、あなたたちの成長はありませんから、何年かたってこれがたまってくると意味を有し役に立つと思います。
 

 そしてこの研修の中で、福井県の将来の話を聞かれると思いますので、その点はよく押さえて、自分たちがどんな条件にいるかについて勉強し、これからもそれぞれ自分なりに中身をよくしてください。
 福井県は、幸福度が高くこれから新幹線が5年後に敦賀まで来る、さらに十数年後に大阪までつながる、中部縦貫道が岐阜県とつながる、あるいはそれぞれの市や町のまちづくりが進むと思います。50年に1回ぐらいの非常に大きな節目の年に皆さんが入られたということです。
 

 歴史を履修された方もいると思いますが、歴史にはフランス革命や明治維新など変動期と安定期があります。福井は今、激動期にかかっていると思います。

 日本全体としてはいろいろな事件があり、年号も変わりオリンピックがあり、福井県は国体があります。それから30年後、50年後さらに変動すると思いますので、今までどおりの福井県があると思わないほうがいいかもしれないということです。それに備えて、いろんなことを準備する必要があります。

 そうしますと、どんなことが起きても耐えられるような自治体にしておく必要がありますし、周辺等の自治体との連携、競争さまざまな課題があります。
 

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 新幹線や高速道路により福井県に7000億円から1兆円近くが投入されます。1000億を超えていると非常に大きいです。こういうことは二度とありませんし、5年ないし10年で終わります。

 一種の公共投資のボーナスが起こるわけです。これも全て福井県のお金になるわけではありませんし、東京に流れるかもしれませんが、一定のお金が投入される。そうすると、いろいろな影響が出ますので、現在は割合と上方向の波にありますが、しかし一方で様々なことが起こるから波乱要因もあります。こういう状況の中の皆さんのこれからの何十年ですから、その辺を注意して仕事をしてください。
 

 最後に、「よく物を言う」ようにしてください。

 浄土真宗布教のため北潟の吉崎に本拠をおかれた蓮如上人が、何百年か前のわれわれ福井の先輩に、つまり我々の祖先に対して「あなたたち物言うように」という話を口酸っぱくして教えておられます。物を言わないと仏を本当に信じているのかどうかわからないし、信心の仕方が間違ってるかもしれない、だからともかく物をよく言って、直したり確かめたりしてほしいということを語っておられるのです。
 

第八十七条

 蓮如上人、仰せられ候う。「物をいえいえ」と、仰せられ候う。「物をいわぬ者は、おそろしき」と、仰せられ候う。「信不信、ともに、ただ、物をいえ」と、仰せられ候う。「物を申せば、心底もきこえ、また、人にもなおさるるなり。ただ、物を申せ」と、仰せられ候う由候う。

 

第三百十三条

 蓮如上人、仰せられ候う。「世間、仏法ともに、人は、かろがろとしたるが、よき」と、仰せられ候う。黙したるものを、御きらい候う。「物を申さぬが、わろき」と、仰せられ候う。また、微言に物を申すを、「わろし」と、仰せられ候うと云々。

          (蓮如上人(1415-1499年)「蓮如上人御一代記聞書」から)
 

 言うことはもったいぶらず気楽に「かろがろしく」しゃべってほしい。こっそりと言ったりするとわからないし、困る。あっさりと軽々しく、軽やかに。あんまり難しく考えないで「こう思います」と軽やかに話す。上人はそういうことを我々の先祖たちに口酸っぱくおっしゃっています。

 議論をしたり、対話をしたり、指導を受けたり、あるいは親切をしたり、いろいろなことがあると思いますが、物をよく言い、つぶやかないということです。ぜひ実行してください。以上です。

 

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