北陸経済連合会と北陸3県知事との懇談会での知事発言要旨

最終更新日 2010年2月4日ページID 007026

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 このページは、平成20年10月28日(火)、ユアーズホテルフクイで行われた北陸経済連合会と北陸3県知事との懇談会での知事の発言要旨をまとめたものです。懇談会には、西川知事のほか、石井隆一富山県知事、谷本正憲石川県知事、新木富士雄北陸経済連合会会長など約30名が出席しました。
 西川知事は、「北陸と福井の方向」といった観点から次のとおり意見を述べました。
 Ⅰ 冒頭のあいさつ
 Ⅱ 社会資本整備の促進と人流・物流の拡大について
 Ⅲ 魅力あふれる地域の創造と自立に向けて  

【Ⅰ 冒頭のあいさつ】 
(経済対策)
201028発言要旨写真1 日経平均株価が7,000円台になるなど、経済状況は非常に厳しいものがある。
 私が5年前に知事に就任した時には、県内の失業率が4%近くまでのぼり、これを何とか2%台にしたい、有効求人倍率が0.8であったものを1以上に上げたい、企業倒産をどう防ぐかなどの課題があった。ようやく失業率が日本一低いとか、有効求人倍率は北陸全体が高いという状況に至ったとたんにこのような状況になった。局面に差があるが、全力で次の対応を考えなければならない。
 来月には「経済戦略政策会議」を開催し、福井県としての新たな経済戦略について、県内中小企業など皆様の意見を聞き、早期に対策をまとめていきたい。
 北陸は中小企業のものづくりやエネルギー分野などが比較優位の産業である。
 北陸全体で連携し、さまざまな企業の皆さんの応援をしていくことで、他の地域に負けないよう、この厳しい局面を打開することが重要である。

(国土政策)
 こうした中、新幹線、高速道路、空港、港湾など基盤となるインフラが日本全体で整備されることが重要である。今、政府においても経済政策が進められているが、何と言っても国土全体のネットワークや地域に基幹的な社会資本の整備を経済対策の中に盛り込む必要がある。
 万遍なく全てのことを実行するのは難しいが、地域の重要課題に対するそれぞれの支援が薄いように思う。バランスの良い経済政策、その中で新幹線や高速道路などの問題を訴えていくことが、日本の経済政策としても、北陸の振興としても極めて重要である。

(人材育成)
 先般、南部陽一郎先生がノーベル物理学賞を受賞した。先生は若い頃、福井で育ち、教育を受けた。
北陸は科学技術、学問が発達した地域である。全国学力・学習状況調査においても北陸3県は全国トップクラスである。これも比較優位の数字だけでは測れない資源である。このことを3県で力を合わせてアピールして、人材育成、教育の充実を図る必要がある。

(ふるさと納税)
 これから経済状況が厳しくなると、税収面への影響を懸念しなければならないし、いかにこうした財政問題に取り組むかということが重要である。
 福井県が提唱した「ふるさと納税」が今進められているが、大都市と地方の関係、大都市に出ている人たちと地方とのつながりを重視しながら、日本全体でバランスのある人の動きや、地方への人材の還流ということに取り組む必要がある。

 様々な課題があるが、皆様とともに全力で取り組みたい。本日は、皆さんと積極的に意見交換をさせていただき、有意義な会議になることを心から祈念する。

【Ⅱ 社会資本整備の促進と人流・物流の拡大について】 

(交通ネットワーク)
 北陸新幹線や中部縦貫自動車道など、北陸経済圏の交通ネットワークでつながっていないところを最終的につなげる大事な段階である。
 政治的には選挙だとか動きがあるが、年末にはぜひ決定をしていただく必要があるので、北経連にも引き続きよろしくお願いしたい。
 北陸新幹線については、敦賀までの整備により、東京までの時間が富山で1時間、金沢で1時間20分、福井で50分それぞれ短縮されると同時に、大阪・名古屋までは富山から1時間、金沢から40分それぞれ短縮される。(福井は残念ながら10分しか短縮されないが。)一日も早く敦賀までの整備方針を打ち出すことが必要である。
 中部縦貫自動車道については、東海北陸自動車道と接続されることでネットワークが形成され、産業・観光面での効果が期待される。早期に整備されるよう国に働きかけていきたい。
 舞鶴若狭自動車道については、平成23年度に小浜まで、平成26年度に敦賀まで延伸され、北陸自動車道とつながる。これにより、富山県から福井県まで一本の重要基幹道路が完成することになる。
 現在、福井県では新しい観光計画を策定中であるが、広域観光は重要な課題であるので、郡上との連携、加賀との連携、湖北との連携、京都・舞鶴との連携など、この計画に入れたいと考えている。
 これら「ミッシングリンク」をつなげることは、北陸にとっても日本全体にとっても極めて重要である。今後とも、北陸経済連合会および北陸3県が力を合わせて、整備促進に向けて連携を強化していきたい。

(港湾)
 港湾については、北陸3県とも歴史のある港がある。福井県では、敦賀港、福井港の整備を進めている。
敦賀港については、現在、多目的国際ターミナルの整備を進めており、先般マイナス14メートルの大水深岸壁が完成し、一部供用を開始した。物流のインフラ整備を進めているので、多くの企業のご参加をいただきたい。また、北東アジアとの航路開設に向け、敦賀市とともに社会実験を検討しているところである。
 九頭竜川河口の福井港については、平成17年の関税法上の開港以来、外航船入港隻数が増えている。数年前までは10数隻だったが、平成19年には200隻を超えている。
 今後とも、港湾の整備に努力するとともに、北陸3県の港湾で役割分担しながらその利活用を進めることが重要である。

(小松空港)
 小松空港については、福井県の空港でもあるとの認識であり、JAL、ANAの時刻表や機内誌には「小松空港(金沢、福井)」と記載されており、今後も協力して利活用を進めていきたい。
 安宅PAスマートICについては、1日当たりの平均利用台数が、当初の260台から390台になり、まもなく400台になろうとしている。この水準を維持し、常設化を図る必要がある。

(教育観光・産業観光)
 先週、北陸も含めた中部圏広域観光推進協議会の代表で上海に行ってきた。北陸を含めてPRをしてきたが、今回は特に学校の修学旅行について、上海の学校の先生方に会い、北陸に来てもらうよう要請を行った。また、北陸も含めた中部地域は学力や産業も優れており、教育観光や産業観光の観点も併せて強調してきた。
 中国から観光に来てもらうには名目が必要であり、教育観光や産業観光を重視して来てもらうと同時に、我々も向こうへ行く必要がある。一つひとつしっかりと実績を高め、量的に何倍にするということだけよりも中身を良くしていくことがこれからの課題である。

(全国植樹祭)
 来年6月7日、一乗谷朝倉氏遺跡で全国植樹祭を開催する。第60回という節目の大会であるので、ぜひ皆様にもそれぞれの立場でご参画、またご関心を持っていただきたい

(陽子線がん治療施設)
 福井県では、平成23年3月の治療開始を目指し、陽子線がん治療施設を整備している。これは、前立腺がんなどに適応し、治療する部分だけに集中して陽子線を照射するという新しい治療施設であるが、現在日本海側にはこうした施設がない。
 また、陽子線治療は現在保険が適用されないので、同様の施設を有する他県とともに保険の対象になるよう働きかけていきたい。
 さらに、本県が整備する施設は年間400人の利用がないと収支が合わない。北陸3県において広く利用をお願いしたい。

【Ⅲ 魅力あふれる地域の創造と自立に向けて】  

 (環境・エネルギー)
201028発言要旨写真2 ものづくりも大事であるが、あわせて環境・エネルギー政策にアタックする時代である。
 福井県では「エネルギー研究開発拠点化計画」を数年前から実行しており、その一環として、大学、電力会社、企業の皆さんとともに、「福井クールアース・次世代エネルギー産業化プロジェクト」を立ち上げ、今年の6月に協議会を設立し、こうした問題に取り組んでいる。
 電気自動車「アイミーブ」の実証実験については、福井県で最初に実施させてもらったが、電気自動車の普及方策については、北陸は電力供給県であり、電力料金について比較優位があるので、これらを有効に使い、全国のモデルになるような方策を考えていきたい。
 こうした電気自動車の電源として期待されている「リチウムイオン電池」や「燃料電池」など電気を効率的に利用するための技術について、本年度中に研究テーマを設定し、早期の事業化、産業化に向けた研究を進めていく。
 福井県は日本一車の保有台数が多い県である。農家であれば5台。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、そして農作業車。1台は電気自動車に置き換えられる。
 また、今年、運輸局の協力をいただき福井県民が1年間にどのくらい車で走るのか調査をしたところ、全国平均に比べ1割走行距離が多いという結果が出された。できるだけ乗り過ぎに気をつけることも課題である。

(環境教育)
 環境施策については、子どもたちへの環境教育が何よりも重要である。全国初の試みとして、来年度から小中学生向けに環境教育のテキストを作り、自然体験や農業体験などと組み合わせて、福井県の美しい環境を守っていく、こうした環境教育を徹底して行いたい。

(環境貢献度のマップ化)
 今年度、新たに慶應義塾大学と連携し、「地域の環境貢献に関する共同研究」をスタートさせた。地域における電力の需要、供給に着目し、CO2の抑制効果を数値化した全国地図(環境貢献マップ)を作成する。これにより、エネルギー需給や地域の環境貢献度を国の財政制度に反映させる仕組みを検討中である。

(ジェロントロジー)
 従来の社会福祉制度から一つ抜け出し、「ポスト福祉社会」を生活の豊かな北陸において考えていくことが必要な時代である。そのひとつが「ジェロントロジー」、総合高齢学、長寿学という学問である。
 大都市でも地方でも高齢化が進んでいるが、単に高齢化ということで話が終わっているのでは抜本的な解決にならない。今年から「東京大学ジェロントロジー寄付研究部門」と連携し、新しい高齢者総合政策のあり方について共同研究を実施している。
 共同研究では、レセプトデータの分析等による将来の医療費の予測や限界集落と言われる地域の聞き取り調査などを大学と連携し、高齢者の皆さんのフットワークをどう確保するか、春夏秋冬どんな生活が確保できるかなどを総合的に研究している。
 つまり、健康長寿の学問を通じて、限界集落の問題について解決策を見出していこうというのが一つである。

(希望学)
 もうひとつは「希望学」という学問である。福井の子どもたちの学力は高いが、希望度が高いかというと全国平均ほど高くない。
 東京大学の社会科学研究所と連携して現地聞き取りなどを実施しており、来月10日には「福井の希望を考えるフォーラム」を開催し、福井の希望や未来について、新たな視点で意見を交わしたい。
 究極の課題は、福井に一度住んだことがある人に戻っていただくとか、大都市にいる人が福井に住んだり、あるいは時々訪れるためのインセンティブを見出すことである。
 ふるさと納税はお金の面からのアプローチであるが、実際に人々がどうしたら移動してくれるか、こうした方法論を通じて進めていきたいと考えている。

(道州制)
 道州制については、すでに私自身も中央公論で考え方を述べているので、重ねて詳しく申し上げる必要はないが、基本的には今の道州論というのは、それによってあらゆる問題を解決しようという発想である。そうした特効薬、万能薬というものは存在しない。一つひとつの問題を粘り強く、地道に解決しなければ良くならないと思っている。
 特に、それぞれ1千万人以上の州を作って日本を作るなどというのは、経済状況が厳しい中で、日本全体で事に当たらなければならない時に、国をいくつかに分けて、そこで税制を決めたり、経済政策を決めたり、貿易を論じたりするなど、およそ空想的であり得ないことで、産業の進展に全くつながらないと考える。こうした問題に慎重に対応すべきと思う。
 また、これによって行政改革が進むとも思えないし、それぞれの州で中央省庁ができるようなことになるのではないかと懸念する。
 さらに、本日は経済界と北陸三県の知事が出席しているが、こうした親密な意見交換が道州になってできるのかということである。おそらくあり得ないと思う。民主主義が確保できるとも思えない。ぜひ慎重に物事を捉え、何が問題かどのような方法論によって解決できるのか、ということを一つひとつ解決すべきだと思う。
 今回金融危機が生じ、これを支える形のいろいろな経済理論が根っ子にあったが、道州制論もそうした経済理論にいくつかの論拠を持っていた。こうした考えは本当は物事が解決できないという一つの証拠になったのではないかと思う。
 これから厳しい時代になるが、地方は外国と対抗していく必要があるわけで、地方圏への投資について国は応援すべきと思う。投資減税などさまざまな支援によって、景気対策にもなるし、地方の国土政策にもなり得る。



 

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