北信越地区高等学校PTA連合会研究大会福井大会での知事発言要旨

最終更新日 2010年7月10日ページID 014606

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 このページは、平成22年7月10日(土)にフェニックス・プラザで行われた北信越地区高等学校PTA連合会研究大会福井大会での知事の発言要旨をまとめたものです.


【記念講演】
 皆さんおはようございます。221007知事発言要旨1

 今日は北信越地区高等学校PTA連合会の研究大会ということで、北信越の各地域から多くの先生や親御さんたちにわが福井県にお集まりいただいております。ありがとうございます。

 PTAの「A」は、今お聞きしましたら「association(アソシエーション)」ということだそうです。あるものとあるものが結びついて、ある目標を持って行動するという「つながり」、「絆」ですね。今、日本中でアソシエーションがなくなりつつあります。何としても「つながりの共同体」といいましょうか、こういうものを存続させなければなりません。PTAの皆さんがこのアソシエーションという大事な絆で結ばれていることが、日本そして北信越の教育を支えているのです。

 それから、すでに皆さんに、福井県の素晴らしさや歴史・伝統などをコンパクトにまとめた「ふくいブランドハンドブック」などをお配りしていると思います。本当はここで宣伝をしたいのですが、時間の都合もありますので、福井県には日本一のものがたくさんあるということだけ頭に入れておいてください。

 さて、教育に何を求めるか。3つのことをここで申し上げたい。

 まず、小学校、中学校、高校に共通して言えることですが、何を学ぶかの「全体像」をあらかじめ鳥瞰図的に示すということが、これからの教育において極めて大事だと思っています。

 高校の数学では、まず因数分解がありますね。私は「因数分解は何のためにするのか」、「どれくらい重要なのか」、「これは思いついてできるものか、覚えていればよいものか」と思いました。

 先生も親御さんたちも意識をしていないかもしれませんが、子どもたちにとってその先が見えないというのが一番不安になるのです。この「先がよく分からない」というのが子どもたちにとって特有の苦しさであり課題だと思います。しかし、先生は先がよく見え、親もほとんどよく分かっている。

 こういう大きな矛盾をできるだけ解決するために、「何を学ぶべきか」という全体像をあらかじめ学校の授業などで教えることが重要です。あまり先まで教えてはいけませんが、ほどほどの距離感で教えてください。

 二つ目は、授業の密度を高めることです。これから学習指導要領が変わり、分量が2、3割増えるのではないかという話がありますが、これをどうやって解決するかという問題もあります。また、授業などさまざまな活動の密度を高めれば、先生が大変になるのではないかということですが、そうではありません。

 誤解があってもいけませんが、学校の授業や活動をせかせか行わないこと、そしてたるませないこと、この二つの大きな課題をいかに解決するかであります。これは先生や学校全体のシステムとしての技術を要する分野であり、かなり改善できると思います。

 毎日子どもたちは成長しています。限られた時間を大事にして、授業や学校活動、これには部活動等も入っていますが、いかに子どもたちの成長を促す努力を学校や家庭で工夫するかというのが、これからの解決すべき課題としてあると思っています。

 三つ目は、教員の資質向上です。これには3つの分野があると思います。

 まず、学校や教育のシステムを変えることにより、教員の資質向上のための研修を行うこと、次に教員がそれぞれの地域でサークル活動やグループ活動を行うこと、最後にご自身の努力です。

 先生の学問的な深さや経験、魅力というのは、子どもたちに大きい影響を与えます。これは皆さんの親としての立場でも同じです。ここを押さえることが重要です。これが先生の場合には資質の向上になります。

 けさ新聞を読んでいたら、1960年代のはじめに流行った「ドミニク」という歌が載っていました。ご存知でしょうか。

 これはベルギーの修道女が作詞作曲した歌だそうです。それで、何の話かということですが、この歌の中で、ドミニクという修道士が世界中またにかけて布教に行くのですが、時代はいつかというと、「イギリスならばジョン王の頃」といっています。ドミニクという人は中世ジョン王がイギリスにいた頃の人だということがここで分かります。

 それからこの歌を作詞作曲した修道女は、ワーテルローというところの修道院で勉強しました。みなさん、ワーテルローってどこの国にあるかご存知でしょうか。ベルギーです。

 もし私が世界史の先生だったら、この歌をテーマに教えるかと思います。世界史の中世のところは分かりにくいですね。いつの時代、ワーテルローってどこにあるとか、そういう簡単なことを教えます。先生にいろいろ勉強してもらい、教えていただくのが子どもたちの興味につながると思います。

 数学や英語でも同じです。先生の研究を毎年少しずつ深めていただくことにより、子どもたちの興味が深くなるだろうということを、私は今日の新聞を例にとってお話しました。教員の資質向上のため、別に本格的な勉強もありますが、そのような些細なことから始めてほしい。

 さて、福井県は学力・体力日本一であります。福井県は昭和26年から、また富山県は昭和30年から独自の学力調査を行っています。

 学力というのは一朝一夕に向上するものではなく、何十年にわたり地道に教育を積み重ねてはじめて成果が出るものです。

 福井県は、少人数学級やALTなどを早くから導入しています。また、三世代同居で元気な祖父母が孫の面倒を見たり、先生が熱心であったり、そういったことが学力向上につながっていると思います。

 また、「平均の力」というのはあまり人気がないですね。当たり前だと思われるのです。皆さんの健康もそうですが、「お元気だ」と言うと「あっそう、いいですね」ということになり、逆に難病を患って「努力して私は治った」という話の方が感動を呼びます。

 しかし、「平均の力」こそ大事です。基盤をしっかりしながら、またいろんなことをやっていくというのが重要かと思っています。

 特に、小・中学校については学力・体力日本一であり、これは小さい頃からいろんなトレーニングを学校で地道にやっている結果です。

 高校はどうかということですが、全国の比較はなかなか難しい。特に、学力のことばかり申し上げて恐縮ですが、福井県はセンター試験では5科目の受験生が非常に多いので、それぞれの科目の点数は特に高くないのですが、クラスター分析というのを昨年行ったところ、総合力では全国6、7位ぐらいという結果が出ています。

 また、リスニングというのがありますが、これは全国第1位か2位です。これはALTがJETプランで福井の制度として導入される以前から先導的にやっている結果かもしれません。

 昨日、アメリカのルース大使が小浜にお見えになりました。私も小浜市長などと一緒にお会いしました。今は時間の節約もありますので、挨拶は全部英語でやります。

 そこで感じたのですが、原稿を見ながらのお話はできますが、世間話ができないのです。「小浜はどうですか」とか「毎日忙しいですか」とかですね。そういう英語の読み書きと日常的な会話とのギャップというのは、日本そして福井の教育にもあると思います。

 私はマニフェストで、高校を卒業した頃には日常的な英会話ぐらいはできるようにしたいということを書きました。特に、外国語は「音の教育」といいましょうか、こういうものを重視したいと考えていますし、最近はIT技術やNHKなど、いろんな資材を使って教育の効果を高めたいと思っています。

 リスニングでは、一番易しい言葉が分かりません。例えば、「On it」とか「by them」とかですね。そう発音しないから分からないのだと思いますが、そういう教育をうまく進めていくと、読解力の高い水準とリスニングの低い水準のギャップを埋められるのではないかと、このように思っております。

 それから、理数教育については様々な課題がありますが、数学について子どもたちにあらかじめ詳しい解答を、授業を受けなくても分かるくらいの解答を与えたらどんなことになるだろうか、ということを一度お考えいただきたい。

 また、職業教育というのがこれから極めて重要になります。農林水産業や眼鏡・繊維といった伝統産業など、地域の産業をいかに支援していくか。職業教育における地域の人材育成も遅れている分野だと思います。

 今年3月に卒業した福井県の高校生の就職率は全国トップです。しかし、3年以内の離職率は約4割で、低下はしているものの、全国的に見れば8番目に低く、まだまだ課題があると思っています。

 職業教育という言葉が適当かどうかは分かりませんが、これで一生生きていけるという技術や教育を、高校時代に築いていく必要があると思っています。

 ただ大事なことは、高校の教育というのは、そこで終わるわけではないということです。学校教育というのは、基本的に不完全なものであります。人生における教育のごく一部でありまして、それにすべてのものを期待することは間違いであります。どの程度のことを学校教育で行うか、目標にするかということが一つの課題であり、日本の場合には、これを過大に期待しすぎているのではないかとも思います。これもまたお考えください。

 もう一つ、地方の立場で気になっているのは、それぞれの地方で教育をしても、毎年多くの学生が大都市の大学に進学し、将来はあまり戻ってこないということです。福井県の場合、毎年約3,000人が進学や就職等により県外に出て行き、そのうち戻ってくるのは約1,000人しかいません。

 福井県で成長する若者が出生から高校卒業までに受ける行政サービスの総額は、一人当たり約1800万円です。地方の苦しさが分かると思います。これを何とかしないといけない、何か良い制度がないか、少しでも問題を解決できないかということで、私は「ふるさと納税」という制度を提案し、一昨年導入されました。この制度は、大都市に出て就職して頑張っている人たちがふるさとの県や市町村に寄付をしていただくと、住民税が軽減されるというものです。例えば、石川県出身の人が東京に出て、3万円石川県に寄付をすると、その分東京での住民税が安くなります。

 しかし、これだけでは大海の一滴のような感じがいたしまして、郷土教育あるいは歴史の教育をして地域を守るというそういう子どもたちが地方になかなか育っていかないというのが現状かと思います。これを解決するのがこれからの日本の大きな課題です。221007知事発言要旨2

 昨年の今頃でございますが、私は岩波新書から「『ふるさと』の発想」という本を出版しました。今述べたようなことがいろいろ書いてあります。また、それぞれの地域の努力している様子が書いてありますので、是非ご一読願いたいと思います。

 以上で私の講演を終わります。教育について私が思っていることを少し申し上げました。皆さんのこれからの活動の参考にしていただければと思います。


【トーク】
●テーマ「これからの新しい教育、福井の教育」~人間力育成って、何だ?~

 西川知事の主な発言内容は次のとおりです。

○教育において「力」は学力、体力など20種類ほどあり、これらはすべて子どもたちに求められている。しかし、子どもたちに力があるわけではない。先生や家庭が力をつけて、愛情や期待を持って子どもたちに接しなければならない。

○自分の学力でどの大学を受験すれば合格するかといった判断こそが、高校生の人間力だと思う。幼児教育から自分で判断する力をつけることが大事である。

○教育を向上させるため、最も重要なことは個々の先生の努力である。授業をいかに工夫するか。教育現場で皆がお互いに助言し合うことが大事である。

○先生には教えることの5倍くらいの知識と経験を持ってほしい。



 

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