第381回定例県議会知事提案理由説明要旨

最終更新日 2014年2月26日ページID 025842

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                                                                              平成26年 2月26日
                                                                第381回定例県議会


 


                         知事提案理由説明要旨




                                               福 井 県                                                                          

 

 

 第381回定例県議会の開会に当たり、県政運営の所信の一端を申し述べますとともに、県政の諸課題および平成26年度当初予算案、平成25年度2月補正予算案等の概要につきまして、ご説明申し上げます。

 まず最初に、中華人民共和国浙江省およびブータン王国の訪問について、ご報告申し上げます。
 今月15日に、浙江省との友好提携20周年を記念して、県議会議長をはじめ議員とともに杭州市を訪問し、李強(りきょう)省長にもお会いして友好を深めてまいりました。国レベルの関係が行き詰まっている中、知事と省長が会った例は最近ないようですが、浙江省においては温かく迎えてくれました。将来に向け、ともかくも若い人たちの交流をもっと活発にしていく活動や観光交流などを互いに約束してまいりました。
 また昨年末ブータン政府からの招待を受け、町村会会長、経済界の代表者とともに訪問し、滞在中、ワンチュク国王陛下にも拝謁する機会を得ることができました。ブータン王国においては、国の発展の度合いを国民総幸福量(GNH)で測っており、本県同様「幸福」について深い関心を持つブータン王国と今後さらに交流を広めてまいります。

 さて私は、3期目の県政において、これまで「福井新々元気宣言」に基づき「夢と希望にあふれるふるさとづくり」に全力を尽くしてまいりました。
 この間の成果として、最重点の県政課題であった北陸新幹線の敦賀までの着工・認可が実現しました。26年度には、舞鶴若狭自動車道が全線開通し、北陸自動車道また中部縦貫自動車道と接続することとなります。さらに京都縦貫自動車道、名神高速道路等と接続し、ループ化が図られ結ばれることになります。こうした高速交通ネットワークの進展により、本県の立地条件が大きく改善して、人とモノの流れが変化し、活発になります。
 局面が大きく変わるこの時期に、恐竜博物館や一乗谷朝倉氏遺跡、里(さと)山里(やまさと)海(う)湖(み)、水月湖「年縞」、和食文化など本県が誇る世界でも通用する数々の「本物」をさらに磨き上げ、自らの発信力を高めるとともに、外とのつながりを強化して交流を深め、多くの人を本県に呼び込んでいかなければなりません。
 折しも、日本総合研究所が先月発表した都道府県別幸福度ランキングにおいて、本県は大都市を抑えて第1位になりました。これは、本県の教育や高い出生率、働き者の福井の女性、健康長寿、地域に残るつながりの力、高い正規雇用とそれを支える農林水産業や元気な中小企業などが認められたものと考えております。本県が持つ確かな実力を形として現わし、県民が誇りと将来への希望を持てるよう、「幸福度日本一ふくい」をさらに発展させてまいります。
 新年度は3期目県政の最終年度であります。マニフェストの仕上げに当たって、これまで進めてきた政策をさらに高い次元に追求して県政を次の段階に着実に進めるふるさと福井の「新しい扉を開く」政策を講じてまいります。

 最近の我が国経済について申し上げます。政府は、1月の月例経済報告において個人消費が伸び、企業の設備投資も持ち直していることから、景気判断を「緩やかに回復している」に引き上げています。続く2月の報告でも、回復基調は続いていると判断しています。
 県内経済についても、福井財務事務所は、業種・地域によって回復状況に差が見られるものの、全体として生産は持ち直し、雇用環境や個人消費が改善していることから、「緩やかに回復しつつある」としています。
 県財政においては、新幹線など大型プロジェクトが集中する時期を迎えたことから、昨年3月に「長期の財政収支見通し」を策定しました。これに示した県債残高などの財政指標を参考にしながら、財政バランスを考え、健全に運営していくことが重要であります。
 今回の当初予算の編成に当たっては、こうした経済・財政状況を踏まえ、恐竜など「本物」による観光・ブランド戦略の推進、高速交通ネットワークの整備進展を活かしたまちづくりなどに特に力を入れました。そして、グローバル時代に対応する産業・農業政策、「幸福度日本一」を支える健康長寿・子育て政策のステージアップ、次世代を担う人材の育成についても積極的に進めてまいります。

 では次に、当面する県政の主要な課題についてご説明申し上げます。
 まず、北陸新幹線の整備促進について申し上げます。
 26年度政府予算案では、金沢―敦賀間の事業費140億円のうち、本県分としては、本年度の2倍となる108億円の事業費が確保されています。
 金沢―敦賀間の早期完成・開業の課題については、今月4日、県議会をはじめ経済界の代表者とともに、県選出国会議員に改めて説明し、政府・与党に対し整備スキームをぜひとも速やかに見直すよう強く要請しました。
 工事の進捗については、今月3日に、金沢―敦賀間では初めて、福井市土地区画整理事業区域内の新幹線予定地の用地が取得され、直ちに埋蔵文化財調査の準備工事に着手しました。
 また、新北陸トンネルにおいては、南越前町内の2つの工区の工事契約がすでに行われ、来月には3つ目の発注が予定されており、工事が本格化してまいります。
 県としては、来年度に入ると沿線全体について地元との設計協議が開始されるため、沿線集落の理解と協力が早期に得られるよう、市町が行う地元支援事業に対する補助制度を創設し、円滑な用地取得と早期の工事着手を図ってまいります。

 次に、福井駅西口駅前広場の整備について申し上げます。
 来年3月の北陸新幹線の金沢開業により、首都圏をはじめ北関東・信越方面とのアクセスが向上します。本県への玄関口ともいえる福井駅西口に、ダントツブランドである恐竜の造形物を設置することとし、富山、石川とは異なる、特色のある駅前整備を進めてまいります。
 福井鉄道の西口駅前広場への延伸については、28年の広場完成に合わせます。また、丹南方面と福井駅との所要時間を短縮するため、大名町交差点における新たな短絡線の整備を進めます。

 県都デザイン戦略により進めている「山里口御門」の復元については、遺構調査や基本設計を進め、櫓(やぐら)門と棟(むな)門からなる山里口御門や腰板に笏谷石が使われていた土塀の構造・外観を明らかにしました。来年度は御門復元の詳細設計のほか、石垣背後の土質調査、石垣修復の設計などを行い、28年度の完成に向けて整備を進めます。
 また、中央公園の再整備については、歴史を活かした公園とする基本計画とし、御廊下橋や山里口御門などと一体となり、歴史がしのばれ人々が集まる緑豊かな空間の整備を27年度の完成を目標として、福井市と協力して進めてまいります。

 次に、地域鉄道の整備について申し上げます。
 福井鉄道とえちぜん鉄道の相互乗り入れについては、27年春からの運行開始を予定しています。そのため、現在、結節点となる田原町駅部の改造に着手しており、26年度は田原町駅の線路接続工事、鷲塚針原駅の低床ホームへの改修と折り返し線などの整備を進めてまいります。
 福井鉄道の市内路面部分については、60年以上が経過し老朽化しており、26年度から、石畳の取り替えのほか、レールと路盤の改良を行い、国体の開催に備えて、快適な走行と街路景観の改善を図ります。

 次に、原子力行政について申し上げます。
 国の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会は、昨年12月に「エネルギー基本計画に対する意見」を決定いたしました。その後、これをもとに政府においてエネルギー基本計画の閣議決定に向けた議論・調整が行われ、昨日、政府案が示されたところです。
 その内容は、原子力を「重要なベースロード電源」と位置付けるとともに、放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用等に資する核燃料サイクル政策については、引き続き関係自治体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、「もんじゅ」については国際研究協力のもと、研究計画に示された研究成果のとりまとめを目指し、克服すべき課題について十分な検討、対応を行うなどとなっています。
 これらは、原子力の重要性について政府としての認識が示されたものであり、立地県の立場から知事として私がこれまで国の方針を明らかにするよう求めてきた事項が概ね盛り込まれたものとなっています。
 今後は、政府・与党内においてさらなる調整が進められる予定ですが、
エネルギー政策は国民生活の安定と国家の安全保障に直接関わる重要事項であり、政府としての責任ある方針を早期に決定し、確信をもった説明を国民に対し行うべきと考えます。
 県内の原子力発電所の再稼働については、事業者が昨年7月に大飯3、4号機、高浜3、4号機の再稼働申請を行ってから7か月余が経過していますが、規制委員会は審査終了の目途を明確にしておりません。
 また、大飯発電所敷地内のF-6破砕帯について、規制委員会は一昨年11月の現地調査から1年3か月余が経過した今月12日に、これが活断層ではないと結論付けていますし、一方、敦賀発電所敷地内のD-1破砕帯については、事業者が昨年7月に追加報告書を提出してから半年が経過した先月下旬、ようやく有識者による現地調査を実施したにとどまっています。
 再稼働の安全審査については、本来規制委員会が科学的・技術的見地から自ら責任をもって判断し、その理由を県民、国民に丁寧に説明することを第一とすべきであります。
 規制委員会は、課題を明確にして遅滞なく効率的な安全審査を行うとともに、破砕帯については過去に審査に関わった専門家を含めるなど、幅広く科学的・技術的な観点から適切な判断を行う必要があります。
 「もんじゅ」については、原子力機構が昨年11月に規制委員会に報告した機器設備の保全計画に誤りが見つかるなど、組織・風土・人員の改革は未だ県民の信頼を得るに至っていません。県としては、エネルギー基本計画において「もんじゅ」の位置付けを改めて明確にするとともに、櫻田文部科学副大臣を本部長とする「もんじゅ改革推進本部」が責任をもって機構改革をリードし、一日も早く県民、国民の信頼に足る組織としなければ「もんじゅ」の将来はないものと考えます。

 次に、原子力防災対策についてであります。
 広域避難については、奈良県へ避難する敦賀市、兵庫県へ避難する小浜市・高浜町・おおい町・若狭町の具体的な避難先をこのたび決定いたしました。これにより、原子力発電所30km圏内すべての市町の県内および県外の避難すべき自治体と施設が決定しました。
 なお、先月22日には美浜オフサイトセンターにおいて美浜原子力発電所30km圏内の住民避難に係る「図上訓練」を実施し、県内外の広域避難に係るルートや手段等を想定し、関係機関それぞれの対応を確認しました。広域避難手段の確保など今回の訓練で明らかになった課題については、国のワーキンググループにおいて検討し、年度末には県の広域避難要綱を改定したいと考えております。
 原子力災害時における拠点施設となる原子力防災センターについては、原子力発電所から30km圏外にあるバックアップ施設として福井市内の県生活学習館をあてることとし、通信回線や非常用発電機等の整備を行います。
 また、夜間離発着が可能となる臨時ヘリポートを原子力発電所周辺の半島部において整備するとともに、昨年7月の原子力防災計画の見直しによる防護範囲の拡大を受け、防災ラジオ設置などの情報伝達体制の強化や避難所におけるスロープ、発電機などの整備について市町に対し支援を行います。
 地震や風水害等の自然災害に対する県の地域防災計画については、国の防災基本計画の修正や昨年9月の台風18号をはじめとする近年の台風や豪雨災害における課題を踏まえ、年度内に開催する県防災会議において計画を改定したいと考えております。

 次に、「エネルギー研究開発拠点化計画」について申し上げます。
 原子力の安全を支える人材の育成については、昨年末の中東カタールの原子力防災研修に続き、今月24日から、国際原子力機関(IAEA)との覚書にもとづき、アジアの原子力政策を担当する上級行政官14名を対象とした研修を開催しています。また、来月19日、20日には、4回目となるアジア原子力人材育成会議を開催し、インドネシア、ベトナムなど7か国の政府高官のほか、IAEAの事務次長クラスが出席し、原子力人材育成の協議をすることとしています。
 また、原子力発電所での重作業を支援するパワーアシストスーツについては、県内企業や大学等が参画する開発チームから企画提案を受け、昨年末には3件の実用化に向けた研究開発を支援することとしました。
 このほか、今月14日には日立グループと県内企業12社が原子力の保守管理や廃炉作業などに関する情報交換会を開催しております。これからも、嶺南企業をはじめとする県内企業の研究開発やビジネスマッチングなどを積極的に支援し、新たな産業の育成を進めてまいります。

 それでは以下、「福井新々元気宣言」に沿って、26年度の当初予算に関連する主要事業と県政の主な課題について申し上げます。

 まず、「元気な産業」についてであります。
 伝統工芸の振興については、昨年末、新たに越前箪笥が伝統的工芸品に指定されました。越前漆器、越前和紙、越前打刃物、越前焼、若狭塗、若狭めのうのそれぞれの産地のパワーアップと連携がぜひとも必要です。ユネスコの世界無形文化遺産に登録された「和食」を支える伝統技術が、丹南地域等に集積している長所を活かし、子どもたちへの技術の継承と若手職人の育成、新商品開発、観光誘客による需要拡大などを一体的に進める「越前ものづくりの里プロジェクト」を推進してまいります。
 海外への県内企業の展開も課題であり、成長する東南アジアを中国と並ぶ重要な市場と位置づけ、今年の秋を目途にタイのバンコクに「ふくいバンコクビジネスサポートセンター」を開設し、企業の海外進出に対するサポート体制を強化してまいります。なお、タイ拠点の設置に伴い、香港事務所の業務は、上海事務所が引き継ぐことといたします。
 企業誘致については、先月決定したタニコー株式会社をはじめ、山南(さんなん)合成化学株式会社、生(せい)晃(こう)栄養薬品株式会社、アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社、根上(ねがみ)工業株式会社の新増設が相次いで決定しました。その5社の合計で約120億円の投資が見込まれます。
 敦賀港については、昨年のコンテナ取扱量が前年に比べ約10%増の30,970TEUとなり、4年連続で過去最高を更新しました。県内企業の利用拡大を図るとともに、関西・中京との交通アクセスの良さを活かして他県の港からの利用転換を働きかけ、一層の取扱量の拡大を図ってまいります。
 港へのクルーズ客船の誘致については、「にっぽん丸」が来月26日に福井港に、「ぱしふぃっくびいなす」が6月、「飛鳥(あすか)Ⅱ(ツー)」が8月に敦賀港に寄港することが決定しました。
 引き続き国内外の船会社や旅行会社等に対し、福井県の港湾や交通条件、観光地の良さをアピールしながら誘致活動を進め、観光消費額の拡大などクルーズ客船寄港の経済効果を県内全域に波及させてまいります。

 次に、農林水産業の振興についてであります。
 TPP交渉と米政策の見直しなど、国際的な情勢が激しく変化していく中、県として新たな農業・農村再生計画の策定作業を現在進めております。農業が生活を支えると同時に、利益の上がる産業に転換すること、すなわち、経営に主体を置き、戦略性を踏まえた農業、漁業、林業政策に切り替えることが必要であります。
 米の生産調整いわゆる減反政策の見直し対策については、創設される農地中間管理機構を活用した農地の集積・集約化、水田園芸の導入等により、集落営農組織等の経営強化を進め、所得向上に努めてまいります。
 また、中山間地域においては、地域営農サポート事業に加え、JA等による広域の作業受託体制の整備など地域住民が農業を継続できるよう支援してまいります。
 おいしい福井米づくりについては、25年産米の食味ランキングにおいて、本県産のコシヒカリが2年連続で、最高ランクの「特A」評価を獲得しました。今後、JAと協力して「秋の田起こし運動」や土壌分析に基づく土づくりの強化、九頭竜川下流域などでのパイプラインを利用した夜間かんがい等を推進し、品質や食味の向上に努めるとともに、首都圏をはじめ全国に本県コシヒカリの販路を拡大してまいります。
 さらに、きれいな冷たい水と寒暖の差を生かした「こだわり米」の生産、土壌や気候に適した薬草作物など特産作物の産地づくり、今庄つるし柿や吉川ナスなど福井の風土に育った農林水産物、加工品等の育成による、特色のある地域農業の活性化を支援してまいります。
 園芸振興については、自然光利用型大規模ハウスが高浜町内で生産を始めましたが、今回小浜市内でも整備することとしました。また26年度、嶺南地域で自然光利用型の園芸ハウス・植物工場・加工施設を集中化した次世代型の大規模園芸団地の整備を支援することとしました。
 これからの農業においては、新規就農者の確保・育成が大きな課題となっており、さらに多くのプロ農業者を育成・確保するため、来年度、坂井北部丘陵地に「ふくい園芸大学校」を開設します。全国から就農希望者を募り、生産技術など就農に必要な技能や経営ノウハウなど必要な知識を指導するとともに、水田園芸に新たに取り組む集落営農組織を対象とした技術研修も行い、園芸生産従事者を増やし福井の農業の多様化を図ってまいります。
 なお、6次産業化については、食品企業等とのつながりが深い食品加工研究所に「6次産業化サポートセンター」を置き、民間事業者への新たな呼びかけをするなどして、商品開発の初期段階から具体的な技術協力や企業とのマッチングを行います。
 林業については、県産材の利用拡大の大きな流れが出始めており、自然災害防止や地球温暖化防止等の観点から、間伐などを積極的に進め、有効利用することが重要であります。このため、県内で初めて建設される木質バイオマス発電施設の整備等に対して国の資金を導入して支援します。この施設では間伐材の受入れをするとともに、施設の稼働に伴う約60人の新規雇用など地域の活性化につながることとなります。
 農林水産支援センターの分収造林事業の改革については、昨年の2月議会において、センターの事業を今年度末に県営化したうえ、センターの林業部門を廃止する方針についてご了解いただきました。昨年4月から県営化のための林地所有者の同意の手続きを進め、現在、99%以上の同意が得られております。
 今年度末に計画どおりセンターの林業部門を廃止し、債務を整理することとします。具体的には、地元民間金融機関の債務43億円は、利息負担を抑えるため、国の交付金を活用して補償金免除を得た繰上償還をします。一方、それを未だ認めない日本政策金融公庫の債務110億円については、県が引き継いで毎年償還します。また、事業開始以来の県からの貸付債権344億円については、森林資産として代物弁済を受けたうえ、残余債権を放棄することとし、関連議案を今回提案させていただいたところです。
 こうした債務の整理に当たっては、新たな県民負担が生じないよう、今後の行財政改革を強く進める中で解消を図ってまいります。
 県営化後の森林管理については、既存の県有林との一体施業や山腹を上下に列状に行う間伐、また入札・発注を地区ごと数年間、一括実行する新しい方式を導入するなどして、コスト削減を図ってまいります。併せてふくいブランド材の利用拡大や木質バイオマス発電への間伐材の供給など資源の有効利用について進めてまいります。そして近年の災害多発の状況にかんがみ、土砂災害防止や水源かん養など公益的機能を守りながら、これまで長年育ててきた森林を次の世代に継承してまいります。
 なお、分収造林事業の処理は、国が推し進めた事業の枠組みが破たんしているという構造上の問題が背景にありますので、抜本的対策を講ずるよう、国に対して引き続き責任ある対応を強く求めてまいります。
 次に、水産業についてでありますが、県漁連が敦賀市内で26年度に整備する水産加工施設を支援することとしました。この施設は、魚の切り身や一夜干しなどの加工品製造を目指しており、大漁時の魚価の値崩れを防ぐための買い支えや未利用魚の有効活用により魚価の安定を図ってまいります。
 福井県にとって、養殖業の振興はこれからの1つの方向性であると考えます。漁家民宿でニーズの高いフグやタイなどの養殖に新たに取り組む意欲的な漁業者に対し、生簀など設備の経費を支援し、また収益の大きいハタ類の生産技術を水産試験場で開発し、漁業者の経営安定を図ります。

 次に、観光とブランドに係る事業について申し上げます。
 まず、舞鶴若狭自動車道については、難工事であった笙の川高架橋が昨年12月24日につながり、県が要望している今年夏までの開通に向け大きく前進しました。そして今回この道路の愛称を「若狭さとうみハイウェイ」と決定しました。
 嶺北地域の子供たちが嶺南地域を訪れる機会を遠足などを通じて増やし、訪問人数を今年度の800人程度から1万5千人にまで増加させます。
 また観光面では、7月から11月まで「海(う)湖(み)と歴史の若狭路」キャンペーンを実施します。嶺南で初めて開催の恐竜展のほか、里山里海湖での自然体験、秘仏めぐりなど、嶺南地域でしかできないイベントを数多く展開してまいります。
 この舞若道開通にあわせ、7月下旬に現在の若狭歴史民俗資料館を新たな歴史文化・観光拠点「若狭歴史博物館」として再オープンし、リニューアル記念特別展を開催します。現在78店舗で提供している若狭の新しい食ブランド「若狭路ご膳」などとともに、中京・京阪神・中四国へのPR等、若狭路の新たな魅力をアピールしてまいります。
 次に、北陸新幹線の開業と誘客拡大についてであります。来年の開業までの間、東京スカイツリーでの新たな恐竜キャラクターを使った「恐竜王国福井」の宣伝、上野駅での越前和紙の大型恐竜や恐竜骨格の展示など、「恐竜が招く」という形で本県独自の誘客活動を強めてまいります。
 また、金沢駅の観光情報センター内に福井の観光PRや案内を専門に行う職員を配置するとともに、本県への空の玄関口の役割が大きくなる小松空港内に、恐竜の造形物を設置し福井の印象を強く示すPRに努めてまいります。
 こうした対外的なPRに加え、知名度の高い東尋坊、永平寺、一乗谷、そして恐竜博物館を周遊する観光の軸となるバスルートを作り、観光客の拡大を目指します。
 さて世界レベルの学術拠点であり、全国に誇る観光地となった恐竜博物館については、今年度の入館者数が既に65万人を超え初年度の70万人を上回り過去最高を更新する見込みとなっております。
 こうした中、7月19日に、「野外恐竜博物館」をオープンしたいと考えます。フクイラプトルなどが発掘された現場のツアーや発掘体験など、「本物」を楽しめる恐竜フィールドを目指してまいります。
 また恐竜のブランド化に関して、今月14日に幅広い世代の方に恐竜の魅力を伝えるため、ラプト、サウタン、ティッチーなど恐竜ブランド「Juratic(ジュラチック)」を発表しました。これらの楽しい恐竜のキャラクターを使った「恐竜王国福井」の視覚化や、食や土産品など新たな商品企画・販売を開始し、恐竜ブランドビジネスを各方面に展開していきます。
 一乗谷朝倉氏遺跡については、中世城下町の雰囲気がそのまま味わえるよう、復原(ふくげん)町並から上城戸(かみきど)跡の区間において無電柱化を進めます。また、朝倉館(やかた)が一望できる月見やぐら展望所の整備、山城跡までの登山道を整備・改善するなど、遺跡をパノラマ的に観光できる投資を行います。

 昨年12月、「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。この登録のために日本が紹介した23の事例に、福井の「食育」、「食守」、「和膳」の3事例が寄与しており、四季の食材や年中行事と結び付いた「福井の和食文化」が登録に大きく役立ったと思っています。
 こうした本県の優れた食文化を継承していくため、まずは学校給食において和食の機会を増やします。食育の祖、石塚左玄が唱えた「一物(いちぶつ)全体食(ぜんたいしょく)」の考えをもとに、魚の頭や野菜の葉などを残さず食べる「まるごと給食」を実施します。また、全小中学校において来年度から3年間で、児童・生徒自らが学校給食畑で育てた野菜を給食で使っていきます。
 その上で、福井の伝統工芸の食器や箸を「和膳」として給食に使う市町を応援し、県内の全小学1年に漆塗りの箸を使ってもらいます。
 このほか、永平寺の精進料理を体験する福井でしかできないツアーなど「福井の和食」を全国に売り込み、さらに27年度のイタリア・ミラノでの「国際博覧会」に参加し、世界に「福井の和食」の力を広めていくことを検討してまいります。

 次に、「元気な社会」についてであります。
 まず、教育について申し上げます。
 全国トップクラスの小中学生の学力をそのまま高校につなげていくためには、特に高校の教師の授業力を高め、新しいテキストの継続的な開発などによる授業を展開することが不可欠であります。
 このため、教育委員会において、まず英語については、英文和訳を中心とした授業から「話す」「聞く」ことを重視した授業に転換します。また、数学についても、課題や解答例を事前に生徒に示し、授業では各単元の数学的な意味や社会との関係、そして解答プロセスを多方面から解説することにより数学学習の負担を軽くし、予習・復習といった家庭学習とのつながりを良くする教育を進めてまいります。
 こうした授業について、職業教育を中心とした学級でタブレット端末を活用したモデルとなる授業を実践し、実用性を高めた授業力の向上を図ってまいります。
 さて今月1日に、南部陽一郎先生に福井の高校生がお会いをし、サイエンス交流会を初めて開催できました。南部先生の学問に対する深い情熱と人格に接し、生徒たちも自分の将来への理想を高めています。また、今月16日には、東京理科大学の藤嶋(ふじしま)昭(あきら)学長による光触媒を題材とした講演会を開きました。こうした様々な分野で活躍する方々の考えを高校生が直接聞く機会を充実し、福井の未来を担う若者として高い志を持つ教育を進めてまいります。
 中高一貫教育については、計画どおり27年4月に高志高等学校に中学校を併設し開校することとしております。今議会に「県立学校設置条例の一部改正」を提案しており、今年の4月には中学校を設置したうえで、11月には入学者選抜要綱を公表するなど開校に向けた準備を着実に進めてまいります。

 次に、医療・福祉について申し上げます。
 がん対策については、女性の子宮がん、乳がん検診は職場での実施率が低いことから、休日に女性専用の検診を行うとともに、新たに女性のがん検診を実施する事業所に費用を助成するなど、日本一働き者の本県女性が検診を受けやすい環境づくりを進めます。
 また、受診率向上を強力に推進するため、地域単位や県全体で課題を協議し、がん委員会で総合的な方針を検討する新たな推進体制を新年度から整備します。
 がん治療の向上策としては、陽子線がん治療センターの利用が、既に今年度目標の155人を超える180人、うち県内70人となり順調に推移しており、3月からは、がんの形状に合わせて陽子線を照射する世界初のシステムを導入し、精度の高い治療を提供します。また、株式会社ワコール等の協力を得て乳がんなどより多くの種類のがんを効果的に治療し、切らずに治したいという女性の希望に応えられるよう研究を加速します。
 少子化対策については、企業と協力して若者同士の出会いの場を増やすほか、地域の縁結びさんの増員や情報交換会の開催など活動の活発化を図ります。また、子どもが1歳になるまでの育児休業の取得促進や国の育児休業給付の上乗せにより、安心して出産、子育てができる環境づくりを進めます。
 高齢者福祉については、高齢者人口がピークを迎える平成30年代後半の時期に備え、在宅ケアの充実を図ることが重要であります。
 在宅ケアについては、坂井地区において、医療・介護に加えボランティア等による生活支援サービスも一体的に提供するなど、全国的に見て先進的な取組みを行っています。26年度はこの成果を活かし、すべての市町において同様な体制づくりに支援するなど、県全体で在宅ケア体制の向上に努めます。

 次に、環境政策について申し上げます。
 昨年10月に発足した「里山里海湖研究所」については、本県の里山里海湖の魅力を再発見し、豊かな自然環境を守り育てていくため、25年度から29年度までの5か年を対象とする中期計画を策定しています。研究所の仕事の目標は、生物多様性、生活多様性、景観多様性の三つの多様性を育むことであり、里山里海湖の恵みを人々の暮らしに結び付ける研究を行います。親子が一緒に参加できる生きもの観察会などを実施し、研究所で学んだ結果を教員が学校に持ち帰り例えばメダカの生息状況や積雪量を継続して観察・調査するなど、環境を守る県民意識を広めていきます。
 地質学的な年代の世界標準として認められた水月湖「年縞」については、福井の宝として学術的価値をさらに高めていきます。新年度の予算では新たに円柱状のコアを採取して加工・保存し、学校教育や学術観光などに活用する事業を計上しており、研究者が集まっておられる立命館大学環太平洋文明研究センター等との共同研究体制など、年縞の研究・展示の方法を検討してまいります。

 次に、「元気な県土」について申し上げます。
 昨年9月の台風18号による災害復旧の状況についてであります。
 被災した河川、道路等については、昨年12月以降、それぞれの箇所で本格的な復旧工事に着手しておりますが、仮設橋による迂回路を設けている県道常神三方線の遊子地区については、観光シーズンとなる夏までの本格復旧を目指しており、他の被災箇所においても全力で復旧工事を進めてまいります。
 中部縦貫自動車道については、26年度に開通予定の福井北―松岡間において、松岡インターに接続する橋梁の架設が終りました。また永平寺東―上志比間においても区間最長の轟(どめき)4号橋の下部工事が始まるなど、福井北―大野間の28年度全線開通に向けて順調に工事が進められております。
 大野油坂道路の大野東―和泉間については、26年度の工事着手に向け用地取得を進めております。未事業化区間となっている大野―大野東間の早期事業化については、先月14日に国土交通副大臣に対し要請したところであり、引き続き今後10年以内の全線開通を求めてまいります。
 次に、公共工事の入札制度の見直しについて申し上げます。公共土木事業においては、将来にわたり社会資本の維持管理や災害対応等の地域防災力を担う地元の建設業者を確保していく必要があります。
 このため今年6月からでありますが、設計額が3千万円以上5千万円未満の土木工事に除雪や災害復旧への貢献度を評価する総合評価落札方式を導入いたします。また、建設機械の保有や技能労働者数に対する評価を拡大し、27、28年度の競争入札参加資格審査から適用します。
 さらに、社会保険未加入業者への下請発注禁止などを入札参加の条件とすることにより、下請業者も含めた建設業全体の健全な発展を図ってまいります。

 次に「元気な県政」について申し上げます。
 「福井しあわせ元気国体」については、先週に開催された常任委員会において、障害者スポーツ大会の開・閉会式会場と13の正式競技すべての会場地が決まりました。
 26年度は、国体の総合開会式の式典内容や選手・監督などの宿泊・輸送対策の検討、マスコットキャラクターを活用した広報の実施など開催準備が本格化します。そのため、4月から「国体推進局」を設置して組織体制を強化する必要があり、今議会に「部制に関する条例の一部改正」を提案しております。
 特に競技力向上対策については、重点強化校やジュニアアスリートの指定など若手選手育成を進めてきた結果、昨年の東京国体等では高校生が活躍しております。国体まであと4年となり、オリンピックなど国際大会で活躍できる人材を育成するレベルの高い特別強化コーチの配置など、特に指導者の強化を図ってまいります。
 障害者スポーツについては、障害の種類や程度、年齢に応じてスポーツに親しむことができるよう「しあわせ福井スポーツネットワーク」を設立します。また、有望選手を強化選手として指定し、強化練習や対外試合を通じて競技力を向上させてまいります。
 国体のメイン会場となる福井運動公園の県営体育館や陸上競技場などの工事を進めるとともに、10mや50mの射場(しゃじょう)を新増設するライフル射撃場や鉛弾を容易に回収するための工事を行うクレー射撃場の整備などについても、28年度の供用開始を目指してまいります。

 以上、予算および事業を含めて申し上げましたが、その結果、26年度当初の一般会計予算額は、前年度比1.1%増となる4,823億円を計上しました。歳出については、公共事業のほか、新幹線の建設負担金や国体開催のための運動公園整備など投資的な経費を、地方財政計画の伸び3.1%を大きく上回る、前年度比18%、159億円余の増といたしました。
 歳入については、地方にも景気回復の影響が及びはじめ、化学や機械など製造業の業績が改善しており、県税収入を前年度から3.6%の増となる913億円余とし、地方交付税は臨時財政対策債を加えた実質ベースで1,631億円とほぼ前年度と同額といたしました。また、県債の発行は前年度比7.7%、49億円余の減となる591億円とし、発行額は4年連続で対前年比減としました。こうした県債の抑制および 23年度から3年間にわたり実行してきた繰上償還の効果によって、 26年度末の県債残高は5,331億円となり、「長期の財政収支見通し」における残高を下回る水準で健全性を確保しています。一方、基金残高は、収支見通しの金額を上回っております。
 次に、本日当初予算と同時に上程しております25年度2月補正について申し上げます。
 国は、消費税率引き上げに伴う景気への影響を緩和するとともに、持続的な経済成長につなげていくため、先般、産業競争力の強化や防災・安全対策の加速などを柱とした5.5兆円規模の補正予算を編成しました。
 県としてもこれに積極的に呼応し、インフラの老朽化対策や防災対策など公共投資、雇用基金等の積み増しなど、213億円規模の経済対策の追加補正を行うことといたしました。
 今回の補正予算により、年度末から年度始めの事業量が減少する時期はもとより、来年度上半期においても、当初予算と併せ切れ目なく地元経済の回復を後押しできるものと考えております。
 その結果、一般会計の今年度累計額は4,853億円となった次第であります。

 最後に、第21号議案の福井県手数料徴収条例等の一部改正は、4月から消費税率が引き上げられることに伴い、使用料および手数料の額の改定を行うものであります。その他の議案につきましては、それぞれ記載の理由に基づき提案いたした次第であります。

 以上、私の県政に対する所信の一端と県政の重要課題等について申し上げました。なにとぞご審議のうえ、妥当なご決議を賜りますようお願い申し上げます。

知事提案理由説明要旨(PDF形式)
 

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