ロシアタンカー油流出事故の教訓

最終更新日 2008年3月25日ページID 004002

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漂流油・漂着油の回収技術についての紹介


 平成9年1月2日に島根県沖の日本海で沈没し、船首部分が福井県三国町に着底したロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の油流出事故では、大量の重油が日本海沿岸各地に漂着し、自然環境や地域住民の生活に深刻な影響を与えました。
 事故当初は、漂流および漂着した油の回収方法について、有効な情報がなかったため、ひしゃくやバケツ等を使っての人海戦術に頼らざるを得ず、効果的な油の回収技術情報の提供が各方面から強く求められていました。
 このため、福井県では直ちに「重油回収技術対策連絡会」を組織し関係機関や団体、民間企業等の協力を得ながら、重油回収にかかる技術対策および技術情報について報告書をとりまとめ関係機関に発表、その後の重油回収作業に大きな成果をあげました。
 漂流油、漂着油に対する有効な回収方法の情報が世界的に不足している中で、この報告書にまとめられた重油回収にかかる技術対策に関する記述は、関係者の皆様に大変役立つものと考え、ここにご紹介します。
 インターネットでは、紙面の関係で一部の内容でしかご紹介できませんが、詳しい内容をご希望の方は、福井県危機対策・防災課へご連絡ください。

重油回収にかかる技術対策について(抜粋)

1 浮流油の回収・除去にかかる技術対策

 

回収方法の内容              留意事項         問題点       
【タモによる回収】
1 方法
 網をたるみのないように張ったタモを使ってすくいとり、ドラム缶に収容する。
2 条件
 浮遊油が粘性を増し、塊状になっていること。
                 
3 能力
 最大600 リットル/人・日
 

●網の材質はナイロンテグスまたは金網がよい。また、直径30cm、網目16mm~20mmが使いやすい。         
●10t以上の船では、舷側が高いため、作業能率が悪くなる。
●大敷網で使用する漁船は舷側が低く、甲板が広いので多人数が乗船でき、作業性がよい。

●長時間使用すると油が網に付着し、作業効率が落ちる。
●波風の影響を受けやすく、操船に難点がある。
 


 

タモ網で重油を回収している写真


 

回収方法の内容              留意事項         問題点       
【クレーンによる回収】
1 方法
 鉄またはステンレス製の環や枠に網を取り付け、これらを使って海面を曳航することにより、油塊を回収する。適当量が採集された時点で、クレーンを使って甲板に引き上げドラム缶に収容する。
2 条件
 浮遊油が粘性を増し、塊状になっていること。
3 能力
 最大6、500 リットル/隻・日
 

●採取道具
 環の場合 大きさ直径1.3m
 枠の場合 大きさは3m×1m位

 網の長さ3m、目合15mmが使いやすい。
 

●約3分の1が網に残る。
 


 

クレーンで重油を回収している写真クレーン採集道具の図 


 

回収方法の内容              留意事項         問題点       
【回収ネットよる回収】
1 方法
 浮子を付けた曳き網を2隻の船により曳航する。曳き網の後部には、交換式のバックを取り付けて一杯になったら切離して新しいバックと交換することで連続的に回収する。切り離したバックは、海面に浮遊するので別の船で回収する。
2 条件
 高粘度の浮遊油から塊状の油まで回収可能。
 曳航する船は、5t以上が望ましい。
 曳航速度は、2~3ノット
3 能力
 速度3ノットで130キロリットル
                    

●2隻の船は同規模のものとする方が作業性が良い。
●バックは再利用が困難であり、多数準備する必要がある。
            

●波風があると回収効率が低下する。
●波の高いときは作業が困難になる。
●回収バックが再利用困難
          
回収ネットによる回収作業
回収ネットによる重油回収の図回収ネットで重油を回収している写真


2 岩場に漂着した油の回収・除去にかかる技術対策

岩場は、垂直な崖になっている所や岩石が積み重なっているなど様々であり、地形に合った回収方法が必要である。
温水や高圧水による岩場の洗浄は、一時的に生態系に及ぼす影響があるため、限定的に利用することが望ましい。
岩場での高圧温水洗浄機による洗浄作業
高圧温水洗浄機で重油を洗浄している写真


3 砂浜に漂着した油の回収・除去にかかる技術対策

砂浜海岸については、油回収の程度や緊急性等によって、対応方法を決定する。
ビーチクリーナーによる回収作業
ビーチクリーナーで重油を回収している写真

 
波打ぎわでのプリーツネット敷設状況
プリーツネットで重油を回収している写真



 

「ロシアタンカー油流出事故災害の記録と教訓」の紹介


 記録誌「ロシアタンカー油流出事故災害の記録と教訓」は、大規模な油流出事故の記録を後世に残すとともに貴重な教訓として将来の防災対策に活かしていただくことを願って、福井県が作成しました。本誌は、単なる事実の記録にとどまらず、実際に応急・復旧活動に携わった担当者の反省点や感想など主観的な記述も多く盛り込んでいます。
 先に紹介しました重油回収にかかる技術対策についても資料編に盛り込まれています。

 ロシアタンカー油流出事故災害の記録と教訓の表紙の写  
    ── 記録誌の主な内容 ──
  1 事故災害の状況
  2 組織
  3 災害対策
  4 補償対策
  5 県議会の活動
  6 沿岸市町村の活動状況
  7 各機関の活動状況

     ──  掲載資料  ──
  1 福井県活動状況
  2 災害対策の経過
  3 浮遊油の状況
  4 船首部からの油抜き取り撤去状況
  5 仮設道路の建設および撤去
  6 災害対策本部会議の記録
  7 重油回収にかかる技術対策および   
    技術情報について
  8 ボランテイア活動報告書(抜粋)
  9 環境影響調査(中間報告)の概要
 

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