実用化技術等(平成5年)

最終更新日 2023年3月13日ページID 052143

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【平成5年度】

1.コシヒカリ栽培における油粕・魚粕を主体とする有機質肥料の施肥法
2.登熟期の寡照条件に対するキヌヒカリの適応性
3.コシヒカリ栽培における屑大豆の施用法
4.福井県在来ソバの生態型を利用した作期の拡大
5.籾がら牛ふん堆肥によるネットメロンの減化学肥料栽培法
6.ミディトマト「越のルビー」抑制作における隔離ベッド高糖度栽培技術
7.ミディトマト「越のルビー」未熟果の追熟過程
8.アメダスデータによるハウス夏季太陽熱処理時の地温推定
9.簡易ハウスを利用した秋ギク型スプレーギクの長期出荷技術
10.シンテッポウユリ組織栽培苗の育苗方法と定植期
11.トルコギキョウの8月出し栽培
12.トルコギキョウの6月出し栽培
13.シロクジャク新系統「901」の特性
14.デルフィニュームの初夏出し栽培
15.金具バンドによるカキの花芽着生促進法
16.早期多収化のためのカキの大苗養成法
17.カキ「平核無」の開心自然形の2本主枝整技による花芽着生促進技術
18.ウメ「紅サシ」の成木における冬季せん定法
19.ウメに対する苦土質肥料の施用
20.ウメ加工における酸味除去技術
21.受精卵移植技術により生産された黒毛和種子牛の哺育育成技術
22.若狭牛の前期における粗飼料多給及び飼料養分を違えた肥育効果
23.繁殖豚に対する分娩誘発剤の利用
24.移動式肉豚放飼技術
25.採卵鶏銘柄における鶏ロイコチトゾーン症の抗病性の違い

 

平成5年度

 

コシヒカリ栽培における油粕・魚粕を主体とする有機質肥料の施肥法

[要約]100%有機複合肥料は緩効的な肥効を示し、コシヒカリ栽培において基肥と穂肥の2回施肥体系で化学肥料体系同等の収量が得られる。また、この複合肥料の側条施肥法では玄米中の窒素含量が化学肥料体系に比べてやや低くなる。

福井県農業試験場・土壌環境課

契機

部会名

生産環境

専門

肥料

対象

稲類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

近年、有機栽培米に対する消費者ニーズが高まりつつあることから、有機質資源の利活用を図るためナタネ粕、フェザーミール、骨粉、魚粕等を原料として造粒された、100%有機複合肥料の肥効および施肥法を明らかにした。

[成果の内容・特徴]

(1)100%有機複合肥料の窒素無機化は初めの1週間が速く、その後の窒素無機化は緩慢であった(図1)。本肥料を基肥として全層に施肥した場合の水稲の窒素吸収量は化学肥料体系と大差なく推移した(図2)。

(2)100%有機複合肥料を使った基肥と穂肥の2回施肥体系では、化学肥料体系(慣行)と同程度の収量であった(表1)。

(3)また基肥窒素量を化学肥料体系に比べて1kg/10a程度増やすことによって、化学肥料体系を上回る収量が得られ(表1)、収益性向上が期待された。

(4)100%有機複合肥料側条施肥区では、玄米の窒素含量がやや低く、収量は化学肥料体系に対する指数で98~103であった(表1)。

 

[成果の活用面・留意点]

粘~強粘質の半湿~湿田で、有機栽培米等の生産に活用される。100%有機複合肥料は一般に加里含量が低いので、稲わらのほ場還元、堆肥施用等土づくりを行う。移植の11~14日前に基肥を施し(全層施肥の場合)、穂肥は、幼穂長や葉色をみて、慣行の穂肥1回目施用時期前後に施用する。穂肥施用時期以後も間断かんがい等によって土壌を湿潤に保つ。

 

[具体的データ]

 

         

 

 

[その他]

研究課題名:米の品質向上における有機質資材の有効利用

予算区分 :県単

研究期間 :平成4年度(平成2~5年)

研究担当者:斉藤正志、坂東義仁

発表論文等:日本土壌肥料学会中部支部第68例会一般公演

 

登熟期の寡照条件に対するキヌヒカリの適応性

[要約]キヌヒカリはコシヒカリに比べ受光態勢が良いので、登熟期間の遮光処理による乾物生産の低下程度が小さく、登熟歩合の低下や乳白粒率の増加等による玄米品質劣化の影響も少なく、登熟期寡照条件に対する適応性の高いことが認められた。

福井県農業試験場・作物課

契機

部会名

作物生産

専門

栽培

対象

稲類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

コシヒカリが作付面積の60%を超え、特定品種に偏重していることから登熟期間の気象変動は作柄に著しい影響を及ぼす。そこで同熟期品種のキヌヒカリを用い、寡照条件による収量・品質への影響の違いについて比較し、適応性を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

(1) 出穂後7~27日の遮光(照度38%、カロリー30%)により、両品種とも出穂期~成熟期の乾物生産が減少し、収量が低下した。これは光環境の劣化により下部枝梗や高節位、二次分げつ穂における登熟歩合が著しく低下したことによる。

しかし、キヌヒカリはコシヒカリに比べ、遮光下でも乾物生産が高く維持され、下部枝梗等、弱勢類花における登熟歩合の低下が少なく、減収程度も小さかった(表1、図1)。

(2) 遮光処理によって両品種とも乳白粒や死米の発生比率、玄米窒素濃度が高まり、整粒歩合及び食味官能値は低下した。コシヒカリは下部枝梗や二次分げつ穂において乳白粒の発生比率がキヌヒカリより明らかに高く、外観形質の低下が著しい(表2、図1)。

(3) キヌヒカリがコシヒカリに比べて遮光による収量・品質への影響が少ないのは節間長が短く、登熟期間及び成熟期の倒伏程度が軽い、葉身が厚い、根部の生産量が大きく登熟期間の枯れ上がりが少ない等によって受光態勢が良好に保持され、登熟期の乾物生産低下が小さいためと考えられる(表1、表3、写真)。

 

[成果の活用面・留意点]

県内の平坦部で重粘土湿田地帯等、中干し水管理の難しい肥沃地(コシヒカリ不適地)においては、登熟期の寡照条件下で乾物生産の優れるキヌヒカリの作付拡大を図る。

なお、キヌヒカリは穂発芽性が「やや易」なので、出穂後の積算気温は1020℃(平年では出穂後39~40日)を収穫適期とし、これより刈り遅れにならないよう留意する。

 

[具体的データ]

表1 登熟初中期の遮光による生育収量への影響

出穂期の生育量

 

成熟期の生育量

 

倒伏程度

(05)

+27 +35

乾物

増加速度*

(g/㎡/日)

収量構成要素

草丈

(cm)

茎数

(本/㎡)

乾物重

(g/㎡)

LAI

稈長

(cm)

穂長

(cm)

穂数

(本/㎡)

乾物重

(g/㎡)

LAI

玄米重

(kg/a)  

総籾数

(万粒)

登熟歩合

(%)

千粒重

(g)

1.キヌ遮光

91

500

946

6.0

 

82

18.4

450

1380

3.8

1.5 1.5

12.4

(72)

54.8(79)

3.71

67(78)

22.1

2.〃対照

90

470

890

5.9

 

84

18.2

438

1492

3.4

1.0 2.2

17.2

(100)

70.9(100)

3.70

85(100)

22.5

3コシ遮光

105

473

950

5.5

 

93

18.2

418

1247

2.4

3.0 3.5

8.5

(57)

44.6(66)

3.42

59(71)

22.3

4、〃対照

105

460

963

5.9

 

92

19.0

435

1485

1.8

3.0 3.8

14.9

(100)

67.4(100)

3.52

83(100)

22.8

注) * 登熟期間 出穂期 キヌヒカリ 8月5日 コシヒカリ 8月3日.

 施肥法(N成分kg/a) 基肥0.3+穂肥0.2×3回 合計0.9kg

成熟期 キヌヒカリ 9月9日 コシヒカリ 9月7日.

表2 登熟初中期の遮光による玄米品質への影響

外観品質(%)

窒素濃度

(%)

食味

官能値

整粒

青米

乳白粒

死米

1

61.6(78)

18.7

13.2

0.7

1.48(106)

-0.21

2

78.9(100)

16.1

2.2

0.1

1.39(100)

-0.08

3

49.7(72)

11.4

31.8

0.2

1.50(119)

-0.17

4

68.9(100)

14.2

13.0

0.1

1.26(100)

0

注) №は表1に同じ

 

 

表3 キヌヒカリとコシヒカリの形態の違い

品種

節間長(cm)

 

葉身長(cm)

SLA*

(c㎡/g)

根部乾物重(g/㎡)

植被率(画像)(%)

NO

N1

N2

N3

N4

 

L1

L2

L3

出穂期

登熟中期

幼形期

出穂期

キヌヒカリ

33

19

17

10

5

 

21

33

44

239

125.3

116.6

53.0

70.3

コシヒカリ

38

20

17

12

5

 

23

32

40

247

112.2

101.4

59.6

72.3

注)*出穂期

 

 

 

[その他]

研究課題名:北陸産米の品質向上

予算区分 :国補(地域重要新技術)

研究期間 :平成4年度(平成4~6年)

研究担当者:佐藤 勉、林 恒夫、酒井 究、尾嶋 勉

発表論文等:なし

 

コシヒカリ栽培における屑大豆の施用法

[要約]屑大豆の窒素含有率は約6%であり、そのうち約80%が徐々に無機化するので、屑大豆を窒素約5%の緩効性肥料とみなして、コシヒカリ栽培で基肥や穂肥として施用することができる。

福井県農業試験場・土壌環境課

契機

部会名

生産環境

専門

肥料

対象

稲類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

選別後の屑大豆を有機質肥料として活用するため、その窒素無機化特性とコシヒカリに対する施用法を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)恒温条件における屑大豆の窒素無機化パターンは、25℃では40日タイプ緩効性肥料(40日間で窒素の80%が溶出する肥料)と極めて類似した(図1)。このことから、屑大豆を窒素含量5%の緩効性肥料として利用することができる。

 

(2)屑大豆単独をコシヒカリの基肥および穂肥として施用すると、基肥施用では慣行施肥体系に比べ生育初期から生育量が少なく推移し、穂肥施用では籾数が大幅に減少しいずれも減収した(図2、表1)。

 

(3)屑大豆に化成肥料を併用し、屑大豆単独施用でみられた施用直後の低肥効を化成肥料で補うことにより、基肥および穂肥利用のいずれも慣行施肥体系と同等の生育・収量が得られた(図2、表1)。

 

(4)屑大豆単独を基肥に施用した場合の水稲窒素吸収量をみると平成3年と平成4年では傾向が異なり、生育中期までが低温であった平成4年は慣行施肥体系に比べ出穂期までの窒素吸収量が大幅に少なく、成熟期になって逆に多くなった(表1)。このことから、地温による屑大豆の肥効パターンの変動が懸念された。

 

(5)玄米中の窒素濃度は、屑大豆の基肥施用では慣行施肥体系に比べ若干高まったが、穂肥施用ではやや低くなった(表1)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

屑大豆の肥効パターンは地温により変化するので、低温年では節間伸長期の肥効発現が懸念される。したがって、コシヒカリでは屑大豆の多量施用はさけ、慣行施肥量の概ね半分を屑大豆で施用し、残りを速効性窒素で施用するのが望ましい。なお、穂肥として施用する場合は、施用後2~3日湛水するか蒸煮後施用するなど発芽抑制策が必要である。

 

[具体的データ]

 

図1 屑大豆の窒素無機化率の推移

(恒温湛水密栓培養)

 

 

表1 窒素吸収量の推移および収量・玄米品質   (‘91:細粒強グライ土、‘92:細粒グライ土)

区名

施肥量(NKg/10a)

窒素吸収量(kg/10a)

精玄

米重

(kg/10a)

玄米

T-N

(%)

基肥

穂肥

最高分

げつ期

幼穂形

成期

出穂

成熟

‘91

慣行

3.0

6.0

4.05

4.82

9.47

12.63

588

100

2.7

1.36

基肥大豆N

3.0

6.0

3.65

4.80

9.28

12.02

539

92

2.2

1.36

穂肥大豆N

3.0

6.0

4.10

4.84

7.77

11.14

563

96

2.0

1.24

‘92

慣行

4.0

5.0

3.49

5.91

8.89

11.96

573

100

3.4

1.43

基肥大豆N

4.0

5.0

2.57

4.25

7.30

12.73

566

99

3.9

1.47

基肥併用

2.0+2.0

5.0

3.24

5.21

8.62

13.05

592

103

3.7

1.49

穂肥大豆N

4.0

5.0

3.38

5.80

6.71

12.02

557

97

2.8

1.27

穂肥併用

4.0

3.0+2.0

3.25

5.68

7.54

12.52

565

99

3.8

1.39

 注) は屑大豆N、屑大豆成分:6.76-0.81-2.21(屑大豆N 1kg=現物 14.9kg)

穂肥は慣行が3回分施、屑大豆を用いた区は一括施用

 

[その他]

研究課題名:コシヒカリ栽培における屑大豆の施用法

予算区分 :国補(土壌保全)

研究期間 :平成4年度(平成3~4年)

研究担当者:田中英典・坂東義仁

発表論文等:水稲に対する大豆汚斑粒の施用法、日本土壌肥料学会中部支部第67回例会

講演要旨集、1992

 

福井県在来ソバの生態型を利用した作期の拡大

[要約]福井県内では内陸盆地や中山間地を中心として在来種のソバが作付けられている。これら在来種の生態的特性と収量性を調査し、生態型が異なる「美山宮地在来」と「大野在来」を組合せることにより、作期拡大が可能なことを明らかにした。

福井県農業試験場・作物課

契機

部会名

作物生産

専門

栽培

対象

雑穀類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

ソバは近年、地域特産物的位置づけ転作作物として作付が増加しているが、気象変動等により作柄が不安定である。本試験では生態型の異なる代表的な県内在来ソバの大野在来(秋型)、美山宮地在来(夏型~中間型)を用い、気象条件と生育・収量の関係を明らかにし、両品種の作期の組合せにより効率的な生産体系を指標化した。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)播種期と生育・収量

平成3年と4年では、生育・収量の傾向はやや異なり、平成3年では両系統とも播種時期の違いで

収量は大差なく、平成4年では8月中旬播で明らかに多収であった。年次間差には平成3年は寡照高温で降水量が多かったこと、平成4年は多照で降水量が少なかったことが関与していた(図1)。

 

(2)気象条件が生育と収量に及ぼす影響

ア.美山宮地在来の収量は花房数、分枝数の増加により高まり、花房数は播種後の温度と相関が高かった。花房数と播種期~開花期の平均気温の関係より27~28℃において10kg/a以上の収量が得られた(表1、表2、図2)。

イ.大野在来の収量は分枝数や花房数との関連はみられず、花房当たりの着粒数との相関が高かった。花房当たりの着粒数は開花期~成熟期の平均気温が15~20℃において多く、その前後では減少する傾向が認められた(表1、図3)。

 

(3)平均気温を基にした播種期の設定

この結果より、美山宮地在来では花房数を増やすため、播種期~開花期の温度が高くなるように、大野在来では花房当たりの着粒を増やすため、開花期~成熟期の平均温度が15~20℃になるようそれぞれの播種期を平年気温から設定した(図4)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)平年の気温から播種適期は美山宮地在来で8月第1~3半旬、大野在来で8月第3~5半旬となり、収穫は、美山宮地在来が9月末~10月上旬、大野在来は11月上旬となる。このように作期が拡大されることから機械の有効利用が図られ、効率的生産ができる。

 

(2)本成果は平野部での試験によるものであり中山間地に於いて適用する場合は気象条件に応じて作期を早める必要がある。

 

[具体的データ]

図1子実重、主茎長の推移                                          図2播種期~開花期の平均気温と

美山宮地の花房数の関係

 

表1 収量構成要素の相関(平成3~4年)

 

 

 

美山宮地在来

 

収量

花房数

分枝数

稔実粒数

着粒/花房

収量

 

0.81・

0.78・

0.99¨

0.30

花房数

0.24

 

0.72・

0.87¨

-0.22

分枝数

-0.02

0.67

 

0.79・

0.05

稔実粒数

0.99¨

0.23

-0.06

 

0.20

着粒/花房

0.75・

0.12

0.37

0.72・

 

 

 

表2 温度と収量、花房数との相関(平成3~4年)

 

 

美山宮地在来

 

平均気温1

平均気温2

収量

花房数

平均気温1

 

0.45

0.71・

平均気温2

 

-0.09

0.37

収量

0.38

0.02

 

0.81・

花房数

0.54

0.53

0.24

 

平均気温1:播種期~開花期、平均気温2:開花期~成熟期

 

[その他]

研究課題名:福井そば優良品種育成事業

予算区分 :県単

研究期間 :平成4年度(平成2~6年)

研究担当者:山田 実、林 恒夫、井上 健一、尾嶋 勉

発表論文等:なし

 

籾がら牛ふん堆肥によるネットメロンの減化学肥料栽培法

[要約]ネットメロン作付けごとに、籾がら牛ふん堆肥を1t/a連用し、化学肥料を段階的に削減しても、土壌中の全窒素、全炭素は、ほぼ一定で窒素地力が維持される。5作目には、無化学肥料栽培で、化学肥料栽培と同等の収量・品質が得られる。

福井県農業試験場・坂井丘陵畑作研究室

契機

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

果菜類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

近年の消費者ニーズは、周年化、高級化、さらに安全志向が高まっている。一方、有機物投入不足による土壌理化学性の悪化、土壌病害虫の多発による作柄変動や連作障害が発生し、化学肥料の多量施用は環境への悪影響も懸念される。これらのことから、地域内で最も入手しやすい籾がら牛ふん堆肥を用いて、ネットメロンの減化学肥料栽培法を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)籾がら牛ふん堆肥をa当たり1t施用する。半量は畦下にトレンチャーを利用して幅40~50cm、深さ60cm程度の土層に均一に施用し、残りは表面に全層施用とする(図1)。

(2)籾がら牛ふん堆肥を連用しながら、化学肥料を段階的に減じ、4作目からは籾がら牛ふん堆肥のみを施用する(表1)。

(3)4作目までの初期生育や1果重はやや劣るが、5作目では全量化学肥料栽培と同程度の生育収量が得られる(表1)。

(4)ネットの揃い、盛り上がり等、外見上の品質や糖度についても、全量化学肥料栽培と同程度である(表1)。

(5)土壌の化学性は、化学肥料施用区で全炭素、全窒素は減少傾向を示すが、籾がら牛ふん堆肥区では一定の含有率を示した(表2)。

(6)以上から、ネットメロンの減化学肥料栽培法として、籾がら牛ふん堆肥1t/aを部分深層に連用することにより、5作目には無化学肥料栽培で化学肥料栽培と同程度の収量、品質が得られる。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)埴壌土の畑地で冬季間はビニールを取り除くパイプハウス栽培に適用できる。

(2)籾がら牛ふん堆肥の成分量は窒素0.27%、燐酸0.39%、加里0.82%であり、窒素の有効化率30%のものを用いる。

 

[具体的データ]

パイプハウス

 

表1 籾がら牛ふん堆肥の施用とメロンの生育及び品質との関係

 

 

施用1)

全窒素

(kg/a)

減化学2

肥料率

(%)

交配前生育

1果重

(kg)

ネット

糖度

(Brix)

 

 

つる長

(cm)

葉数

(枚)

揃い3

盛上り3)

1作目(1990年秋)

牛ふん堆肥

1.85

44

97.9

17.3

1.52

4.4

3.5

14.3

化学肥料

1.84

0

101.5

18.0

1.67

4.8

2.9

14.7

2作目(1991年春)

牛ふん堆肥

1.86

75

89.7

18.3

1.47

4.3

3.9

12.2

化学肥料

1.84

0

90.7

18.5

1.51

4.2

3.8

13.2

3作目(1991年秋)

牛ふん堆肥

1.85

94

76.0

14.0

1.43

4.3

3.0

15.3

化学肥料

1.84

0

94.0

15.7

1.55

4.4

3.2

15.4

4作目(1992年春)

牛ふん堆肥

2.05

100

70.7

16.5

1.20

4.9

3.1

13.9

化学肥料

1.84

0

81.8

18.0

1.38

4.9

3.9

14.3

5作目(1992年秋)

牛ふん堆肥

2.25

100

90.2

16.6

1.36

3.8

3.2

15.9

化学肥料

1.84

0

91.6

17.0

1.27

3.4

3.1

16.4

注)1)牛ふん堆肥の有効化率を30%で計算。 2)牛ふん堆肥区の1~3作は有機化成A801を施用。

  3)1(不良)~5(良)。

  メロンの品種は「アールスナイト夏系2号」、200株/a、1本整枝1果穫り。

 

表2 籾がら牛ふん堆肥の施用による土壌化学性の変化

 

 

作付前

(15cm)

1作後

(15cm)

2作後

(15cm)

3作後

(15cm)

4作後

(15cm)

5作後

 

 

(15cm)

(30cm)

全炭素(%)

牛ふん堆肥

1.65

1.44

1.60

1.50

1.60

1.62

1.48

化学肥料

1.65

1.30

1.26

1.20

1.19

1.24

1.21

全窒素(%)

牛ふん堆肥

0.15

0.12

0.13

0.13

0.14

0.14

0.13

化学肥料

0.15

0.12

0.12

0.12

0.11

0.19

0.12

C/N比

牛ふん堆肥

10.7

11.7

12.2

11.5

11.4

11.5

11.0

化学肥料

10.7

10.7

10.8

10.3

10.8

10.5

10.2

CEC(me/100g)

牛ふん堆肥

15.0

17.0

17.4

17.3

15.0

16.4

16.2

化学肥料

15.0

16.8

16.9

17.1

14.9

15.7

15.5

Ex‐CaO(mg/100g)

牛ふん堆肥

319

274

277

290

294

185

278

化学肥料

319

287

273

299

291

260

261

Ex‐MgO(mg/100g)

牛ふん堆肥

79

77

85

84

84

75

73

化学肥料

79

79

81

83

83

66

68

Ex‐K2O(mg/100g)

牛ふん堆肥

70

65

62

65

53

55

53

化学肥料

70

60

60

58

50

57

50

 

 

[その他]

研究課題名:水と有機物による土壌浄化機能を活用した健全野菜生産技術の確立

研究予算 :国補(地域重要新技術)

研究期間 :平成4年度(平成2~4年)

研究担当者:福田喜康、山本浩二、宮越 盈、天谷真之(現 農産園芸課)

      南 忠員(現 総合農政課)

発表論文等:

 

ミディトマト「越のルビー」抑制作における隔離ベット高糖度栽培技術

[要約]「越のルビー隔離ベット栽培において、灌水をpF2.3で開始する灌水制限を行うことにより、その後50~55日で糖度8度以上の果実が生産できる。また、糖度の上昇にともない果実の肥大を抑制するが灌水制限を緩和することにより回復する。

福井県園芸試験場・野菜課

契機

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

果菜類

分類

普及

(普及に移す技術)

 

 

[背景・ねらい]

 

 福井県育成ミディトマト「越のルビー」のブランド化を図るため、隔離ベットを用い、高糖度果実生産のための灌水法を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

 

 (1)灌水制限により高糖度果実を計画的に生産することができる。また灌水開始時のpFが高いほど、糖度は高くなる(図2)。

 

 (2)灌水制限開始後、糖度8度に達するまでの日数は灌水開始時のpFが高いほど短く、pF2.3で50~55日と最も効果的であった(図2)。

 

 (3)灌水制限を開始すると糖度の上昇にともなって果実の肥大が抑制され、収量は灌水開始時のpFが高いほど減少し、pF2.3で278kg/a、pF2.1で284kg/a、pF2.0で349kg/aであった。

 

 (4)4段果房開花時より灌水開始時のpFを2.3、2.1として灌水制限した場合、3段果房以降で一果重の低下により収量が減少する。しかし、灌水制限緩和により一果重の減少は防げる(図3・図4)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 (1)灌水制限開始までは、土壌水分をpF1.8で管理し、初期生育を促す。灌水制限後、灌水を行う際には圃場要水量までもどす。

 

 (2)収穫後期になると小玉になり易く、収量が低下するので、灌水制限を緩和しpF2.0で管理する等根の活力を維持し、果実の肥大を促す。

 

 (3)水みちを形成するような部分灌水は避け、培地全体に均一散水を行う。

 

 (4)肥料成分が溶脱しやすいため、基肥には緩効性肥料等を用い、追肥は速攻性の液肥等を灌水を兼ねて施用する。

 

[具体的データ]

 

[その他]

 研究課題名:県バイオ品種等の高品質安定生産技術

 予算区分 :県 単

 研究期間 :平成4年度

 研究担当者:佐藤 信二・滝 修三・田中 肇

発表論文等:なし

 

(普及に移す技術)

ミディトマト「越のルビー」未熟果の追熟過程

[要約]ミディトマト「越のルビー」の果実を未熟状態で収穫し、温度25℃、相対湿度80%、照度3,200ルクスの条件下で追熟過程を検討した。半熟果は収穫後8日前後で、樹上完熟果と同程度の果実硬度果色還元糖含量有機酸含量となった。

福井県園芸試験場・野菜課

契機

部会名

野菜・花き

専門

生理

対象

果菜類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

 福井県育成のミディトマト「越のルビー」の生産・消費拡大を図るため、長期輸送に耐える収穫時期の判定基準の作成が望まれている。そこで、異なる熟期で収穫した未熟果の追熟過程を調査し、樹上完熟との品質の差を比較した。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)収穫時の色調をMINOLTA色彩色差計で測定し、a*=22を樹上完熟果、a*=12を半熟果、a*=‐4を催色果とした。

 

(2)収穫後の果実硬度の推移は、半熟果では収穫後8~10日で樹上完熟果収穫時と同程度の硬度となった。しかし、催色果では、収穫後10日目でも樹上完熟果収穫時の硬度より硬かった(図1)。

 

(3)赤さの指標としたa*値の推移は、半熟果、催色果とも収穫後6日で樹上完熟果収穫時の色調に近づき、a*値はやや低いが、肉眼で見分けにくい程度にまで着色した(図2)。

また、暗黒条件下では果実が黒ずみ、きれいに着色しなかった。

 

(4)還元糖含量の推移は、半熟果では収穫後8日で樹上完熟果収穫時と同程度の還元糖含量まで増加した(図3)。

 

(5)有機酸含量の推移は、半熟果は収穫後3~8日の間で樹上完熟果収穫時の有機酸含量まで減少した。催色果では収穫後10日目においても有機酸含量が高かった(図4)。

 

(6)以上のことからa*=12の半熟果の状態で収穫した果実は、収穫後8日程度で樹上完熟果収穫時の色調と同程度に着色し、硬度、還元糖含量、有機酸含量もほぼ同じ値に変化する。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)カラーチャート等による収穫適期判定基準資料となる。

 

(2)果実の色調はMINOLTA色彩色差計(CR-100)により、果実赤道部のL*、a*、b*(観察条件D65)を測定した。

 

(3)果実硬度は、果実硬度計KM-1(藤原製作所)により果実赤道部で測定した。

 

(4)隔離ベットで栽培した果実を用いたため、果実の色調は慣行の地床栽培とは異なる。

 

(5)10日間の追熟・貯蔵中に、果重が5%程度減少する。

 

[具体的データ]

 

 

注) 追熟過程を調査した果実の収穫時測定値

 

果実硬度

Brix

果実の色調

(kg)

(%)

L*

a*

b*

□樹上完熟果

0.52

7.6

40.9

21.7

23.2

+半熟果

0.70

7.5

47.6

12.1

29.8

◇催色果

0.78

7.0

57.3

-3.6

30.2

 

 

[その他]

 

 研究課題名:県バイオ品種等の高品質安定生産技術

 予算区分 :県 単

 研究期間 :平成4年度(平成4年)

 研究担当者:佐藤信二、滝 修三、田中 肇

 発表論文等:なし

 

(普及に移す技術)

アメダスデータによるハウス夏季太陽熱処理時の地温推定

[要約]太陽熱処理による土壌病害虫防除効果を高めるには、高地温を連続して確保することが必要である。入手しやすい情報による地温推定は、処理法の改良や技術指導に役立つので、アメダスデータによる地温と高温持続時間の推定を試みた。

福井県園芸試験場・野菜課

契機

部会名

野菜・花き

専門

資源利用

対象

果菜類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

 土壌の夏季太陽熱処理は、アブラナ科根瘤病、ナス科青枯病やネコブセンチュウ等の土壌病害虫の省農薬防除法として有効であるが、防除効果は天候の影響を大きくうける。また、防除効果の確認には、確保した高地温時間の測定が必要となる。このため、ハウス密閉処理による夏季太陽熱処理時の地温について、アメダスデータによる推定を試みた。さらに、防除効果安定化には、高地温持続時間の延長対策が必要であるため、二重被覆による改善を検討した。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)夏季太陽熱処理を7~8月に砂質土壌のパイプハウス(間口6m、奥行き40m)で行い、地温を調査した(図1)。

本条件下での畦面下25cm日最高地温の推定方法として次の式が導き出された。

  A=-0.108×B-0.146×C+1.311×D-0.666×E+0.148×F+19.187

        重相関係数:0.879、1%で有無(図2)

         A:畦面下25cm日最高地温(℃)  B:日降水量(mm)

         C:平均気温(℃、1時間ごと気温の平均値)

         D:最高気温(℃、1時間ごと気温の最高値)

         E:最低気温(℃、1時間ごと気温の最低値)

         F:日照時間(時間)

(2)畦面下25cmでは、地温40℃以上持続時間が日最高地温と相関が高い(図3)。

 

(3)ハウス密閉処理にトンネルを併用した二重被覆を行うことにより、保温力が高まり地温40℃以上継続時間が2倍以上となる(図4)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)地温推定式は処理期間中の地温推定に基づいた処理期間の決定に利用できる。

 

(2)地温推定式はハウス形状と土壌条件の異なるごと作成する。7~8月の処理中の地温調査データとアメダスデータに基づいて、重回帰分析により適合する推定式を導き出す。

 

 

[その他]

 

 研究課題名:水と有機物による土壌浄化機能を活用した健全野菜生産技術の確立

 予算区分 :国補(地域重要新技術)

 研究期間 :平成4年度(平成2~4年)

 研究担当者:滝 修三、田中 肇

 発表論文等:なし

 

簡易ハウスを利用した秋ギク型スプレーギクの長期出荷技術

[要約]移設が容易な間口2.2mの簡易ハウスを利用した秋ギク型スプレーギクの栽培法を明らかにし、シェード栽培の短日処理開始時期と期間、電照栽培の消灯時期と補光処理を組合せ、収穫が9月中旬から12月上旬まで可能な長期出荷技術を確立した。

農業試験場・野菜花き課

契機

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

本県のスプレーギクは、水田地帯を中心に作付されており露地の季咲き栽培が中心である。このため、収穫期間が短いこと、品質の不揃い等が問題となっている。また、平坦地域において簡易ハウス栽培における日長処理法は確立されていない。そこで、秋ギク型スプレーギクの作期拡大と高品質安定生産を図るとともに、水田園芸の定着を図るため、間口2.2mの簡易ハウス利用による日長処理法を明らかにし、長期出荷を可能にした。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)遮光を18時から翌朝7時まで行うシェード栽培は、黄色系の「ドラマチック」と白色系の「スワン」が7月8日以降、桃色系の「ピンキー」が7月22日以降に7週間の遮光処理を行うことになり、季咲き栽培に比べ6~7週間早い9月中下旬に開花する(表1)。

 

(2)8月5日以降の遮光処理は、5週間の処理期間でも、季咲き栽培に比べ約4週間早い10月上中旬に開花する(表1)。

 

(3)電照栽培は100w白熱電球を7㎡に1灯設置して、22時から翌日2時までの暗期中断を行う。10月上旬からハウス側面にビニール資材を張り保温を開始するが、12月上旬には簡易ハウス内の最低気温が3℃前後になるため、10月1日消灯による12月上旬開花が抑制栽培の限界である(表2)。

 

(4)電照栽培の切り花品質向上のため、電照装置を利用して、消灯直後から12時間日長になるような早朝補光処理を8週間行うと、「ピンキー」と「スワン」では切り花長や頂花および第1~3側枝の花首長が伸長する(図)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)簡易ハウス利用によるシェード栽培と電照栽培を組合せることにより、秋ギク型スプレーギクの収穫時期が9月中旬から12月上旬まで拡大できる。

 

(2)シェード栽培は、夏期の高温により開花遅延と桃色系品種では退色を起こすので、20時から翌朝4時まで遮光幕を開放して気温を調節する。

 

(3)簡易自動シェード装置を利用すると、手作業で行われてきた遮光処理を省力化できる。

 

[具体的データ]

 表1 シェード栽培の遮光開始時期と期間が開花時期と品質に及ぼす影響

品種

定植期

(月日)

遮光開始

(月日)

遮光期間

(週)

開花日

(月日)

到花日数

(日)

切花長

(cm)

切花重

(g)

花径

(cm)

茎径

(mm)

花数

(輪)

奇形花率

(%)

花色

ピンキー

5.27

7.8

5

10.2

86

96

58

8.0

5.6

6.3

89

薄桃

7

9.16

70

87

65

6.7

5.6

10.0

0

薄桃

6.10

7.22

5

10.5

75

83

57

7.5

5.2

9.1

41

7

9.29

65

81

54

7.1

5.1

10.4

0

6.24

8.5

5

10.12

68

82

50

8.0

5.6

10.1

0

7

10.9

65

79

47

7.2

5.5

9.8

0

ドラマ

 チック

5.27

7.8

5

9.21

75

87

53

6.5

5.7

8.4

56

オレンジ

7

9.11

65

73

46

6.1

5.7

10.5

0

オレンジ

6.10

7.22

5

10.2

72

70

33

6.7

4.8

8.3

46

オレンジ

7

9.25

65

74

34

6.4

4.9

9.7

0

オレンジ

6.24

8.5

5

10.4

60

75

67

7.2

6.4

14.0

0

オレンジ

7

10.1

57

74

60

6.7

6.0

13.3

0

オレンジ

スワン

5.27

7.8

5

10.7

91

88

45

10.3

4.5

4.0

89

7

9.25

79

80

46

8.7

4.5

7.3

0

6.10

7.22

5

10.10

80

85

42

10.6

4.2

6.3

57

7

10.6

76

79

39

9.1

4.0

6.4

0

6.24

8.5

5

10.13

69

80

54

10.9

5.2

7.5

0

7

10.10

66

77

39

9.7

4.7

7.0

0

注)到花日数は遮光開始から開花までの日数。

 表2 電照栽培の消灯時期が開花時期と品質に及ぼす影響

品種

定植期

(月日)

消灯時期

(月日)

開花日

(月日)

到花日数

(日)

切花長

(cm)

切花重

(g)

花径

(cm)

茎径

(mm)

花数

(輪)

ピンキー

7.25

季咲き

11.10

118

83

6.9

7.3

10.3

8.9

9.20

11.20

60

111

61

6.8

7.1

8.4

8.20

10.1

12.5

64

101

65

6.7

6.9

8.3

ジェム

7.25

季咲き

10.30

97

50

8.4

5.7

5.7

8.9

9.20

11.14

54

102

48

7.8

5.6

6.9

8.20

10.1

11.30

59

93

37

7.1

4.9

6.7

ドラマチック

7.25

季咲き

11.2

87

50

7.7

6.0

8.4

8.9

9.20

11.18

58

96

59

7.5

6.1

8.8

8.20

10.1

12.2

61

87

44

7.4

6.1

8.9

スージー

7.25

季咲き

10.29

98

44

8.6

5.3

5.8

8.9

9.20

11.11

51

103

34

8.0

4.5

5.1

8.20

10.1

11.25

54

81

31

7.8

5.2

4.4

スワン

7.25

季咲き

11.8

129

59

9.6

5.4

6.1

8.9

9.20

11.18

58

123

63

8.3

5.6

7.7

8.20

10.1

11.30

59

96

40

8.3

5.2

5.1

 

[その他]

 研究課題名:重粘土水田地帯におけるスプレーギクを中心とした新輪作技術の確立

 予算区分 :国補(地域水田農業)

 研究期間 :平成4年度(平成3~4年)

 研究担当者:小森治貴、松山松夫

 発表論文等:なし

(普及に移す技術)

シンテッポウユリ組織培養苗の育苗方法と定植期

[要約]シンテッポウユリ組織培養苗順化育苗培養土は、バーミキュライト単用またはバーミキュライトとピートモスを等量混合した培地が適する。球径2.0mm以上の培養苗を、遮光率25%前後の白寒冷紗で遮光し、ミスト灌水すると高率で活着する。

福井県園芸試験場花き課

契機

研 普

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 シンテッポウユリは、福井県において作付けの拡大が期待できる作目の一つである。ユリは組織培養による急速大量増殖が可能であるが、組織培養苗の育苗方法は明らかにされていない。福井県では組織培養苗の大量増殖体制の整備が予定されているため、シンテッポウユリ組織培養苗の育苗方法を、苗の大きさや順化育苗培養土などについて検討を行い、組織培養苗の順化育苗法を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)シンテッポウユリ組織培養苗の順化育苗培土は、活着率と生育の良否からバーキュライト単用またはバーミキュライトとピートモスの等量混合が適当である(表1)。

 

(2)培養苗の活着率は球径が大きいほど高く、球径2.0mm以上の培養苗は90%前後が活着する。このため、球径2.0mm以上の培養苗を用いる(表2)。

 

(3)培養苗の古葉と古根を切除してから植込んでも活着率は低下しないこと、セルトレイへの植込作業が容易になることから、古葉と古根は切除して植込む(表2、図)。

 

(4)順化育苗中のミスト灌水管理は、3月までは1日1回15分、4月以降は1日2回15分づつ行う。3月~4月の遮光管理は、遮光率25%前後の白寒冷紗を用いて順化育苗開始から2週間程度は終日遮光、その後曇天の日を見計らって遮光を中止する(図)。

 

(5)順化育苗開始3週間後から定植まで、500倍前後に薄めた液肥を週に1回灌注する。

 

(6)活着した培養苗を、2~4月にパイプハウス等の施設内に定植すると、8月中~下旬に平均花数1.9輪、切り花長114cm以上の切り花が生産できる(表3)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)培養苗は5℃前後の低温で1ヵ月程度の貯蔵が可能である。

 

(2)5月以降の定植は、花らいの発育が停止する株が増加するため、採花率が低下し切り花品質も低下するので避ける。

 

(3)パイプハウスでの切り花生産は、5月以降は葉枯性病害が発生しやすいので、ベノミル剤の2,000~3,000倍液で予防的に散布する。

 

[具体的データ]

表1 順化培養土の組合せが培養苗の生育に及ぼす影響

培養土の組合せ

pH

活着率1)

(%)

定植前調査2)

活着率

(%)

全重

(g)

葉長

(cm)

葉数

(枚)

球径

(mm)

根長

(cm)

バーミキュライト(ver)

100

95

0.24

5.7

2.4

4.6

7.4

ver+ピートモス

6.7

98

98

0.32

6.0

1.9

5.0

8.7

川西砂+ピートモス

5.7

88

59

0.10

3.8

1.3

2.8

12.3

田土+ピートモス

6.1

76

54

0.38

5.9

2.9

4.7

11.5

桐生砂+ピートモス

6.6

90

88

0.11

4.0

1.7

2.9

9.3

赤玉土+腐葉土

6.1

86

20

0.14

5.2

1.4

3.5

11.6

パーライト1号

96

69

0.11

4.2

1.6

2.9

6.7

注) 1) 調査日:6月25日。 2) 調査日8月20日。 植付日:1992年5月14日。

  2種類の培養土を組合せた区は等量混合とした。供試品種:北岳2号。

 

表2 培養苗の球径と葉・根の有無が活着に及ぼす影響

球径

(mm)

無処理苗1)

葉根切除苗2)

培養苗重量

(mg)

活着率

(%)

培養苗重量

(mg)

活着率

(%)

1.0~1.5

10

43

11

53

1.5~2.0

19

72

22

60

2.0~2.5

32

96

26

92

2.5~3.0

72

95

45

86

3.0~3.5

63

100

60

97

3.5~4.0

75

100

74

100

注) 1) 順化開始1990年12月9日、調査日:1991年2月18日。

  2) 順化開始1991年1月11日、調査日:1991年3月12日。

  供試品種:北岳2号。順化培養土:バーミキュライト。

 

表3 順化育苗の定植期が開花期と切り花品質に及ぼす影響

定植期

低温処理

育苗日数

(日)

球径

(mm)

開花始

(月.日)

開花期2)

(月.日)

開花終

(月.日)

到花日数

(日)

採花率

(%)

切花長

(cm)

切花重

(g)

花数

(輪)

12月9日1)

なし

101※

7.8

7.26

8.17

260

100

175

177

3.2

2月18日

なし

73

2.4

7.25

8.14

11.18

177

63

114

86

1.9

3月12日

5℃35日

62

2.0

7.27

8.29

11.11

170

66

126

125

2.4

4月9日

なし

61

3.3

8.4

8.15

11.11

128

73

133

115

2.6

5月14日

5℃50日

71

4.3

9.2

9.14

10.5

123

52

106

56

1.2

6月19日

なし

68

4.8

10.4

11.3

11.19

137

7

122

116

2.5

7月17日

5℃30日

64

4.3

       未開花

注) 1)市販の育苗培養土使用、他はバーミキュライト単用。 2)全個体の平均。

  供試品種:北岳2号。供試個体数は1処理30~150球。

 

 

[その他]

 研究課題名:シンテッポウユリ組織培養苗の栽培

 予算区分 :県単

 研究期間 :平成4年度(平成3~4年)

 研究担当者:坂本 浩、永井輝行

 発表論文等:なし

 

(普及に移す技術)

トルコギキョウの8月出し栽培

[要約]トルコギキョウは3月下旬は種、6月中旬定植で8月中下旬の採花が可能である。品種は中生の強耐病性で切り花長の長いものが適する。

福井県園芸試験場花き課

契機

研 普

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 本県においてはトルコギキョウは7月~8月上旬に採花されているが、市場対応として収穫出荷期間の延長が望まれる。このため、8月中下旬に採花できる作型を開発する。

 

[成果の内容と特徴]

 

 中晩生品種を3月下旬には種することにより8月中下旬に採花する。

 (1)3月下旬には種し、6月中旬に定植する。

 

 (2)ロゼット化による未抽苔は出現しない。

 

 (3)品種は8中旬採花ではロイヤルライトパープル、都紫、翠盃、8月下旬採花ではフレッシュホワイト、ホーリーバイオレットが強耐病性で、切り花長が長く適する。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 (1)病害に強い品種を導入する。

 

 (2)定植、本圃初期が高温期であり、葉焼けしやすいので通風をはかり涼しく管理するとともに、定植後活着まで約1週間は黒寒冷紗で遮光する。

 

 (3)栽植密度は3月定植、7月採花の作型と同等か、やや多くする。

 

[具体的データ]

第1表 開花時期による品種の切り花長と耐病性

開花時期

切り花長(cm)

長(65cm以上)

中(55~65cm)

短(55cm以下)

耐病性の強弱

耐病性の強弱

耐病性の強弱

8月上旬

若紫

 

 

 

白雪

 

8月中旬

ロイヤルライトパープル

キングオブライラックローズ

都紫

翠盃

 

若鷺

キングオブホワイト

あずまの銀河

アーリーパープル

あずまの粧

グローリーパープル

ホーリースモールレディ

 

あずまの波

黒峰

キングオブスノー

ミスライラック

天竜乙女

あずまの朝

アーリーバイカラパープル

 

8月下旬

 

桃の誉

フレッシュホワイト

ホーリーバイオレット

天竜ホワイト

ドレミワインレッド

ホーリースモールスカイ

パステルレッド

フレッシュライトピンク

プリマドンナ

 

 

第2表 8月出し作型適品種の開花調査

品種名

開花*

特性

開花

始め

(月・日)

開花

終り

(月・日)

開花

(月・日)

切り

花長

(cm)

茎径

 

(mm)

切り

花重

(g)

花蕾

(個)

ロイヤルライトパープル

早生

8.9

8.17

8.12

68

3.6

28

12

キングオブライラックローズ

早生

8.10

8.16

8.13

68

4.0

36

19

都紫

中生

8.7

8.21

8.18

71

3.8

28

11

翠盃

中晩生

8.14

8.26

8.19

67

4.0

30

9

ホーリーバイオレット

晩生

8.19

8.25

8.21

58

4.8

37

21

フレッシュホワイト

晩生

8.17

8.26

8.21

58

4.0

30

13

*カタログ表記データより作成、は種日 1992年3月24日

               定植期 1992年6月14日

 

[その他]

 研究課題名:トルコギキョウの新作型の開発

 予算区分 :県経常

 研究期間 :平成4年度(平成3~4)

 研究担当者名:坂本浩、永井輝行

 発表論文等:なし

 

(普及に移す技術)

トルコギキョウの6月出し栽培

[要約]トルコギキョウのは種を9月上旬に行い、年内に定植することで、6月に採花でき、品質の良い切り花が得られた。3~4月にわき芽発生の少ない品種は、わき芽かきの労力が少なく望ましかった。

福井県園芸試験場花き課

契機

研 普

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 トルコギキョウは11~1月上旬には種し、3月に無加温ハウス内に定植して7月に採花する作型で栽培が行なわれている。この作型では生産過剰気味の市場に出荷することになり問題がある。本技術は、は種時期を早め、は種時期を早め、年内に定植することで、より高品質の切り花を市場への供給が少ない時期に出荷する技術である。

 

[成果の内容と特徴]

 

(1)9月上旬は種、11月中旬定植によって年内に活着させる(表1)。

 

(2)開花は3月定植より10日以上早く、切り花品質も良い(表2)。

 

(3)6月上旬より採花できる品質の良い品種は、紫の誉、白の誉であり、6月中旬より採花が可能な品種は若鷺であった(表3、表4)。

 

(4)わき芽かきに労力を要するため、若紫、白雪等のわき芽発生の少ない品種が望ましい(表3)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)本作型によって、価格が安定している6月の出荷が可能となる。

 

(2)3~4月にわき芽かきを行う。

 

(3)栽植密度は3月定植作型より植え付け本数を少なくする。

 

(4)冬期間は内張りなどで保温し、氷点下に下がらないようにする。

 

[具体的データ]

 

表1 は種日が開花に及ぼす影響         表2 6月出し作型と7月出し作型の切り花品質

は種日

開花

(月・日)

切り

花長

(cm)

節数

分枝

(本)

茎径

 

(mm)

切り

花重

(g)

花蕾

(個)

有効鼻蓄数

(g)

花径

 

(mm)

 

試験区

品種

開花

特性

開花

(月・日)

切り

花長

(cm)

分枝

(本)

切り

花重

(g)

花蕾

(個)

8月31日

6.16

78

16

3

5.9

57

25

7

50

 

年内定植区

若紫

早生

6.15

75

3.7

57

15

9月5日

6.18

78

16

4

5.7

60

27

8

57

 

  *1

ミスライラック

中生

7.6

80

2.9

53

29

9月10日

6.21

74

17

3

6.2

52

22

7

47

 

初春定植区

若紫

早生

6.30

71

2.0

45

14

9月19日

6.24

75

13

3

5.6

51

17

5

52

 

  *2

ミスライラック

中生

7.12

72

3.0

52

32

 供試品種 紫の誉  定植日 1991年11月12日         *1 は種日 1991年9月5日 定植日 1991年11月12日

                                                                                                   *2 は種日 1991年11月23日 定植日 1992年3月23日

 

 表3 開花時期による品種の切り花長とわき芽程度

開花時期

(開花始)

切り花長(cm)

長(70cm以上)

短(70cm未満)

わき芽本数(本/株)

わき芽本数(本/株)

少(3本未満)

多(3本以上)

少(3本未満)

多(3本以上)

6月上旬

 

6月中旬

 

6月下旬

 

 

7月上旬

 

7月中旬

 

 

若紫

白雪

翠盃

プリマドンナ

 

ミスライラック

ホーリークリーミーホワイト

紫の誉

白の誉

若鷺

 

早生あずまの粧

キングオブライラックローズ

あずまの銀河

桃の誉

 

 

 

酔美人

 

 

黒峰

都紫

 

 

 

ドレミワインレッド

 

アーリーパープル

 

表4 6月出し作型適品種の開花調査

品種

開花*

特性

開花

始め

(月・日)

開花

終り

(月・日)

平均

開花

切り

花長

(cm)

節数

分枝

(本)

茎径

 

(mm)

切り

花重

(g)

花蕾

(個)

有効

花蕾

花径

 

(mm)

紫の誉

極早生

5.30

6.30

6.18

78

16

3.7

5.7

60

27

8

57

白の誉

極早生

6.8

6.18

6.11

75

14

2.5

5.1

45

13

5

56

若 鷺

極早生

6.11

6.28

6.19

71

15

2.9

5.6

45

21

5

45

若 紫

極早生

6.12

6.21

6.15

75

13

3.7

5.9

57

15

5

66

白 雪

早 生

6.19

6.29

6.24

71

14

1.4

5.1

35

16

4

55

*カタログ表記データより作成、は種日 1991年9月5日 定植日 1991年11月12日

 

[その他]

 研究課題名 :トルコギキョウの新作型の開発

 予算区分  :県経常

 研究期間  :平成4年度(平成3~4年)

 研究担当者名:坂本 浩、永井輝行

 発表論文等 :なし

 

(普及に移す技術)

シロクジャク新系統「901」の特性

[要約]シロクジャクの9月中旬に採花でき、草姿の優れた系統「901」を在来の中生系統から選抜した。

福井県園芸試験場花き課

契機

部会名

野菜・花き

専門

育種

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

シロクジャクは在来の早生系、中生系晩生系が栽培されており、早生系は9月上旬、中生系は9月下旬に開花する。9月中旬は、中生系を短日処理させる必要があり、市場価格が高い。そこで9月中旬の端境期に自然開花する系統を育成した。

 

[成果の内容と特徴]

 

在来中生系から9月中旬に開花し、草姿の優れた優良系統「901」を選抜した。

(1)育成経過

 1989年、在来中生系の株から9月上~中旬に開花した株を選抜し、1990~1992年にかけて栽培試験し、系統の選抜と切り花品質を調査した。

 

(2)特性の概要

 生育は中生系と同程度である。開花は中生系より早く9月15日前後、切り花長は中生系と同等で90~96cmと晩生系よりやや短いが早生系より長い。花穂長は、70cmと晩生系より短いが、中生系と同等である。花弁数は晩生系、中生系いずれよりも多く、3.3枚前後である。花型、草姿は在来のいずれの系統よりも整っている。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)本系統の利用により、9月中旬採花が可能である。

 

(2)6月上旬の摘心を遅れないようにする。

 

(3)6~8月、シャクガの防除を行う。

 

[具体的データ]

 

第1表 開花調査*1

系統

開花

始め

(月・日)

開花

終り

(月・日)

平均

開花日

(月・日)

切り

花長

(cm)

花穂

(cm)

最大

側枝長

(cm)

茎径

 

(mm)

切り

花重

(g)

草姿

早生系

9.3

9.12

9.7

90

66

40

3.3

22

A

中生系

9.20

9.25

9.24

92

73

42

6.5

60

A~B

901系

9.10

9.19

9.16

86

71

46

6.3

48

A

902系

9.10

9.28

9.17

73

59

44

5.4

55

A~B

903系

9.7

9.17

9.12

81

60

41

5.5

52

A~B

*1 1991年開花調査

 

第2表 生育調査*2

系統

6月2日(摘心時)

 

7月30日

草丈(cm)

分枝数

 

草丈(cm)

分枝数

早生系

35

5

 

63

10

中生系

44

4

 

73

13

晩生系

59

4

 

95

10

901系

30

3

 

79

12

902系

28

5

 

64

12

903系

22

5

 

70

10

*2 1992年生育調査

 

第3表 開花調査*3

系統

開花

始め

(月・日)

開花

終り

(月・日)

平均

開花日

(月・日)

切り

花長

(cm)

花穂

(cm)

最大

側枝長

(cm)

茎径

 

(mm)

切り

花重

(g)

花弁

(個)

花径

 

(mm)

草姿

早生系

9.11

9.15

9.14

76

61

40

4.5

42

26

11

A

中生系

9.23

9.28

9.26

93

73

45

6.8

91

26

14

A~B

晩生系

10.6

10.8

10.7

116

96

54

6.6

109

29

17

B

901系

9.11

9.17

9.14

93

74

40

6.0

65

33

13

A

902系

9.11

9.21

9.17

78

66

45

5.9

85

27

13

B

903系

9.10

9.21

9.15

86

66

37

5.1

54

31

14

A~B

*3 1992年開花調査

 

[その他]

 研究課題名 :シロクジャクの系統選抜

 予算区分  :県経常

 研究期間  :平成4年度(平成元~4年)

 研究担当者名:坂本浩、永井輝行

 発表論文等 :なし

 

(普及に移す技術)

デルフィニュームの初夏出し栽培

[要約]10月下旬~12月中旬は種で5月下旬~7月下旬まで採花でき、10月下旬は種では2番花が7月に収穫できる。初夏出し栽培にはリトル系が適する。

福井県園芸試験場花き課

契機

研普

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

デルフィニュームは、切り花として人気が高いが、本県における無加温ハウス利用の作型は確立していない。本技術は、無加温ハウス利用によるデルフィニュームの5月下旬から7月下旬までの2ヵ月の採花を可能にする作型である。

 

[成果の内容・特徴]

(1)初夏出し栽培の作型

 

(2)初夏出し栽培には、リトル系のブルースプリングス、マジックフォンテンスが適している(表1)。

 

(3)10月下旬から12月中旬は種で5月下旬から7月下旬まで採花できる(表1)。

 

(4)10月下旬は種で2番花が7月に採花できる(表2)

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)は種時期と2番花利用により、5月下旬から8月上旬に計画的切り花生産ができる。

 

(2)花穂が間延びしないように4月以降なるべく通風をはかる。

 

(3)2番花を利用する場合は、1番花を収穫後、N成分で0.5kg程度追肥し、株の回復と肥切れによる葉色の脱色を防ぐ。

 

(4)は種は12月中旬まで無加温ハウスで可能だが、発芽が不揃いになるようなら(昼温15℃以下)加温する。

 

(5)病害虫は4~7月にシャクガが発生するので、適時防除する。

 

[具体的データ]

表1 デルフィニュームの播種期が開花に及ぼす影響

品種名

播種期

 

(月・日)

開花

始め

(月・日)

開花

(月・日)

開花

終わり

(月・日)

採花

率 

(%)

切り

花長

(cm)

切り

花重

(g)

花穂

(mm)

花蕾

(個)

着花

密度

ブルースプリングス

10.26

5.18

5.24

5.29

100

90

81

27

46

1.7

 

11.20

6.11

6.16

7.8

80

124

134

51

56

1.1

 

12.19

6.16

6.25

7.7

100

126

143

63

64

1.0

 

2.20

7.6

7.19

8.7

75

60

22

27

26

1.0

マジックフォンテンス

10.26

5.13

5.21

5.31

61

89

106

24

50

2.1

 

11.20

6.7

6.21

7.7

47

113

126

51

49

1.0

 

12.19

6.12

6.22

7.23

100

104

112

45

45

1.0

 

2.20

6.8

7.20

7.28

25

44

17

23

17

0.7

ブルーバード

10.26

5.13

5.27

6.5

72

132

137

46

68

1.5

 

11.20

6.5

6.13

7.2

100

157

134

73

72

1.0

 

12.19

6.18

6.27

7.10

100

173

147

93

69

0.7

 

2.20

7.7

7.24

8.7

67

90

55

52

34

0.7

ベラドンナインブ

11.5

5.7

5.11

6.1

100

100

72

34

12

0.4

 

11.20

5.21

6.5

6.15

100

113

58

31

10

0.3

 

12.19

6.8

6.20

7.4

100

97

43

41

11

0.3

 

2.20

7.7

7.28

8.12

60

59

15

21

6

0.3

播種年は1990年、定植日は1991年1月10日、2月22日、3月8日の順に行った。

*花蕾数/花穂長

 

表2 デルフィニュームのは種期が二番花の有無に及ぼす影響

品種名

播種日

 

(月・日)

開花

始め

(月・日)

開花

(月・日)

開花

終わり

(月・日)

切り

花長

(cm)

切り

花重

(g)

花穂

(mm)

花蕾

(個)

着花

密度

1m長

割合

(%)

採花

本数

/株

ブルースプリングス

10.26

7.6

7.22

8.4

87

55

50

42

0.8

27

1.1

 

11.20

7.30

8.1

8.3

78

76

36

58

1.6

17

0.5

マジックフォンテンス

10.26

7.4

7.22

8.4

97

79

45

51

1.1

50

1.3

 

11.20

7.10

7.23

7.30

87

86

42

72

1.7

20

0.3

播種年は1990年、定植日は1991年1月10日、2月22日、3月8日の順に行った。

*花蕾数/花穂長

 

 

[その他]

 研究課題名 :デルフィニュームの新作型の開発

 予算区分  :県経常

 研究期間  :平成4年度(平成3~4年)

 研究担当者 :坂本浩、永井輝行

 発表論文等 :なし

 

普及に移す技術

金具バンドによるカキの花芽着生促進法

[要約]カキの若木で、花芽着生が不足する木に対して、主幹または主枝に金具バンドをあてて肥大を抑えることにより、花芽不足が改善され、さらに果実肥大、着色も促進された。

福井県農業試験場・果樹課

契機

研 

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

カキの若木期は栄養生長が盛んで花芽が着きにくい。対策として、幹に環状はく皮を行って花芽形成を促進する技術があるが、こうした処理は、効果が高い反面、傷痕が残って樹勢に悪影響を及ぼすこともみられてきた。そこで、改善法として直接幹を傷つけずしかもいつでも処理を打ち切ることのできる方法を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)生育初期の4月、主幹の地上30cm1箇所もしくは30cmと50cmの2箇所に、5cm幅の塩ビ管をあて、金具バンドで締めつけて主幹の肥大を抑えた。1年後にはいずれも着蕾数が著しく増し、収量が増加した。さらに、金具バンド処理中の果実肥大が良好で収穫果実は大きく、着色も早まって収穫期が5~7日前進した(表1)。

 

(2)主枝基部について、同様な方法で3か月、6か月、9か月金具バンドをはめ翌年は位置を変えて処理を続けた結果、いずれも1年後の着果が良好で、収量は著しく増加した。また6か月以上の処理では大果率が高くなった(表2、3)。

 

(3)金具バンドを2年間同一位置で継続処理すると、3年目には生育不良が認められた(表4)。さらに、金具バンドを除去したところ、生理落花は多く、果実肥大、着色は無処理区と差異がなくて、処理の効果は認められなくなった(表1)。

 

(4)これらのことから、金具バンド処理は主幹または主枝に1箇所、4月に処理し6か月以後にとりはずし、翌年は位置を変えて処理するのが良い。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)5~10年生の「平核無」若木等で樹勢が強過ぎて花芽の着生量が少ない場合、従来の環状はく皮法に代えて活用できる。

 

(2)金具バンド処理樹では過度の着蕾になることがあるので、摘蕾、摘果を徹底する。

 

[具体的データ]

表1 主幹金具バンド処理と結実、収量、果実形質の年次変化

年次

バンド

処理区

着蕾数

(個)

生理的落果

  (%)

着果数

(個)

平均果重

(g)

収量

(kg)

果頂部

果色

糖度

(%)

1990年7月

2箇所

101

1.2

71

242

17.1

5.9

16.2

バンド

1箇所

200

20.0

104

216

22.3

5.8

14.7

処理年

無処理

135

0.0

84

196

16.5

5.0

15.0

1991年7月

2箇所

721

33.6

188

276

51.8

5.7

13.0

バンド

1箇所

318

53.3

78

302

23.5

6.2

15.0

1年後

無処理

181

15.7

86

180

15.4

3.6

12.6

1992年7月

2箇所

1037

61.4

148

176

26.0

6.3

13.7

バンド

1箇所

1040

68.7

132

184

24.3

6.0

15.6

除去

無処理

379

26.8

130

194

25.1

5.7

14.5

 

表2 主枝金具バンド処理期間と翌年の結果母枝、着蕾状況

1991年の

バンド期間

単位主枝当たり(1992年)

 

結果母枝当たり(1992年)z)

結果母枝数

結果枝数

着蕾数

 

新梢数

結果枝数

着蕾数

9ヵ月

52

139

351

 

4.8

3.0

9.0

6ヵ月

51

121

237

 

5.2

3.2

8.4

3ヵ月

54

134

284

 

4.7

2.5

6.3

無処理

28

57

87

 

5.0

2.0

2.3

 z) 長さ10cm~30cmの結果母枝30本の平均値

 

表3 主枝金具バンド処理期間と翌年の結実、収量、果実形質z)

1991年の

バンド期間

1992年の

バンド期間

着蕾数

(個)

生理的落果

  (%)

着果数

(個)

平均果重

  (g)

収量

(kg)

果頂部

果色

糖度

(%)

9ヵ月

9ヵ月

351

57.6

122

198

17.4

6.0

13.1

6ヵ月

6ヵ月

237

47.5

146

211

19.4

5.5

13.5

3ヵ月

3ヵ月

284

56.3

124

176

15.8

5.4

13.2

無処理

無処理

87

33.3

58

187

8.7

5.6

14.1

     z) 1992年

 

表4 主幹金具バンド連年処理と生育

バンド

処理区

葉緑素計値z)

 

単位葉面積(㎡)

 

葉の乾物重(mg/c㎡)

6月17日

7月8日

 

6月17日

7月8日

 

6月17日

7月8日

2箇所

48.3

54.5

 

86.3

90.3

 

9.5

11.0

1箇所

40.4

47.4

 

78.1

87.2

 

10.2

11.0

無処理

49.6

55.6

 

122.3

138.2

 

10.2

11.5

z) SPAD-501型による測定値

 

[その他]

 研究課題名:北陸積雪地域における果樹園早期多収成園化技術

 予算区分 :国補(地域重要新技術)

 研究期間 :平成4年(平成元~4年)

 研究担当者:小川晋一郎、杉本明夫

 発表論文等:なし

普及に移す技術

早期多収化のためのカキの大苗養成法

[要約]カキ「平核無」の4年生大苗を移植して、未結果期間の短縮を図るための大苗養成法を明らかにした。その方法は、1年生苗木をポットに植えて土中に埋没し、主枝候補は45゚に誘引してそれ以外の新梢を芽かきすると、生育が優れ、移植作業時間も短縮されて最も良かった。

福井県農業試験場・果樹課

契機

研 

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

 カキは結果期に入るのが5年生頃となり、他の果樹に比べて遅く、結果期に入ってからの収量増加も緩やかである。

 これの対応策として1年生苗木を植付ける代わりに4年生大苗を移植し、未結果期間を短縮するため、大型苗木の養成法を明らかにした。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)1年生苗木をポットに定植して土中に埋設した場合、総新梢長は減少するが、幹周肥大および主枝の生育は対照と変らず、しかも移植に要する作業が短くなり、移植後の生育が良くて着果させることも可能であった。一方、ポットを地上で管理した場合は、生育が埋設に比べて劣り、しかも水分管理に注意が必要であった。ネット埋設および対照では、養成期間中の生育は良いが、ポット埋設に比べ移植時の掘り上げに2倍以上の労力がかかり、移植後の生育も不良であった(表1、2、4)。

 

(2)大苗養成期間中の主枝候補枝の伸長量は誘引角度による差が無いことから、移植後の整枝を考慮して添え竹を用い斜め45゚に誘引する。また、3年生までは主枝候補以外の新梢は芽かき、誘引して主枝候補枝の伸長を促することが良い結果となった(表3)。

 

(3)移植時には、ポットで植付け位置まで移動し、根部の土壌は落とさず根鉢を付けたまま定植する方法が移植後の植え傷みは少なかった(表4)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)カキの新植を計画した場合には園地造成以前から大苗養成に当ることも必要となり、本技術が活用される。

 

(2)養成期間3年間は、2.5m間隔の超密植が可能で、小面積での集約管理が可能である。

 

(3)本試験では3年養成、4年生大苗の養成法を明らかにしたが、園地造成との関係で2年養成、3年大苗の移植の場合にも適用できる。

 

[具体的データ]

 表1  根域管理法2)と養成期間中の年次別生育状況

 

養成期間

根域管理

幹周

(cm)

主枝長

(m)

新梢数

(本)

平均新梢長

(cm)

総新梢長

(m)

養成

1年目

ポット地上

6.2

0.7

10

47.2

4.87

ポット埋設

6.3

0.6

10

48.7

4.73

ネット埋設

6.6

0.8

10

57.6

5.59

無処理対照

6.5

0.8

10

51.6

5.16

養成

2年目

ポット地上

10.8

1.8

27

33.8

9.18

ポット埋設

11.4

2.1

20

36.3

7.27

ネット埋設

12.0

2.1

29

38.7

11.10

無処理対照

11.4

1.9

31

37.0

11.53

養成

3年目

ポット地上

14.7

2.0

49

41.3

20.37

ポット埋設

16.7

2.2

58

44.0

25.38

ネット埋設

16.8

2.5

57

52.5

29.92

無処理埋設

16.0

2.5

53

55.5

29.29

z)ポット:80ℓプラスチックポット 土壌:細粒褐色森林土壌のバーク堆肥3kg、溶性リン肥160g、苦土石灰320gを混合

 

表2 4年生大苗の移植労力

 

苗木1本当たりの時間数z)

掘上げ作業

容器除去作業

ポット地上

5′24″

12′03″

ポット埋設

10 15

13 36

ネット埋設

25 06

12 15

無処理対照

28 00

 -

Z)作業は3人組で行い、延べ時間数で示した。

 

 表3 主枝誘引および新梢管理法と4年生大苗の性状

主枝誘

引角度

新梢

管理

幹周

(m)

主枝長

(m)

新梢数

(本)

平均新梢長

(cm)

総新梢長

(m)

45゜

芽かき

15.2

3.2

78

30.3

23.11

誘引

15.9

2.6

59

39.5

22.94

放任

15.3

2.0

37

61.5

22.75

90゜

芽かき

15.5

3.3

73

29.2

22.17

誘引

15.3

2.6

60

40.9

22.21

放任

15.0

2.1

44

48.8

21.52

 

 表4 4年生大苗移植1年目の生育、収量

養成期間

根域管理

移植方法

新梢数

(本)

平均新梢長

(cm)

総新梢長

(m)

着果数

(個)

平均果重

(g)

収量

(kg)

ポット地上

根鉢付き

171

13.9

23.79

17

148

2.6

根部洗浄

92

5.2

4.80

0

ポット埋設

根鉢付き

197

10.8

21.36

16

133

2.1

根部洗浄

127

5.6

7.06

0

ネット埋設

根鉢付き

177

8.5

15.00

0

根部洗浄

39

4.2

1.63

0

無処理対照

根鉢付き

135

5.6

7.55

0

根部洗浄

41

3.6

1.49

0

 

[その他]

 研究課題名:北陸積雪地域における果樹園早期多収成園化技術

 予算区分 :国補(地域重要新技術)

 研究期間 :平成4年(平成元~4年)

 研究担当者:小川晋一郎、杉本明夫

 発表論文等:なし

 

普及に移す技術

カキ「平核無」の開心自然形の2本主枝整枝による花芽着生促進技術

[要約]カキ「平核無」の若木期の結実性を高めるための整枝法としては、2本主枝からなる開心自然形が、変則主幹形に比べて樹冠内の相対日射量が多く、花芽着生も増加して初期収量が高くなることを明らかにした。

福井県農業試験場・果樹課

契機

研 

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 「平核無」の整枝法は、一般に変則主幹形で行われているが、現行法では初期収量が低く成園収量に達するのが遅い。このため、樹勢の旺盛な若木期の生育を抑制しながら受光態勢を改善し、花芽着生を促進させる整枝法を検討した。

 

[成果の内容・特徴]

 (1)樹冠の拡がりは、占有面積、樹冠容積共整技法を変えても差が小さい。しかし新梢発生の状態は整枝法で差が認められ、開心自然形3本主枝および2本主枝では、総新梢長が変則主幹形より短く、枝密度が低い(表1)。このため開心自然形では、樹冠内部の日射量が樹冠の中心部から中間部にかけて多く、特に2本主枝で著しく多い(表2)。

 

 (2)開心自然形整枝法では、若木から着蕾数が多く、初結実から3年間の累積収量が変則主幹形より増加し、中でも2本主枝が特に多くなった(表3)。2本主枝は樹冠内部の日射量が多く、花芽分化が促進されたと考えられる。

 

 (3)開心自然形整枝法では、平均果重がやや大きく着色も良好である(表4)。

 

 (4)以上のことから、開心自然形、特に2本主枝は変則主幹形に比べて受光態勢が良く、若木期の花芽着生が増加し、収量が向上するため「平核無」の整枝法として適している。

 

[成果の活用面・留意点]

 (1)少雪地帯における新植樹の整枝法として適用でき、合わせて変則主幹形で整枝した既存樹から開心自然形への樹形改造にも活用できる。

 

 (2)2本主枝の樹冠の拡大は、8年生で他の整枝法と変わらなくなるため、植栽間隔については現行のとおり5×5mとする。

 

 (3)開心自然形整枝法では、主枝は主幹からできるだけ水平方向に発生した枝を利用し、養成期間中は添え竹をして45゜の角度に誘引する。

 

[具体的データ]

表1 生育、樹冠の年次別変化

総新梢長

 

樹冠占有面積

 

樹冠容積

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

 

 

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

 

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

開心自然形

m

m

m

 

 

m3

m3

m3

 3本主枝

87.1

130.9

169.8

 

5.7

11.9

11.7

 

11.7

31.8

32.0

 2本主枝

63.0

114.3

149.9

 

4.0

9.9

11.6

 

8.2

24.4

32.5

変則主幹形

102.5

171.3

214.0

 

4.6

9.0

11.8

 

13.3

26.3

33.8

 

表2 部位別平均日射量z

地上高  1m

 

地上高  2m

樹冠中心

樹冠中間

樹冠外周

 

樹冠中心

樹冠中間

樹冠外周

開心自然形

 

 3本主枝

9.2

19.9

54.4

 

19.4

38.2

50.2

 2本主枝

45.4

39.8

57.6

 

69.4

54.3

35.3

変則主幹形

2.1

15.4

58.9

 

1.2

31.2

59.1

 z) 簡易日射計のphycoerytinを用いて10月に計測した。

 

表3 着蕾数、着果数、収量の年次別推移

着蕾数

 

着果数

 

収量

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

 

 

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

 

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

累計

収量

開心自然形

 

 

kg

kg

kg

kg

 3本主枝

156

358

276

 

22

60

62

 

5.4

13.7

13.1

32.2

 2本主枝

83

277

630

 

5

61

145

 

1.3

13.6

30.4

45.3

変則主幹形

35

194

312

 

2

61

56

 

0.4

13.3

11.4

25.1

 

表4 果実形質の年次別推移

平均果重

 

果頂部着色

 

糖度

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

 

 

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

 

 

1989年

6年生

1990年

7年生

1991年

8年生

開心自然形

g

g

g

 

 

 

 

 

 

 3本主枝

241

228

211

 

5.6

5.9

 

14.7

14.3

 2本主枝

276

223

209

 

5.6

5.8

 

14.6

14.3

変則主幹形

230

218

203

 

5.4

5.6

 

14.7

14.5

 

[その他]

 研究課題名:北陸積雪地域における果樹早期多収成園化技術

 予算区分 :国補(地域重要新技術)

 研究期間 :平成4年(平成元~4年)

 研究担当者:小川晋一郎、杉本明夫

 発表論文等:なし

(普及に移す技術)

ウメ「紅サシ」の成木における冬季せん定法

「要約」ウメ「紅サシ」成木園のせん定程度は、結果枝長を樹冠面積1㎡当たり6~7mにすることにより、着果過多年においても大果を生産でき、安定的に多収を確保できるとともに、側枝更新用の発育枝も確保しやすい。

福井県農業試験場・果樹課

連絡先

0770‐32‐0009

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

 樹冠が隣接樹と接する状態のウメ「紅サシ」成木園で、せん定により結果枝長をどの程度残すのが良いか不明であり、せん定技術の普及指導を困難にしている。本試験では、せん定程度を樹幹面積当たり結果枝長として表現し、結果枝長を5~8m/㎡の範囲で同一樹を4年間調整して、新梢生育や収量に及ぼす影響について検討した。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)新梢生育は結果枝長6~7m/㎡で旺盛であり、8m/㎡では枝数は増加するが新梢長は短くなり、結果枝が弱小化する。さらに、側枝更新発育枝の発生も少なくなり、側枝更新が困難になる(表1)。

 

(2)結実率は結果枝長5~6m/㎡で向上する(表2)。

 

(3)生理落果率は着果過多年に結果枝長5~7m/㎡で減少する。風による落果数(物理落果数)は結果枝長が少ないほど少なくなる(表2)。

 

(4)累年収量は結果枝長6~7m/㎡で高くなり、5m/㎡の強せん定では一時的に収量は減収する。また、結果枝長8m/㎡の弱せん定はやや隔年結果の様相を示す(表2)。

 

(5)着果過多年でも結果枝長5~7m/㎡では大果生産が可能である(表2)。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)健全に生育している「紅サシ」成木園(栽植距離7~8m)の冬季せん定に適用する。

 

(2)発育枝から養成した側枝は1作利用を原則とし、2作利用はなるべく減らす。弱小側枝は下垂・交差しない様せん定する。せん定の樹高は3.5mを目標とし、低樹高化を図る。

 

[具体的データ]

 

 表1 結果枝長と新梢発生状況ならびに新梢せん去率

結果枝長

(m/㎡)

年次

前年せん定前

 

結果枝

樹冠面積

 

(㎡)

結果枝

密度a)

(m/㎡)

せん去

率b)

(%)

側枝更新

用発育枝数c)

(本)

新梢長

(m)

本数

(本)

 

 

枝長

(m)

本数

(本)

 

5

1989

938.7

12529

 

170.9

4324

35.8

4.78

82

86

1990

674.0

5495

 

233.6

4201

46.1

5.07

65

45

1991

864.0

10493

 

247.7

7687

49.5

5.00

71

23

1992

1219.7

10543

 

244.9

5640

50.3

4.87

80

125

 

6

1989

1449.1

15453

 

305.6

6894

46.9

6.52

79

93

1990

1115.2

8516

 

295.9

5890

49.3

6.00

73

54

1991

1348.9

12600

 

312.2

8352

52.2

5.98

77

25

1992

1815.8

11672

 

303.9

5566

50.3

6.04

83

116

 

7

1989

1439.4

16655

 

329.5

8007

51.2

6.43

77

83

1990

1203.7

10055

 

346.2

6851

49.3

7.02

71

40

1991

1409.8

15886

 

367.1

10112

51.9

7.07

74

44

1992

1896.1

13653

 

354.2

6562

50.3

7.04

81

136

 

8

1989

1006.6

20528

 

434.9

13020

47.3

9.19

57

44

1990

857.3

13573

 

423.7

11684

52.8

8.02

49

34

1991

807.3

21344

 

400.7

15744

50.3

7.97

50

28

1992

1173.8

17391

 

402.7

10223

50.3

8.01

62

47

注  a)結果枝長/樹冠面積、 b) (1-結果枝長/新梢長)×100、 c) 主枝・亜主枝から発生した発育枝数

 

 表2 結果枝長と結実・着果・収量

結果枝長

(m/㎡)

年次

結実率a)

(%)

結実数

(個)

収穫数

(個)

生理落果

率(%)

物理落

果数(個)

平均果重

(g)

収量

(kg)

4年間の

累積収量(kg)

 

5

1989

63.8

5698

3033

45.5

71

23.8

72.1

 

 

 

347.0

1990

68.1

3986

3216

15.2

163

27.2

87.4

1991

89.4

3874

3303

12.2

100

27.9

92.1

1992

57.0

8974

4652

45.9

199

20.7

95.4

 

6

1989

67.5

11515

6335

45.0

319

21.5

129.1

 

 

 

459.9

1990

62.5

5335

4255

15.4

256

28.2

119.9

1991

79.7

4483

3705

14.2

142

26.8

99.3

1992

44.2

9476

4970

43.1

423

22.8

111.6

 

7

1989

48.9

12716

6347

46.5

458

21.6

136.9

 

 

 

446.3

1990

44.2

4996

3529

16.1

662

28.9

102.1

1991

66.2

6016

4647

19.1

218

24.6

114.3

1992

41.7

8897

4088

48.3

512

24.4

93.0

 

8

1989

48.5

14117

5421

58.6

420

20.7

112.3

 

 

 

435.0

1990

43.1

4447

2929

15.3

839

30.5

89.3

1991

71.1

6169

4971

14.3

318

24.7

122.7

1992

40.4

12633

6151

47.9

430

18.3

110.7

注 a) 結実率は完全花数に対する割合、

 

[その他]

 研究課題名:着果安定のための樹体および土壌条件の解明

 予算区分 :国補(地域重要新技術)、県単

 研究期間 :平成4年度(昭和63~平成4年)

 研究担当者:山本 仁、冬廣吉朗、川久保幸雄、正木伸武、中川文雄、田辺賢治

 発表論文等:なし

 

ウメに対する苦土質肥料の施用

「要約」ウメの多収樹と低収樹の葉中では、マグネシウム含量の差が最も大きいが、土壌中の交換性苦土含量の低い地帯が多いので、基準値以下の地帯では、従来の石灰質肥料に替えて苦土質肥料を施用することが必要である。

福井県園芸試験場・営農環境課

契機

部会名

生産環境

専門

肥料

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

マグネシウムは、葉緑素の中核構成成分として光合成では重要な役目を担っている。果樹においては、本要素が欠乏すると、葉は早くから黄化し、早期落葉の原因となる。このため、貯蔵養分の多少が収量に大きな影響を及ぼすウメにとっては、特に重要な成分である。そこで、マグネシウムの吸収量と収量との関係や、土壌中の交換性苦土含量の実態について調査した。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)成木におけるマグネシウムの年間の吸収量は、2.8kg/10aであり、窒素の20%で量的には多くない

(表1)。

 

(2)しかし、多収樹と低収樹の葉のマグネシウム含量の推移を比較すると、5大要素の中で最もその差が大きい(図1)。

 

(3)1984年から1992年までの8か年間、土壌中の塩基含量の変化を見ると、交換性石灰は1.40倍に、交換性カリは1.23倍になっているのに対し、交換性苦土は40mg/100gから28mg/100gに低下している(表2)。また土壌中の苦土含量が基準値(30mg/100g)以下の地帯は、三方町のウメ園で約60%分布している(図2)。

 

(4)そのため、交換性石灰が増加しているにもかかわらず、ウメ園土壌のpHは8か年でほとんど変化がみられない(表2)。

 

(5)したがって、交換性苦土が30mg/100g以下の地帯では、従来の石灰質肥料に替えて、苦土質肥料を150~200kg/10a施用することが必要である。

 

[成果の活用面・留意点]

 

土壌pHの矯正とマグネシウム栄養の補給により、ウメ樹の健全な生育と安定した収量が期待できる。

 施用は3月と9月の2時期に分ける(分施比1:1)。

 

[具体的データ]

表1 成木の推定養分吸収量a (kg/10a)

項目

N

P2O3 

K3O

CaO

MgO

吸収量

 14.2 

3.4

15.4

12.9

2.8

指数

100

24

108

91

20

  a) 園試場内の14年生紅サシを解体調査、栽植密度30本/10a

 

 

 

 
 

 

 

表2 8か年後の土壌中の塩基含量の変化a

 

1984年

1992年

pH

5.23

5.31

Ex-CaO(mg/100g)

150

209

Ex-MgO(mg/100g)

40

28

Ex-K2O(mg/100g)

43

53

CEC(me)

14.5

16.6

石灰飽和度(%)

56.0

61.7

a)三方町内、100地点調査

 

[その他]

 研究課題名:積雪地帯における果樹園の秋冬季及び春季の管理技術と果実肥大予測技術の開発

 予算区分 :国庫1/2(地域重要)

 研究期間 :昭和61年度~63年度

 研究担当者:渡辺 毅

 発表論文等:ウメの収量、品質の向上に関する栄養生理学的研究。福井園試特別報告1:1-113

 

 

ウメ加工における酸味除去技術

「要約」ウメ加工時における減酸方法は、ジャムでは原料の焼酎・砂糖漬けが、

漬物では細切後塩蔵し、水晒しする方法がすぐれていた。

福井県農業試験場・食品加工研究所

連絡先

0776-61-3539

部会名

食品

専門

加工利用

対象

果樹類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 ウメは本県の代表的な特産品であり、梅酒、梅干し、ジャム、ウメワイン等の加工がおこなわれている。しかし、原料に含まれる有機酸による酸味が強すぎることが、製品の評価を低下させるだけでなく、加工の幅を狭くしている。そこで、ジャム、調製果汁、漬物等の加工における、それぞれの減酸処理方法について検討した。

 

[成果の内容・特徴]

 (1)ジャムの減酸法としてウメを一晩水に晒す、15分蒸煮する、砂糖に1~2ヵ月間漬ける、焼酎と砂糖に1~2ヵ月間漬ける方法について検討した。減酸の効果は焼酎漬け>砂糖漬け>蒸煮>水晒しの順であった。砂糖漬け、焼酎漬けにしたものは、有機酸量はかなり減少したが、ウメらしい風味も低下した(表1)。

 

 (2)ウメ果実に加圧条件下で炭酸ガス充填、および窒素置換を行い、果汁を調製した。果汁のリンゴ酸は、冷蔵<窒素置換<炭酸ガス充填で増加したが、クエン酸はほとんど変化しなかった(図1)。

 

 (3)種核を除き、2~3mmの厚さにスライスした後、冷蔵庫で塩蔵し、流水に晒した場合の脱塩・脱酸効果は高く、塩分は30分間で、酸味は90分でほとんど感じられなくなった(表2)。水晒し後、調味液に漬け込むことで、新しいタイプのウメ漬物ができた。

 

[成果の活用面・留意点]

 (1)ジャムは黄化したウメを、漬物は青ウメを用いる。

 

 (2)砂糖漬け・焼酎漬け処理は除核が困難で、果肉の収率が低下するが、梅酒製造に用いた果肉が利用できる。

 

 (3)ジャムでは減酸処理した原料と未処理の原料を混合することで、漬物では水晒し時間を変えることで、酸味の調節が可能である。

 

 (4)きざみ漬けの硬さを保つために、浸漬時・塩蔵時に塩化カルシウムを0.5%添加する。

 

[具体的データ]

表1 ジャム製造のための各処理法によるウメの性状

処理法

処理後

歩留

果肉歩留

果肉

水分

有機酸*

全糖**

無処理

 

82.6

90.2

50.0

8.6

水晒し(1晩)

100.8

81.0

91.0

50.5

8.4

蒸煮(15分)  1回

99.7

81.9

89.9

46.7

8.0

       2回

100.9

81.1

91.0

41.9

8.5

砂糖漬け       1か月浸漬

28.5

53.3

57.8

9.6

34.9

(原料1kg、砂糖0.5kg) 2か月浸漬

27.7

53.2

56.1

7.1

40.0

焼酎漬け       1か月浸漬

71.1

84.5

83.4

12.0

36.9

 原料1kg、砂糖1kg 2か月浸漬

63.5

82.8

75.7

6.5

49.1

 ホワイトリカー1.8ℓ 3か月浸漬

54.1

79.6

68.8

4.2

50.2

*乾物当たりのクエン酸換算、**乾物当たりのグルコース換算    単位(%)

 

 

表2 きざみウメの水晒し効果(立塩8%を使用)

晒し時間

pH

塩分(%)

官能評価

0

2.38

8.61

非常に酸っぱい、塩辛い

0.5

3.15

1.20

酸っぱい、塩辛くない

1

3.47

0.48

わずかに酸っぱい、塩辛くない

1.5

3.74

0.27

酸っぱくない、塩辛くない

2

4.15

0.06

〃 

3

4.75

0.00

 

[その他]

 研究課題名:アラレ・ヒョウによる傷果の成分分析および傷果を有効に活用した加工品の開発技術の検討

 予算区分 :県単

 研究期間 :平成4年度(平成4年)

 研究担当者:坪内均、小林恭一、水上ゆかり

 発表論文等:なし

 

(普及に移す技術)

(成果情報名)受精卵移植技術により生産された黒毛和種子牛の哺育育成技術

「要約」ホルスタイン種を借腹牛とすると受精卵移植技術によって生産された黒毛和種子牛(若狭子牛)を人工的に哺育育成した結果、標準発育値に劣らない良好な発育成績が得られた。

福井県畜産試験場・酪農肉牛課

契機

部会名

畜産

専門

飼育管理

対象

家畜類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 牛の受精卵移植技術により生産された黒毛和種子牛の哺育育成技術は、代用乳を利用した報告がほとんどであり、生乳給与による報告例はほとんど見当たらない。しかも、その発育性については十分ではなく、体系だった飼養管理技術については未だ確立されていない。そこで、酪農家において給与可能な生乳を利用した黒毛和種子牛の哺育育成技術の確立を目的として試験を実施した。

 

[成果の内容・特徴]

 

 分娩直後に、黒毛和種子牛をカーフハッチに移動し、1時間以内に初乳を平均1.2ℓ給与した。生後1週間は初乳4~6ℓを1日2回に分け給与した。その後、生後6週齢まで全乳4~6ℓまたは代用乳600g(温湯6ℓ)を1日2回に分け給与した。生後7週齢~11週齢は、人工乳の摂取量を増やすため、全乳または代用乳の量を徐々に減らした。人工乳は、生後10日齢頃より給与を開始し、1日1kg以上摂取した時点で離乳(11週齢を目安)を実施した。乾草は1週齢から給与し、水は1ヵ月齢から自由飲水とした。3ヵ月齢以降は、カーフハッチからスーパーハッチへ移動させ、育成飼料を給与した。

本哺育育成技術による平均1日増体量は、生時から3ヵ月齢まで0.68kg/日、4から8ヶ月齢まで0.84kg/日であり、極めて良好な発育成績であった。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 本技術は受精卵移植技術によって生産された黒毛和種子牛の人工哺乳および育成技術のマニュアルとして活用できる。分娩後は、出来るだけ早く初乳を給与する。哺育管理はカーフハッチを利用し、哺乳量は定刻・定温・定量とする。人工乳の摂取量が少ない場合は、離乳時期を延ばす。

 

[具体的データ]

 

表1   黒毛和種子牛の飼養管理方法

飼養形態

日齢

管理方法

 

生時から7日齢まで

初乳1日2回計4ℓ

 

8から42日齢まで

全乳6ℓまたは代用乳600g(温湯6ℓ)を

カーフ

 

1日2回、乾草および人工乳の給与

ハッチ

43から77日齢まで

哺乳量を漸減しながら離乳

 

 

人工乳の漸増(1kg/日)

 

90日齢まで

群飼への移行

 

 

オールイン飼料給与(人工乳+濃厚飼料

群飼

91から240日齢まで

+ヘイキューブ+ビートパルプ)

 

 

乾草:自由採食 水:自由飲水

 

表2   発育成績

 

供試

頭数

平均体重(kg)

平均1日増体重(kg/日)

生時

3ヵ月齢

8ヶ月齢

0~3ヵ月齢

4~8ヶ月齢

通産

16

26.7

90.8

225.7

0.71

0.90

0.83

18

24.9

83.2

200.7

0.65

0.78

0.73

平均

34

25.8

86.8

212.4

0.68

0.84

0.78

 

[その他]

 研究課題名:受精卵移植によって生産された黒毛和種子牛の哺育育成技術

 予算区分 :県単

 研究期間 :昭和62年~平成5年 

 研究担当者:小林修一 前田淳一 新谷圭男

 発表論文等:畜産の研究 45(4)、32~38、1991

       家畜繁殖技術研究会誌 13(1)、20~25、1991

       畜産コンサルタント  331(7)、29~33、1992

 

(普及に移す技術)

若狭牛の前期における粗飼料多給及び飼料養分を違えた肥育効果

[要約]肥育期間19.5か月間のうち、前期6.5か月間において増体および仕上期の飼料摂取促進のため、トウモロコシサイレージを主体とした粗飼料を多給し、さらに、養分含量を高め、その効果を検討したところ、十分な増体効果は認められなかったものの、仕上末期において、前期飼料の養分含量が低い方が喰い止まりの程度が少なく、肉質も安定していた。

福井県畜産試験場・酪農肉牛課

契機

部会名

畜産

専門

飼育管理

対象

家畜類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 

 福井県で生産される若狭牛は、肉質が優れた銘柄牛として定着しつつあるものの、1日当たりの増体量が劣り、肉質についても斉一性を欠くなどの課題を残している。

 そこで、近年肥育前期における粗飼料多給が、肥育に有効があるとする報告がみられたことから、自給粗飼料を給与することによる低コスト化および肉質改善をはかることを目的とし、さらに、肥育前期飼料の養分含量を高くすることによる増体効果を検討した。

 

[成果の内容・特徴]

 

 前期飼料の粗飼料を乾物40%の割合とした高栄養(TDN77.2%乾物中)と中栄養(TDN73.0%)飼料を、それぞれの5頭の県内産(嶺南牧場)黒毛和種去勢牛に給与したところ、前期における1日当たりの増体量に対して、十分な効果はなかった。

 さらに、肥育末期における喰い止まりを緩和する効果は、前期に中栄養飼料を給与したものに、わずかではあったが認められ、肥育期通産の増体量も大きかった。

 枝肉は重量、ロース芯面積、BMS、BCS、しまり、きめ、単価のいずれも、前期に中栄養飼料を給与したものが優れていた。

 なお、高栄養で飼養したうち1頭は、物理的損傷により除外した。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 粗飼料はトウモロコシサイージを主体とし、前期、後期飼料は、オールイン飼料(TMR)としているので、ワラ・乾草給与の場合の給与量はやや少なくする必要があると考えられる。

 

[具体的データ]

表1 供試飼料の内容等     (DM当たり%)

 

前期

後期

仕上期

区分

高栄養

中栄養

高・中栄養

高・中栄養

DM

50.5

50.3

59.9

87.0

DCP

12.1

11.9

10.0

11.3

TDM

77.2

73.0

79.4

78.1

カルシウム

0.8

0.8

0.7

0.2

リン

0.6

0.6

0.5

0.5

粗飼料割合

40.2

40.9

19.8

12.6

給与形態

TMR

TMR

TMR

粗飼料、濃厚飼料

 

 

 

 

個別給与

給与期間(月)

6.5

6.5

6.0

7.0

 

表2 前期の給与飼料と増体量の関係   (単位:kg)

 

区分

導入時

前     期

後     期

仕  上  期

体重

体重

日増体量

体重

日増体量

体重

日増体量

前期高栄養

272.2

459.2

0.95

565.5

0.64

636.8

0.33

前期中栄養

260.6

444.4

0.92

558.0

0.63

655.6

0.46

 

表3 前期の給与飼料と肉質の関係

区分

高栄養

中栄養

枝肉重量(kg)

384.5

400.0

枝肉歩留(%)

63.7

63.6

ロース芯面積(cm)

45.1

48.1

皮下脂肪厚(cm)

2.8

3.2

BMS

8.5

9.0

BCS

4.3

3.8

しめきり

4.8

5.0

規格

A‐5 3頭、A‐4 1頭

A‐5 4頭、B‐5 1頭

枝肉単価(円/kg)

2,175

2,471

 

[その他]

 研究課題名:若狭牛の低コスト肥育技術の確立

 予算区分 :県単

 研究期間 :平成元年~4年

 研究担当者:田辺 勉 桝田靖憲 高岸 実 新谷圭男

 発表論文等:未発表

 

(普及に移す技術)

(成果情報名)繁殖豚に対する分娩誘発剤の利用

[要約]

 繁殖豚の飼養管理において、分娩誘発剤投与により分娩日の調整を試みたところ、分娩誘発剤投与後36時間以内に全頭分娩を開始した。このことから、分娩誘発剤を利用することにより休日無分娩の可能性が示唆された。

畜産試験場・養豚課

契機

部会名

畜産

専門

飼育管理

対象

家畜類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 畜産経営の大型化に伴い飼料給与、除糞などについては自動化が普及し、作業は極めて省力化されてきた。しかし、分娩看護などの繁殖管理については、自動化が進まず、繁殖農家にとっては、周年拘束的な作業に強いられる状況にある。そこで、分娩日を調整し、農休日無分娩を実現するため、分娩誘発剤の利用技術を確立する。

 

[成果の内容・特徴]

 

 分娩誘発剤投与開始までの所要時間は、投与した時点での豚の妊娠日齢に関係なく、いずれも36時間以内に分娩し、分娩誘発剤の効果が確認された。繁殖成績について、総産子数、生時および離乳時体重では、誘発剤使用後に大差はなかったものの、分娩直後に死亡した子豚は誘発剤使用後が少なかった。また、発情回帰についても誘発剤使用による悪影響はなかった。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 胎児の発育状況によっても異なるが、妊娠日齢111日齢以前の誘発剤投与は避けたほうが良い。また、分娩誘発剤はプログランジンF2α類緑体の要指示薬であり、使用に当たっては獣医師による処置が必要である。

 

[具体的データ]

 

 

表1 繁殖成績

区分

妊娠期間

(日)

総産子数

(頭)

死産頭数

(頭)

生時体重

(kg)

離乳時体重

(kg)

哺乳期間

(日)

誘発剤使用前

115.5

10.4

1.1

1.41

7.28

26.8

誘発剤使用後

114.4

9.5

0.1

1.47

6.56

24.9

 

表2 発情回帰日数

区分

平均

(日)

最長

(日)

最短

(日)

誘発剤使用前

14.5

54.0

4.0

誘発剤使用後

6.6

11.0

4.0

 

[その他]

 研究課題名:繁殖豚の飼養管理における分娩誘発剤の利用

 予算区分 :県単

 研究期間 :平成4年度

 研究担当者:井筒重樹、河部恭一、西向利浩

 発表論文等:日本畜産学会北陸支部会報(大会号)No66

 

(普及に移す技術)

(成果情報名)移動式肉豚放飼技術

[要約]

 園芸用パイプハウスなどの簡単な施設と電気牧柵を利用した肉豚低コスト放飼肥育技術である。1日約10分間の管理で、肉質の優れた肉豚生産が可能である。しかも、施設等の組立てが簡単であるため、野菜作の前後作としての利用にも適している。

畜産試験場・養豚課

契機

部会名

畜産

専門

飼育管理

対象

家畜類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 坂井北部丘陵地においては、休耕畑の有効活用が今日的な課題となっている。そこで、休耕畑の利活用を図るため、兼業農家でも簡単に取り組める移動式の肉豚放牧技術を確立する

 

[成果の内容・特徴]

 

 放牧肥育は舎内肥育と比較して、飼料要求率は低下するものの、肥育期間には大きな違いはない。肉質については、放牧することにより肉のしまりは良くなり、枝肉の格落ちが少なくなる。放牧密度は、密度が高くなればなるほど生産効率は向上するが、放牧場の泥粘化が進行するため、畑地の場合の飼養頭数は10a当り約20頭が限界である。また、移動可能な牧柵について試作品を含めて検討したところ、豚用にパワーアップした電気牧柵が経済性、利便性の面で実用的であった。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 豚は鼻耕性質が強いので湿田や極度の泥炭地では避けたほうが良い。

 また、1ヵ月間隔の駆虫と脱柵防止のため、放飼開始時に1週間程度の馴致が必要である。

 

[具体的データ]

表1 試験区の構成

処理内容

頭数

備考(品種)

放牧1

放牧場面積600㎡

10頭

F1 8 W2

放牧2

放牧場面積400㎡

10

F1 8 W2

放牧3

放牧場面積200㎡

10

F1 9 W1

対照

舎内飼育

10

F1 7 W3

 

表2 飼養試験の成績

開始時体重

(kg)

肥育日数

(日)

1日当増体量

(kg)

1日当飼料

消費量(kg)

飼料

要求率

放牧1

48.2

79

0.65

2.56

3.94

放牧2

52.2

79

0.72

2.77

3.84

放牧3

51.9

79

0.74

2.81

3.80

対照

49.2

79

0.81

3.01

3.72

 

表3 枝肉成績

枝肉歩留

(%)

背脂肪の厚さ

(cm)

格落ち頭数

厚脂

肉しまり

合計

放牧1

63.6

2.1

0頭

2頭

2頭

放牧2

64.8

2.1

0

2

2

放牧3

63.9

1.7

0

1

1

対照

65.4

2.5

2

5

5

 

表4 経済性試算(1頭当り)

項目

金額

備考

収入

肉豚売払代

28,000円

相場変動大

 

支出

素豚費

6,632

相場変動大

飼料費

13,742

 

原価債却費

794

 

水道光熱費

233

 

21,401

 

差引所得

6,599

 

 

[その他]

 研究課題名:移動式肉豚放牧生産技術確立試験

 予算区分 :県単

 研究期間 :平成3~5年度

 研究担当者:井筒重樹、河部恭一、小林直樹

 発表論文等:未発表

 

(普及に移す技術)

(成果情報名)採卵鶏銘柄における鶏ロイコチトゾーン症の抗病性の違い

[要約] 鶏ロイコチゾーン症の感染程度は採卵鶏の銘柄により異なった。 

福井県畜産試験場・養鶏課

契機

部会名

畜産

専門

診断予防

対象

家禽類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 鶏ロイコチトゾーン症は、住血原虫が鶏の体内で増殖し、血液、臓器を破壊、出血させる病気である。ニワトリヌカカという昆虫が吸血して鶏から鶏へ感染する。したがって、ヌカカの発生する。夏場、警戒が必要である。飼料安全法の施工によって、産卵中の鶏には薬剤はすべて使用できなくなって、現在では媒介者ヌカカの駆除が対策となっている。

 ところで、採卵鶏の銘柄により鶏ロイコチトゾーン症の感染に違いがあるか検討を行ったので報告する。

 

[成果の内容・特徴]

 

 (1)ニワトリヌカカの補虫数は、7月中旬が最も多く、それ以降は減少した。また吸血率は、7、8月に高く、9月に入り低下した(図‐1)。

 (2)抗体陽性率は、8月12日から確認され、最終抗体陽性率は、シェーバースタクロス288(シェーバーと略す)で85%ボリスブラウンで20%となり、銘柄間に1%の危険率で有意差が認められた(表‐1)。

 (3)銘柄毎の産卵率の推移は、感染があったと思われる8月下旬から9月上旬にかけて、シェーバーでは、約90%から75%にまで低下した。一方、ボリスブラウンでは、若干低下したものの、その影響は少なかった。

 このように、採卵鶏の銘柄間で、感染の程度は異なり、赤玉鶏のボリスブラウンはロイコチゾーン症に比較的感染しにくい銘柄であった。

 この原因については、赤玉鶏と白玉鶏との違い。すなわち、交配品種、羽色によるものか現在追試中である。

 

[成果の活用面・留意点]

 

 この2銘柄について利用できる。

 

[具体的データ]

 

 

表‐1 抗体検査成績(陽性率)        (%)

銘柄

検査羽数

6/24

7/8

7/23

8/12

9/16

シェーバー

20

0

0

0

15

85a

ボリスブラウン

20

0

0

0

10

20b

注)異符号間に1%の危険率で有意差あり

 

 

[その他]

 研究課題名:採卵鶏銘柄におけるロイコチトゾーン症の抗病性の違い

 予算区分 :県単

 研究期間 :平成4年度

 研究担当者:笠原香澄・坂本一美・加藤武市

 発表論文等:「畜産の研究」に投稿中。

 

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