実用化技術等(平成6年)

最終更新日 2023年3月13日ページID 052145

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【平成6年度】

1.低温・寡照下におけるハナエチゼンの生育の安定性
2.倒状軽減剤入り肥料によるコシヒカリの生産安定化
3.水稲乾田直播栽培における除草体系
4.福井県に適した県内在来ソバ系統「大野在来」の選定
5.レーザー装置を活用した水田の営農的均平法
6.大区画圃場を活用した一集落一農場方式と水田輪作営農モデル
7.一寸ソラマメの冬期被覆とマルチ利用による生育・開花期促進技術
8.ナバナの品種特性と地域適応性
9.簡易ハウス利用によるスプレーギクを中心とした3年5作体系
10.シンテッポウユリの小球形成処理によるリン片繁殖苗育成
11.カキ「平核無」脱渋性向上のための果実発育期の光環境及び収穫における果実形質
12.ウメの樹脂障害果(ヤニフキ果、ヒヤケ果)に対する総合微量要素肥料の施用効果
13.ウメ「紅サシ」の果実重安定のための技梢管理法
14.ウメ「紅サシ」の開花始めの予測方法
15.ウメ黒星病に対する非着果期の防除効果
16.枝におけるウメ黒星病の発生生態
17.大麦のポリフェノール除去法と2軸型エクストルーダーによる大麦スナックの開発
18.ニンニクを用いた食品の保存技術
19.高泌乳牛受精卵の安定的確保と利用技術の確立
20.鶏糞乾燥施設における消臭装置の開発
21.北陸におけるギニアグラスの播種期と収穫期を異にした栽培技術

 

平成6年度

 

低温・寡照下におけるハナエチゼンの生育の安定性

[要約]1993年の著しい低温・寡照条件下におけるハナエチゼンの生育および物質生産特性を解折し、不良環境条件でも不稔籾の発生が少なく、登熟期間の日射量あたりの玄米生産量が多い等の生育の安定性を明らかにした。

福井県農業試験場・作物課

連絡先

0776-54-5100

部会名

作物生産

専門

栽培

対象

稲類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 1993年は記録的な低温・寡照となり、福井県の水稲の作況指数は89と著しい不良であった。そのような中で、早生のハナエチゼンは作柄が安定しており、収量、品質ともに良好であった。この結果を今後の品種育成や栽培技術の改善に生かすために、生育および物質生産特性を同熟期のフクヒカリと比較して解折し、不良環境下での安定性を明らかにした。

[成果の内容・特徴]

(1)生育特性

 ハナエチゼンはフクヒカリより葉齢の進展は速いが、葉数の増加は暖慢である。しかし、最高分げつ期以降は無効分げつが少なく有効茎歩合が高い(図1) 。また、葉身窒素濃度が高く葉色が濃い。

(2)物質生産特性

 ハナエチゼンの乾物重の増加は、生育初期は暖慢であるが、幼穂形成期から登熟中期にかけてはフクヒカリを上回り、秋まさり型の生育パターンを示す。特に不良気象年では良品種の差が大きくなり、ハナエチゼンのNAR(純同化率)やCGR(乾物増加速度)が高くなり、穂への物質配分も大きい(図2、表1)。

(3)不良環境への適応性

 減数分裂期の18℃程度の低温条件での不稔籾や未熟籾の発生率は、フクヒカリより少ない(表2)。また、ハナエチゼンは短稈で受光態勢が良く、登熟期間の日射量あたりの玄米生産量は、高低温にかかわらずフクヒカリを上回り、寡照条件下でも生産力が高い(図3、4)

[成果の活用面・留意点]

(1)     ハナエチゼンはフクヒカリに比べ耐冷性が強く、低温、寡照下の生産性が高いため、中山間地の水稲の生産安定をはかることができる。

(2)     安定生産のための穂肥の施用量は地帯別の施肥基準を守るとともに、幼歩穂長1mmが確認できしだい第1回の穂肥を遅れないように施用する。

(3)     出穂期以降の草期落水を避け、登熟後半まで根の活力を高く維持する。

 

〔具体的データ〕

 

 

図1 葉令と茎数の関係(1993)           図2 地上部乾物重の比較(1993)

 

 
 

 

表1生育中後期の気象条件と乾物生産

年次

品種

幼形~登熟中期*

CGR(g/㎡/日)*

NAR*

平均気温

(℃)

平均日射量

(MJ/㎡/日)

全体

(g/㎡/日)

1991

ハナエチゼン

25.1

13.3

11.6

16.8

4.12

フクヒカリ

10.4

15.2

3.69

1992

ハナエチゼン

25.9

16.9

13.6

21.5

6.85

フクヒカリ

12.4

19.7

6.66

1993

ハナエチゼン

24.1

12.3

10.5

20.3

5.78

フクヒカリ

9.3

18.5

5.20

*1991年42日、1992、93年48日間の平均値

 

 

 
 

 

 

 

 

 

表2 不稔籾の発生状況(1993) *

品種

不稔籾

(%)

未熟籾

(%)

登熟籾

(%)

ハナエチゼン

3.1

4.2

92.7

フクヒカリ

6.1

6.3

87.6

 

 

 

研究課題名           :稲作気象対策試験

予算区分              :県単

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者名       :佐藤 勉、井上 健一、酒井 究、尾嶋 勉

発表論文等           :なし

 

倒伏軽減剤入り肥料によるコシヒカリの生産安定化

[要約]コシヒカリの幼穂形成期に倒伏軽減剤入り肥料1回施用することによって従来の施肥体系に比べ節間伸長が抑えられ、穂数と㎡当り籾数が増加し、安定的な増収が図られる。

福井県農業試験場・作物課

契機

部会名

作物生産

専門

栽培

対象

水稲

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 コシヒカリの作付面積率は60%近い水準で推移しているが、農業従事者の質的な変化からきめ細かな肥培管理に欠け生育量不足または倒伏によって収量水準が停滞傾向にある。そこで、安定的な生育を促し、省力と増収を図るため、倒伏軽減剤入り肥料〔有効成分パクロブトラゾール0.06%、窒素15%(速効性9:緩効性6)、リン酸4%、カリ15%〕(以下IBP粒剤肥料とする)の一回施用による効果を明らかにした。

[成果の内容・特徴]

(1)       出穂期22~23日の幼補形成期に、IBP粒剤肥料をa当り3kg(速効性N成分0.27kg/a+暖効性N成分0.18kg/a+バクロブトラゾール18g)を散布したところ、慣行区(速効性肥料の出穂18日前、11日前、4日前各0.15kg/a施用)に比べて6号分けつの有効化比率が高まり、1株穂数が10%程度多くなるとともに、総籾数も増加した(表1,表2)。

(2)       IBP粒剤肥料区は、慣行区に比べて第4、第5節間を中心に伸長が抑制され、倒伏軽減効果が認められた(図1,図2)。

(3)       IBP粒剤肥料区は慣行区に比べて、登熟粒数が増加し、収量が向上するとともに、玄米中の窒素濃度が減少し、味度値が向上する傾向であった(表2)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)       当資材は異常気象により生育量がやや少ない条件で出穂22~23日前(幼穂長2mm)にa当り3kgを均一に散布する。また、施用後の水管理に留意する。

(2)       上位第3葉身長が42cmを超える過繁茂の条件では、出穂前10~15日倒伏軽減剤を単用する。

 

[具体的データ]

 

 
 

 

表1 有効穂の節位別発生比率(%)

試験区

6号

5号

4号

3号

IBP3kg-22日

75

100

100

58

慣 行

25

100

100

67

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                           

図1 IBP粒剤肥料の節間長への影響          図2 IPB粒剤肥料の倒伏軽減効果

(1992,1993年)                      (1992,1993年)

 

 

表2 収量構成要素及び玄米品質(1992,1993年)

試験区

全重

 

(kg/a)

精玄

米重

(kg/a)

 

(%)

穂数

 

(本/㎡)

 

(%)

1穂

籾数

(粒)

㎡当り

籾数

(100粒)

登熟

歩合

(%)

千粒重

 

(g)

整粒

歩合

(%)

玄米窒素

濃度

(%)

味度値

IBP3kg~22日

136

61.7

106

436

110

72.8

317

85.6

22.7

73.8

1.48

76.3

バクロ―15日*

130

58.6

101

395

100

70.2

277

89.7

23.6

87.3

-

-

慣行*

137

58.3

100

395

100

72.3

286

87.7

23.1

75.9

1.55

72.9

注)出穂前18日、11日、4日に各0.15kg/a施肥

 

[その他]

 

研究課題名       :水稲気象対策試験

予算区分       :単 県

研究期間       :平成5年度(平成4~5年)

研究担当者       :井上 健一, 佐藤 勉, 尾嶋 勉

発表論文等       :な し

 

水稲乾田直播栽培における除草体系

〔要約〕乾田直播においては、播種後、出芽苗立まで畑状態の期間が長く、効果的な除草が困難であったが、除草剤の体系処理によって、雑草の発生が抑えられ、手取り除草並みの生育収量を得た。

福井県農業試験場・作物課

連絡先

0776-54-5100

部会名

作物生産

専門

栽培

対象

稲類

分類

指導

 

〔背景・ねらい〕

 大区画圃場を用いた低コスト栽培においては、乾田直播栽培の確立が急がれているが、出芽苗立まで畑状態の期間が長く、湛水後の減水深も不安定なため薬効が上がらず除草が困難となっている。そこで乾田直播栽培での安全で効果的な除草剤の使用法を確立するため、二、三の薬剤による体系処理を検討した。

〔成果の内容・特徴〕

 4月中旬に耕耘・整地・鎮圧を行った後、5月上旬に播種・施肥を行い、水稲が2葉期に達する6月初めに入水を開始した。品種はハナエチゼンを供試した。表1の薬剤による除草体系は播種直後+イネ出穂期(播種12日後)+湛水後の3回処理及び無処理区、手取り除草区とした。(表2、図1)

(1)     雑草の種類はヒエの他、水田雑草のタカサブロウ、アゼガヤ、サナエタデ、畑雑草のメヒシバ等が発生した。畑状態の時にスズメノテッポウ、スズメノカタビラも発生したが湛水後は次第に枯死した。(表3)

(2)     雑草の発生量はヒエが80%を占めた。2回処理では播種3週間後の湛水開始期までにヒエが2葉期をこえるため。湛水後に処理しても効果が不十分であった。一方、番種後12日頃(畑状態)にDCPA乳剤を加える3回処理体系においては実用的な除草効果が得られた。(表3)なお、3回処理による薬剤は微程度発生したが回復が早く、その後水稲生育への影響はほとんど認められず、収量は手取り除草区と大差なかった。(表4)

(3)     水稲2葉期の湛水開始を前提とした乾田直播では、播種直後+イネ出芽期(播種12日後)+湛水後(播種後3週間)の体系処理が必要で、乗用管理機搭載のブームスプレア等による体区画水田での作業時間は1回当たり1.4時間/ha程度である。

〔成果の活用面・留意点〕

(1)     湛水後、粒剤散布時の減水深は2~3cm/日となるよう、漏水に留意する。

(2)     漏水が考えられる場合は、播種前、排水路沿いの畦畔に遮水シート等を地中60~70cm程度に埋設する。

 

〔具体的データ〕

 

表1 供試除草剤

 

表2 除草体系

 

A剤:プロメトリン・ベンチオカーブ乳剤(80cc/a)

B剤:DCPA乳剤(80cc/a)

C剤:ジメビベート・ベンスルフロンメチル粒剤(300g/a)

D剤:ベンスルフロンメチル・ベンチオカーブ・メフェナセット粒剤(300g/a)

 

区名 体系内容

 

 

1.      A(播種直後)+C(入水直後)

2.      A( 〃  )+D(入水3日後)

3.      A( 〃  )+B(播種後12日)+D(入水3日後)

4.      無処理

5.      手取除草

 

 

 

 

 

表3 雑草調査(播種後48日)       

区名

乾物重(無処理対比)

(%)

ヒエ類

(%)

タカサブロウ

(%)

メヒシバ

(%)

その他広葉

(%)

1

25

t

t

t

21

2

20

t

t

t

17

3

8

0

t

5

7

4

100

100

100

100

100

 

(31.1)

(2.5)

(2.3)

(2.0)

(37.9)(g/㎡)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図1 作業手順と除草体系

 

 

 

 

表4 水稲の生育状況         (平成4年、5年)

区名

出芽苗立数

(㎡/本)

出芽率

(%)

播種40日後の生育

稈長

(cm)

穂長

(cm)

穂数

(本/㎡)

収量

葉令

草丈(cm)

薬害

(kg/a)

(比)

1

111

(48)

4.4

16.1

71

18.8

403

54.6

(98)

2

110

(48)

4.4

16.2

73

19.4

400

54.3

(97)

3

124

(52)

4.4

17.3

無~微

75

19.0

387

55.7

(99)

4

119

(51)

4.4

18.2

71

19.6

370

47.7

(84)

5

109

(47)

4.3

15.7

76

19.4

409

56.0

(100)

 

 

 

〔その他〕

研究課題名           :福井平坦重粘土地帯の大区画水田における輪作体系化技術の確立

予算区分              :国補(地域水田農業)

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者名       :佐藤 勉、北倉 芳忠、尾嶋 勉

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

福井県に適した県内在来ソバ系統「大野在来」の選定

[要約]福井県内で栽培されているソバ在来種のなかから収量性が高く、加工適正に優れた「大野在来」を有望な系統として選定した。また、「大野在来」の生育特性から播種適期を8月3~5半旬に設定した。

福井県農業試験場・作物課

契機

部会名

作物生産

専門

栽培

対象

雑穀

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 福井県においてソバは中山間地での地域特産物として作付が増加しているが、気象変動等により作柄が不安定であるため、多収で加工性に優れた品種の選定が望まれている。このため、県内各地の在来系統を收集、比較し、有望な系統の一つとして「大野在来」を選定した。

[成果の内容・特徴]

(1)     大野在来は大野市を中心に栽培されており、生態型は秋風を示す。草型は直立分枝伸長型である。花色は白で、粒色は黒褐色である。

(2)     生育および収量

開花期は信濃1号より2日程度遅く9月16日、成熟期は17日遅い11月7日である。主茎長は信濃1号より長く、節数、分枝数、花房数は多い。また、収量は平均で126kg/10aと信濃1号を9%上回り、県内系統に比べてもやや多収である。千粒重は平均26.1kgとやや小さいが、果皮率が低く、粒張り、粒揃いに優れる(表1、2)。

(3)     製粉および製麺性

製粉性は県内在来系統並だが、製麺性は県内系統で最も高く、良好である。また、麺をゆでた時の凝集性が高く、麺の歯ごたえは良い(表2)。

(4)     播種適期

大野在来の花房数は播種~開花期の平均気温と正の相関を示し、100kg/10a以上の収量を得るには、20個/本以上の花房数が必要である(図1)。また、大野在来の収量は花房当たりの着粒数と相関が高く(r=0.736*)、花房当たりの着粒数を2個以上とすることが必要となる(図2)。これらを満たすための平均気温は、播種~開花期の平均気温が24.5℃で、開花~成熟期の平均気温が15~20℃となる。このことから、平年における本県平坦部の播種適期は8月第3~5半旬である(図3)。

[成果の活用面・留意点]

(1)     温度反応からみて、福井県下全域での栽培が可能である。

(2)     中山間地において適用する場合は気象条件に応じて作期を早める。

(3)     8月5半旬以降の極端な晩播は霜害を受けるおそれがあるので避ける。

 

[具体的データ]

表1.選定試験生育調査成績(平成2~5年)

品種

または

系統名

播種期

 

(月日)

開花期

 

(月日)

成熟期

 

(月日)

主茎長

 

(cm)

主茎

節数

分枝数

 

(個/本)

花房数

 

(個/本)

子実重

 

(kg/10a)

対標準

(%)

千粒重

 

(g)

大野在来

8/20

9/16

11/7

86.7

11.2

2.9

30.0

126.0

109

26.1

今庄在来

8/20

9/18

11/8

93.5

11.7

3.1

36.6

111.5

97

24.4

美浜在来

8/20

9/16

10/30

85.5

10.6

2.7

27.2

125.3

108

30.6

敦賀在来

8/20

9/18

11/10

96.3

11.7

3.0

37.2

107.5

93

24.9

美山宮地在来

8/20

9/14

10/19

68.7

9.0

2.6

22.1

124.9

108

27.9

信濃1号(標)

8/20

9/14

10/21

70.2

9.9

2.6

22.2

115.5

100

28.0

施肥量(N:0.25kg/a)

 

表2.選定試験の品種及び加工性試験成績(平成2~4年)

品種

または

系統名

粒張り

粒揃い

果皮率

 

(%)

製粉

歩留

(%)

タンパク質

 

(%)

製麺性*

ゆで麺**

の歯ご

たえ

大野在来

16.5

73.0

13.3

53.4

176

今庄在来

16.9

74.0

13.0

48.0

170

美浜在来

やや良

やや不良

17.5

72.9

13.5

50.6

162

敦賀在来

16.8

75.8

12.2

46.4

171

美山宮地在来

不良

不良

18.3

72.7

13.7

52.5

147

信濃1号(標)

やや不良

18.7

72.6

13.6

52.0

143

*:数値が高いほうが良好   **:数値高いほうが硬く、弾力性に富む

〔その他〕

研究課題名           :福井そば優良品種育成事業

予算区分              :単県

研究期間              :平成5年度(平成2~6年)

研究担当者名       :山田 実、杉本 雅俊、林 恒夫、井上 健一、尾嶋 勉

発表論文等           :なし

[平成6年度 普及に移す技術]

レーザー装置を活用した水田の営農的均平法

〔要約〕トラクタ直装型リヤブレードによる手動の圃場均平法の補助手段としてレーザーベルトの利用について検討した。レーザーレベル受光部及びリヤブレードに簡易な改良を加えることにより、標準偏差1.5㎝、最大高低差±4㎝程度の均平後の仕上げ精度を営農用機械によって得ることが可能となった。

福井県農業試験場

契機

部会名

営農・作業技術

専門

作業

対象

稲類

分類

普及

〔背景・ねらい〕

直播栽培では、安定した苗立ち、均一な水管理による除草や施肥の効果を確保するため圃場の均平化が要求され、特に大区画圃場や高低差が拡大する転換畑作後の復帰田時に重要となるが、効率的な手法は確立していない。このため、土木分野等で普及しているレーザーレベル均平法を参考にして、レーザーレベルを高低差判断の補助手段とした低コストな営農均平法を開発した。

〔成果の内容・特徴〕

(1)     レーザー装置を活用したトラクタ均平機の概要(図1)

発光器からのレーザーはリヤブレード上部のマストに設置した受光器でキャッチされる。オペレータは±3㎝の範囲で示される受光の高低状況を運転席のモニターを通して判断し、ポジションレバーを操作して均平作業を行う。

(2)     受光操作と作業機の改善(図1,表1)

ア.  受光器をマスト上部に2台設置し、モーターで揺動(約90°)させることでトラクタの全方位からレーザーを受光することができる。

イ.  リヤブレードにサイドカバーとツースを設置、重量を付加することで切土、運士能力が向上する。

(3)     作業手順(図2)

作物収穫後、耕うんによって刈株等の収穫残渣を埋没させ、ローラーで鎮圧・整地した後に均平作業を行う。均平作業は、発光器から150㎝の範囲で行う。レーザーレベルの基準点は、平均的な標高地点を選んで(目測でも可)設定すれば良い。その後、作業中に圃場面の沈下や運土状況から2~3回の調整を行う。

(4)     作業性能(表2)

均平作業(トラクタ95PS、リヤブレード幅3.9m)は、10a当り0.7~1.1時間で、高低差の標準偏差3.5㎝、最大高低差±8㎝の圃場を標準偏差1.5㎝、最大高低差±4㎝~5㎝および±3㎝以内の割合を97%以上に仕上げることができる。

〔成果の活用面・留意点〕

(1)     均平作業速度は、オペレータの熟練度に会わせ、0.5~1m/sの範囲で行う。

(2)     レバー操作は、受光モニターの矢印が消えない範囲で行い、過度な反応は避ける。

(3)     圃場整備後高低差が大きい場合や承畦畔の除却を伴う圃場の大区画化及び転換畑作後の大区画圃場の仕上げ均平に適する。作業時期は、稲収穫後では10月、4月下旬~5月、転換畑作後では6月~10月頃で圃場が乾燥している時(塑性限界程度)が良い。

(4)     作業機の大きさは、トラクタ30~40PSでリヤブレード幅2~2.5m、50~60PSで3~3.5m、70~90PSで4~4.5m程度とし、水平制御機能が付加されている機種を用いる。

 

 

 

図1 改良を加えたレーザー均平作業の模式図

 

 

図2 均平作業工程と作業時間

 

表1 受光部の改善点

項目

内容

結果

1.受光部

2台の受光器を設置し、マスト部をモータによって揺動。

トラクタの全方位から

常時、受光可能

2.作業部

リヤブレードにサイドカバー、ツースを付加。

ブレード1m当り100~150kgのウエイトを付加。

ブレードの切土

運土作業が高能率化

 

表2 均平作業例

圃場

調査時期

標準偏差

(cm)

最高値

(cm)

最低値

(cm)

±3cm以内

の割合(%)

作業時間

(h/10a)

麦跡・細粒強グライ土

作土LiC

30a

均平前1)

3.4

7.0

-9.1

68.1

1.1

均平後

1.6

3.3

-6.7

98.3

大豆跡・細粒強グライ土

作土LiC

180a

均平前

1.8

6.5

-4.2

91.9

0.7

均平後

1.4

5.0

-3.2

96.5

                                    注1)測定は鎮圧後に実施

                                     2)各測定は5mメッシュ

〔その他〕

研究課題名           :福井平坦重粘土地帯の大区画水田における輪作体系化技術の確立

予算区分              :国補(地域水田農業)

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者名       :北倉 芳忠、林 恒夫、尾嶋 勉、岩田 忠寿(現農産園芸課)

発表論文等           :なし

 

大区画圃場を活用した一集落一農場方式と水田輸作営農モデル

[要約]大区画圃場を有効に活用するためのシステムとして、一集落一農場方式を提示しその経営的効果を明らかにする。さらに、線形計画法により水田輸作営農モデルを構築し収益性を求める。

福井県農業試験場・作物経営部・地域営農研究チーム

契機

部会名

営農・作業技術

専門

栽培

対象

稲類、麦類

分類

指導

[背景・ねらい]

 各地で水田の大区画化が図れており、それらを効果的に活用する営農形態が望まれる。本情報では、福井県A生産組合を事例に、その一形態として一集落一農場方式を提示し、その中で実現しうる水田輸作営農モデルの収益性を示す。

 

[成果の内容・特徴]

(1)   事例とするA生産組合(福井県)は、1988年に水田の大区画化を行い、組合会24戸から委託された35ha(内50a以上の区画67.9%)の農地を共同出役により耕作し、剰余を組合会に分配する一集落一農場方式を採用している。

(2)   この事例から、次のような特徴と効果が指摘される(図1)。

(1)     大区画圃場内に複数の地権者が生まれるが、一農場として管理するため小畦畔を必要としない。その結果、大区画化のメリットを引き出すことができ、省力化と農機具の節減と所得増加を実現する。A組合では1922年に、水稲作は10a当たり第二次生産費14.4万円(対県平均79%)、同所得10.3万円(同117%)、同労働時間15.7時間(同40%)の高い実績をあげている(表1)。

(2)     山沿い等の水田は大区画化しにくく、そのような少区画水田の地権者に対しても面積に応じた一律配当金を支払う仕組みは、換地の円滑化と一集落一農場方式の維持に寄与している。

(3)     大区画化伴い余剰労働力を生み出すことから、水田輸作を多様化できる(地域特産物等の作付)。

(4)     上記特産物の開発等にかかわり、集落内のコミュニケーション、女性同士の交流の場を形成するなど、経済外的要素も生み出す。

(3)   上記の一集落一農場方式の事例をもとに、線形計画法により構築した水田輸作営農モデルは、水稲29.2ha+大麦4.7ha体系で、水稲最適作付時の米販売額は5,770万円となり、現状より77万円の追加所得が見込まれる。この時の組合会の10a当たり水稲取得は10.5万円(配当金8.5万円+出役労賃2.0万円)が確保される(表2)。

[成果の活用面・留意点]

大区画圃場整備を図った、特に小規模農家が多い集落において、本情報の適用効果は高い。

 

[具体的データ]

 

図1 大区画圃場を活用した一集落一農家方式と経営的効果

表2 A生産組合の水田輸作最適作付けと収益性

 

項目

現在

作付

面積

(ha)

最適作

付面積

1)

(ha)

反收

水準

 

(kg)

最適作

付時の

収益

(万円)

最適作付時の所得内訳

所得計

配当金

(万円/10a)

労賃

五百万石

14.0

7.6

513

 

10.5

8.5

2.0

コシヒカリ

7.4

11.3

514

5,770

 

 

 

九頭竜

7.2

10.3

554

 

1.1

 

1.1

カグラモチ

0.7

 

 

 

 

 

大麦

4.7

4.7

295

 

 

 

 

 

注:1)水稲および大麦め最適作付面積は線形計画法よって求めた。

  2)転作は大麦のほかに{特産として菊、サトイモ+イチゴ、麦跡自根

スイカを組合婦人部が中心となって、栽培する(延べ0.7)。

3)機械装備として、トラクタ(47ps)2台、側条施肥田植機(6条)2台、

コンバイン(5条)2台、乾燥機(50俵張り)4台を想定する。

4)年間労働時間4930時間、1組合員平均出役時間205時間である。

 

表1 A生産組合の大区画圃場

における水稲の経営指標

項目

 

 

(10a当り)

A組合

(万円)

福井県

対比

(県平均

100)

第一次生産費

11.2

76

第二次生産賢

14.5

79

粗収益

19.5

108

所得

10.3

117

労働時間(hr)

15.7

40

注:1)所得は配当金と労賃の合計

    金額を表す。

  2)労働時間はあぜぬり・水管

    理、草刈作業を除く。

 

 

〔その他〕

研究課題名           :水田輸作機械化営農モデルの策定

予算区分              :国補(地域水田農業)

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者名       :朝日泰蔵、玉井道敏、鹿子島力

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

一寸ソラマメの冬期被覆とマルチ利用による生育・開花期促進技術

[要約]一寸ソラマメにおける生育量の増加開花の前進化に冬期間の不織布小型

トンネル被覆とマルチの利用が有効である。

福井県園芸試験場・野菜課

契機

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

果菜類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 地域特産の一寸ソラマメは少労力野菜として作付けの増加が期待されている。しかし、中山間地域では冬期の生育量が小さく、また開花期も遅いことから開花・着莢節数も少なく、収量が低い。

 このため、簡易被覆とマルチによる冬期の生育促進と開花期の前進化について検討した。

 

 

[成果の内容・特徴]

(1)     冬期間の葉数増加と分枝の伸長促進にパスライトベタがけ+タフベル小型トンネルの12月上旬~3月中旬被覆が有効である(表1)。

(2)     マルチで冬期の分枝数、分枝長が増加し、開花期も早まる。マルチ資材は透明ポリで効果が高く、収穫期の葉数、茎径も増加する(表2)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     冬期で降雪が考えられる小型トンネルとする。

(2)     トンネル上部に茎葉が触れるようになったら被覆を除去する。

おおむね3月中旬頃を目安とする。

(3) マルチは定植時から行うが、土壌水分と地温の適正化を図るため、開花期になったら除去もしくはホーラー等で穴をあける。

 

[具体的データ]

表1 被覆資材・方法が生育・開花に及ぼす影響

被覆の資材

・方法1)

分枝数(本/株)

 

分枝長(cm/茎)

 

葉数(枚/茎)

 

開花茎率(%)2)

1/22

2/26

3/25

 

1/22

2/26

3/25

 

2/26

3/25

 

2/26

4/6

パスライトベタがけ

4.9

5.5

7.8

 

7.2

12.6

17.5

 

5.6

6.6

 

15.7

41.2

パスライトトンネルトンネル

5.4

6.2

9.0

 

7.4

13.2

18.3

 

5.8

6.4

 

33.0

44.9

タフベルトンネル

4.7

5.5

8.9

 

8.2

13.2

18.7

 

5.7

6.2

 

23.2

51.3

パスライトベタがけ

+タフベルトンネル

4.6

5.0

6.6

 

10.7

20.2

25.9

 

6.7

8.0

 

45.8

58.4

ワリフトンネル

5.2

5.3

9.1

 

6.5

10.9

15.7

 

5.6

6.2

 

10.6

47.2

無被覆

4.6

4.6

7.7

 

5.2

8.0

11.7

 

5.4

5.9

 

1.5

29.8

注1)被覆期間12/1~3/14 (定植11/10 品種 陵西一寸)

 2)発生分枝中の開花茎の割合

 

表2 マルチの種類が生育・開花に及ぼす影響

マルチの種類

1)

分枝数(本/株)

 

分枝長(cm/茎)

 

開花茎率(%)2)

12/22

1/22

3/3

5/24

 

12/22

1/22

3/3

5/24

 

3/25

4/5

シルバーマルチ

4.0

4.7

5.9

8.0

 

3.4

6.1

11.2

110.0

 

30.7

51.8

透明マルチ

4.4

6.2

7.3

8.0

 

4.0

6.1

11.8

103.6

 

55.7

64.0

無マルチ

2.8

3.1

3.7

8.0

 

3.0

4.3

8.0

89.1

 

2.4

33.0

注1)マルチは定植時に実施 (定植11月10日 品種 陵西一寸)

 2)発生分枝中の開花茎の割合

 

〔その他〕

研究課題名           :転換畑周年利用による高位品安定生産技術

予算区分              :県経常

研究期間              :平成5年度(平成元~7年)

研究担当者名       :田中 肇、佐藤信仁

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

ナバナの品種特性と地域適応性

[要約]ナバナの主要品種について播種期と収穫時期、収量の関係を明らかにした。

福井県園芸試験場・野菜課

契機

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

葉茎菜類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 地域特産野菜として、ナバナの作付けが推進されている。しかし、現在導入されている冬華の9/20~10/10播の作型では、收穫期間を通して平均した収量が得られないので主要な品種について播種期と収穫時期、収量の関係について検討した。

 

 

[成果の内容・特徴]

(1)     各品種とも播種期が早くなると収穫期が前進し、「冬華」、「早陽1号」が9/20播で年内収穫が可能となった(表1)。

(2)     収量は「冬華」、「菜花CR4号」、「早陽88号」、「早陽1号」が多かったが「冬華」を除き、播種期を10/20まで遅らせた場合、極端に収量が低下した(表1)。

(3)     品質を収量中に占める15cm以上の収穫茎の割合でみたが品種、播種期の早晩との関係はみられなかった(表1)。

(4)     「冬華」に比べ収穫期間中の収量が平均化しているものとしては、「早陽88号」、「菜花CR4」号であった(表1)。

(5)     「冬華」9/20播を中心に「CR京の春」10/1播、「菜花CR4号1」0/12播、「早陽88号」10/12播の組み合わせにより12~4月平均した収量が得られる(表1)。

 

 [成果の活用面・留意点]

(1)     品種選定と播種計画の参考となる。

(2)     秋冬期の気温等、地域の条件を加味して利用する。

 

[具体的データ]

 

注 1)数値の/左は稔収量g/20株当たり、右は15cm以上の収穫茎重%

 

 

〔その他〕

研究課題名           :ナバナの品種と播種期

予算区分              :県経常

研究期間              :平成5年度(平成元~6年)

研究担当者名       :田中 肇、佐藤信仁

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

簡易ハウス利用によるスプレーギクを中心とした3年5作体系

[要約]重粘土壌地帯の水田転換畑において、簡易ハウスを利用した夏秋ギク型スプレーギク秋ギク型スプレーギク作型を開発し、麦とダイズを組み入れた輪作体系の中で安定的な生産ができる3年5作体系を実証した。

農業試験場・花き課

契機

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

福井県の花き栽培は、高い生産力を持つ水田を利用して拡大されてきた。しかし、重粘土水田地帯における転換初年目の作付けは畑地化が進まず、導入品目や作期が制限され、生産物の収量品質が不安定である。このため、麦および大豆を基幹にしている既存の輪作体系に、和ギクに比べ栽培期間が短いスプレーギクを組入れ、ネグサレセンチュウと立枯病の発生経過を明らかにしつつ、簡易ハウス利用による3年5作体系を実証した。

[成果の内容・特徴]

(1)     簡易ハウスを利用した夏秋ギク型および秋ギク型スプレーギクを導入することにより、3年5作体系が可能である(図)。

(2)     麦-大豆作跡ではネグサレセンチュウおよび立枯病の発生がほとんどなく(表1)、切り花品質が優れる(表2、表3)。

(3)     麦作跡では、スプレーギクの1作目を6月下旬から8月下旬まで定植でき、切り花品質は安定している(表3)。

(4)     スプレーギク連作体系では、1~2作目はネグサレセンチュウおよび立枯病の発生がないが、3~4作目では発生が多くなり、土壌消毒が必要である(表1)。

(5)     夏秋ギク型スプレーギクは、草丈の長くなる7月咲き品種の「フロリダ」を用いるか、「パイオニア」に電照処理を行う(表2)。秋ギク型スプレーギクは、生育後半が低温期にになるため、低音開花性の高い品種「のどか」を選定し、電照処理を行う(表3)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     簡易ハウス利用によるスプレーギクを中心とした3年5作体系の導入が可能となる。

(2)     立枯病の発生が多くなるスプレーギク連作体系の4作目は、耐病性品種を選定するか、土壌消毒を行う。

(3)     追肥は、葉色を見ながら1週間に1回程度OK-F-1の1,000倍液を株当り0.1ℓ施用する。

 

[具体的データ]

 

図 簡易ハウス利用によるスプレーギクの3年5作体系

 

表1 輪作体系の違いがネグサレセンチュウの発生と秋ギク型スプレーギクの切り花品質に及ぼす影響

輪作体系

 

時期センチュウ密度(頭/50g)

立枯病

株率(%)

開花日

(月.日)

切花長

(cm)

切花重

(g)

茎径

(mm)

 

 

4.15

6.15

8.15

10.15

12.15

麦-大豆作跡

スプレーギク体系

(1~2作目)

0

0

1

0

0

0

12.9

96

53

7.3

麦作跡スプレーギク体系

(麦~1作目)

0

0

0

0

0

4

12.8

91

51

6.7

(2~3作目)

0

0

0

0

0

0

12.8

89

47

6.8

スプレーギク連作体系

(1~2作目)

0

0

0

0

0

0

12.5

101

66

6.9

(3~4作目)

0

1

12

8

129

18

12.8

91

43

6.6

注)品種はピンキー、定殖期8月20日、摘心期9月3日、電照期間は8月20日~9月30日。

 

表2 夏秋ギク型スプレーギク品種の開花品質

輪作体系

 

品種名

電照

処理

開花日

(月.日)

切花長

(cm)

切花重

(g)

茎径

(mm)

麦-大豆作跡

スプレーギク体系

(1作目)

パイオニア

8.2

92

52

5.5

スプレーギク連作体系

(3作目)

フロリダ

7.11

77

31

5.1

エリアス

7.21

67

29

4.9

パイオニア

8.3

74

32

4.4

注)定植期4月20日、電照期間は5月4日~6月20日。

 

表3 秋ギク型スプレーギク品種の開花品質

輪作体系

定殖期

(月、日)

品種名

電照

処理

開花日

(月.日)

切花長

(cm)

切花重

(g)

茎径

(mm)

麦-大豆作跡

スプレーギク体系

(2作目)

8.20

のどか

12.9

80

40

6.4

麦作跡スプレーギク体系

(1作目)

6.20

モナミ※

10.14

102

76

6.1

7.25

のどか

11.12

70

30

5.6

8.20

のどか

12.9

80

36

6.3

スプレーギク連作体系

(4作目)

8.20

のどか

12.9

79

36

6.3

8.20

ジェム

11.28

90

48

6.1

注)電照期間は8月20日~9月30日。※夏秋ギク型品種。

 

〔その他〕

研究課題名           :重粘土水田地帯におけるスプレーギクを中心とした新輪作技術の確立

予算区分              :国補(地域水田農業)

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者名       :小森治貴、宮越盁

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

シンテッポウユリの小球形成処理によるリン片繁殖苗育成

[要約]2℃で6週間貯蔵したシンッテポウユリのリン片をベンレート水和剤500倍液で

湿らせたバーミキュライトとともにポリ袋に密閉し、22℃に3週間置くと、小球が形成され、

リン片挿し後の育苗日数が短縮できる。

福井県園芸試験場・花き課

契機

研・普

部会名

野菜・花き

専門

栽培

対象

花き類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 本県では、シンテッポウユリのリン片繁殖による切り花生産が普及しつつある。この作型の育苗は冬季間となり、育苗に用いる期待が短期であるほど管理上都合が良い。リン片繁殖前に小球を形成させリン片挿し期間を短くし、定植後の開花率向上も期待できる育苗方法を明らかにした。

[成果の内容・特徴]

(1)     堀上げた球根からリン片を外し、ベンレートで消毒後、2℃で6週間程度貯蔵する。

(図1)。

(2)     小球形成処理の培地は、バーミキュライトを容積比で1/20容のベンレート水和剤500倍液で湿らせて用いると、根の発生が抑えられ、その後のリン片挿しが容易になる(表2)。

(3)     ポリ袋(28×20cm)に培地800mlとリン片50枚程度を封入して密閉し、22℃の暗所に置くとリン片基部に小球が形成される(図1、表2)。

(4)     小球形成処理の期間は3週間程度がよい(表3)。

(5)     小球を形成したリン片はリン片挿しを行うと速やかに活着し、8週で定植可能な苗となる(表3)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     リン片の採取部位は、汚れた外部リン片を除いた外部、中部リン片を用いる。中心部のリン片は小球形成が悪いため用いない。

(2)     ポリ袋に封入後はときどき小球形成状況を確認し、リン片にカビが多発している袋は捨てる。

(3)     小球形成温度は25℃を越えないように管理する。

(4)     リン片挿し後は乾燥しないようにし、極端な高温下にさらされないようにする。

 

[具体的データ]

 

 

表1 培地水分量が小球形成に及ぼす影響           表2 小球形成温度が小球形成の及ぼす影響

培地

水分量

(ml)

処理前

リン片重

(g/枚)

形成

小球

数(個)

小球径

 

(mm)

小球高

 

(mm)

根数

 

(本)

20

0.3

1.1

2.7

5.2

0.3

40

0.3

1.2

3.0

6.7

0.7

80

0.3

1.4

3.2

6.3

1.0

200

0.3

1.4

4.5

8.5

1.0

400

0.4

1.1

3.6

8.5

0.3

小球形成温度22℃ 50日 暗条件

バーミキュライト量800ml、ベンレート水和剤

500倍80ml

小球形成

温度

(℃)

処理前

リン片重

(g/枚)

形成

小球

数(個)

小球径

 

(mm)

小球高

 

(mm)

根数

 

(本)

15

0.8

0.3

0.6

1.1

0

20

0.8

0.6

1.3

2.5

0.1

22

1.0

1.1

3.1

5.2

0.3

25

0.9

0.9

2.4

4.1

0

28

0.9

0.8

1.4

2.5

0

小球形成処理期間 4週

バーミキュライト量800ml、ベンレート水和剤500

培80ml

 

 

表3 小球形成期間が育苗時の生育と開花に及ぼす影響

小球形成

処理期間

育苗

日数

(日)

育苗時の生育(4月27日)

開花

(%)

平均

開花日

(月.日)

葉長

(cm)

葉数

(枚)

球径

(mm)

球高

(mm)

根長

(cm)

全重

(g)

地上

部重(g)

球重

(g)

根重

(g)

1週

70

7.1

4.1

6.5

9.4

9.3

2.1

0.5

0.3

0.7

78

8.17

2週

63

9.2

4.9

7.5

9.3

10.7

3.1

0.7

0.3

1.5

80

8.21

3週

56

8.4

5.6

7.0

9.1

10.9

2.2

0.6

0.4

0.9

76

8.25

4週

49

9.9

3.4

7.7

9.8

9.7

2.7

0.6

0.4

1.2

58

8.22

無処理

77

6.7

4.0

6.4

9.5

8.4

2.2

0.5

0.3

0.7

70

8.17

小球形成処理温度22℃

小球形成処理日(無処理区はリン片挿し日):1993年2月9日 定植日:4月27日

 

[その他]

研究課題名           :シンテッポウユリ小球形成処理と開花 

予算区分              :県単

研究期間              :平成4~5年

研究担当者名       :坂本 浩・畑中康孝・滝 修三・永井輝行

発表論文等           :平成5年園芸学会北陸支部研究発表シンポジウム講演容旨

                             シンテッポウユリ・リン片繁殖前の小球形成処理と開花

[平成6年度 普及移す技術]

カキ「平核無」脱渋性向上のための果実発育期の光環境及び収穫期における果実形質

[要約]カキ「平核無」果実発育期における日射量不足は、脱渋を遅らせる。また、着果過多樹の果実及び果実発育不揃いによる小果、収穫後期の過熟果も脱渋が不良となる。

福井県農業試験場・果樹課

契機

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

福井県におけるカキ「平核無」の脱渋は、CTSD方式による炭素ガス脱渋でおこなわれているが、年により脱渋が不完全となり補完脱渋を強いられる場合もあって、気象条件や果実の違いにより脱渋に難易があるといわれている。そこで、果実発育期の光環境及び果実形質の違いと炭素ガス脱渋との関係についてあきらかにした。

[成果の内容・特徴]

(1)     反射シートによる補光は樹冠低位置の日射量が高まるものの、炭素ガス処理後の脱渋に影響が認められないのに対し、寒冷紗による遮光は日射量が低下し脱渋が遅れた。このことから、日射量不足は脱渋を遅らせることが明らかである(表1)。

(2)     着果過多樹の果実及び収穫期における小さい果実は、果実発育期のタンニン含量は低下が遅れ、収穫後の脱渋も遅くなる(図1、表2)。

(3)     収穫時期が遅くなるにつれ脱渋前のタンニン含量は低下するが、炭素ガス処理後のタンニン含量の低下は遅れ、収穫時期が遅くなるほど脱渋は進まなくなる(表3)。

(4)     以上のことから、脱渋性の向上には整枝剪定や反射シート資材により樹冠内部や下層部果実への日当たりを良くしたり、果実肥大を促すために摘蕾と摘果を励行しL級以上の大果生産に努める。さらに収穫にあたっては、過熟果が混入しないように計画的な収穫体制を整える。

 

[成果の活用面・留意点]

 「平核無」果実の脱渋を効率的、かつ均一に仕上げるための栽培及び脱渋技術改善に活用できる。

 

[具体的データ]

表1 反射シート、寒冷紗処理と相対日射量及び脱渋程度(1991)

日射量

処理

相対日射量z)(%)

 

脱渋程度y)(10月21日収穫)

樹高1.5m

樹高2.5m

 

2日後

4日後

6日後

8日後

反射シートx)

60.8

58.5

 

3.4

4.8

5.0

5.4

寒冷紗#600x)

20.2

35.9

 

3.2

4.2

4.6

5.0

対照

48.8

82.5

 

3.2

4.8

5.4

5.2

z)簡易日射のphycoerytinを用いて8月に計測した。

y)1(果芯部がわずかに脱渋)、3(脱渋進んでいるが渋みがある)、

  5(わずかに渋みがあるが可食状態)、6(全く渋みを感じない)に区分

x)処理期間は6月19日から収穫期

表2 果実の大きさと可溶性タンニン含量及び脱渋程度(1993)

果実の

大きさ

タンニン含量(%)

 

脱渋程度

脱渋前

3日後

6日後

 

3日後

6日後

S

1.16

0.63

0.25

 

3.3

5.1

M

1.16

0.72

0.20

 

3.9

5.4

L

1.15

0.68

0.16

 

4.0

5.6

 

表3 収穫時期と可溶性タンニン含量及び脱渋程度(1993)

収穫時期

果色

 

タンニン含量(%)

 

脱渋程度

果頂部

 

脱渋前

3日後

6日後

 

3日後

6日後

9月21日

2.1

 

1.60

0.04

 

4.7

10月1日

3.0

 

1.41

0.16

0.15

 

5.8

5.7

10月12日

5.0

 

1.19

0.30

0.11

 

5.1

5.8

10月23日

6.2

 

0.90

0.42

0.12

 

4.3

4.8

11月2日

6.6

 

0.83

0.24

0.13

 

4.3

4.2

11月11日

7.2

 

0.60

0.44

0.25

 

3.2

4.7

 

[その他]

研究課題名           :カキ果実の成熟特性の解明と脱渋貯蔵技術の開発

予算区分              :単県

研究期間              :平成5年(平成3~6年)

研究担当者           :高野隆志、杉本明夫

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

ウメの樹脂障害果(ヤニフキ果、ヒヤケ果)に対する総合微量要素肥料の施用効果

[要約]ウメの果実表面に発生する樹脂障害果(ヤニフキ果、ヒヤケ果)は果実の品質を著しく低下させるが、この発生の軽減を図るためには、従来から施用してきたホウ砂に替えて、総合微量要素肥料(FTE)の施用が有効である.

福井県園芸試験場・果樹課・営農環境課

連絡先

0770-32-0009

部会名

果樹

専門

肥料

対象

果樹類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 ウメの果実表面に発生する樹脂障害果は、果実の品質を著しく低下させ、被害果率は、多発生年では約20%に達する地域もみられる(表1)。その発生原因はまだ完全に明らかになっていないが、ホウ素欠乏症であるという報告がある。そこで約10年前より、ウメ園土壤のホウ素含量の実態を調査するとともに、ホウ砂などいくつかの水溶性ホウ素資材を供試して現地試験を実施してきたが、発生を軽減する顕著な効果はみられなかった。そのため平成3年度からく溶性ホウ素を含有する総合微量要素肥料(FTE)の施用試験を現地の2地域で実施した。

 

[成果の内容・特徴]

(1)     主産地である三方町のウメ園では、樹脂障害果が発生しやすいといわれている土壌中の水溶性ホウ素含量0.6ppm以下の地帯が約60%分布していた(図1)。

(2)     各種ホウ素資材の施用効果を比較すると、FTEの施用により土壌中の水溶性ホウ素含量が若千高まり、樹脂障害果率もホウ砂の43%に軽減された(表2)。

(3)     単年施用よりも2か年連用で、樹脂障害の発生はやや少なくなった(表3)。

(4)     以上のことから、樹脂障害果の発生軽減を図るためには、成木1樹当りFTE単体400g、またはFTE入りウメ専用肥料を施肥基準どおり施用する必要がある。

 

[成果の活用・留意点]

(1)     本肥料を施用することより、樹脂障害果の発生が軽減され、秀品率の向上が期待される。

(2)     FTEはく溶性であるため、ホウ砂などに比べ、溶出速度がゆるやかであり、また比較的流亡もしにくいことから、秋施用が望ましい。

(3)     土壌が酸性のときは肥効が劣るので、土壌pHを6~7に維持する。

 

[具体的データ]

表1 樹脂障害果の地域別発生状況

調査地点

樹脂障害果率(%)

 

ヤニフキ果

ヒヤケ果

合計

三方町海山

3.6

7.0

10.6

三方町世久見

15.7

2.0

17.7

三方町河内

0.0

0.0

0.0

三方町伊良積

3.8

6.7

10.5

三方町向笠

2.3

11.2

13.5

三方町気山

12.9

1.2

14.1

小浜市若狭

6.8

2.5

9.3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調査時期 平成5年6月15日~25日

 

図1 三方町におけるウメ園の水溶性

ホウ素の含量別面積割合   

表2 ホウ素資材の樹脂障害果発生防止効果の比較

調査地点

樹脂障害果率(%)

土壌中の水溶

性ホウ素(ppm)

ヤニフキ果

ヒヤケ果

合計

FTE

6kg/10a

2.5

3.2

5.7

43

0.93

ホウ砂

6kg/10a

8.8

4.4

13.2

100

0.88

無処理

 

5.7

6.6

12.3

93

0.85

供試樹 紅サシ15年生   施用時期 平成5年4月9日

 

表3 FTEの施用量の比較と連年施用効果

試験区

1果重(g)

ヤニフキ果率(%)

FTE

200g/樹

H4年施用

23.0

25.7

FTE

400g/樹

H4年施用

21.5

16.7

FTE

400g/樹

H3.4年施用

22.6

16.0

無施用

 

 

23.3

38.0

供試樹 紅サシ15年生  施用時期 各年とも11月

二州農政との共同試験

 

[その他]

研究課題名           :ウメの生理障害果発生防止のための養水分管理法

                             ウメ園土壌の実態調査

                             ウメに対する総合微量要素肥料FTEの肥効試験

予算区分              :単県

研究期間              :平成5年(平成2~8年度)

研究担当者           :川久保幸雄・渡辺 毅

発表論文等           :なし

 

[平成6年度 普及移す技術]

ウメ「紅サシ」の果実重安定のための枝梢管理法

[要約]ウメ「紅サシ」成木の結果枝数樹冠面積1㎡当り単果枝120~140本、発育枝1本を含め、150本を目安に制限することにより、着果過多年や着果不良年においても果実の品質安定を図ることができる。

福井県園芸試験場・果樹課

契機

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 ウメの着果管理はミツバチの放飼による受粉は積極的に行われるが、他の樹種のような摘果による着果量の管理は行われない。このため、着果良好年では小果が出荷の大半を占め、着果不良年では大果が大半を占める。しかし、価格は着果良好年では小果が、着果不良年では大果が低価格になり、経営を著しく不安定にしている。果実品質安定のための摘果が労力的に不可能なウメにおいて、1樹当りの総結果枝長と果重の関係を検討し、果重の安定を図るための適正な結果枝密度を求めようと試みた。

 

[成果の内容・特徴]

(1)     単果枝(10cm以下)から収穫された果実の重さの4か年の年次変動は無せん定樹や総結果枝長415mの弱せん定樹では13.2g、14.0gと大きく、総括果枝)から収穫された果枝と同様な結果出あった(表2)。

(2)     連年安定した重さの果実を収穫するためには、樹冠面積1㎡当たり、短果枝を120~140本程度に制限することが重要である(表3)。

(3)     短果枝の制限は、間引きせん定で側枝数を少なくすることにより調整し、側枝数は樹冠面積1㎡当たり、発育枝から養成した側枝1本、中康な側枝4本程度にする。また、側枝更新用の発育枝は樹冠面積1㎡当たり1本にする(表3)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     健全に生育している「紅サシ」成木園(裁植距離7~8m)に適用する。

(2)無せん定樹や弱せん定の樹では長大で古い側枝を徐々にせん去し、新梢の発生を促し、側枝を更新し、樹勢の強化を図る。
[具体的データ]

表1 短果枝の果実重(g)

総括果枝長

89年

90年

91年

92年

年次間差

224m

23.7

28.1

28.2

21.3

6.9

304m

22.2

29.3

27.3

23.4

7.1

350m

22.2

31.0

25.1

25.0

8.8

415m

20.2

32.2

24.8

18.2

14.0

無せん定

15.0

28.3

15.2

17.3

13.3

 

表2 中・長果枝の果実重

総括果枝長

中果枝の果実重(g)

 

長果枝の果実重(g)

89年

90年

91年

92年

年次間差

 

89年

90年

91年

92年

年次間差

224m

24.2

26.4

25.4

19.6

6.8

 

23.8

25.2

26.3

19.9

6.4

304m

20.2

27.5

24.7

21.7

7.3

 

20.9

26.5

24.6

22.5

5.6

350m

20.3

28.6

22.9

23.7

8.3

 

20.7

25.5

22.1

23.9

4.8

415m

21.7

32.1

23.4

18.0

14.1

 

22.5

26.8

23.3

19.2

7.6

無せん定

15.1

28.1

26.9

17.7

13.0

 

16.7

26.7

29.0

19.4

12.3

 

表3 樹冠面積1㎡当たりの結果枝数(4年間の平均)

総括果枝長

(m)

結果枝長区分

(本)

収量

(kg)

短果枝

(本)

中果枝

(本)

長果枝

(本)

30~70cm

(本)

70~

(本)

224m

109

5.1

2.2

3.0

0.8

120.1

87

304m

120

6.7

6.7

3.8

0.9

138.1

115

350m

139

6.9

3.7

5.0

0.9

155.5

112

415m

235

9.6

3.4

3.1

1.6

252.7

109

 

 

[その他]

研究課題名           :着果安定のための樹体および土壌条件の解明

予算区分              :国補(地域重要新技術)、県単

研究期間              :平成5年(昭和63~平成4年)

研究担当者           :山本 仁、冬廣吉朗、川久保幸雄、中川文雄、渡辺 毅

発表論文等           :ウメ‘紅サシ’の果実重に及ぼすせん定程度の影響、園学雑.63(別1)1994

 

[平成6年度 普及移す技術]

ウメ「紅サシ」の開花始めの予測方法

[要約]ウメ「紅サシ」の花芽重をはかることにより、調査日から開花始めまでの平均気温の積算値が算出され、これをもとに開花始めが推定できる。

福井県園芸試験場・果樹課

契機

部会名

果樹

専門

栽培

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 ウメの開花は他の果樹に比べ早く、前年からの気象の影響を大きく受け、開花の年次間変動は極めて大きい。このため、早期開花年では開花直前の休眠期防除が実施できなかったり、受粉用ミツバチの準備が遅れるなど栽培管理上問題が大きい。

そこで開花始めを予測するために、前年の12月から開花直前までの花芽の生育の推移と開花始めまでの積算温度との関係を検討した。

[成果の内容・特徴]

(1)     花芽重量とその調査日から開花始めまでの平均気温の積算値との間には高い相関があり予測誤差も小さかった(表1、図1)。

(2)     花芽重量調査日から開花始めまでの積算温度(Y)の予測式(表1、図1)は

   Y=215.81・W+367.65―――(1)

   Wは100芽花芽重を自然対数に変換した数値(10ge)である。

(3)     開花始めの予測手順

i)                    花芽の採取時期は12月より開花直前までとし、この期間中、4~5回実施する。花芽は3~10cmの短果枝の各節より最も大きいものを1芽づつ採取し、200芽以上を直ちにひょう量瓶に入れ、重量をはかり、100芽花芽重を求める。

ii)                  100芽花芽重は自然対数に変換し、(1)式に代入し、開花始めまでの積算温度を求める。

iii)                調査日から開花始めまでの日数は平年値(表2)と気温予報を参考に1日の平均気温を決め、その値でii)の積算温度を除し、開花までの日数を求め、開花始め日を推定する。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     県内の「紅サシ」に適用する。

(2)     気温のデータは近接の観測所のデータを利用する。

(3)     気象情報を絶えず入手する。

(4)     降雨日の調査は測定誤差がおおきくなるので行わない。

 

[具体的データ]

 表1 花芽の生育(X)と開花までの積算温度(Y)

花芽

調査日より開花日

までの積算温度の

相関係数

回帰式

調査数

誤差

誤差の

平方和

100芽重

-0.982

Y=-215.812・loge×+367.654

54

-67~56

48241

100芽乾燥重

-0.981

Y=-274.533 loge×+60.168

54

-61~61

50727

乾物率(%)

0.917

Y=-864.534 loge×-2666.70

54

-82~167

218419

芽横長

-0.978

Y=-505.925 loge×+3176.87

54

-85~75

51048

芽縦長

-0.964

Y=-539.586 loge×+3693.93

54

-81~92

93506

 

 

 

図1 花芽の生育と開花までの積算温度

表2 平均気温の平年値と平均気温の最高・最低値

 

 

12月

 

 

 

1月

 

 

 

2月

 

 

 

3月

 

 

 

 

 

平均気温

8.1

6.7

5.8

 

4.8

3.9

3.7

 

3.5

4.5

4.5

 

5.4

6.7

8.3

最高

12.5

9.8

9.3

 

7.7

7.2

7.4

 

5.8

7.6

8.6

 

8.9

9.5

10.9

最低

4.8

3.4

2.6

 

1.6

0.7

1.0

 

0.4

1.2

1.0

 

1.8

3.4

5.8

 

 

[その他]

研究課題名           :気象対策試験

予算区分              :県単

研究期間              :平成5年(昭和58~平成4年度)

研究担当者           :山本 仁、冬廣吉朗、川久保幸雄、中川文雄、渡辺 毅

発表論文等           :なし

 

ウメ黒星病に対する非着果期の防除効果

[要約]夏秋季防除により、秋季の枝でのウメ黒星病の発生が抑えられ、次年度の果実の黒星病の発生が減少する。夏秋季防除に翌年春季防除をプラスすることによって、果実黒星病の発生が一層減少する。

福井県園芸試験場・営農環境課・果樹課

連絡先

0770-32-0009

部会名

生産環境・果樹

専門

作物病害

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 ウメの最重要病害である黒星病の防除は、現在4、5月の果実肥大期間を中心に実施されているが、食品の安全性指向の観点から、着果期間の防除回数を少なくすることが求められている。このため、薬剤の安全使用基準の範囲内で、収穫後の防除が散布当年の枝黒星病および翌年の果実黒星病の発生に及ぼす影響を調査し、非着果期を主体にした防除体系を確立する。

 

[成果の内容・特徴]

(1)     収穫直後の7月上旬に薬剤散布すると、枝の黒星病の発生は減少する(第1図)。

(2)     収穫直後および8月初めの薬剤散布は、それ以後の散布と比べて、翌年の果実黒星病の防除効果が高く、9月初めの散布でも薬剤によっては効果が見られる(第2図)。

(3)     夏秋季防除に翌年春季防除をプラスすることによって、生産当年の果実黒星病の発生は一層減少する(第3図)。その結果、夏秋季防除を行うと、春季に防除をしなくても無防除の1.2~1.3倍の収入が図られ、夏秋季防除と春季防除を組み合わせると、無防除の1.5倍以上、春季防除のみの約1.1倍の増収が見込まれる(第2表)。

(4)     薬剤の種類によって枝の黒星病と果実の黒星病に対する効果の程度に差があり、枝ではビデルタノール、果実では水和硫黄の効果が高い(第1表)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     非着果期を重点とした防除体系化を組むうえでの参考となる。

(2)     水和硫黄の高温時の散布は避ける。

 

[具体的データ]

 

 
 

 

第1表 薬剤の種類とウメ黒星病の防除効果

薬剤名

枝黒星病発病度a)

果実黒星病発病度b)

 

8/1

(1)

11/6

(2)

(2)/(1)

発病果率

(%)

発病度

グアザチン・ポリオキシン

9.3

32.0

3.4

10.7

4.2

ビデルタノール

6.9

18.5

2.7

17.3

6.2

水和硫黄

7.1

35.7

5.0

4.7

1.6

注a)薬剤散布日 1991年7月9日。紅サシ(15年生)での調査。

  b)薬剤散布日 1990年3月22日、4月3日、4月19日。

  紅サシ(19年生)での調査。

 

 

 

 

 

 

 

 

第3図 果実黒星病に対する夏秋季および春季防除の効果

(薬剤散布日 1992年ビデルタノール7月8日、水和硫黄7月8日、9月10日。

                     1993年無機硫黄1月26日、グアザチン・ポリオキシン3月31日、水和硫黄4月19日、ビデルタノール5月19日。

果実採取および調査日 1993年6月14日。)

 

第2表 各処理で生産されたウメ果実の試算価格a

処理

秀品

優品

良品

粗収益

10a当り(1)

薬剤費

10a当り(2)

(1)-(2)

比率

単価b)

販売価格

比率

単価b)

販売価格

比率

単価b)

販売価格

 

ビデルタノール夏秋季防除

29.7

510

1515

58.4

365

2132

11.9

193

230

387700

(122)

3950

383750

(121)

水和硫黄夏秋季防除

37.8

510

1928

59.8

365

2183

2.4

193

46

415700

(131)

850

414850

(130)

ビデルタノール夏秋季防除

+春季通常防除

82.5

510

4208

17.5

365

639

0

 

 

484700

(152)

10820

473880

(149)

水和硫黄夏秋季防除

+春季通常防除

85.5

510

4361

14.5

365

529

0

 

 

489000

(154)

7730

481270

(151)

春季通常防除

68.9

510

3514

27.1

365

989

4.0

193

77

458000

(143)

6880

451120

(142)

無防除

5.5

510

281

62.6

365

2285

31.9

193

616

318200

(100)

0

318200

(100)

注a)JA三方五湖扱い。6月13~27日販売のL規格品1kgの価格から算出した。各処理とも11/10aの収量とした。

 b)1kg当たり。

 

[その他]

研究課題名           :ウメの非着果期を重点としたクリーン病害防除体系の確立

予算区分              :県単

研究期間              :平成5年(平成4~6年)

研究担当者           :池田郁美、川久保幸雄、塩谷雅弘、冬廣吉朗

発表論文等           :なし

 

枝におけるウメ黒星病の発生生態

[要約]枝におけるウメ黒星病収穫後早期の増加が顕著で、発育枝・徒長枝の発生が多く、枝の基部が太いほど多い。また、病斑発生の多い枝先端部分および樹皮無機成分含病が多い。

福井県園芸試験場・営農環境課

連絡先

0770-32-0009

部会名

生産環境・果樹

専門

作物病害

対象

果樹類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

 ウメ黒星病は枝と果実に発生するが、果実での発生生態については研究が進んでいるものの、枝での発生については、症状、発生時期などが記載されているのみで、これ以外の発生生態についてはまったく明らかにされていない。

 枝での越冬病斑から果実の黒星病は感染するので、枝での黒星病の発生実態を明らかにすることは、果実の黒星病の発生を抑えるうえから重要である。そこで、収穫後の枝におけるウメ黒星病の発生消長を明らかにするとともに、枝の種類や枝内無機成分と発病程度との関係について解析する。

[成果の内容・特徴]

(1)     枝におけるウメ黒星病は、収穫後から冬季まで漸増するが、収穫後の7月から8月にかけての増加が顕著である(第1表)。

(2)     枝でのウメ黒星病は発育枝、徒長枝で発生が多く、長果枝、中果枝となるにつれて発病率が低くなる。各枝ともに枝の基部が太いほど発病程度が高い(第1図・第2図)。

(3)     枝での黒星病の病斑は、基部よりも先端部に多く、樹皮の部分にとどまり、木質まで病変することはない(第2表)。各枝を先端と基部、樹皮と木質部に分けてその無機成分を分析すると、全窒素、リン、カリウム、カルシウムなどはいずれも枝の基部より先端部分、木質部より樹皮に多い。このことから、これらの樹体内養分も発病程度と関連していると考えられる(第3表)。

 

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     ウメ黒星病の防除、剪定に当たっての参考となる。

(2)     ウメ黒星病の伝染原を少なくするため、剪定枝は焼去、撤去する。

 

 

[具体的データ]

第1表 枝におけるウメ黒星病の発病消長a

枝の黒星病発病度

 

7月末~

8月初(1)

8月末~

9月初(2)

(2)/(1)

9月末~

10月初(3)

(3)/(2)

10月末~

11月初(4)

(4)/(3)

11月末~

12月初(5)

(5)/(4)

1991年

11.3

30.5

2.7

38.1

1.2

51.8

1.4

 

 

‘92年

8.3

15.0

2.4

25.0

1.7

28.8

1.2

31.3

1.1

‘93年

24.5

47.5

1.9

52.5

1.1

60.0

1.1

61.6

1.0

注a)現地圃場の紅サシ(15年生)無防除樹での調査。2樹調査平均値。

  調査月日1991年(1)8/1、(2)9/1、(3)10/3 (4)11/6、1992年(1)7/29、(2)8/31、(3)9/30、(4)11/2、(5)12/4、

      1993年(1)7/29、(2)9/1、(3)9/24、(4)10/27、(5)11/17

 

第1図 枝の種類a)と黒星病の発病程度b)  第2図 枝の太さと黒星病の発病程度b)

注a) 発育枝、長果枝、中果枝、短果枝は以下のように区分した。

                   短果枝:長さ10cm未満の新梢。               中果枝:長さ10~20cm未満の新梢。

                   長果枝:長さ20~50cmの新梢                  発育枝:長・中・短果枝以外の新梢。

                   徒長枝:側枝や骨格枝に利用できない発育枝で、一般的な長さは100cm以上。

 b)紅サシ(15年生)、12樹での調査。

   A:病斑数51以上、B:病斑数21~50、C:病斑数6~20、D:病斑数1~5、E:病斑数なし。

 

第2表 枝におけるウメ黒星病斑の分布位置

 

第3表 枝の種類と技樹皮の無機成分a)

病斑の分布位置

枝の発生割合(%)

 

枝の種類

部位

T-N

P2O5

K

Ca

Mg

枝の先端から1/4の位置まで分布

30

 

発育枝

先端部b)

1.51%

0.54%

1.59%

2.09%

0.17%

枝の先端から1/2の位置まで分布

54

 

徒長枝

基部c)

1.34

0.45

1.50

1.81

0.17

枝の先端から3/4の位置まで分布

16

 

長果枝

先端部b)

1.55

0.49

1.50

2.36

0.19

枝の先端から基部まで分布

0

 

 

基部c)

1.44

0.47

1.50

2.15

0.19

注)紅サシ15年生での調査

 発育枝、徒長枝、長果枝、中果枝を合計50本調査した。

 

中果枝

先端部b)

1.59

0.44

1.55

2.53

0.20

 

 

基部c)

1.51

0.43

1.45

2.28

0.19

 

注a)紅サシ(15年生)での調査

  枝採取日 1993年12月20日。分析日 1994年1月13日

b)枝の中央部から上半分

c)枝の中央部からした半分。

 

[その他]

研究課題名           :ウメの非着果期を重点としたクリーン病害防除体系の確立

予算区分              :県単

研究期間              :平成4年度~6年度

研究担当者           :池田郁美、川久保幸雄、塩谷雅弘

発表論文等           :なし

[平成6年度 普及移す技術]

大麦のポリフェノール除去と2軸型エクストルーダーによる大麦スナックの開発

[要約]大麦粉を水洗い処理や塩酸処理することによりポリフェノールを減少させ、加熱時の褐変を抑制することができる。この大麦粉を用いて2軸型エクストルーダーにより、食感が軽く、外観品質も良い大麦スナックの製造技術を開発した。

福井県農業試験場・食品加工研究所

契機

部会名

食品

専門

加工利用

対象

麦類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 大麦には米や小麦に比べ多量のポリフェノール成分が含まれている。そのために加熱加工を加えた場合に褐変しやすい特徴がある。さらには従来大麦を用いた焼き菓子類は非常に食感が硬いものであったために、大麦の利用はあまり進んでいなかった。このため、これらのことを改善し、大麦の利用拡大を図るために、簡便なポリフェノールの除去法を開発した。さらに2軸型エクスルーダ-による加工を加えることによって、食感、外観とも優れた大麦スナックの製造技術を開発した。

 

[成果の内容・特徴]

(1)     大麦粉に水処理、0.1N塩酸処理を行うとポリフェノールが減少し、加熱褐変が抑制できる。また水処理では蛋白質の減少がほとんどみられない(表1)。

(2)     塩酸処理によってブレークダウンの大幅な低下、最終粘度の上昇がみられるが、水処理ではアミログラムに大きな影響はない(表2)。(1)(2)の結果及び塩酸処理の煩雑さを考慮し、以後水処理大麦粉を用いた。

(3)     大麦粉を図1、表3の条件で麺状に押し出し冷却後乾燥し、焼き上げまたは油揚げすることにより食感に優れた大麦スナックを製造することができる(表4)。

(4)     無処理では黒く焼き上がるが、水処理大麦粉を使用すると褐変を抑制でき、品質が向上する(表5)。

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     大麦の利用拡大に有効である。

(2)     エクストルーダーの機種にあわせて、運転条件を最適化する必要がある。

 

[具体的データ]

表1 大麦前処理条件を異にした場合の成分及びオーブンテストへの影響

処理区

蛋白質含量

(%)

ポリフェノール含量

(mg/100g)

オーブンテスト

L*

a*

b*

無処理

6.9

7.9

84.6

4.1

18.1

水処理

6.3

4.8

88.9

2.6

10.9

塩酸処理

5.7

3.9

89.6

2.5

9.2

L*:明度a*、b*:色相彩度

 

表2 大麦前処理条件を異にした場合のアミログラムへの影響

処理区

糊化開始温度

(℃)

最高粘度

(BU)

ブレークダン

(BU)

最終粘度

(BU)

無処理

60.0

535

190

1070

水処理

60.0

520

150

1100

塩酸処理

60.0

535

75

1240

 

図1 大麦スナックの製造工程

 

表3エクストルルーダー運転条件(ダイ側より)

 

表4 大麦スナックの性状

スクリューパターン

K-F-F-F-F

 

製品名

比容積

硬さ

設定温度

冷却-120℃-120℃-80℃

 

 

(ml/g)

(kg)

スクリュー回転数

130rpm

 

煎餅1)

5.65

1.3

原料供給量

140g/min

 

かきもち2)

4.22

1.8

加水量

100ml/min

 

小麦スナック3)

6.79

0.7

ダイの形状

径2mm×3穴

 

大麦せんべい4)

1.93

6.3

K:ニーディングスクリュー

F:フォワードスクリュー

 

大麦スナック(焼き上げ)

3.28

2.3

 

大麦スナック(油揚げ)

5.07

1.3

 

1)      亀田製菓「ぽたぽた焼き」

2)      北越「サラダかきもち」

3)      カルビー「かっぱえびせん」

4) 餅つき機による製造

 

表5 大麦スナックの焼き上げ時の外見品質

処理区

L*

a*

b*

備考

無処理

48.1

10.6

15.3

黒色

水処理

60.8

8.8

18.2

きつね色

 

[その他]

研究課題名           :大麦の新加工食品の開発(受託)

予算区分              :特定研究(高品質輸作)

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者           :佐藤有一、杉本雅俊

発表論文等           :なし

 

ニンニクを用いた食品の保存技術

[要約]ニンニクの抗菌力は50℃以上の加熱で極端に弱まる。ニンニクを、白菜漬物、減塩

梅干しへ添加することより保存性が向上する。さらにスライスをニンニク液で処理することによりカビ発生の抑制効果が大きい。

福井県農業試験場・食品加工研究所

契機

部会名

食品

専門

加工利用

対象

工芸作物類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

 

 ニンニクは強い抗菌力を有することが知られているが、食品の保存にこの抗菌成分のみを抽出製剤として利用すれば、多成分が不要となりニンニクの素材が十分に活用されず、また製剤化のコスト増も考えられる。一方、ニンニクは本県の特産品として生産されており、新しい利用法、加工品開発への期待も高い。これらのことから生ニンニクを磨砕し、食品に添加することにより保存性の向上を図る。

 

[成果の内容・特徴]

 

(1)     凍結乾燥したニンニクを10分間加熱し、フライドポテト生地に加えたところ、50℃以上で極端に抗菌力を失った(表1)。

(2)     白菜の調味液漬物にすりおろし生ニンニク1%(下漬けした白菜に対し)を添加すると一般菌数の増加を強く抑制した。3%添加によりさらに効果があったが辛味が強まった(表2)。

(3)     食塩の量を減らして漬けた梅干は、漬け液表面にカビが発生したが、同時にスライスした生ニンニクを梅に対し15%加えると発生しなかった。さらにこのニンニク入り梅干はほとんどニンニク臭がないため、塩味、酸味をひかえた新しいタイプの梅干ができた(表3)。

(4)     スライスした餅を、ニンニクを6.25%含む液で10分間処理することにより3日間以上カビを防ぐことができた(表4)。

処理した餅はニンニク臭がするが培焼するとほとんどしなくなり、硬さも差がなかった。

 

[成果の活用面・留意点]

 

(1)     食品の保存性向上に簡易に利用できる。

(2)     保存期間前および期間中に50℃以上に加熱しない食品へ利用できる。

(3)     ニンニクは品種により抗菌力があり、「ホワイト六片」種の抗菌力が強い。

 

[具体的データ]

表1 ニンニクの加熱温度とフライドポテト生地の

一般性菌数     (保存温度30℃)

表2 ニンニクを加えた浅漬け白菜調味液漬物の一般生菌数(保存温度10℃)

ニンニク量

PH

 

一般生菌数(個/g)

 

開始時

 

開始時

1日目

3日目

6日目

8日目

無添加

5.7

 

1.7×103

1.9×103

2.6×106

1.4×108

 

ニンニク 1%

5.7

 

 

6.7×102

1.2×103

4.8×103

4.0×104

ニンニク 3%

5.7

 

 

7.6×102

8.0×102

<300

<300

 

表3 減塩カリカリ梅とカビの発生   (保存温度5℃にて5ヶ月目)

漬込食塩量

カビ発生

塩分

 

滴定酸度

 

pH

重さ

 

色調

硬さ

 

 

 

クエン酸%

 

g/個

 

L値

a値

b値

g

通常(37%)

なし

14.5

 

4.1

 

3.0

7.6

 

39.2

15.2

12.5

684

減塩(5%)

漬液表面

9.2

 

2.9

 

3.0

10.4

 

39.5

15.8

11.3

816

改善(5%+ニンニク15%)

なし

10.2

 

3.3

 

3.1

9.0

 

42.9

11.4

14.4

831

 

[その他]

 

研究課題名           :農林水産物中に含まれる抗菌性成分等有効成分の利用

 

予算区分              :県単

 

研究期間              :平成5年度(平成元~5年度)

 

研究担当者           :田中秀幸、坪内均、西川清文

 

発表論文等           :ニンニクによる食品の保存向上、日本食品工業学会第41回大会発表、1994

 

(普及に移す技術)

(成果情報名)高泌乳牛受精卵の安定的確保と利用技術の確立

[要約]北海道より導入した高泌乳牛5頭にのべ19回の過剰排卵処理を行った。そのうち、14頭から68個の受精卵を回収した。移植可能な受精卵は、50個であった。凍結受精卵を9頭に移植したところ、4頭が受胎した。

福井県畜産試験場・酪農肉牛課

契機

部会名

畜産

専門

飼育管理

対象

家畜類

分類

普及

 

 

[背景・ねらい]

 

近年、乳用牛の改良手段として受精卵移植技術が応用されつつある。本県においても、酪農家の経営安定のため、受精卵移植技術を利用した高泌乳牛群の作出が期待されている。今回、北海道より導入した高泌乳牛10頭のうち5頭に過剰排卵処置を行って受精卵を回収した。回収した受精卵を凍結保存後、移植を行い、本技術の本県への応用普及性について検討を行った。

 

 

[成果の内容・特徴]

 

 のべ19頭に過剰排卵処置を行ったところ、14頭から計68個の受精卵を回収した。凍結可能な受精卵は49個であった。凍結受精卵9個を9頭の借腹牛(ホルスタイン種)に移植を行ったところ、4頭が受胎し、これまでに雌子牛2頭、雄子牛1頭を生産した。残りの1頭は、現在妊娠中である。

 

 

[成果の活用面・留意点]

 

県内酪農家の乳用牛の改良に活用できる。また、酪農家で飼養されている高泌乳牛から受精卵を回収することも可能であり、高泌乳牛群の作出に利用できる。

 

[具体的データー]

 

表1    供卵牛個体別採卵成績

供卵牛

過剰排卵処置回数

回収受精卵数

凍結可能受精卵数

A

3

8

7

B

3

12

7

C

4

10

7

D

4

16

14

E

5

22

14

合計

19

68

49

 

 

表2              移植成績

移植頭数

受胎頭数

受胎率(%)

生産子牛

9

4

44.4

雌2頭、雄1頭

 

 

 

妊娠中1頭

 

 

研究課題名           :乳用牛の受精卵移植技術の実用化に関する研究

 

予算区分              :県単

 

研究期間              :平成3年度~5年度

 

研究担当者           :前田淳一、小林修一、新谷圭男

 

鶏糞乾燥施設における消臭装備の開発

[要約] 密閉式鶏糞攬拌乾燥ハウスにおいて発生する粉麈、悪臭ガスの除去ができる消臭装置を開発した。本機は消臭液として人工酸素木酢液を用い、充塡塔には新たに濾過層を設け、その下部にはスプレーノズル、気液反応層を設けた装置である。

福井県畜産試験場・養鶏課

連絡先

0776-81-3130

部会名

畜産

専門

環境保全

対象

家禽類

分類

普及

 

[背景・ねらい]

鶏糞乾燥施設から発生する粉塵、悪臭ガスは近隣の住宅に迷惑をかけるのみならず水田、畑地にも窒素過多により作物に被害を与えている。ところで、これらを消臭する装置としては、土壌脱臭装置等があるが、施設設置に多額な経費を要するので、廉価な装置の開発が求められている。

開発した本機の構成は(図1)、装置に取り込まれた被処理ガスが装置の上部へ送られ、濾過層で粉塵が除去された後、スプレーノズルから散布される消臭液とともに下部へ流れるようになっているこの時に悪臭ガスと消臭液が接触し、悪臭ガスが消臭されるが、両者の接触を促すためにスプレーノズルの下部に気液反応層が設けられている。この装置を密閉式鶏糞攬拌乾燥ハウス(286㎡、鶏糞30t搬入)に設置し、消臭液としては金属フタシニアン誘導体(人工酵素)あるいは木酢液をも用いて消臭装置の性能を調査した。

[成果の内容・特徴]

(1)       スプレーノズルから消臭液を散水しない条件下で消臭装置(図1)の濾過層に濾材として粉砕木炭(50~200mmを入れ、見掛けの濾材接触時間を0.76秒とした時の粉塵除去率は88%と濾過層の効果が認められた。

(2) 消臭液として人工酵素を用いたときの消臭効果は、濾過層ならびに気液反応層の見掛けの濾材接触時間がそれぞれ、0.21秒、0.43秒と短時間であったにもかかわらず、アンモニア除去率は平均40%であった。また、揮発性脂肪酸の除去率(表1)も高かった。また、乾燥状態になると粉塵量は15mg/m3にもなり、そのときの粉塵の除去率は91%であった。

(3)     臭液として木酢液(pH2.78)を用いたときの消臭効果は、濾過層ならびに気液反応層の見掛けの濾材接触時間がそれぞれ、0.21秒、0.57秒と短時間であったにもかかわらず、アンモニア除去率は平均75%であった。また、揮発性脂肪酸の除去率(表2)も高かった。また、乾燥状態になると粉塵量は16mg/m3にもなり、そのときの粉塵の除去率は94%であった。

(4)     糞乾燥に要した日数(5~11月)は25~32日と一般に行われている大型の換気扇で鶏糞乾燥を行っている方法とさほど変わらなかった。ところで、消臭装置の製作費は270万円で、ランニングコストは電気料18,000円/月、濾材(粉砕木炭)は6,000円/月であった。また、消臭液は、人工酵素が5,000円/月で、木酢液は12,000円/月であった。

 [成果の活用面・留意点]

(1)     本機は畜糞処理場等、悪臭と同時に粉塵が大量に発生するような施設において利用できる。消臭液として、人工酵素、木酢液が、濾材としては粉砕木炭が利用できる。

(2)     粉塵、悪臭ガスの発生する量により、濾過層や気液反応層の数を二層以上にするなどにより濾材や消臭液との接触時間を高めて、粉塵や悪臭ガスの除去効果を高めることが必要である。

(3)     アンモニアの除去率を90%以上にするには、この装置において気液反応層での濾材との接触時間は1秒以上にする必要がある。

 

[具体的データ]

1.消臭装置の概略図

図1  消臭装置の概略図

寸法  間口2.0m×奥行1.43m×高さ2.6m

排気ブロアー  ターボファン 190mmAq、5.5kW、90m3/分

通気速度  0.7m/秒、薬液散布量 63ℓ/分、液ガス比0.7

 

2.人工酸素による消臭効果

消臭液 金属フタロシニアン誘導体(人工酸素)に消臭微生物を添加した。

消臭装置の濾過層1には消臭ペレットと粉砕木炭(5~20mm)混合物15cm、気液反応層二層用い粉砕木炭を各々15cmの厚さに入れた。

(1)     気液反応層における濾材接触時間は0.43秒

(2)     アンモニア除去率 40%

(3)     揮発脂肪酸

表1  揮発性脂肪酸   

項目

入気口

排気口

除去率

プロピオン酸

0.059ppm

0.014

77%

ノルマル酪酸

0.121

0.135

0

イソ吉草酸

0.014

未検出

100

ノルマル吉草酸

0.051

未検出

100

3.木酢液による消臭効果

消臭液  広葉樹を原料にした木酢液(pH2.78)

消臭装置の濾過層1には消臭ペレットと粉砕木炭(5~20mm)混合物15cm、気液反応層二層用い粉砕木炭を各々20cm、17cmの厚さに入れた。

(1)     気液反応層における濾材接触時間は0.57秒

(2)     アンモニア除去率 75%

(3)     揮発脂肪酸

表2  揮発性脂肪酸   

項目

入気口

排気口

除去率

プロピオン酸

0.180ppm

未検出

100%

ノルマル酪酸

0.091

未検出

100

イソ吉草酸

0.221

0.120

46

ノルマル吉草酸

0.105

未検出

100

[その他]

研究課題名           :木酢液等の利用による消臭装置の開発

予算区分              :国補(家畜ふん尿処理技術実用化調査事業、脱臭型)

研究期間              :平成5年度(平成4~5年)

研究担当者           :加藤武市、津田良治、松田隆一、土谷耕作、笹原香澄

発表論文等           :福井県畜産試験場研究報告第13号投稿中、特許出願中

 

北陸におけるギニアグラスの播種期と収穫期を異にした栽培技術

[要約]北陸地方において、暖地型牧草のギニアグラスを栽培する場合、6月下旬までに播種し1番草を補孕期で刈取ると、再生が良好で、1番草と2番草の合計収量が多くなり、茎が軟らかいためラップサイレージ調製時にも利点がある。

福井県畜産試験場・飼料課

連絡先

0776-81-3130

部会名

畜産

専門

栽培

対象

牧草類

分類

指導

 

[背景・ねらい]

高品質生乳生産を推進するためには、北陸地方の生産条件に適した繊維源の確保が必要である。転作田の活用、省力調製機械の利用に適した草種、イタリアンライグラスとの作付体系が組みやすいこと、これらの条件を満たす夏場の多収牧草として、暖地型牧草のギニアグラス「ナツカゼ」を取り上げた。ギニアグラス「ナツカゼ」の播種期、刈取期、施肥法と、収量性との関係を検討した。

 

[成果の内容・特徴]

(1)     播種期は、6月下旬までなら2番草が収穫できる。7月上旬では生育が悪く、生育期間が短いので、1番草のみの収穫で収量も低くなる。(表1)

(2)     刈取期は、出穂期と補揃期では茎が硬くなるので、収穫調製は穂孕期が良好である。

(3)     1番草を補揃期で刈取ると、再生草の生育が悪くなり、2番草は収穫できない。

(4)     播種と同時に基肥を半分量施肥し、初期生育が終わり急伸長期に入る前に、残りの半分量を追肥(分施)すると、乾物収量が増収する。(表2)

 

[成果の活用面・留意点]

(1)     1番草と2番草の合計収量は、出穂期に収穫する慣行法に比べて、遜色がないので、繊維源の確保を目的に活用できる。

(2)     ギニアグラスは生育が旺盛なので、刈遅れると茎が硬くなり、ラップサイレージ調製時にラップフィルムを破損する恐れがあり、牛の嗜好性も悪くなるので注意する。

 

[具体的データ]

表1 播種期・刈取期別の生育特性・收重性(1992、1993)

播種期

刈取期

 

草丈(cm)

 

収量(kg/a)

 

1番-2番

 

1カ月後

収穫時

 

乾物

 

 

 

 

1番草

2番草

 

1番草

2番草

合計

(‘93)

5月下旬

補孕-穂孕

 

30

159

136

 

72

56

128

出穂-補孕

 

30

176

85

 

94

31

124

補揃-

 

30

208

 

96

96

(‘93)

6月上旬

補孕-穂孕

 

34

167

132

 

82

51

133

出穂-補孕

 

34

195

125

 

105

45

150

補揃-

 

34

213

 

121

121

(‘92)

6月中旬

補孕-補揃

 

60

121

177

 

44

137

181

出穂-

 

57

189

 

118

118

補揃-

 

63

208

 

149

149

(‘92)

6月下旬

補孕-出穂

 

97

167

159

 

89

68

157

出穂-

 

93

204

 

140

140

補揃-

 

90

214

 

161

161

(‘93)

9月上旬

補孕-

 

24

119

 

35

35

出穂-

 

24

131

 

36

36

補揃-

 

24

146

 

53

53

 

表2  分施による生育特性・収量性(上段:1992、下段:1993)

区分

草丈(cm)

 

乾物収量(kg/a)

 

1ヶ月後

1番草

2番草

 

1番草

2番草

合計

慣行区

113

220

 

134

134

分施区(1)

117

208

 

151

151

分施区(2)

125

210

 

124

124

分施区(3)

122

214

 

139

139

慣行区

22

162

90

 

70

32

102

分施区(1)

20

183

140

 

102

58

160

分施区(2)

23

184

140

 

93

54

147

分施区(3)

28

171

127

 

78

48

126

※施肥量(Nkg/a) 慣行-基肥1.0     (1)-基肥0.5+追肥0.5

(3)     -基肥0.5+追肥0.25 (3)-基肥1.0+追肥0.25

 

[その他]

研究課題名           :暖地型牧草の高品質生産調製技術の確立

予算区分              :国補(飼料作物生産利用改善事業)

研究期間              :平成5年度(平成3~5年)

研究担当者           :村田文彦、清水政浩、宗石忠信、岡崎勉

発表論文等           :福井県研究速報、NO.69、1994.

 

 

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